「電子契約では印紙が不要」と聞くことがありますが、なぜなのでしょうか?従来の紙の契約書では当然のように収入印紙が必要でしたが、電子契約ではそれが不要になります。
その理由は、電子契約に関する法律や国税庁の見解にもとづいています。本記事では、電子契約で印紙が不要な理由を詳しく解説します。
電子契約に印紙がいらない理由
電子契約に収入印紙が不要な理由は、印紙税法における課税文書の定義にあります。同法では、課税文書の作成を用紙への記載と定義しており、電子契約における電子ファイルの送信・交付は課税文書の作成に該当しないとされています。
2005年の国会答弁でも、電磁的記録により作成された文書には印紙税が課税されないことが確認されています。つまり電子契約は印紙税法上の課税対象ではないため、収入印紙は不要なのです。
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電子契約の印紙に関する法律や国税庁の見解
「法律の解釈」「国税庁の見解」「国会答弁書」の3つの観点から、電子契約に印紙が不要な理由を解説します。
「印紙税法基本通達」による解釈
印紙税法基本通達第44条の記述に基づけば、課税文書の「作成」とは、紙の用紙に記載して交付することを指すと理解されます。
第44条
法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
この通達の内容から、国税庁は電子データによる契約書の交付を課税文書の作成行為とは見なしていないと考えられ、したがって印紙税の対象外とされているのです。
参考:印紙税法|e-Gov |
国税庁の見解
国税庁の見解においても、電子契約の印紙税非課税が支持されています。
国税庁が公開している資料では、電子的記録に変換して送信された注文請書は課税文書の作成に該当しないとの見解が示されています。
【照会内容】
申し込みに対する応諾文書として作成した「注文請書」をPDFファイル等の電子的記録に変換して送信した場合、課税文書の作成に該当しないという認識でよいか |
この照会に対して、国税庁は照会者の認識で間違いないとの回答を出しています。
国会答弁書にも明記
さらに2005年の国会答弁においても、電磁弁的記録により作成されたものには印紙税が課税されないことを確認できます。
事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。
しかし、印紙税は、経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める文書課税であるところ、電磁的記録については、一般にその改ざん及びその改ざんの痕跡の消去が文書に比べ容易なことが多いという特性を有しており、現時点においては、電磁的記録が一律に文書と同等程度に法律関係の安定化に寄与し得る状況にあるとは考えていない。
当時は電子契約の普及が進んでおらず、改ざんのリスクが懸念されていましたが、現在では技術の進歩により、そうした懸念は大きく軽減されています。
これらの法律解釈、国税庁の見解、国会答を総合的に考慮すると、電子契約には印紙税が不要であるとの結論に至ります。この見解は、現在の電子契約実務においても広く受け入れられています。
そもそも印紙税とは?
印紙税とは、契約書や領収書などの課税文書に課される税金です。課税文書とは、印紙税法で定められた文書のことで、その文書に記載された金額によって印紙税額が変わります。
印紙税は、基本的に収入印紙を課税文書に貼付することで納付します。ただし電子データでのやり取りによる契約や領収書などは、課税文書の作成に該当しないため、印紙税は非課税となります。つまり電子契約などの電子データ取引では、印紙税が課されないのです。
電子契約書を印刷した場合でも印紙は不要
電子契約書を印刷しても、原本が電子データであれば印紙税は課税されません。これは電子領収書についても同様です。ただし印刷した契約書に押印するなどして、それを原本として扱う場合は、課税対象となる可能性があるので注意が必要です。
つまり電子契約書や電子領収書をプリントアウトしても、あくまで原本は電子データであるという認識を持ち、印刷物を原本のように扱わないことが重要です。
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