電子契約とは、電子文書に電子署名とタイムスタンプを付与することで契約を締結します。バックオフィス業務のデジタル化が進む中で、電子契約を導入する企業が増えています。
紙の契約書から電子契約への移行を検討している場合、「電子契約とは具体的にどのようなものなのか」「法的な有効性は問題ないのか」「どのようなメリットがあるのか」など、疑問が浮かぶのではないでしょうか。
本記事では、電子契約の全体像が理解できるように、電子契約の基礎、書面契約との違い、電子契約が成り立つ仕組み、関係する法律、メリットと注意点をわかりやすく解説します。電子契約の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
電子契約とは?

電子契約とは、取引文書を電子化したものです。契約書データの作成から送付、押印・署名、締結までがインターネット上で完結します。なお、取引文書は契約書のほかに、見積書や請求書、領収書も含まれます。
電子契約は、クラウドサービスを活用して行われます。クラウド上で契約書を作成し、保管できるのが特徴です。
電子契約と書面契約の違い
| 項目 | 電子契約 | 書面契約 |
| 契約書の形態 | 電子データ | 紙 |
| 書面方法 | 電子署名 | 手書き署名・押印 |
| 保管方法 | デジタルストレージ | 物理的な保管 (保管場所が必要) |
| 契約締結にかかる時間 | 早い:数時間~数日 | 遅い:数日~数週間 |
| コスト | 電子契約サービスの料金(数千円程度〜のみ) | 契約量に応じた印刷代・郵送費・印紙税などが発生 |
| セキュリティ | 暗号化技術で保護 | 物理的な保管に依存 |
| 検索・管理 | 簡単 | 時間と手間がかかる |
電子契約は従来の書面による契約を電子化したものです。書面とは具体的に何が異なるのか、ひと目で比較できるよう表にまとめました。
上記の表からわかるとおり、電子契約は保管や時間、コストなどの面で従来の書面契約よりも効率的です。
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電子署名で電子契約が成り立つ仕組み

電子署名とは、従来の紙の契約書にハンコを押す形式と同等の法的効力を電子契約に持たせる仕組みのことを指します。電子署名には、下記2つが必要です。
- 電子証明書
- タイムスタンプ
電子証明書:契約書の発行体が本人であることを証明
電子証明書は、第三者から「契約書の発行体が本人である」ことを証明してもらうためのものです。なお、電子証明書を発行する第三者機関を認証局と呼びます。
発行する際には、送信者と受信者のみが閲覧できるパスワードのようなものを付与して、安全に送受信できる公開鍵暗号方式が採用されています。
タイムスタンプ:刻印時刻に電子データが存在・確認したことを証明
タイムスタンプを付与することで、刻印した時刻に電子データが存在し、当事者が確認したことを証明できるようになります。刻印時刻を明確にすることで、契約後の電子データの改ざんを防ぐことができる仕組みになっています。
電子証明書とタイムスタンプにより、契約者が本人であることと契約書が改ざんされていないことがわかり、電子契約が効力を持つことができます。
電子契約に関わる法律と要件

電子契約を適切に運用するには、関連する法律や要件を理解することが重要です。主に電子契約に関わる下記4つの法律のポイントを押さえておきましょう。
- 民法
- 電子署名法
- 電子帳簿保存法
- e-文書法
民法
2020年に、約120年ぶりに民法が大きく見直されました。この際、民法第522条が改正されたことで電子契約が可能となりました。
改正された民法第522条第2項では、「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と定められています。この条文により契約方式の自由が明文化され、電子契約が可能になったのです。
電子署名法
電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)は、電子署名の法的有効性を定めた法律です。この法律により、一定の要件を満たす電子署名は、手書きの署名や押印と同等の効力を持つことが認められています。
電子署名法で定められている主な要件は以下のとおりです。
署名者の本人性:本人により作成されたものであること
非改ざん性:作成後に改ざんされていないこと
上記の要件を満たす電子署名が付された電子文書は、真正に成立したものとして扱われます。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類を電子データで保存することを認めた法律です。電子契約書もこの法律の対象となります。
電子帳簿保存法で定められている主な要件は以下のとおりです。
真実性:保存されたデータが改ざんされていないと確認できること
可視性:保存されたデータを検索・表示できること
これらの要件を満たしていれば、電子契約書を適法に保存できていることになります。
e-文書法
e-文書法(電子文書法)は、もともと紙の書類で保管されていた文書や書類を電子化して保存することを認めた法律です。e-文書法で定められている主な要件は以下のとおりです。
- 見読性:必要に応じて電子データを閲覧できること
- 完全性:データの改ざんや毀損を防止する措置が取られていること
- 検索性:必要な情報をすぐに検索・抽出できること
- 機密性:権限を持たない第三者からの不正アクセスへの対策がされていること
電子契約のメリット

印紙税や人件費などのコストが削減できる
電子契約による大きなメリットの一つがコスト削減です。具体的には、以下の費用を削減できます。
- 印紙税:電子契約では印紙税が課税されない
- 印刷・郵送費:契約書の印刷や郵送にかかる費用が不要
- 人件費:契約関連の事務作業が大幅に削減されるため、人件費も抑えられる
契約締結・管理などの業務を効率化できる
電子契約を導入することで、契約に関わる業務プロセスを大幅に効率化することが可能です。印刷、製本、郵送や手渡しによる書類のやり取りが必要なくなるため、従来は数週間かかっていた契約締結を数時間〜数日程度で完了できるようになります。
物理的な紙の書類を管理するのではなく、デジタルデータで保管できるようになるため、過去の契約の検索や管理も効率化できます。契約に関わる事務作業を削減できれば、他の重要な業務により多くの時間を割けるようになるでしょう。
リモートワークなど多様な働き方に対応できる
電子契約の導入により、リモートワークやワーケーションなど、多様な働き方にも柔軟に対応できるようになります。電子契約はインターネット環境さえあればどこからでも契約を締結できるため、場所や時間の制約を受けにくいのです。
場所や時間に左右されずに契約業務を進められるのは、リモートワークや働き方改革が進む昨今において、大きなメリットでしょう。
契約に関わった人物や時系列の記録がコンプライアンス強化につながる
電子契約では契約に関する透明性が高まるため、コンプライアンスの強化につながります。
まず、契約に関わった担当者や契約フローを記録できます。タイムスタンプ機能により、どのタイミングで契約が締結されたかを正確に把握できるメリットもあります。万が一のトラブルや監査の際にも詳細な記録を提示できるため、リスクヘッジにもなるでしょう。
電子契約のデメリット

自社の取引で電子契約を利用できるか確認する
自社の取引において電子契約を利用できるかどうか、必ず確認してください。電子契約が可能な契約書は増えていますが、すべての契約書が対象ではありません。例えば、以下の契約書は電子化が認められていません。
- 事業用定期借地契約
- 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約
- 任意後見契約書
上記の契約において電子化が認められていない理由は、公正証書が必要だからです。他にも、農地の賃貸借契約書も書面での締結が必要です。
さらに、2022年6月に施行した特定商取引法改正によりクーリングオフ書面が電子化できるようになりましたが、取引先が対応していない場合などは書面で交わさなければならないと定められているようなケースも存在します。
セキュリティ上の課題が発生しないか確認する
セキュリティ上の課題についても確認しておきましょう。電子契約では不注意による人的ミスやサイバー攻撃による情報漏洩のリスクが伴います。
情報漏洩のリスクを低減させるためには、パスワード以外に指紋や顔認証、SMS認証などを用いたログインが有効です。その他、契約書にアクセスできる権限を制限することも不正アクセスの抑制になります。
漏洩のリスクがあることは紙の契約書でも同様です。紙であっても電子であっても、セキュリティ上の問題が発生しないように社内体制を整えたり、従業員のセキュリティ意識を向上させたりすることが大切なのは変わりません。
システムを導入する場合はトータルコストを考慮する
電子契約を行う際は、システムを導入するケースが多いでしょう。システムを利用する場合は、初期費用や月額費用が発生します。
「電子契約のメリット」にて前述したとおり、システムにかかる費用よりも、電子契約の導入による削減費用の方が大きいと想定されます。しかし本当にコストを削減できるかどうか、発生する費用と削減できる費用をトータルで考えて試算してみましょう。
初期費用は0円のシステムも多いです。月額費用はシステムによって幅がありますが、10,000円前後が相場です。なお、多くのシステムにおいて無料トライアルが用意されているので、試してみることをおすすめします。
取引先に正しく周知・調整する
電子契約の導入にあたっては、取引先へ説明して理解してもらわなければなりません。
電子契約にはメール認証で済む「立会人型」と、第三者機関の電子認証局による電子証明書の取得が必要な「当事者型」があります。立会人型であれば、取引先はメールアドレスさえあれば対応できるので比較的簡単ですが、これまで紙で行っていた契約を電子化する旨の理解を得る必要があります。
もちろん取引先だけでなく、社内でも業務フローが変更になることの周知が必要です。電子契約の導入は、取引先および社内へ説明する時間も考慮して計画しましょう。
まとめ

電子契約は、契約書データの作成から送付、押印・署名、締結までをインターネット上で行える仕組みで、従来の紙の契約書と比べ、契約業務を大幅に効率化できます。リモートワークの拡大を背景に電子契約の導入が進んでおり、大多数の契約書が電子契約に対応しています。
契約業務を効率化できるのみならず、コスト削減やコンプライアンス強化も期待できるといった大きなメリットがある一方、セキュリティリスクの対策や取引先と社内への周知など導入にあたって対応すべき事項もあるので注意しましょう。
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