有給休暇は労働者にとって、給与をもらいながら休める貴重な制度で、労働者の権利として認められています。しかし、具体的な計算方法を知らない人も多いのではないでしょうか?
この記事では有給日数の計算方法はもちろん、有給休暇に関して知っておくべきポイントを解説します。
雇用形態別の有給日数の計算方法
それでは付与される有給休暇の計算方法を確認していきましょう。
基本的な有給休暇の計算方法は以下の通りです。有給休暇の付与日数を表しています。
例えば1年間で働く所定の労働日数が217日以上の場合、半年後に10日間、1.5年後に11日間とそれぞれ有給休暇の日数が与えられるということになります。
自身の有給日数を確認したい場合は以下のフォームを入力してください。
各項目を選択して「有休付与日数チェック!」ボタンをクリックすると、有給休暇の法定付与日数が表示されます。
入社日 | 年 月 日 |
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週所定労働日数 | 5日以上 4日 3日 2日 1日 |
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週所定労働時間 | 30時間以上 |
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入社日 | 所定労働時間 | 入社日からの勤続年数 |
全労働日の8割以上出勤している場合、勤続年数に応じて下記の年次有給休暇が付与されます。
勤続年数 | 法定付与日 | 法定付与日数 |
6ヶ月 | ||
1年6ヶ月 | ||
2年6ヶ月 | ||
3年6ヶ月 | ||
4年6ヶ月 | ||
5年6ヶ月 | ||
6年6ヶ月以上 |
※有効期間は付与日から2年間です。
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正社員・契約社員など一般従業員の計算方法
一般社員とは管理責任を負わない専門職の従業員のことです。一般社員の場合、有給休暇は「全労働日の8割以上の出勤」という条件を満たすと、雇用した日から半年後に10日付与されます。
翌年以降も、1年間の出勤率が8割を上回っていれば、法律で定められた日数分の有給休暇が付与される仕組みです。
例えば2024年4月1日に入社した人の場合、2024年9月30日までの出勤率が8割を超えると、2024年10月1日から10日間の有給休暇が付与されます。
その後2024年10月1日から2025年9月30日までの出勤率も8割を超えていれば、2025年10月1日からさらに11日間の有給休暇が上乗せされるのです。
勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
従って社員の入社日と継続勤務年数が分かれば、具体的な有給休暇の日数が分かります。
パート・アルバイトの場合の計算方法
「パート・アルバイトだから有給休暇はない」というのはまったくの誤解です。
パート・アルバイトなどフルタイムではない従業員に対しても、その労働日数に応じた有給休暇を与えることが法律(労働基準法第39条第3項)で義務付けられています。
「労働日数に応じた日数を付与する」という意味で、比例付与とも呼ばれるので覚えておきましょう。なおパート・アルバイトであっても勤続年数が長くなれば、出勤率が8割を超えた場合に付与される有給休暇の日数も多くなります。
もし週の所定労働時間を契約で定めていない場合は、概算で付与日数を計算しても構いません。フルタイムの正社員の場合と同様、初めて有給休暇が付与されるのは、雇用日から半年後となります。
最大で年20日付与されるのは正社員と変わりません。週ごとの所定労働日数別に、有給休暇の付与日数については以下をご確認ください。
なお厚生労働省のリーフレットには、詳しい年次有給休暇の条件と付与日数が記載されています。こちらも確認しておきましょう。
所定労働日数が週5日(年217日以上)
まず、毎週の所定労働日数が週5日の場合、入社から半年経過後に有給休暇は10日付与されます。これは、フルタイムの正社員の場合と変わりありません。
勤続年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
有給休暇の日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
所定労働日数が週4日(年169~216日)
所定労働日数が週4日の場合、有給休暇はどのように付与されるかを見ていきましょう。パート・アルバイトに対して付与される有給休暇を計算する場合、フルタイムで働く人の所定労働日数を5.2日として計算します。
そのため週4日働く人の場合、週5日働く人の約77%(=4日÷5.2日)の有給休暇が付与される仕組みです。入社から半年後は7日、その後は以下の表の通りに増えていきます。
勤続年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
有給休暇の日数 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
所定労働日数が週3日(年121~168日)
所定労働日数が週3日の場合も、週4日の場合と考え方は同じです。週3日働く人の場合、週5日働く人の約58%(=3日÷5.2日)の有給休暇が付与されます。
なお小数点以下は切り捨てるので、入社から半年後に付与される有給休暇は5日です。その後は以下の表の通りに進んでいき、最大11日まで付与されるようになります。
勤続年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
有給休暇の日数 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
所定労働日数が週2日(年73~120日)
所定労働日数が週2日の場合も、これまでと考え方は同じです。週2日働く人の場合、週2日働く人の約38%(=2日÷5.2日)の有給休暇が付与されます。
なお小数点以下は切り捨てるので、入社から半年後に付与される有給休暇は3日です。その後は以下の表の通りに進んでいき、最大7日まで付与されるようになります。
勤続年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
有給休暇の日数 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
所定労働日数が週1日(年48~72日)
所定労働日数が週1日の場合でも「半年間の出勤率が8割を超えていれば有給休暇が付与される」というルールは変わりません。以下の表にもあるように、勤続年数に比例して最大で3日間の有給休暇が付与されます。
勤続年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
有給休暇の日数 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
有給休暇の発生要件
有給休暇が付与されるための条件は次の通りです。
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このように入社してすぐに有給休暇を取得できるわけではありません。半年以上勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤している必要があります。これら条件を満たせば、継続または分割して合計10日間の有給休暇を取ることが可能です。
例えば2024年4月1日に入社した場合、2025年10月1日には10日間の有給休暇が取得できというわけです。
ただし所定の労働時間が4日以下、かつ週に30時間未満の労働者は、週に労働した日数や継続勤務年数によって付与される年次有給休暇の日数が変わってきます。
出勤率の計算方法
出勤率は「出勤日÷全労働日(その期間の所定労働日数)×100」で計算します。ただし実際に働いていなくても、出勤日に含められる日があることに注意してください。具体例は以下の通りです。
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また以下に該当する日があった場合は、全労働日から差し引いて計算します。
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出勤率8割の具体例
分かりやすくするために具体例を考えてみます。
【状況】
2024年10月1日/正社員(所定労働日数週5日) |
上記の場合、1年後である2025年9月30日までの出勤率で有給付与の日程が策定されます。
所定休日数を108日とすると、全労働日は257日です。するとこの場合、1年間で206日以上の出勤(全労日)が必要となるのです。
この間従業員が205日間出勤すれば、出勤率は8割(=206日÷257日)となります。
有給休暇に関する7つの注意点
次に年次有給休暇の制度に関して、重要なポイントや注意点を6つ解説します。
イレギュラーを理解しておけば、自身の正しい有給日数を把握することができるでしょう。例えば会社側のミスで有給日数が間違っていたり付与されなくても指摘できますね。
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1.「有給」は取得義務である
使用者は、10日以上の有給休暇が付与されている労働者に対して、1年以内に5日の有給休暇を取得させなければならない(労働基準法 第39条 第7項) |
日本政府は有給休暇の取得率の低さを受けて、2019年4月1日から、企業に対して5日間の有給休暇取得の義務化を行いました。
つまり年に5日は必ず有給休暇を労働者に取得させる必要があり、ビジネス規模にかかわらず全ての企業が適用対象になっています。
また有給休暇に関して企業の就業規則に明記しなければならず、さらに労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成して、3年間保存しておく必要があるのです。
しかし2022年3月現在の取得の現状としては、日本の企業が1年間に付与した年次有給休暇の日数平均18日のうち、労働者が取得した有給休暇は平均10.1日。取得率は56.3%とまだ低い水準に留まっています。
例えば、フランスやドイツ、スペイン、ブラジルなどは取得率が100%となっており、年間で平均30日の有給休暇が付与されています。
アメリカやオーストラリアは約70%の取得率です。日本と比べると、海外の国々は有給休暇の日数も取得率も軒並み高くなっています。
2.有効期限は2年間で繰り越し可能
年次有給休暇が消化できず余ってしまう人は少なくありません。その場合は、20日を上限に余った日数分を翌年度の付与日数に加算することが可能です。
ただし請求できる有給休暇の期限は、「付与されてから2年以内」と労働基準法の115条に規定されています。もし2年を超してしまうと、時効によって請求権が消滅してしまうので注意しましょう。
参考:労働基準法|e-Gov |
有給休暇の繰越の例
2023年4月1日に12日分の有給休暇を付与された人が、2024年3月31日までに6日間使用した(残り日数6日)とします。
2024年4月1日に14日分の有給休暇が付与された場合、2025年3月31日までは有給休暇を20日(最初に付与された日数の残り6 日間+新しく付与された14日間)使用できます。
この2025年4月1日から2026年3月31日までに5日間使用した場合、2026年3月31日時点での残り日数は15日です。(20-5=15)
しかしこのうち1日は2023年4月1日に付与された有給休暇は2年の期限を過ぎてしまうので、2026年4月1日には繰り越せません。繰り越せるのは14日間になるので注意しましょう。
3.基準日を途中で変更する場合は前倒しの付与が必要
年次有給休暇を付与する基準日は、原則として雇入れの日から6ヶ月後です。しかし業務簡略化を目的として、全社員の基準日を統一する企業も少なくありません。
基準日を後から変更した場合、勤続時間の切り捨てはできません。短縮した期間すべて出勤とみなし、次回の有給休暇を前倒しする必要があります。
例えば2024年4月1日に入社した社員であれば、法定基準日は2024年10月1日です。この日付を次回から全社統一の基準日にするとします。この場合、本来なら次回の有給休暇は2025年10月1日に与えられるはずですが、基準日を変更しているため2025年10月1日よりも前倒して付与する必要があるのです。
4.出勤率8割未満の年も勤務継続年数には含まれる
勤務継続年数が1年6ヶ月の年の出勤率が8割未満の場合は、もちろん有給休暇は付与されません。
しかし、翌年の出勤率が8割以上であった場合、勤務継続年数は2年6カ月とカウントされ、11日分ではなく、12日分の有給休暇を取得することができます。
5.労働者の希望が最優先だが、時季変更権も存在する
本来有給休暇は自由に取得できるものです。しかし、会社には時季変更権が認められています。つまり事業の正常な運営を妨げる場合は、時期をずらして有給休暇を取得するよう従業員に求められるのです。
ただし何が「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかは、慎重に判断しなくてはいけません。研修や訓練など、従業員が当日いないと意味のない行事がある場合は、該当する可能性が高いでしょう。
一方「繁忙期だから」などのあいまいな理由では、認められない可能性も十分にあります。そもそも会社が代替人員の確保に向けて、合理的な努力をしなくてはいけないためです。
努力をしたものの、それでも確保できなかった場合に初めて時季変更権を行使できる可能性が出てきます。
6.年間5日の取得義務が守れなかった場合の罰則
もし年5日の有給休暇の取得義務が守れない場合や、労働者が有給休暇の取得を申請した際に許可しなかった場合などは、労働基準法違反となります。次のように罰則も科せられる可能性があるので注意しましょう。
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7.半休・時間単位の有給休暇を取ることも可能
有給休暇は半日・時間単位で取得することができます。「子どもを保育園に迎えに行きたい」「家族の誕生日なので早めに上がりたい」などの場合にも非常に便利です。
ただし両者は法律上の扱いがまったく異なる点に注意しましょう。まず半日単位の休暇には法的規定・義務はありません。取得に関するルールを設け、就業規則を改定すればどの会社でも導入できます。1年につき付与できる日数の上限にも決まりはありません。
一方時間単位で取得する有給休暇には法的規定・義務があります。1年につき付与できるのは5日以内である上に、導入するためには次の2点を満たさないといけません。
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