月末月初になると領収書の山と格闘し、Excelへの転記と承認待ちで気づけば夜。インボイスや電子帳簿保存法への対応で作業はむしろ増え、「効率化したいのに、何から手を付ければいいのかわからない」。これは、少人数で経理を回している多くの担当者に共通する状況です。
効率化は思いつきでツールを入れても定着しません。順番があります。業務を洗い出し、減らせるものを減らし、手順を整えてから、残った定型作業をツールで自動化する。この順で進めれば、繁忙期の合間でも一歩ずつ確実に前に進みます。
この記事では、効率化を確実に進める5つのステップと、自社に合うツールの選び方を解説します。
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経理業務の効率化を確実に進める5つのステップ

経理業務の効率化は5つのステップで進めます。この順番が大事なのは、手前を飛ばすと後の工程が空回りするからです。業務を減らさないままツールを入れれば、非効率な作業をそのまま自動化してしまいます。まずは全体像をつかみ、上から順に進めてください。
ステップ1:業務を洗い出し、時間の大きい順に並べる
多くの人が「効率化=ツール選び」から始めて失敗します。自社の何に時間がかかっているかを把握しないまま道具を選ぶと、いちばん重い作業が手つかずのまま残るからです。
最初にやるのは、直近1か月の経理業務を種類ごとに書き出し、それぞれにかかった時間をざっくり見積もることです。記帳、経費精算、請求書の処理、支払い、月次資料の作成——粒度は粗くて構いません。紙に手書きでも、Excelに10行並べる程度でも十分です。そのうえで、時間の大きい順に並べ替えます。
この一覧ができると、「経費精算に月20時間、記帳に15時間」というように、どこを削れば効くかが数字で見えます。改善は上位2〜3業務に絞ってください。全部を一度に変えようとすると次のステップで破綻します。洗い出しは30分もあれば終わり、これが以降すべての土台になります。
ステップ2:なくす・まとめる(ツールを入れる前に業務自体を減らす)
洗い出した業務のうち、時間の大きいものから「そもそもこの作業は必要か」を問い直します。ツールで速くする前に、作業そのものを減らせないかを先に考えるのが鉄則です。
「なくす」の例では、月次で作っているが誰も見ていない資料を廃止する、小口現金を廃止して立替はすべて振込にする、といった判断があります。「まとめる」の例では、バラバラに支払っていた経費を月1回の締めにそろえる、複数の担当に分散した承認を1段階に減らす、などです。
ここでよくあるつまずきは、「前任から続いているから」という理由で不要な作業を残してしまうことです。判断の基準はシンプルで、「その作業をやめたら誰が困るか」を問い、明確に困る人がいなければ止めます。この工程で業務量そのものが2〜3割減ることも珍しくなく、削ってから自動化するほうが、投資も運用も軽くなります。
ステップ3:手順を書き出して標準化する
残すと決めた業務は、次に手順を書き出します。手順がその人の頭の中にしかない状態、いわゆる属人化を解消しておかないと、ツールを入れても担当が代わった瞬間に止まるからです。
やり方は残す業務ごとに「何を・どの順で・何を見て判断するか」を箇条書きで書き出すだけです。完璧なマニュアルは要りません。他の人がその紙を見て同じ作業を再現できる粒度が目安です。前任者が作ったExcelマクロがブラックボックス化していた経験があるなら、この工程の価値が身にしみて分かるはずです。
標準化しておくと、次のステップのツール導入がぐっと楽になります。手順が言語化されていれば、ツールのどの機能に何を載せ替えればいいかが明確になり、設定作業で迷いません。逆にこの工程を飛ばすと、非効率な手順をそのままツールに移すだけで、効率化にはつながりません。
ステップ4:ツールで自動化する(未導入なら導入、導入済みなら見直す)
ここまでで「減らして・整えた」業務が残ります。この定型作業をツールで自動化する段階です。
まだ会計ソフトや経費精算システムを導入していないなら、ここが導入の検討タイミングです。手入力や転記が中心の業務は、銀行連携やAIによる自動化で大きく削減できます。すでにソフトを導入している場合は、「いまのソフトが、ステップ1で見えた自社の重い業務に効いているか」を点検してください。記帳が重いのに経費精算システムだけ入れていた、というミスマッチはよく起きます。
どのツールを選ぶか(あるいは今のツールが合っているか)は、自社がどの課題タイプかで決まります。この判断は次章「ツールの選び方」で詳しく解説するので、いったんここでは「自動化はステップ4で検討する」とだけ押さえてください。
ステップ5:運用を定着させ、回らなければ外注も検討する
ツールを入れて終わりではありません。定着させ、それでも人手が足りなければ外注に切り替える判断までがワンセットです。
定着のコツは、削減できた時間の使い道を先に決めておくことです。月次の早期化、資金繰りの分析、経営への数字の報告——空いた時間で何をするかを言葉にしておくと、効率化の価値が社内に伝わり、次の投資も通りやすくなります。「経理の人」から「数字で経営を支える人」への役割転換がここで起きます。
一方、ステップ2〜3で業務を整えてもなお人手が足りない、担当が抜けたら止まる、という状態なら、ツールだけでは解決しません。記帳や支払いといった業務ごと外部に委託する経理代行が現実的な選択肢です。社内に残す業務と委託する業務を分けて設計すれば、少人数でも経理が止まらない体制を作れます。
経理効率化ツールの選び方:課題タイプで決める

ステップ4で自動化を検討する段階に来たら、次は「どのツールか」です。新しく導入する場合も、いま使っているソフトを見直す場合も起点は同じで、ステップ1で見えた「いま何にいちばん時間を奪われているか」です。
ここでは課題を3つのタイプに分けて、それぞれの本命を示します。自社がどのタイプかで、選ぶべきツールがひとつに定まります。
Aタイプ|記帳・仕訳・転記に時間を取られている
通帳やクレジットカードの明細を1件ずつ入力し、仕訳を切り、Excelに転記する。この作業が業務時間の中心を占めているタイプです。
効くのは、銀行口座やカードを連携して明細を自動で取り込み、AIが仕訳を提案してくれるクラウド会計ソフトです。手入力そのものが激減して、月次の締めが数日単位で早まります。
簿記の知識が浅くても案内に沿って記帳でき、ひとり経理が最短で自動化に入れます。
Bタイプ|経費精算・請求書の紙処理が重い
社員からの立替精算の申請、領収書の糊付け、小口現金の管理、届いた請求書の処理。人と紙が絡むこのやり取りが月末の山になっているタイプです。
ここは会計ソフトを入れても解決しません。申請から承認、仕訳データ化までをオンラインで完結させる経費精算・請求書処理システムが効きます。紙と現金のやり取り自体をなくせるのが決定打です。
経費精算のシェア上位で、申請から会計への仕訳連携までを一本化できます。
Cタイプ|人手不足・属人化を解消したい
そもそも経理を担う人が足りない、担当が辞めたら業務が止まる、という不安が最も大きいタイプです。
ツールを入れても操作する人がいなければ回りません。この場合は記帳や支払い業務ごと外部に委託し、あわせて手順を標準化する経理代行・BPOが現実的です。ツール導入は、代行と並行して社内に残す業務から段階的に進めます。
人を採用せずに業務を回せ、属人化した手順を外部の運用に移せます。
経理業務効率化ツール8製品の比較表
メインの3製品に加え、規模や課題に応じた選択肢も含めた比較です。まず「何が得意か」で当たりを付け、費用は絞り込んだあとに確認してください。
| 製品・サービス | 得意領域 | 自動化の範囲 | 他サービス連携 | サポート | 費用の目安(税抜) |
|---|---|---|---|---|---|
| freee会計 | 記帳の自動化・簿記初心者 | 銀行連携〜記帳〜申告まで一体 | 経費・請求も自社内で完結 | チャット・メール中心 | 月2,980円〜(年払い・規模により変動) |
| マネーフォワード クラウド会計 | 複式簿記に慣れた経理の拡張 | 連携サービスと組み合わせて自動化 | 給与・請求など連携が豊富 | プランによりメール・電話 | 法人 月2,480円〜(年払い) |
| 楽楽精算 | 経費精算・申請ワークフロー | 申請〜承認〜仕訳出力 | 主要会計ソフトへ仕訳連携 | 電話・専任サポート | 初期10万円+月3万円〜 |
| 弥生会計 Next | 会計特化・手厚いサポート | 記帳の自動化+請求・経費・証憑を統合 | 弥生シリーズと連携 | 電話サポートが手厚い | 月2,900円〜(エントリープラン) |
| 勘定奉行クラウド | 中堅〜規模のある企業 | 会計を軸に周辺業務を統合 | 奉行シリーズと統合 | 導入支援あり | 要見積もり |
| バクラク請求書受取 | 請求書受領のAI自動化 | 受取〜AI-OCR読み取り〜仕訳・振込データ作成 | 主要会計ソフトへ連携 | 導入サポートあり | 要見積もり |
| TOKIUMインボイス | 請求書原本の回収代行 | 受領〜原本回収〜データ化を外部化 | 主要会計ソフトへ連携 | 専任サポート | 要見積もり |
| 経理代行サービス | 人手不足・属人化の解消 | 記帳・支払いなど業務ごと委託 | 委託先の運用に依存 | 委託先による | 月数万円〜(業務範囲による) |
費用はプラン・利用人数で変動します。「要見積もり」の製品は公開料金が確定していないため、導入前に各社公式で最新プランを確認してください。
経理業務効率化ツールおすすめ8選
3タイプに沿って製品を紹介します。自分のタイプの群から読み進めれば、候補が自然に絞れます。
記帳・仕訳の自動化に強いタイプ
日々の入力と転記を減らしたいAタイプ向けの、クラウド会計を中心とした製品群です。
freee会計
freee会計は簿記の専門用語をできるだけ避けた画面設計が特長で、質問に答える形で記帳を進められます。
銀行口座やクレジットカードをつなぐと明細が自動で取り込まれ、仕訳の候補まで提案されるため、経理をひとりで抱える担当者でも自動化に入りやすい製品です。
経費精算や請求書発行まで同じサービス内で完結する点も、初めて仕組みを整える会社に向いています。
マネーフォワード クラウド会計
マネーフォワード クラウド会計が支持されるのは、従来の複式簿記に近い画面で、経理経験者が違和感なく移行できるからです。
給与計算や請求書、経費精算など周辺サービスとの連携が豊富で、事業の拡大に合わせて機能を足していけます。法人向けは年払いで月2,480円からと導入しやすい水準です。
弥生会計 Next
老舗の安心感とサポートを重視するなら、弥生会計 Nextという選択肢があります。
会計を中心に、請求・経費精算・証憑管理までを1つのプラットフォームに統合しており、電話サポートが手厚いため、困ったときに人に聞ける体制を求める会社に合います。エントリープランは月2,900円からと導入しやすい水準です。
勘定奉行クラウド
組織の規模が大きくなり、部門別の管理や内部統制まで見据えるなら勘定奉行クラウドが候補に上がります。
会計を軸に周辺業務を統合でき、中堅以上の企業の運用に耐える作りです。導入支援を受けながら整えるフェーズの会社に向いています。
経費精算・請求書の紙処理に強いタイプ
立替精算や届いた請求書の処理が月次の山になっているBタイプ向けの製品群です。
楽楽精算

楽楽精算は経費精算システムとしてシェア上位にあり、申請・承認・仕訳データの出力までをオンラインで完結させます。
社員がスマートフォンから申請でき、経理は承認と会計への連携に集中できるため、小口現金と紙のやり取りをまとめてなくせます。初期費用10万円・月額3万円台からが目安です。
バクラク請求書受取
届いた請求書の処理をAIで速くしたいなら、バクラク請求書受取が有力です。
受け取った請求書をAI-OCRが数秒で読み取り、過去の仕訳データを学習して入力を補完してくれます。振込データの作成まで自動化でき、請求書まわりの入力と確認の往復を大きく減らせます。
TOKIUMインボイス
届いた請求書の紙の管理そのものを外に出したいなら、TOKIUMインボイスが向いています。
受け取った請求書の原本回収からデータ化までを代行してくれるので、社内で紙をさばく作業自体がなくなります。電子帳簿保存法への対応もあわせて任せられます。
人手不足・属人化の解消に強いタイプ
操作する人そのものが足りないCタイプ向けの選択肢です。
経理代行サービス
経理代行サービスは、記帳や支払い、月次資料の作成といった業務を単位で外部に委託できます。
人を採用せずに業務を回せるうえ、担当者の頭の中にしかなかった手順を委託先の運用に移すことで、属人化と退職リスクをまとめて下げられます。社内に残す業務とのすみ分けを設計するのが、うまく使うコツです。
次の記事ではおすすめの経理代行サービスを一挙紹介して比較しています。ぜひ、あわせて参考にしてください。
導入・見直しで失敗しない3つの確認点
本命が見えたら、最後に自社の条件で最終確認します。新規導入でも、いまのソフトの見直しでも共通して効く観点です。
移行の負荷:今のやり方から乗り換えられるか
効率化が形骸化する最大の原因は、移行作業に時間を取られて途中で挫折することです。すでに使っている銀行口座や会計ソフトとの連携が強い製品なら、初期設定の山を越えやすくなります。
導入済みのソフトを見直す場合も、乗り換え先が今のデータを引き継げるかをここで確認してください。簿記に慣れているならマネーフォワード クラウド会計、これから整えるならfreee会計、というのが移行負荷から見た分かれ目です。
費用の説明しやすさ:稟議を通す根拠を持てるか
数万円の投資でも、社内で通すには「何時間減るか」を言えることが要ります。ステップ1で作った業務の洗い出し(どの作業に月何時間かかっているか)が、ここで効いてきます。
削減できる時間で費用対効果を語れる製品を選ぶと、承認が速く進みます。経費精算のように削減効果が明確な領域は、とくに稟議向きです。
運用の続けやすさ:担当が代わっても回るか
前任者のマクロがブラックボックス化した経験があるなら、担当が代わっても運用が続く状態を優先してください。ステップ3で手順を書き出してあれば、引き継ぎもツールの設定も楽になります。
自分で設定を続ける自信がなければ、導入支援や電話サポートが手厚い製品、あるいは運用ごと任せられる代行を選ぶのが安全です。
まとめ
経理業務の効率化は、次の流れで確実に進みます。
- 進め方は5ステップ。洗い出す→なくす・まとめる→標準化する→ツールで自動化する→定着させる。手前を飛ばさないのが要
- ツールは課題タイプで選ぶ。記帳ならクラウド会計ソフト、経費精算なら経費精算システム、人手不足なら経理代行
- 導入済みでも起点は同じ。「いま何に時間を奪われているか」で、今のソフトが合っているかを点検できる
理想は月末に領収書の山と向き合う夜がなくなり、締めの作業が数分の確認で済む日常です。数字を眺めて経営に一言添える余裕さえ生まれます。
とはいえ、いちばんの壁は「検討する最初の数分すら取れない」ことだと思います。だからこそ、いきなり全部をやろうとしなくて構いません。まずはステップ1、直近1か月の業務を10行書き出す。その最初の一歩だけを今日済ませてください。
その10行が書けた時点で、「何から始めればいいかわからない」という最初の壁は、もう越えています。あとはこの記事のステップを順番にたどるだけです。今年こそ、月末の業務負荷を手放しましょう。
よくある質問(FAQ)
経理の効率化は何から始めるべきですか
直近1か月の業務を種類ごとに洗い出し、時間の大きい順に並べることから始めてください。ツール選びはその後です。最も時間を食っている業務が分かれば、そこに効く手段が自然に絞られます。全体を変えようとせず、上位2〜3業務に絞るのが挫折しないコツです。
すでに会計ソフトを使っているのに効率化が進みません
ソフトと自社の重い業務がかみ合っていない可能性があります。記帳が重いのか、経費精算の紙処理が重いのかをステップ1で見極め、今のソフトがその領域に効いているかを点検してください。記帳向けの会計ソフトだけでは、経費精算や請求書の紙のやり取りは減りません。不足している領域があれば、経費精算システムなどの追加を検討します。
効率化の効果は社内にどう説明すればよいですか
削減できる作業時間で説明するのが最も通りやすい方法です。ステップ1の洗い出しで「経費精算に月20時間」と分かっていれば、「システム導入で月15時間削減」と見込みを数字で示せます。費用と削減時間を並べれば、稟議の根拠になります。効果を保証する表現は避け、あくまで見込みとして示してください。
クラウド会計と経費精算システムはどちらを先に入れるべきですか
時間を奪っている作業がどちらかで決まります。通帳やカードの入力・転記が中心ならクラウド会計を、社員の立替精算や小口現金の管理が中心なら経費精算システムを先に入れてください。両方が重い場合は、月次の締めに直結する記帳側から着手すると効果を実感しやすくなります。
経理代行とシステム導入はどちらがよいですか
操作する人が社内にいるならシステム導入、人手そのものが足りない・属人化を解消したいなら経理代行が向いています。両立も可能で、代行に任せる業務と社内に残す業務を分けたうえで、残す部分にツールを入れる進め方が現実的です。
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