個人の資金では難しい夢の実現や商品開発、事業展開などを支援してもらう手段として、近年ますます注目を集めるクラウドファンディング。購入型や寄付型、投資型などさまざまなタイプがあり、得た資金には所得税や法人税などの税金が発生します。
「自分にはどのような税金がかかるのだろうか」とお悩みのあなたのために、クラウドファンディングのタイプ別で発生する税金を解説。節税のポイントについてもわかりやすく紹介します。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
見出し
- 1 クラウドファンディングのタイプによってかかる税金が異なる
- 2 【購入型クラウドファンディング】所得税または法人税が発生
- 3 【寄付型クラウドファンディング】贈与税、所得税または法人税が発生
- 4 【投資型クラウドファンディング】所得税または法人税が発生
- 5 クラウドファンディングでの資金調達における節税ポイント
- 6 クラウドファンディングの確定申告における注意点
- 7 クラウドファンディングで確定申告が不要なケース
- 8 クラウドファンディングでの出資が節税になることも【経費計上・寄附金控除】
- 9 不動産クラウドファンディングでの分配金は課税対象になる
- 10 監修税理士からのコメント
- 11 ミツモアで税理士を探そう!
クラウドファンディングのタイプによってかかる税金が異なる
「クラウドファンディング」は「購入型」「寄付型」「投資型」の3タイプに大きく分けられ、かかる税金がそれぞれ異なります。
資金調達者(個人) | 資金調達者(法人) | 資金提供者 | |
購入型 | ・「事業所得」もしくは「雑所得」となり、原則確定申告を要する | ・益金となり「法人税」の課税対象となる | ・課税されない
・商品やサービスを事業に活用することで必要経費に算入可能な場合もある |
寄付型 | ・個人からの寄付の場合、原則「贈与税」の申告を要する
・法人からの寄付の場合、原則「一時所得」として確定申告を要する |
・受贈金として益金算入する必要がある | ・課税されない
・法人への寄付の場合「寄附金控除」の対象(個人)になる場合もある ・一定の条件の下、寄附金として損金算入が可能(法人) |
投資型 | ・利益が出た場合は確定申告が必要(調達資金に対する課税は無し) | ・調達資金に対する課税は無し | ・配当金で利益が生じた場合、確定申告を要する |
購入型とは資金提供者が商品やサービスを購入する形で資金支援を行なうクラウドファンディングのこと。代表的なプラットフォームの「CAMPFIRE」などが該当し、支援者が「リターン」を受け取れるのが大きな特徴です。
また寄付型クラウドファンディングはその名の通り、資金提供者に見返りがない形式です。そして投資型とは、資金調達者が得た利益を分配する形式のクラウドファンディングを指します。
通常「購入型」と「寄付型」のクラウドファンディングでは、資金調達によって税金が発生します。一方で投資型の場合、資金調達の段階では税金が発生しません。その代わりに調達資金を使って利益を出した際に税金が発生します。
【購入型クラウドファンディング】所得税または法人税が発生
購入型クラウドファンディングで資金調達をした場合、所得税もしくは法人税が発生します。資金調達者が個人の場合は「所得税」、法人の場合は「法人税」がかかります。
個人で資金提供を受ける場合は「所得税」
個人の方が購入型クラウドファンディングで資金調達をした場合、原則として所得税の対象となります。なぜなら購入型クラウドファンディングで得た資金は、商品を販売した利益という考え方をするためです。
所得の区分は、個人事業主として資金調達をした場合は「事業所得」、それ以外の場合は「雑所得」です。所得の区分によって、確定申告で必要となる手続きが異なるため注意しましょう。
また税金に係る所得の計算方法は「調達資金の合計-資金提供を受けるために要した費用の合計」となります。
法人として資金提供を受ける場合は「法人税」
法人として資金提供を受ける場合も税金の課税対象となりますが、税目は異なり「法人税」となります。クラウドファンディングで受け取った資金は益金となるため、最終的な売り上げの一部として考えられます。
また個人事業主と同様に、提供資金を得るために要した費用は、損金として算入することが可能です。
なお益金に算入するタイミングは、入金があったタイミングではなく商品やサービスを提供した時です。それまでは前受金として処理しましょう。
【寄付型クラウドファンディング】贈与税、所得税または法人税が発生
寄付型クラウドファンディングでの資金調達は、贈与税や所得税、法人税のいずれかが発生します。個人間での資金提供や、出資を受けたのが個人と法人のどちらからなのかによって、税目が異なります。
なおリターンがゼロだったり、著しく少なかったりする場合は、購入型ではなく寄付型にあてはまるので注意が必要です。
個人間で出資を受けた場合は「贈与税」
寄付型クラウドファンディングで個人から個人に行なわれた資金提供は寄付とみなされ、贈与として扱われます。そのため発生する税金は「贈与税」です。一方で個人間での贈与は所得税の課税対象とはならないので、所得税の確定申告は不要です。
しかし110万円以下の贈与額である場合は確定申告が必要ありません。贈与税では110万円の基礎控除が定められているため、それ以下の金額では税金が0円になるのです。
またこの額は、暦年で得た贈与額の合計が基準になる点に注意しましょう。例えば資金調達で得た額が50万円でも、その他の贈与が60万円を超える場合は確定申告が必要となります。
個人が法人から出資を受けた場合は「所得税」
寄付型クラウドファンディングにおいて、個人が法人から資金提供を受けた場合に発生する税金は所得税です。しかし資金提供を受けた方が個人事業主か否かを問わず「一時所得」として扱う点に注意しましょう。
一時所得は資金提供で得た総額から、必要な費用を差し引き、特別控除額の50万円を差し引いて求めます。つまり一時所得の額が50万円を超えない場合は確定申告を行なう必要がないということです。
そして所得金額を更に2分の1にした額が、課税所得に算入されます。
法人が個人から出資を受けた場合は「法人税」
法人向けの解説をすると、法人が個人から資金提供を受けた場合の税金は、法人税の課税対象となります。クラウドファンディングの寄附金は受贈益扱いとなり、課税対象であるためです。
しかし全額が課税対象になるわけではなく、当該贈与を受けるために要した費用は損金算入が可能です。
また法人から法人への資金提供であっても扱いは同様で、法人税の課税対象となる点に留意しましょう。
【投資型クラウドファンディング】所得税または法人税が発生
投資型クラウドファンディングは細かく分けると3種類あり、いずれも資金提供を受けた時点では税金の課税対象にはなりません。
【融資型クラウドファンディング】
融資型クラウドファンディングでは、貸し付けの形で資金提供を受け、元本と利息の返済及び分配を行ないます。「貸付型クラウドファンディング」や「ソーシャルレンディング」とも呼ばれます。 【ファンド型クラウドファンディング】 ファンド型クラウドファンディングとは、法人が行なう資金調達手段の1つです。資金調達者が投資家から出資を募り、ファンドを作って事業を行なう形式です。出資者には事業の成果に基づいて、利益を分配します。 【株式型クラウドファンディング】 株式型クラウドファンディングとは、非上場株式を発行・売却することにより資金調達を行なう手法です。その性質から法人のみが可能な資金調達手段となっています。 |
投資された資金を用いて利益を出した場合に、その利益が所得税もしくは法人税の課税対象となります。
また資金を提供した方も、分配金によって利益が生まれたら税金の対象となる点に留意しましょう。融資型とファンド型は「雑所得」に、株式型は「配当所得」に区分され、所得税の対象となります。
クラウドファンディングでの資金調達における節税ポイント
クラウドファンディングの資金調達における節税方法としては、贈与税の基礎控除の活用が挙げられます。また確定申告の際に青色申告を行なうことも、ひとつのポイントだといえるでしょう。
贈与税の基礎控除を活用する
個人から個人への寄付型クラウドファンディングで得た資金は、贈与税の対象となります。しかし110万円の基礎控除が存在するので、調達資金が110万円以下であれば所得税は発生せず、確定申告の手続きも必要ありません。
そのため暦年の贈与額を110万円以内に調整することで、税金を支払わずに資金調達が可能となります。
青色申告をする
購入型クラウドファンディングで、個人事業主が資金調達を行なう場合は青色申告を活用しましょう。青色申告を活用することで最大65万円の所得控除を受けられるため、税金の負担が減少します。
他にも損失の繰り越しを含む様々な特典も存在するので、個人事業主の場合は必ず行なうべきといえます。
なお雑所得は青色申告の対象となっていない点に注意が必要です。個人事業主でない方が雑所得として確定申告をする場合は、白色申告で手続きを行なう必要があります。
クラウドファンディングの確定申告における注意点
クラウドファンディングに係る税金で損をしないためには、必要経費を正しく計上することが大切です。ただし、本来必要経費にできないものを経費としてしまうと、税務署から指摘が入るおそれもあるので注意してください。
また確定申告の前後において、経費の証明書類を捨てずに保管することも大切なポイントです。
必要経費を計上する
クラウドファンディングの必要経費を正しく計上することで、課税所得が減少して税金の負担が軽くなります。1つのクラウドファンディングの手続きの中にも経費として認められる費用は数多くあります。
【必要経費にできるものの具体例】
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いずれも、クラウドファンディングで資金調達したプロジェクトに関連する費用のみを経費計上します。
クラウドファンディングの必要経費にできないもの
基本的には、以下のような事業に関係のない費用は必要経費に算入できません。
【必要経費にできないものの具体例】
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クラウドファンディングの必要経費として算入できるのは、事業で直接的に要する費用のみです。それ以外を必要経費としてしまうと、税務署から指摘が入り税金が増加する原因となるため注意しましょう。
経費の証明書類は捨てずに保管する
クラウドファンディングの必要経費として計上した費用は、領収書やレシート等を必ず保存しておきましょう。確定申告の際に使用するのはもちろん、税務署の職員に提示を求められる場合もあるためです。
保存期間は原則、確定申告の提出期限の翌日から7年間です。例えば令和3年分の確定申告で要した領収書は、令和11年3月16日まで保存する必要があります。
日付順に並べて年分別で保存しておくと、提示を求められた際にすぐ対応が可能です。調査の際に証拠書類がないと、経費として認められずに税金の負担が増える場合があるため注意が必要です。
クラウドファンディングで確定申告が不要なケース
資金調達をした場合でも、所得がクラウドファンディングのみで48万円以下である場合は確定申告の必要がありません。
また会社員やアルバイトなど給与所得者の場合は、クラウドファンディングの所得が20万円以下であれば、確定申告不要です。
所得がクラウドファンディングのみで48万円以下である
所得金額がクラウドファンディングのみで48万円以下である場合は確定申告が不要です。なぜなら所得税では48万円の基礎控除が定められており、所得が48万円以下の場合は税金がかからないためです。
個人事業主で該当するケースは少ないですが、学生や専業主婦が資金を得た場合は該当する場合があります。
48万円の基準は全ての所得金額(雑所得や一時所得を含む)の合計である点に注意しましょう。例えばクラウドファンディングの所得が40万円でも、その他の所得が8万円超の場合は申告が必要です。
【給与所得者】クラウドファンディングでの所得が20万円以下である
所得が48万円超の給与所得者でも、クラウドファンディングでの所得が20万円以下ならば申告が不要です。しかし一定の条件があり「年収2,000万円以下」で「年末調整がされている」場合に限ります。またダブルワークの方は対象外であるため注意しましょう。
反対に言えば「年末調整されていない方」や「ダブルワーカー」等の場合は、20万以下でも申告が必要です。
なおこの規定はあくまでも所得税の確定申告が不要となる制度です。所得税の確定申告をしない場合は、住民税の確定申告を行なって税金を支払う必要がある点に注意しましょう。
クラウドファンディングでの出資が節税になることも【経費計上・寄附金控除】
クラウドファンディングで出資を行なう側には、税金が発生しません(投資型を除く)。しかしそれだけでなく、出資をすると節税に繋がることもあるのです。正しく節税ができれば、税負担の軽減や還付金の受領に繋げることが可能です。
クラウドファンディングでの出資が節税に繋がる理由は主に「出資金の経費計上」と「寄附金控除」です。
出資金が経費計上できる
購入型クラウドファンディングの形式で出資する場合、その資金を経費として計上できます。ただし、すべての出資が計上できるわけではありません。購入したものが事業に必要なものであれば、経費計上が認められます。
寄附金控除の対象になる
寄附金控除とは、個人が一定の団体に対して特定寄付金を支出した場合に所得控除を受けられる制度です。そしてクラウドファンディングでも、認定NPO法人等、一定の法人への寄附の場合は控除対象となります。
寄附金控除の対象となっているプロジェクトには、その旨が記載されているため確認してみましょう。
寄附金控除の計算式方法は「寄付金の合計額(その年の所得の40%を上限)-2,000円」です。例えば寄付金控除の対象となるプロジェクトに10万円出資した場合、98,000円の所得控除となります。そして所得控除の額に税率を掛けると軽減される税金の額が分かります。個々の税率は以下の国税庁のページを参考にしてください。
不動産クラウドファンディングでの分配金は課税対象になる
クラウドファンディングの1種として「不動産クラウドファンディング」があります。不動産クラウドファンディングでは源泉徴収が行なわれるため、確定申告は原則不要です。
しかし個々の環境によっては、自ら確定申告して税金を精算をする必要があるので注意しましょう。
分配金は「雑所得」に分類
不動産クラウドファンディングとは、不動産投資のための資金を個々の投資家から集める資金調達手段です。そして不動産投資の運用益を分配金として投資家に還元します。
運用益の分配金は雑所得に該当して課税対象となるので、税金を納める必要があります。しかし不動産クラウドファンディングの分配金は事業者が源泉徴収を行なうため、確定申告は原則不要です。
配当金が振り込まれる段階で既に納税が済んでいることから、自身が手続きを行なう必要がないのです。
分配金の確定申告が必要になる条件
以下の一定の条件に該当する場合は、不動産クラウドファンディングでも確定申告が必要となります。
- 他の雑所得との合計額が20万円を超える給与所得者
- 元々確定申告が必要な方
- 課税所得金額が694万円までの方
給与所得で源泉徴収されていても、他の所得があり配当金との合計が20万円超の場合は確定申告が必要です。他にも元々確定申告を要する個人事業主も、配当金と他の所得を合計して税金を精算する必要があります。
また課税所得金額が694万円までの方は、確定申告をすることで還付金を受けられる場合があります。配当金の源泉徴収の税率は20.42%ですが、所得が694万円までの方は税率が20%以下のためです。
そのため正しい税額が再計算されて、支払過ぎていた分の還付金を受けることができます。
監修税理士からのコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
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