フリーランスになった際には、源泉徴収される報酬や源泉徴収額を把握しておき、自分で確定申告する必要があります。
フリーランスの方が損をしないためにも、源泉徴収に関する基本知識から、請求書の書き方、源泉徴収する立場になった時の対応まで漏れなく解説します!
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
源泉徴収とは?フリーランスの報酬額との関係
源泉徴収とは、報酬を支払う側が、報酬を受け取る個人の代わりに所得税を納める仕組みのことです。
本来報酬を受け取ったら、報酬の受け手が自身の所得に応じて所得税を納めます。しかしフリーランスに支払う報酬の内、法律で規定されたいくつかの仕事の場合、報酬の払い手が源泉徴収して納税をしなければいけないことになっているのです。
フリーランスから見ると、あらかじめ総報酬額から源泉徴収額が引かれた金額を受け取ることになります。報酬を受け取る際には、正しい金額で源泉徴収されているか確認することが大切です。
フリーランスで源泉徴収が必要な報酬
源泉徴収されなければならない業種の報酬は、所得税法の第204条1~8で定められています。
フリーランスの方が報酬を受け取る場合、該当するものが多くあるため、しっかりと仕組みを把握して、法律に違反しないように気を付けて対応しましょう。
以下の8つが、フリーランスの方が報酬を受け取る場合、必ず源泉徴収されなければいけないものです。
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源泉徴収が必要なのにされなかった場合
源泉徴収されるべきなのに、報酬から源泉徴収税額が引かれずに振り込まれることもあるかもしれません。
そうした際は、慌てずにまずは取引先に確認しましょう。
取引先に確認する
報酬を受け取る際に源泉徴収されていない場合は、まず取引先に確認しましょう。「源泉徴収されていないが、問題ないか」と確認すれば、源泉徴収していない理由が分かります。
もし忘れていただけの場合は、訂正してくれるでしょう。
なおそもそも取引先が「源泉徴収義務者」ではない場合もあります。法人であれば源泉徴収義務者に該当しますが、従業員を雇用していない個人事業主などは、源泉徴収義務者ではありません。
こうした理由で源泉徴収されない場合には、確定申告時に自身で納税することになります。
請求書に明記しておくと安心
フリーランスが請求書を作成する際、源泉徴収額について明記しておくと安心です。
フリーランスの請求書には一般的に以下を記載します。
- 発行日
- 取引先の氏名、または法人名
- 取引内容・金額
- 源泉徴収額
- 消費税額
- 合計請求額
- 振込先
- 支払い期限
- 自身の氏名、または屋号
- 事業所の住所、電話番号、捺印
もし取引先が源泉徴収義務者ではなかった場合、この時点で指摘が入るでしょう。
なお源泉徴収額は消費税を合わせた総額と、税抜部分のみの金額のどちらに税率をかけるかで金額が変わります。こちらについても話し合っておくと良いでしょう。
源泉徴収額の計算方法
源泉徴収税額の計算方法といわれると「なんだか難しそう」と思ってしまうかもしれませんが、実はとても簡単で、基本的には報酬に10.21%を掛けるのみです。
なお報酬が100万円を超える場合には計算式が異なります。以下を参照しましょう。
報酬額 | 源泉徴収額 |
100万円以下の場合 | 報酬額×10.21% |
100万円を超える場合 | (報酬額 − 100万円) × 20.42% + 102,100円 |
※1円未満の端数は切り捨て
報酬額100万円までは税率10.21%。100万円を超える場合には、100万円を超える部分に対しての税率が20.42%になります。
なお2つの請求書の金額をまとめて支払うなどで合計で100万円を超えた場合は、1回に支払うべき金額はそれぞれの請求書の金額です。それぞれ100万円未満であれば10.21%で源泉徴収します。
平成25年から復興特別所得税が加算されている
平成25年から東日本大震災の復興をする際の財源確保のため、復興特別所得税が課税されることになりました。
税率10.21%のうち、0.21%(100万円超の部分には0.42%)が復興特別所得税率にあたります。
確定申告の際は復興特別所得税を忘れずに記入しましょう。
計算はシミュレーションサイトの活用が便利
復興特別所得税を合わせた税率は、10.21%と細かな数字になっています。計算ミスを防ぐためにはシミュレーションサイトの活用が便利です。
おすすめのシミュレーションサイト:フリーランスのための源泉徴収税計算 |
税別の収入額を入力し、消費税率と使用する源泉徴収税率を選択すれば、源泉徴収額と支払金額が簡単に算出できますよ。
源泉徴収額および手取り報酬の計算例
実際の計算例を見てみましょう。
計算例1:報酬が80万円の場合
報酬額が100万円以下の計算方法は「報酬額 × 10.21%」なので、源泉徴収額は以下の通りです。
- 源泉徴収税額 = 80万円×10.21%=81,680円
そして、総報酬額から源泉徴収額を引いた額が手取り報酬額になります。
手取り報酬=80万円-81,680円=71万8,320円
計算例2:報酬が420万円の場合
報酬額が100万円を超える場合の源泉徴収額は、「(報酬額 − 100万円) × 20.42% + 102,100円」で求められます。
- 源泉徴収税額 =(420万円– 100万円)× 20.42% + 10万2,100円=75万5,540円
- 手取り報酬=420万円-75万5,540円=344万4,460円
消費税は源泉徴収に含む?源泉徴収と消費税の関係
源泉徴収をする際、報酬のみを源泉徴収の対象とするか、消費税および地方消費税も含めた報酬を源泉徴収の対象とするかはどちらにしても問題ありません。
- 内税表記:税込金額×税率
- 外税表記:税抜金額×税率
請求書などに報酬と消費税などがしっかり区別されて書かれている場合は外税表記です。
源泉徴収額を記載した請求書の書き方
支払い側である取引先には源泉徴収の義務があるため、請求書の明記にかかわらず徴収が行われます。
フリーランスの請求書に源泉徴収額を明記するルールはありませんが、取引先との利便性確保や備忘などのため、源泉徴収の金額を明記するのがおすすめです。
内税か外税かを決めておく
源泉徴収額は消費税を合わせた総額と税抜部分のみ金額、どちらに税率をかけるかで金額が変わります。そのため事前に取引先と源泉徴収について取り決めをしておくと安心です。
内税表記は、計算の手間が小さく請求書がスッキリする点がメリットです。
一方で外税表記は、消費税を抜いた部分のみに税率をかけるため、源泉徴収の金額が小さくなります。手取り額が増えるため、フリーランスとして資金回収がより迅速に進みます。
どちらの方法もメリットがありますが、実際に源泉徴収・納税をするのはフリーランス側ではなく取引先です。自身の都合だけで源泉徴収の扱い方を決めると、トラブルの原因につながるので注意しましょう。
請求書への源泉徴収額の書き方
源泉徴収額を含んだ請求書は、以下の3項目を分けて記載するとわかりやすいです。
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フリーランスとして売上高10万円の請求書を作る方法を例に、内税・外税それぞれの書き方について解説します。
内税方式の場合(消費税を含む総額のみを記載する)
11万円(税込金額)×10.21%(源泉徴収税率)=11,231円
したがって請求書には、以下の項目をそれぞれ記載します。
- 請求額:110,000円
- 源泉徴収額:11,231円
- 請求金額:98,769円
外税方式の場合(消費税を別に記載する)
10万円(税抜金額)×10.21%(源泉徴収税率)=10,210円
この場合、請求書には以下の項目を明記します。
- 小計:100,000円
- 源泉徴収額:10,210円
- 消費税(10%):10,000円
- 請求金額:99,790円
確定申告では源泉徴収額を正確に申告しよう
フリーランスの場合、源泉徴収で税金を払いすぎている場合が多く、確定申告することで還付金を受けられる可能性が十分にあります。
源泉徴収税額を明記した請求書や、支払調書(※)が発行されたらその書類を集めて、確定申告をしましょう。
※報酬の支払者はフリーランスに支払調書を交付する義務はありませんので、発行に手数料を求められる場合があります。
源泉徴収されている場合は還付金が受けられる
すでに源泉徴収されている場合、実際に納めなければいけない税額を上回っていた場合は、その差額が還付金として戻ってきます。
フリーランスの場合、交通費や機材代金などを経費として処理することが可能です。
こうした経費を報酬から差し引いた金額が”所得”となり、所得をもとに税額が計算されるので、報酬額をベースに計算された源泉徴収税額よりも実際の課税額の方が低くなることが多いのです。
なお未回収の売上がある場合、その売上に対する源泉徴収税額は、確定申告書第一表「その他」の「未納付の源泉徴収税額」欄に金額を記入しましょう。また「源泉徴収税額の納付届出書」も合わせて提出しましょう。
源泉徴収されていない場合は納税する
もし取引先が源泉徴収義務者ではなかったり、事情により源泉徴収が行なわれていなかったりする場合には、その分を確定申告時に自身で納税することになります。
所得税の計算方法
所得税は、以下で算出することが可能です。
①年収 - 経費 - 所得控除 =課税対象所得
②課税対象所得 × 税率 - 課税対象所得に応じた控除 = 所得税 |
「所得」とは、年収から経費と所得控除を引いた金額を指しています。ここから経費や所得控除を引いた金額が、「課税対象所得」です。
なお②は国税庁の「所得税の速算表」を使用すると簡単に求められます。
確定申告は必ず行なおう
確定申告は国民の義務である納税のための手続きです。給与所得者で会社が代わりに納税してくれないフリーランスは必ず行わなくてはいけません。
もし故意に確定申告をしていない場合は「無申告加算税」「延滞税」「重加算税」という3つの税金が、本来支払うべき所得税に加えて請求されてしまいます。
ただしすべての人に認められている基礎控除が48万円あるため、年収から経費を除いた所得額が48万円以下の場合は確定申告は不要です。
報酬を支払う側になったら何をする?
フリーランスで仕事をしている場合、発注する側になることもありますよね。報酬を支払う側になった際、フリーランスの方の状況によっては、源泉徴収義務者に該当することがあります。
もし源泉徴収義務者になった場合には、支払い時に忘れずに徴収し、源泉徴収した金額を納税をしましょう。
従業員を雇用した場合は源泉徴収義務者になる
フリーランスの方は原則、源泉徴収義務者に該当しません。
従業員を雇用していて、以下2つのどちらにも当てはまらない人は源泉徴収義務者となります。
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源泉徴収義務者は、報酬支払い時に源泉徴収を行ない、期日までに納税を行なわなければなりません。
源泉徴収の必要があるのに納税を行なわずにいると、フリーランスでもペナルティの対象となるため注意しましょう。
国税通則法第67条において、納税額に10%を乗じた不納付加算税の徴収が規定されており、期日からの延滞日数に応じて延滞税の支払いも追加で発生します。
源泉徴収を行なう場合の納付期限・方法
源泉徴収した税金は、所得税徴収高計算書を作成して、支払いのあった月の翌月10日までに納付が必要です。期日を過ぎると、フリーランスでもその分延滞税が課されてしまいます。
納付は税務署もしくは金融機関で直接できるほか、電子納税でネット納付も可能です。
従業員が10人未満の場合、まとめての納税が可能
従業員が10人未満の場合、年2回にまとめての納税が可能です。
この制度を利用する場合、フリーランス・法人ともに、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出する必要があります。
納期の特例が適用されれば、1月から6月に発生した支払いに対する税金は7月10日、7月から12月の分は翌年の1月10日までにまとめて納付が可能です。
ネットで電子納税する方法
電子納税・ネット納付なら納税のために税務署などへ行かずに済みます。すべて一人で作業が必要なフリーランスの場合、源泉徴収にかかる手間はなるべく押さえるのが便利です。以下の手順で進めます。
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ダイレクト納付の場合:「ダイレクト納付」をクリック、画面の指示に沿って納付日を選択して納付
インターネットバンキングの場合:「インターネットバンキング」をクリック、金融機関のホームページに移動して手続きを進める
監修税理士からのコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
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フリーランスは会社員と違って、源泉徴収や所得を管理して自分で確定申告する必要があります。源泉徴収や所得の計算、そして、発注する側になった場合にはとても複雑な手続きが必要になります。
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この記事の監修税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通