2018年に成立した働き方改革関連法に合わせて、中小企業にも働き方改革への取り組みが求められています。しかし「具体的に何をすればいいのかわからない…。」という方も多いのではないでしょうか。
働き方改革の導入には、労働時間や賃金制度の設定を見直すことが大切です。この記事を読んで改革の目的や具体的な内容、導入する際のポイントを理解し、より働きやすい会社をめざしていきましょう!
まずは働き方改革における必要な対応ができているかをチェック
働き方改革の具体的な施策に取り組む前に、まずは必要な対応ができているかどうか確認しましょう。
チェックポイントをすべて満たしたうえで働き方改革を行うことで、より効果的に施策を実行することができますよ。
☐ 36(サブロク)協定に基づいて、時間外・休日労働を行う
☐ 労働契約を締結する際は、労働者に対して、労働条件を書面等で交付する
☐ 労働者10名以上の場合は、就業規則の作成、届出を行う
☐ 賃金台帳、労働者名簿、年次有給休暇管理簿などを作成・保存する
☐ 非正規雇用労働者を雇う場合は、不合理な待遇差がないようにする
【適用時期別】中小企業が働き方改革で取り組むべき項目
働き方改革関連法で中小企業に対応が求められる内容を、適用時期別に説明します。速やかに対応しなければ、出遅れてしまう恐れがあるため、優先順位をつけながら着実に対応していきましょう。
【中小企業の定義】
業態 | 資本金の額または出資金の総額 | 常時使用する労働者数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
それ以外 | 3億円以下 | 300人以下 |
上記の資本要件または人的要件のいずれかに該当する場合は、中小企業基本法で定められた中小企業です。医療法人や個人事業主など、資本金・出資金の概念がない場合は、人的要件のみで判断することになります。
労働時間法制の見直し(2019年4月1日~)
大企業と同時に2019年4月1日からの取り組みを求められている内容は、労働時間法制の見直しに関するものです。具体的には次のような取り組みになります。
- 年5日間の年次有給休暇付与の義務づけ
- 高度プロフェッショナル制度の創設
- フレックスタイム制の拡充
- 勤務間インターバル制度の導入(努力義務)
- 労働時間の客観的な把握の義務づけ
- 産業医・産業保健機能の強化
「年次有給休暇付与の義務づけ」では、年10日以上の年次有給休暇が与えられる労働者に対し、最低5日の有休を与えなければなりません。違反すると罰則が科されます。
残業時間の上限の規制(2020年4月1日~)
2020年4月1日からは、労働時間法制の見直しのひとつである「残業時間の上限の規制」に取り組む必要があります。大企業には2019年4月1日に適用済みです。
この取り組みでは、残業時間の上限を原則として「月45時間・年360時間」としなければなりません。
特別な事情により労使が合意する場合も「年720時間以内」「複数月平均80時間以内(休日労働含む)」「月100時間未満(休日労働含む)」を超えてはなりません。
月45時間の原則を超えられるのは、年間6カ月までです。違反した企業には罰則が科されます。
同一労働同一賃金(2021年4月1日~)
大企業に対して2020年4月1日から適用されている「同一労働同一賃金」は、2021年4月1日から中小企業にも適用されました。
同一労働同一賃金では、正規・非正規雇用の不合理な格差をなくし、業務内容が同じであれば待遇の均衡を確保する必要があります。待遇差の理由について労働者に説明を求められた場合は、企業側がきちんと回答しなければなりません。
都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行えるようになる点もポイントです。この取り組みを怠った場合の罰則はありませんが、労働者から訴えられる恐れがあります。
割増賃金率引き上げ(2023年4月1日~)
働き方改革関連法により、2023年4月以降、大企業に限らず中小企業においても月60時間を超える残業への割増賃金率が25%以上から50%以上に引き上げられました。
法定割増賃金率の引き上げは、大企業には既に2010年の労働基準法改正で適用されています。中小企業は経営体力の観点から適用を猶予されていましたが、働き方改革における実施スケジュールの最後に適用となりました。
この取り組みによって、長時間労働を抑制する効果が期待されています。
今後求められる働き方改革
上記の取り組み以外にも、今後は基本的な労務管理の徹底が求められます。労働時間をより客観的に把握できる環境を整えることが大切です。
勤怠管理の徹底
働き方改革においては、適切な勤怠管理を行い、労働時間を客観的に把握することが重要になります。
そのためにはExcelやタイムカードなどの勤怠管理システムを活用して、勤務日数や労働時間を管理するようにしましょう。
次の記事ではおすすめの勤怠管理システムを紹介しています。ぜひ、あわせて参考にしてください。
有給取得の徹底
有給休暇については「年に5日」必ず取得しなければならないという規定があります。
そのため働く人が必ず有給休暇を取得できるよう、周知の徹底を行うことが大切です。また周知を行うだけでなく、だれでも取得しやすい環境や雰囲気を社内全体でつくることが重要になります。
有給については以下の記事で詳しく説明しているので、参考にしてみてください。
社会保険の加入
社会保険への加入も働き方改革を進めるための重要なポイントです。そうはいっても従業員が少なく「人事や労務にまで手が回らない…。」という企業も多いのではないでしょうか。
そんな場合は人事や労務のプロフェッショナルの助けを借りることで、働き方改革を円滑に進めることができます。
加入対象者の把握と周知を行った後、厚生年金保険の「被保険者資格取得届」をオンラインで届け出れば手続き完了です。
2022年10月から段階的ではありますが、一部のパート・アルバイトを対象に社会保険の加入が義務化されるため、しっかりと把握しておきましょう。
働き方改革でもたらされるメリット
働き方改革の実行は、企業にはもちろん従業員にとっても大きなメリットをもたらします。
労働生産性の向上
労働時間が短縮されることで従業員の集中力が高まり、生産性の向上が期待できます。ダラダラと時間をかけながら仕事をする雰囲気が一新され、活気ある職場の実現が可能です。
また従業員にとっては、メリハリのある働き方によってプライベートの時間を確保しやすくなるメリットもあります。
人材不足解消
自分のライフスタイルを実現しようとする意識が強い現代において、働き方改革に積極的な企業は若者の目にもとまりやすく、結果的に優秀な人材の確保につながります。
しかし他企業と同じ取り組みをしても条件が同じになるだけで、働き方改革の効果を感じにくいです。そのためより効果を実感するためには「他よりも優れた職場環境があること」をアピールする取り組みが必要となります。
働き方改革導入のポイント
自社で働き方改革を進める際は、以下に挙げるポイントを意識しましょう。企業と従業員の双方がメリットを受けられる方向で考えることが重要です。
業務内容の見直しを行う
働き方改革の導入により、時間外勤務や休日勤務が減ることになるため、トータルの勤務時間が短くなります。生産性を最低限キープするためには、業務の効率化を図らなければなりません。
制度の導入を進めると同時に、従業員の働き方を見直しましょう。業務内容の徹底的な洗い出しを行い、無駄な作業を排除していくことが重要です。
やるべき仕事に対しても、業務マニュアルやスキルマップを作成したり、ツールやシステムを導入したりして効率を高めましょう。単純な業務の外注化や研修の導入を検討するのも1つの方法です。
正しい賃金制度を設定する
働き方改革では、賃金に関するさまざまな改正が行われています。これまでの賃金制度に少なからず不満を感じていた従業員が、制度改革に期待を抱いているのも事実です。
賃金制度を整備する際は、正規・非正規の格差を解消することだけでなく、成果や効率に応じて賃金を支払う制度を作るとよいでしょう。時間外勤務が減ることにより浮いた人件費を、新制度のために有効活用できます。
賃金制度を適切に設定できれば、従業員のモチベーションを高めることも可能です。残業や休日出勤がなくなることで発生する損失は、従業員のモチベーションアップにより補えるでしょう。
適切な人材配置を行う
高度プロフェッショナル制度が導入されるなど、働き方改革ではこれまで以上に多様な働き方ができるようになります。従業員ごとの能力を最大限に発揮させるためには、適切な人材配置を意識することが大切です。
人材配置の最適化は、業務の効率化にもつながります。現場の責任者や従業員本人とも意見交換を行いながら、適切な配置を行えるように意識しましょう。
適材適所の配置を決める際は、チームワークを考慮することも重要です。同じ現場で働くメンバー次第で、業務効率化が大きく変化します。
助成金を活用して働き方改革を進めよう
働き方改革の導入時には、助成金制度も有効活用しましょう。業務効率化や処遇改善に役立てられる主な助成金を紹介します。
業務改善助成金
業務改善助成金は中小企業の生産性向上を支援するための制度です。設備投資などを実施した上で、社内の最低賃金を引き上げた場合に、設備などにかかった費用の一部が助成されます。
助成の対象となるのは「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内」かつ「事業場規模が100人以下」の中小企業です。助成を受けるためには、実際に一定の生産性向上を達成する必要があります。
申請区分が5コースに分かれており、それぞれに引き上げ額や引き上げる労働者数などが定められています。最低賃金の引き上げが難しい企業が有効活用できる助成制度です。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者を企業内で正規雇用にしたり、処遇改善に取り組んだりした場合に助成を受けられる制度です。
正社員化コースや賃金規定等改善コースなど、全部で7コースが用意されています。助成の適用を受けるためには、それぞれのコースで設けられた支給要件を満たさなければなりません。
働き方改革において、雇用形態に関係なく公正な待遇を確保したいケースにおいて、改革の一環として活用できる制度です。
働き方改革の導入事例
実際に働き方改革を導入した会社の成功事例を3つ紹介します。自社にも導入できるものはないか、業務改革を行う際の参考にしてみましょう。
株式会社パワーネット
香川県で主に人材派遣業を営む株式会社パワーネットは、事業効率化と労働負担の改善に取り組んでいる会社です。残業を増やさずに売上を2倍近く増やしています。
中でも大きな取り組みとなっているのが「全業務のマニュアル化」です。いつ社員が休んでも、他の社員がマニュアル通りに動けば仕事を代行できる仕組みが整っています。全社員の机で資料の置き方が統一されている点も、業務効率化につながるポイントです。
タイムマネジメントの徹底も意識されています。全社員が毎朝自分の計画を立てて業務に優先度を設定することで、会社全体でサポートし合いながら、全業務をその日のうちに終わらせています。
三和建設株式会社
大阪府の三和建設株式会社は、働きやすい職場づくりに力を入れている会社です。人材不足が進む建設業界において、安定した採用実績を出し続けています。
人材確保のために取り組んでいる具体的な内容は「長期治療のための特別休暇拡大」「女性の雇用環境の改善」「新入社員定着のための寮や相談できる社員の配置」です。
女性の雇用環境を改善する施策の一つとして、社内に保育所を設けています。出産や育児などの事情で女性が退職せずに済むため、従業員に女性が多い会社です。
株式会社オカモトヤ
文具販売とオフィス内装のデザインなどを手掛ける株式会社オカモトヤは、本社を東京都に構える創業100年超の老舗企業です。社員を第一に考える企業風土づくりに力を入れています。
働き方改革で目指す形は、社員全員がリモートワークを実行できる会社です。スマホとパソコンでいつどこでも仕事ができる環境を整備しています。
残業時間の削減や5営業日連続休暇取得の推進を進めていることも特徴です。会社の増益分は会社と社員で分け合い、社員の生活を豊かにする方針で改革を進めています。
働き方改革でより良い企業を目指そう!
働き方改革は労働環境を大きく見直すための、国が主導する取り組みです。大企業と中小企業で実施スケジュールが違うため、適用時期を確認する必要があります。
働き方改革を導入する際は、業務の効率化や正しい賃金制度の設定、適切な人材配置を意識することが重要です。自社と社員の双方がメリットを受けられるように、ポイントを押さえて働き方改革を導入していきましょう。
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