人事評価の時期が近づくたび、Excelシートの配布、煩雑な集計作業、そして終わらないリマインド業務に追われていませんか。管理職からは「評価が手間だ」、従業員からは「評価に納得できない」という声が上がり、板挟みになっているかもしれません。


その悩みは、貴社特有のものではありません。ある調査では、人事担当者の約8割が「多忙」を実感しています。さらに、従業員の約4割が自社の評価制度に不満を抱いている(※2)というデータは、この問題が単なる業務非効率を超え、人材流出という経営リスクに直結していることを示しています。
この記事ではExcel運用に限界を感じる人事担当者に向けて、「工数削減(オペレーション効率化)」と「評価の質・納得感の向上(戦略的人事)」を両立させる、具体的な人事評価の効率化の方法とロードマップを提示します。

「Excelでの人事評価、もう限界…」と感じている方へ
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人事評価の効率化は「システムの導入」と「プロセスの見直し」の2軸で進める

人事評価の効率化を実現するアプローチは、突き詰めれば「①ツールの導入(システム化)」と「②業務プロセスの見直し(アナログ改善)」の2つに集約されます。
従業員数が増加するなどしてExcelや紙での運用がすでに限界を迎えている場合、最も根本的かつ効果的な解決策は「①人事評価システムの導入」です。
ただし、システムさえ入れればすべて解決するわけではありません。高価なシステムを導入しても、評価基準が曖昧なままでは「評価の質」は向上しません。「②プロセスの見直し」と「①システムの導入」を両輪で進めることこそが、人事評価の効率化を成功させる唯一の鍵です。
なぜ人事評価の効率化は失敗するのか?陥りがちな3つの失敗例
最適な方法論を実行する前に、多くの企業が陥る典型的な失敗パターンを理解しておく必要があります。
失敗例1:工数削減が目的化し、評価の質が低下する
効率化を急ぐあまり、評価項目を単純化しすぎたり、フィードバック面談を省略したりするケースです。結果としてオペレーションは早くなりますが評価は形骸化し、育成に繋がらず従業員の不満が増大します。
失敗例2:「高機能なシステム」を導入し、使いこなせない
自社の評価制度や運用実態と合わない、過度に高機能なシステムを選んでしまう失敗です。
「多機能ゆえに使いこなすのが難しい」、「Excelに比べワークフローの柔軟性が低い」といった声も見られ、結果としてExcelより手間がかかる本末転倒な事態を招きます。
失敗例3:現場(管理職)の理解を得られず、形骸化する
人事部だけでシステム導入やプロセス変更を進め、現場の評価者(管理職)への説明やトレーニングを怠るケースです。
管理職が「評価のブラックボックス化」を感じたままでは、労働契約法上の「公正評価義務」にも抵触しかねない、不公正な評価が横行するリスクが残ります。
ステップ別・課題別で見る「人事評価 効率化」の最適解マップ
人事評価の効率化は、2つのフェーズで捉える必要があります。まずは足元の火事である「オペレーションの効率化」を実現し、次に本質的な課題である「評価の質・納得感の向上」に着手します。
《フェーズ1:オペレーション効率化》 Excel・紙の集計・管理工数を削減する方法
このフェーズの目的は、人事担当者が本来やるべき「戦略的人事」の時間を創出することです。
方法1:【応急処置】現状のExcel運用を極限まで効率化する
VLOOKUP関数やピボットテーブルでの集計自動化、入力規則の徹底、スプレッドシートの共同編集機能の活用は、いますぐできる改善策です。
しかし、これはあくまで応急処置に過ぎません。従業員数が増えれば、ファイルの属人化やバージョン管理の破綻、データ分析の限界が必ず訪れます。
方法2:【根本解決】人事評価システムを導入する
Excel運用からの脱却には、システム導入が不可欠です。その効果は劇的で、宇宙開発ベンチャーのインターステラテクノロジズ社(100〜299名)は、評価業務の工数を約1/2に削減することに成功しています(※)。
進捗管理の自動化、評価データの一元化・分析、ペーパーレス化は、手動管理では決して実現できない領域です。
方法3:【選択肢】一部業務をアウトソーシング(BPO)する
評価データの入力や集計、給与計算連携といった定型業務を外部に委託(BPO)する選択肢もあります。ただし、評価プロセスそのものの非効率性や、データの分断といった根本課題は解決しない点に留意が必要です。
《フェーズ2:評価の質・納得感の向上》 評価者・被評価者の負担を軽減する方法
創出した時間で取り組むべき、効率化の第二フェーズです。「評価の定着、評価者スキルの向上」が人事の大きな課題であり、ここが本丸となります。
方法4:評価プロセスの見直し(評価の目的を再定義する)
まず、「何のため(処遇決定か、人材育成か)」の評価かを再定義します。例えば、360度評価を処遇に直結させると人間関係が歪むため、人材育成目的に限定するといった見直しが、評価の納得感を高めます。
方法5:評価項目の最適化(評価基準を明確にする)
「情意評価」のような曖昧な項目を排し、具体的な行動指標(コンピテンシー)に落とし込みます。これは、評価者の主観によるブレをなくし、法的リスク(公正評価義務)を回避するためにも不可欠です。
方法6:目標設定(MBO/OKR)の運用を最適化する
SMARTの原則(具体的、測定可能など)を用いた目標設定をサポートします。特に近年注目されるOKR(Objectives and Key Results)は、組織目標と個人目標の連動性を高め、システムとの相性も抜群です。
方法7:コミュニケーションの改善(評価者トレーニング)
評価の質は、最終的に評価者(管理職)のスキルに依存します。評価基準の目線合わせ(キャリブレーション)研修や、効果的なフィードバック面談(1on1)の手法を教育することが重要です。
近年注目される「リアルタイムフィードバック」も、こうした対話の質を高めるアプローチの一つです。
Excel運用から人事評価システムへ!4つの移行ステップ
システム導入を成功させるには、ツールの選定以上に「導入プロセス」が重要です。ここでは、Excel運用からの移行を失敗させないための4ステップを解説します。
ステップ1:目的の明確化と要件定義
「なぜシステムを導入するのか」という目的を徹底的に明確化します。単なる「工数削減」では、経営陣の承認は得られません。
例えば、カオナビを導入したエイチーム社は「第三次成長期の組織最適化」(※1)、SmartHRを導入したクラウドワークス社は「働き方革命というビジョンの体現」(※2)と、システム導入をより大きな経営戦略の一部として位置づけていました。
この目的に基づき、「Must(必須機能)」と「Want(あれば嬉しい機能)」を整理します。
ステップ2:製品の比較・選定
要件定義に基づき、製品を比較します。チェックすべき軸は以下の通りです。
- 自社の評価制度との適合性: 既存のExcelシートの項目を再現できるか、柔軟な設定変更が可能か。
- 操作性(UI/UX): 「マニュアルなしで直感的に使える」ことが多くのユーザーに重要視されています。管理職や従業員がストレスなく使えるかは最優先事項です。
- サポート体制: 「手厚いサポート体制」は、特にExcelからの初動移行時に不可欠です。
- 連携性: 既存の労務管理システムや給与計算ソフトと連携できるか。
- 拡張性: 企業の成長に合わせて「将来的に必要となる情報項目を柔軟に追加できるか」は、成長企業にとって重要な視点です。
ステップ3:社内調整とデータ移行
経営陣へのプレゼンでは直接的な工数削減効果に加え、「隠れたROI」も訴求します。例えば、不公正な評価による訴訟リスクや、Excel管理での情報漏洩リスクの回避は、システム導入費用を上回る「保険」としての価値があります。
また、現場への説明会を丁寧に実施し、移行の必要性とメリットを共有することが定着の鍵となります。
ステップ4:導入・運用・定着化
いきなり全社導入するのではなく、特定部門でのスモールスタートを推奨します。運用ルールを策定し、現場のフィードバックを基に改善を繰り返しながら、徐々に定着させていきます。
人事評価の効率化を実現するシステム3選
システム選定は「自社の人事部が今後どのような役割を担うべきか」という戦略的な問いに帰結します。ここでは、Excel運用に限界を感じる企業が検討すべき、代表的な3つのシステムを紹介します。
SmartHR(戦略:人事業務全体の徹底的な効率化)

労務管理クラウドで圧倒的トップシェアを誇るSmartHRは、その巨大な顧客基盤と労務データ連携を武器に人事評価領域でも存在感を増しています。
最大の強みは、入社手続き、年末調整、給与計算連携といったあらゆる人事業務を一つのプラットフォームで一気通貫に効率化できる点です。労務管理で蓄積したデータを活用する「HRアナリティクス機能」もリリースしています。
人事評価だけでなく、人事部全体のオペレーション業務を徹底的にデジタル化し、煩雑な手作業から解放されたい企業におすすめです。
カオナビ(戦略:組織の可視化と活性化)

「顔写真」を起点とした直感的なUIが特徴で、タレントマネジメントシステムの代表的製品です。
組織の全体像を直感的に把握し、スキルや過去の評価情報を重ね合わせながら戦略的な人材配置をシミュレーションすることを得意とします。
従業員数が急増し、「顔と名前が一致しない」「誰がどんなスキルを持っているか分からない」といった、組織の可視化とコミュニケーション活性化が最大の課題である企業におすすめです。
HRBrain(戦略:戦略的人材開発の深化)

シンプルで直感的なUI/UXに定評があるサービスです。
MBOやOKR、360度評価など多様な評価制度に対応し、それらの評価データと従業員データを連携させ、戦略的な人材育成・配置に繋げることに強みがあります。360度評価への「AIフィードバック」機能など、AI活用にも積極的です。
評価業務の効率化を第一歩として、その先に「サクセッションプランの策定」「ハイパフォーマー分析」など、本格的なタレントマネジメント(戦略的人材開発)の深化を目指す企業におすすめです。
まとめ:人事評価の効率化は「戦略的人事」への第一歩

本記事では、人事評価の効率化の方法として、「システム導入」と「プロセス見直し」の2軸、そしてExcelからシステムへ移行するための具体的なロードマップを解説しました。
人事評価の効率化は、単なる工数削減(守りの人事)がゴールではありません。経済産業省が「人材版伊藤レポート」で提唱する「人的資本経営」の時代において、人事は経営戦略と連動した「攻めの人事」へと転換する必要があります。
しかしオペレーションに忙殺されていては、その転換は不可能です。効率化した時間を使って新たな人事制度を企画した事例があるように、人事評価の効率化は「戦略的人事」へと踏み出すための、最も重要で具体的な第一歩なのです。
まずは、自社の課題が「オペレーション」にあるのか、「評価の質」にあるのかを特定し、その解決のために「なぜシステムが必要なのか」という目的を明確にすることから始めてください。
人事評価の「次の一手」でお悩みではありませんか?

本記事で解説したように、人事評価の効率化は「システム導入」と「プロセス見直し」の両輪で進める必要があります。
しかし、いざ実行しようとすると、
「結局、自社に最適なシステムがどれか判断できない…」
「システム導入より先に、一部業務のBPOが先決かもしれない…」
「ツール間のデータ連携など、導入後に“隙間作業”が残るのが不安だ…」
といった「どの選択肢が自社にとって最適か」という新たな悩みが出てくるのではないでしょうか。
特定のツール導入やBPOありきで進めてしまうと、記事中の失敗例のように「使いこなせない」「かえって非効率になる」といった事態を招きかねません。
重要なのは、ツール導入と業務プロセスの最適化を中立的な立場で組み合わせ、御社専用の「業務フロー全体」を設計することです。
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