繁忙期に入ると電話が鳴り続け、メールと問い合わせフォームにも似た質問が並びます。応答率は目標を下回り、放棄呼だけが増えていきます。増員で立て直したいところですが、採用も人件費もすぐには動きません。
この状況の打ち手になるのがチャットボットです。ただし入電が実際に減るかどうかは、製品の性能よりも自社が最優先で解決したい課題に合っているかで決まります。同じチャットボットでも、呼量を削るのが得意な製品と、営業時間外の一次受けが得意な製品は別物です。
この記事では、チャットボットで減る入電と減らない入電の切り分け方、コールセンター向けチャットボット14製品の機能と費用の比較、解決したい課題別でおすすめ製品を紹介します。

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チャットボットで減る入電と、減らない入電
チャットボットを入れても、入電が全部消えるわけではありません。減るのは答えが決まっている問い合わせで、相手の感情や個別の事情に踏み込む問い合わせは残ります。導入したのに思ったほど減らなかったという結果になる原因は、この切り分けをせずに全体の呼量へ期待をかけてしまうことにあります。
減るのは、配送状況の確認、料金や手続き方法の確認、営業時間の問い合わせ、パスワードの再発行など、回答が一意に決まるものです。文章にすれば数行で済み、オペレーターが調べる必要もありません。この層は電話をかける前に答えを見つけられれば、そもそも入電になりません。
条件つきで減るのは、契約内容の確認、複数の条件が絡む料金の試算、営業時間外の一次受けです。顧客ごとのデータを見に行く必要があるため、既存システムとの連携ができているかで結果が変わります。時間外の一次受けは、翌営業日に折り返す前提であれば要件のヒアリングまでを自動化できます。
減らないのは、クレーム、解約の引き止め、個別事情の相談、そして電話でなければ安心できない層からの連絡です。ここを無理に自動化すると、たどり着けない不満が残ったうえで、結局オペレーターがより難しい状態から応対することになります。
自社の入電がどの層にどれだけ乗っているかは、通話ログとコール理由の集計で見えてきます。
| 入電の種類 | チャットボットで減るか | 自社に当てはめる問い |
|---|---|---|
| 配送状況・納期の確認 | 減る | その問い合わせは月に何件来ているか |
| 料金・手続き方法の確認 | 減る | 答えはFAQにあるか、あるのに電話が来ているか |
| 営業時間・アクセスの確認 | 減る | 電話をかける前に顧客が見る画面はどこか |
| パスワード再発行・ID確認 | 減る | 本人確認をどこまで自動でやれるか |
| 契約内容・利用状況の確認 | 条件つきで減る | その顧客データはどのシステムが持っているか |
| 複数条件が絡む料金の試算 | 条件つきで減る | 案内の分岐は何パターンあるか |
| 営業時間外・休日の一次受け | 条件つきで減る | 時間外にかかってきた電話は今どうなっているか |
| クレーム・お詫びを伴う対応 | 減らない | この応対に1件あたり何分かけているか |
| 解約の相談・引き止め | 減らない | 誰が対応する決まりになっているか |
| 個別事情の相談・例外処理 | 減らない | 例外の判断基準はマニュアルのどこにあるか |
| 電話でなければ安心しない層 | 減らない | その層は顧客全体のどれくらいか |
削減の見込みは、減る層と条件つきの層を足した件数を母数にして立てます。全体の呼量から何割という置き方をすると、根拠を説明できない目標になります。
コールセンター向けチャットボット選びの3タイプ
製品の情報を読み比べていくと、多くはAI型かシナリオ型かという分け方で説明されています。ただ、これは製品の作りの違いであって、自社が何を解決できるかには直接つながりません。AI型のなかにも呼量を削るのが得意な製品と応対品質を上げるのが得意な製品があり、型が同じでも向く現場は違います。解決したい課題のほうから見ていくと、候補は自然に絞られます。
コールセンター向けのチャットボットは、任せられる仕事でみっつに分かれます。最も多いのは電話前の自己解決に強いAタイプを求めるケースで、定型の問い合わせが電話に集中している会社がここに入ります。次に多いのが時間外の一次受けに強いBタイプ、そしてオペレーターの回答支援に強いCタイプです。複数当てはまるなら、いま最も応答率を落としている課題で判断してください。
Aタイプ|電話前の自己解決に強い
定型の問い合わせが電話に集中していて、呼量と自己解決率を動かしたい状態です。FAQページはあるのに顧客が探せず、結局電話になっているケースがほとんどここに入ります。
効くのは、電話をかける前の画面に置いて止められる製品です。Webサイトやマイページ、LINEなど顧客が最後に触れる場所で答えを出せることが条件になります。加えて、顧客の言い回しがそろっていなくても意図をくみ取る検索の精度と、既存のマニュアルやPDFから回答を作れることが効いてきます。ゼロから回答を書き起こす前提の製品だと、公開までにたどり着けません。
これができると、上位の質問だけで入電の大半を受け止められる状態になります。ボットが答えられなかった質問文がログに残るので、次に何を足すかも迷いません。
国内で広く導入されている定番で、社内にたまったFAQやマニュアルをそのまま回答に変えられます。
Bタイプ|時間外の一次受けに強い
応答率と放棄呼が課題の中心にあり、夜間や休日、キャンペーン時のピークで取りこぼしが出ている状態です。人を増やしても、そもそも人がいない時間帯は埋まりません。
このタイプで見るべきは、24時間の一次受けと、営業時間内に人へ渡す動きを同じ基盤で設計できるかどうかです。ボットと有人チャットが別製品に分かれていると、引き継ぎのたびに会話が切れて、顧客が最初から説明し直すことになります。時間外は要件を聞き取って翌営業日の折り返しにつなげ、日中はそのまま有人へ渡す。この切り替えを時間帯とシナリオの両方で決められる製品が合います。
設計できれば、時間外の着信が翌朝に整理された一覧として並ぶようになります。ピーク時の呼を待たせないチャネルへ逃がす使い方も同じ仕組みで回せます。
有人チャットの基盤とセットで、一次受けから人への引き継ぎまでを一続きに設計できます。
Cタイプ|オペレーターの回答支援に強い
1件あたりの応対時間が伸び、答えが人によって違うことが気になっている状態です。新人が調べるのに時間がかかり、ベテランに確認が集まります。
効くのは、オペレーターの手元に参照すべき回答を出せる製品です。顧客が自分で解決できる範囲を広げながら、応対中の担当者にも同じ根拠を示せる構成になります。前提になるのは、ひとつのナレッジを顧客向けと社内向けの両方から使えることです。二重管理になると、更新が片方だけ止まって答えのばらつきが戻ります。
両方が回り始めると、応対時間の短縮と品質の平準化が同時に進みます。教育のコストも、マニュアルを覚えさせる形から検索できる形へ移せます。
カスタマーサポートに特化していて、顧客への回答とオペレーターの回答支援を同じナレッジで回せます。
タイプが決まったあとは、多言語の問い合わせがあるか、電話以外のチャネルで接客まで踏み込みたいかという条件を重ねて候補を絞ります。この順番を逆にすると、条件は満たすのに肝心の課題に効かない製品が残ります。
コールセンター向けチャットボット14製品の比較表
コールセンター向けチャットボット14製品を、得意領域、顧客が自己解決するまでの作り方、人へ渡すときの動き、オペレーター支援の有無、そして費用の観点で並べました。
自社の課題に近い得意領域から候補をみっつ前後に絞り、そのうえで連携と運用の負荷を見比べる順で見ていくと判断が早くなります。
| 製品名 | 得意領域 | 自己解決の作り方 | 有人チャット連携 | オペレーター支援 | 費用 |
|---|---|---|---|---|---|
| PKSHA ChatAgent | 電話前の自己解決 | 既存FAQ・マニュアルをもとに回答、表記ゆれを吸収 | 対応 | 対応 | 要問い合わせ |
| MOBI BOT | 時間外・ピークの一次受け | シナリオとAI回答を組み合わせて設計 | 同一基盤で切り替え | MOBI AGENTで対応 | 要問い合わせ |
| KARAKURI chatbot | オペレーターの回答支援 | サポート特化のAIが問い合わせ文から回答 | 対応 | 対応 | 要問い合わせ |
| sAI Chat | 電話前の自己解決 | 想定質問を学習済みの状態から開始 | 対応 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| ChatPlus | 幅広い用途への対応 | シナリオ設定とAI回答を使い分け | 対応 | 要問い合わせ | 月額1,500円〜、税別 |
| Helpfeel | 電話前の自己解決 | あいまいな言葉でも当たる検索でFAQへ誘導 | 対応 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| Zendesk | 問い合わせの一元管理 | ヘルプセンター記事をもとに回答 | 対応 | 対応 | 月額19ドル〜、1エージェントあたり・年払い |
| Service Cloud | 顧客データと連動した応対 | 顧客情報を参照して回答 | 対応 | 対応 | 要問い合わせ |
| CHORDSHIP | 言葉のゆれに強いFAQ応答 | 学習済みモデルが表記のゆれを吸収して回答 | 対応 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| RICOH Chatbot Service | 小規模から始める自己解決 | Excelの質問回答リストから作成 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 月額18,000円〜 |
| GMO 即レスAI | 時間外の取りこぼし対策 | 自社サイトの情報から回答を用意 | 対応 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| チャネルトーク | Web・アプリ上での接客 | シナリオとAI回答で接客を出し分け | 同一基盤で切り替え | 対応 | 無料プランあり、有料は月額2,700円〜、税別・年間割引適用時 |
| OPTiM AIRES | オペレーターの回答支援 | 社内ドキュメントを参照して回答 | 要問い合わせ | 対応 | 無料プランあり、有料は月額50,000円〜、税別 |
| LogicalMind TALK | 電話前の自己解決 | 既存文書を取り込んで回答 | 対応 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
費用が要問い合わせの製品は、問い合わせの件数と有人チャットの席数で見積もりが変わります。候補を絞ってから、同じ前提条件をそろえて見積もりを取ると比較できます。
コールセンター向けチャットボットおすすめ14選
ここからは14製品それぞれの強みや機能を紹介します。任せたい仕事ごとにまとめているので、自分に当てはまる群から読み進めてください。
同じ群のなかでは、答えられる問い合わせの幅と、公開までに用意するものの量が選び分けの決め手になります。
電話前の自己解決に強いコールセンター向けチャットボット
答えが決まっている問い合わせを、電話がかかってくる前に止める力が強い製品です。
PKSHA ChatAgent
社内にたまっているFAQやマニュアル、手順書をもとに回答を作れる点が強みです。言い回しがそろっていない質問文でも意図をくみ取って回答を返すため、FAQページでは探せずに電話へ流れていた層を手前で止められます。
有人チャットやオペレーター支援の製品と同じシリーズでそろえられるので、入電削減から応対の効率化へ段階的に広げやすい構成になっています。
Helpfeel
検索の当たりやすさに特化した製品で、言葉が思い浮かばない顧客でも答えにたどり着けます。表記のゆれや言い換え、あいまいな聞き方をあらかじめ想定して受け止めるため、FAQは用意してあるのに使われていないという状態を解消できます。会話を重ねて絞り込むより、答えのあるページへ最短で届けたい場合に向きます。
sAI Chat
導入の時点で想定質問を学習させた状態から始められるため、公開してから精度が上がるのを待つ期間を短くできます。運用に入ってからも改善を支援する体制が用意されていて、チューニングの人手を社内で確保しにくい現場と相性がよい製品です。質問と回答の整理から一緒に進めたい場合の選択肢になります。
CHORDSHIP
FAQへの応答に最適化されたAIが、表記のゆれや言い換えを吸収して回答します。学習させるデータが少ない段階でもヒットしやすく、カテゴリーの絞り込みや入力途中の候補表示で、探している答えまで顧客を運べます。解決しない問い合わせは有人へ引き渡せるので、自動で受ける範囲を広げても応対の質が落ちにくい構成です。
RICOH Chatbot Service
質問と回答をExcelの一覧で用意すれば動き出せる手軽さが特徴です。専門の知識がなくても現場の担当者が更新できるので、情シスの工数を待たずに小さく始められます。まず一部の問い合わせだけを対象に試したい段階で扱いやすい製品です。
LogicalMind TALK
既存のマニュアルや規程をそのまま取り込んで回答の元にできるため、コンテンツを書き起こす負担が軽くなります。回答が見つからないときは有人のチャットへ引き継ぐ流れも用意できるので、答えられずに終わる体験を避けられます。手元の文書資産が多いほど効果が出やすい構成です。
時間外の一次受けに強いコールセンター向けチャットボット
営業時間外やピーク時など、人を増やしても埋めきれない時間帯を受け止める製品です。
MOBI BOT
時間外の一次受けと営業時間内の有人チャットを、同じ基盤の上で設計できるのが強みです。ボットが要件を聞き取ってから人へ渡す流れを細かく作れるため、夜間や休日の取りこぼしを翌営業日の折り返しにつなげられます。ピーク時に電話へ集中する呼を、待たせないチャネルへ逃がす使い方もできます。
Zendesk
電話やメール、チャットに散らばった問い合わせを1か所に集めて管理できる点が特長です。ヘルプセンターの記事をもとにボットが回答して、解決しない場合はそのまま有人のチケットにつながるため、時間外に来た問い合わせが宙に浮きません。窓口が分かれて履歴を追えない状態を整えたいときに向きます。
ChatPlus
シナリオでの案内とAIによる回答を、用途に応じて使い分けられる柔軟さがあります。設定を細かく調整できるので、時間帯によって出す窓口や案内の内容を切り替える運用も組めます。小さく始めて、必要になってから機能を足していきたい現場に合います。
GMO 即レスAI
自社サイトの情報を読み込ませて回答を用意できるため、公開までの準備を短く抑えられます。24時間の一次対応をすぐに立てられるので、時間外にかかってきた電話が翌朝の折り返しとして積み上がる状態を減らせます。まず取りこぼしを止めることを優先する段階で扱いやすい製品です。
チャネルトーク
ボットと有人の対応をひとつの画面で切り替えられるため、時間帯によって受け止め方を変える運用が組みやすい製品です。加えて、問い合わせが来るのを待つのではなく、Webサイトやアプリ上で迷っている顧客に先に声をかけられます。電話になる前に解決させたい、ECや会員向けサービスのような現場で力を発揮します。
オペレーターの回答支援に強いコールセンター向けチャットボット
答えを探す時間と、人によって答えが違ってしまう状態を縮める製品です。
KARAKURI chatbot
カスタマーサポートの現場に絞って作られていて、顧客への回答とオペレーターの回答支援を同じナレッジで回せます。難しい問い合わせでも参照すべき情報がその場に出るため、新人が調べるのに時間を取られる状態と、答えが人によって違う状態を同時に整えられます。応対時間の短縮と品質の平準化を並行して進めたい現場に向いています。
Service Cloud
顧客情報や取引履歴と結びついた応対ができる点が他社との大きな違いです。ボットが顧客のデータを参照して回答するため、契約内容の確認のように個別データが絡む問い合わせも自動化の射程に入ります。すでにSalesforceを使っている場合は、データを持ち替えずに広げられます。
OPTiM AIRES
社内のドキュメントを参照して回答を組み立てる仕組みで、オペレーターが調べる時間を削るのに効きます。問い合わせ対応にとどまらず、その周辺の事務作業までまとめて自動化していける余地があるのが特長です。応対品質と後処理の両方に手を入れたい場合の選択肢になります。
コールセンターのチャットボット導入を成功へ導く4つのポイント
製品を決めたあと、入電が実際に減るかどうかは運用の作り方で変わります。分かれ目になるのは、窓口をどこに置くか、回答をどこまで絞るか、どの時点で人へ渡すか、そして誰が改善を続けるかの4点です。
いずれも公開前に決めておけば、動き出してから作り直す手間がかかりません。
電話の前にチャット窓口を置く
導入したチャットボットが使われないまま終わる原因の多くは、置き場所にあります。問い合わせページの下のほうに窓口を置いても、電話番号が先に目に入れば顧客は電話をかけます。
まず、入電の直前に顧客が見ている画面を洗い出します。電話番号を載せているページ、マイページのログイン後、注文や申し込みの完了画面、LINEの公式アカウントなどが候補です。そのうえで、電話番号より上か同じ視野に入る位置へチャット窓口を置きます。営業時間外は電話番号を控えめにして、チャットを主導線に切り替える出し分けも有効です。
置き場所を変えるだけで、同じボットのままでも自己解決率は動きます。回答を増やす前に導線を直したほうが、投じた工数に対する効果は大きくなります。
入電ログからFAQを絞り込む
網羅しようとして質問と回答を大量に用意すると、顧客が探せずに電話へ戻ります。用意する側も更新が追いつかなくなり、内容が古いまま放置されます。
直近3か月のコール理由を多い順に並べて、上位から順に回答を用意してください。ひとつの質問にひとつの回答を対応させて、余計な分岐は作りません。公開後は四半期ごとに、ボットが答えられなかった質問文と有人へ渡った質問文を見て、足すものを決めます。
少ない件数で入電の大半を受け止められるようになり、更新の負荷も現実的な範囲に収まります。何を足すかがログで決まるので、担当者の勘に頼らずに精度が上がっていきます。
人へ渡す線を先に決める
答えられないまま会話が続くと、顧客は途中で離脱して電話をかけ直します。しかもボットで失敗した分だけ、応対の入り口は不機嫌な状態から始まります。
渡す条件を先に決めておきましょう。2往復で解決しなければ有人へ渡す、営業時間内は有人チャットへ、時間外は要件のヒアリングと折り返しの予約までにする、といった分け方です。渡すときは、それまでの会話をオペレーターの画面に引き継ぎます。顧客が同じ説明をくり返す状態を作らないことが条件になります。
線が引けていれば、自動化の範囲を広げても不満が増えません。ボットが答えられない領域を残したまま導入できるので、公開までの時間も短くなります。
チューニングの担当と月次の見直しを決める
数年前に入れたチャットボットが放置されている現場では、たいてい担当が決まっていません。誰の仕事でもない業務は、繁忙期の最初に止まります。
SVかFAQの担当者を名前で決めて、月に一度30分の枠を固定してください。見る数字はみっつに絞ります。有人へ渡った質問、回答を返せなかった質問、チャット経由の対応件数です。この3点だけなら、管理画面から取り出して判断まで30分で終わります。
続けられる形にしておけば、精度は運用しながら上がっていきます。導入直後の数字で評価が固まらないので、稟議のときに置いた見込みへ近づけていく余地も残ります。
効果を数字で示して社内承認を通す3つのステップ
稟議が通らない理由は、製品の良し悪しよりも効果を事前に示せないことにあります。
着手前の数字を残し、減る入電だけを母数にして見込みを置き、範囲を絞って試す。この順で進めれば、想像ではなく実測で説明できる材料が手元にそろいます。
着手前のベースラインを取る
導入後に効果を語れなくなる最大の理由は、着手前の数字が残っていないことです。記録するのは呼量、応答率、放棄呼率、FAQの閲覧数、そして時間外の着信数です。あわせてコール理由の内訳も取っておきます。
期間は通常月と繁忙期を分けて記録します。まとめて平均を出すと、繁忙期の改善が薄まって見えたり、通常月の効果が過大に見えたりします。取得元も先に決めてください。呼量と応答率はCTIやPBXの管理画面、FAQの閲覧数はアクセス解析、コール理由は応対履歴から集計します。
この5つの数字がそろっていれば、導入後の比較は同じ手順をくり返すだけで済みます。稟議の資料も、着手前と着手後を並べる形で作れます。
削減の見込みを保守的に置く
全体の呼量に対して何割減という置き方をすると、根拠を聞かれた時点で崩れます。答えが一意に決まる問い合わせと、システム連携があれば自動化できる問い合わせだけを母数にしてください。
計算は、そのふたつの層の月あたり件数を足して、自己解決率の想定をかけます。想定は低めに置きます。クレームや解約の相談のように自動化しない層は母数に入れません。時間外の一次受けは、削減ではなく取りこぼしの回収として別に数えたほうが説明しやすくなります。なお、効果は問い合わせの内容や運用体制で変わるため、同じ数字が出ることを保証するものではありません。
保守的に置いた見込みは、上振れしたときにそのまま追加投資の根拠になります。低い数字で承認を取って高い数字で報告するほうが、次の一手を打ちやすくなります。
対象を絞って試し、数字を作る
いきなり全チャネル、全問い合わせを対象にすると、効果が出たのか出ていないのか分からなくなります。ひとつかふたつの問い合わせ種別に絞って、チャネルもひとつに限定してください。
判定の基準は始める前に決めます。対象にした種別の入電が減ったか、有人への引き継ぎが設計どおり動いたか、回答の更新が担当者の手で続いたか。この3点が満たされていれば範囲を広げ、満たされていなければ原因が導線か回答内容かを特定してから広げます。期間は繁忙期を1回はさむ長さを確保します。
小さく試した数字は、社内で最も通りやすい材料になります。全社導入の是非ではなく、動いている実績を広げる話に変わるためです。
まとめ
- チャットボットで減るのは答えが決まっている問い合わせで、クレームや解約交渉、個別事情の相談は残る
- 製品はAI型かシナリオ型かではなく、電話前の自己解決か、時間外の一次受けか、オペレーターの回答支援かという任せたい仕事で決まる
- 稟議は、着手前のベースラインと、減る入電だけを母数にした保守的な見込みで
繁忙期でも応答率が崩れず、夜間や休日にかかってきた要件は翌朝には整理された状態で並んでいます。SVは鳴り続ける電話の応援に入るのではなく、メンバーの育成と応対の見直しに時間を戻せます。
先へ進まない理由が製品選びではなく、効果を数字で読めないことにある場合は少なくありません。入れたのに減らなかったと報告する事態が怖いのは、それだけ現場の数字に責任を持ってきたからです。
今日やることはひとつだけです。直近1か月のコール理由を多い順に並べて、上位の質問が全体の何割を占めるかを出してください。
その割合が見えた時点で、削減の見込みを立てる母数はもう手元にあります。あとは課題に合う製品を当てはめて、試す範囲を決めるだけです。繁忙期の電話を応援でしのぐ前提から、そろそろ外していきましょう。
よくある質問
チャットボットとボイスボット、IVRの違いは何か
IVR(自動音声応答)は電話がかかってきたあとに音声で案内して、番号入力で振り分ける仕組みです。ボイスボットは同じ電話上で音声のやり取りをして要件を処理します。どちらも入電を前提にした仕組みで、チャットボットは電話がかかってくる前に別のチャネルで解決させる位置にあります。呼量そのものを減らしたい場合はチャットボット、電話は残る前提で応対の手間を減らしたい場合はボイスボットやIVRが対象になります。
FAQシステムとの違いはどこにあるか
FAQシステムは答えのページを整理して探させる仕組みで、チャットボットは顧客の質問文を受け取って答えを返す仕組みです。実際には両方の要素を持つ製品が多く、検索の当たりやすさに重心を置いた製品とチャットの会話に重心を置いた製品に分かれます。FAQは用意してあるのに電話が来ている場合は、内容が足りないのではなく探せていない可能性が高いため、検索の精度から見直すと近道になります。
小規模なコールセンターでも効果が出るか
席数が少ないほど、1人が電話に取られる影響は大きくなります。定型の問い合わせが全体の一定量を占めているなら、席数にかかわらず効果は出ます。判断の材料になるのはコール理由の内訳で、上位の質問が固まっているほど向いています。逆に問い合わせの内容が毎回違う場合は、顧客向けよりオペレーター向けの回答支援から入ったほうが効果を確認しやすくなります。
多言語の問い合わせにも対応できるか
多言語に対応する製品はありますが、対応する言語の数と、翻訳の精度をどう担保するかは製品ごとに異なります。回答を各言語で用意する必要があるか、自動翻訳で対応するかも分かれます。多言語が必須の要件なら、候補を絞る段階で確認して、有人へ渡したあとの応対をどの言語で行うかまで含めて設計してください。
導入までにどれくらいの期間がかかるか
用意する回答の数と、既存システムとの連携の有無で変わります。上位の質問だけを載せて単独で公開する形なら短く済みます。顧客データを参照する連携を入れる場合は、情シスの工数とセキュリティ審査の期間が加わるため、その分を見込んだ計画が必要です。期間を短くしたい場合は、連携なしで公開できる範囲から始めて、連携は次の段階に回す進め方が現実的です。
既存のCTIやCRMと連携できるか
多くの製品が連携の仕組みを持っていますが、対象となるシステムと連携できる範囲は製品ごとに違います。既存の環境を入れ替えられない前提であれば、候補を絞る段階で自社のシステム名を挙げて確認してください。会話履歴を顧客情報に紐づけたいのか、顧客データを見て回答を出したいのかで必要な連携の深さが変わるため、目的も一緒に伝えると見積もりが具体的になります。
すでに導入して放置しているチャットボットはどうすればよいか
まず、使われていない原因が置き場所か回答内容かを切り分けてください。表示回数が少なければ導線の問題で、表示はされているのに解決していなければ回答の問題です。導線が原因なら置き場所の見直しで戻せる場合があります。回答が原因で、しかも顧客の言い回しに追いつけていない場合は、検索の精度が構造的に足りていないため、製品の入れ替えを検討する段階にあります。放置されていた期間のログは、次の製品選びで最も役に立つ材料になります。
ぴったりのチャットボット選びはミツモアで

- 最短1分の無料診断で候補を絞れます
- 料金プランもあわせて提示します
- 診断結果は最大5製品まで並びます
入電ログから見えた課題と、時間外の扱いをどうしたいかを入力すれば、条件に合う製品が候補として並びます。比べる時間を、決める時間に変えましょう。














