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勤務医の節税は特定支出控除?それとも会社設立?

最終更新日: 2019年12月09日

厚生労働省の調査によると、勤務医の平均年収は1,200万円を超えるといわれています。ただ給与が高いということは、税金も高いということを意味します。そう聞くと損だと感じるかもしれませんが、医師だからこそできる節税方法があることをご存じでしょうか?この記事では特定支出控除をはじめとする勤務医の方向けの節税方法を解説します。

【節税の基本】所得税の仕組みを理解しよう

効果的な節税は所得税の仕組みを知ることから始めよう
効果的な節税は所得税の仕組みを知ることから始めよう

節税を考える前に、まずは税金の仕組みを理解しておきましょう。勤務医の給与から天引きされている税金の多くは所得税です。所得税の算出方法の基本を知っておくと、節税のポイントも見えてきます。

基本1.所得税とは

所得税とは、毎年1月1日から12月31日までに得た所得について課税されるものです。勤務医の場合、勤務先が本人に代わって納付しています。アルバイトなどの収入もあわせて所得が2,000万円を超えない勤務医については、12月の年末調整で配偶者控除などの控除額を計算し、最終的な所得税の精算を行います。

基本2.累進課税制度

高収入である医師の所得税が高額な原因として、日本の累進課税制度があります。累進課税とは、課税対象金額が増えるほど税率があがるというものです。日本の累進課税は超過累進税率を採用しており、課税標準が一定額以上となったとき、超過金額に対してより高い税率が適用されます。

以下は、所得金額ごとの所得税率を記載した表です。

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え
330万円以下
10%97,500円
330万円を超え
695万円以下
20%427,500円
695万円を超え
900万円以下
23%636,000円
900万円を超え
1,800万円以下
33%1,536,000円
1,800万円を超え
4,000万円以下
40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

累進課税では少しでも所得金額を超えると、税率が大きくあがります。高収入な医師の節税では、課税所得を抑えることが大きなポイントです。勤務医であっても、控除が受けられる確定申告をして、課税所得を抑えましょう。

基本3.10種類の控除

開業医の場合、さまざまな経費を計上することで、所得を減らし、所得税を減らすことが可能です。しかし勤務医の場合は、高額な医学書や学会への参加経費など、経費計上できないものも少なくありません。

勤務医の節税で有効なのは控除を増やす方法です。日本の税制は申告制なので、たとえ利用可能な控除であっても確定申告で申告しなければ活用できません。勤務医が活用できる控除は主に10種類あります。

①基礎控除・給与所得控除
所得があるすべての人に適用される控除です。ともに令和2年以降、控除額が変更されます

②医療費控除
通院や入院、薬代の医療費を支払ったときに受けられる控除です。一定基準を満たした配偶者や親族のための医療費も控除対象となります。

③配偶者控除・配偶者特別控除
生計を一とする配偶者で、年間の所得金額が38万円以下もしくは給与年収が103万円以下の場合は「配偶者控除」が適用されます。38万円以上の所得がある場合に適用されるのは「配偶者特別控除」です。

④扶養控除
生計を一とし、年間所得が38万円以下で、16歳以上の子どもや高齢者を扶養している人が対象です。

⑤社会保険料控除
健康保険や国民年金、国民年金基金など実際に支払った金額の合計が控除対象です。一定基準を満たした配偶者や親族についても適用されます。

⑥生命保険料控除
生命保険料や個人年金保険、介護医療保険料の支払額が対象です。

⑦地震保険料控除
地震による損害を対象に含む損害保険料が対象となる控除です。

⑧小規模企業共済等掛金控除
独立行政法人中小企業基盤整備機構との共済契約、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)、心身障害者扶養共済制度の3種類の掛金について、控除されます。

⑨寄附金控除
国や自治体、公益法人などに支払った寄付を対象とする控除です。ふるさと納税なども対象になります。

⑩住宅ローン控除

住宅ローンを利用して、マイホームを新築したり取得したりした時に受けられる控除です。厳密には所得控除に分類されません。

基本4.所得税の具体的な計算方法

所得税は、所得=(総収入金額-必要経費)×所得税率で計算されます。「基本2.累進課税制度」で見たように所得税率は所得金額によって異なります。たとえば課税所得が1,500万円である医師の場合、所得税率は33%です。そのため、所得税は1,500万円×0.33=495万円となります。

では具体的に、年収によってどのくらい所得税が変わるのでしょうか。以下の2通りで計算してみましょう。
(一律で控除される基礎控除と給与所得控除のみ適用の場合、令和2年以降)

所得額 500万円 1,500万円
基礎控除 48万円 48万円
給与所得控除 144万円(=500万円×20%+44万円) 195万円
課税所得 308万円(=500万円-48万円-144万円) 1,257万円(=1,500万円-48万円-195万円)
所得税率 10% 33%
所得税額 210,500円(=308万円×0.1-97,500円) 2,612,100円(=1,257万円×0.33-1,536,000円)

年収が500万円と1,500万円の場合、所得税額の差は200万円以上あります。年収が高いほど所得税の負担は大きくなるため、勤務医の方は節税を考える必要があるのです。

節税方法1.特定支出控除を利用する

特定支出控除は確定申告をしないと受けられません
特定支出控除は確定申告をしないと受けられません

高収入の勤務医が節税するためには、どのような方法があるのでしょうか。まずご紹介するのは「特定支出控除」という制度です。この制度を利用することで、課税所得を減額でき、納税額が抑えられます。では、具体的にどのような支出が特定支出控除の対象になるのでしょうか。

特定支出控除とは

「基本4.所得税の具体的な計算方法」で見たように、給与所得者には「給与所得控除」が適用されます。給与所得控除とは、給与所得者が仕事をする上で必要になる経費を考慮した制度のことです。

個人事業主は、自宅を仕事場にしている場合に家賃の一部を経費にできるなど経費の幅が広いのですが、給与所得者はそれが認められていません。そのため、課税対象となる所得額が個人事業主よりかなり多くなってしまい、不公平が生じます。そこで設定されたのが給与所得控除という制度です。

しかし勤務医の方の中には、他クリニックへの通勤に必要な交通費や専門書にかかる書籍代などで、給与所得控除額をオーバーする経費がかかることもあります。そこで、その経費をカバーするためにあるのが特定支出控除制度です。

特定支出控除が適用されるのはその年中の給与所得控除額×1/2を超える額です。上述の例で計算してみましょう。ここでは発生した特定支出をそれぞれ100万円、150万円とします。

所得額 500万円 1,500万円
特定支出 100万円 150万円
基礎控除 48万円 48万円
給与所得控除 144万円(=500万円×20%+44万円) 195万円
特定支出控除適用額 144×1/2=72万円を超える額 195万円×1/2=97.5万円を超える額
特定支出控除 28万円(=100万円-72万円) 52.5万円(=150万円-97.5万円)
課税所得 280万円(=500万円-48万円-144万円-28万円) 1,204.5万円(=1,500万円-48万円-195万円-52.5万円)
所得税率 10% 33%
所得税額 182,500円(=280万円×0.1-97,500円) 2,438,850円(=1,204.5万円×0.33-1,536,000円)
節税額 28,000円(=210,500円-182,500円) 173,250円(=2,612,100円-2,438,850円)

特定支出控除の対象になる支出

では、特定支出控除の対象となるのは、どのような支出なのでしょうか。以下の表を見ていきましょう。

特定支出控除の対象 概要
通勤費   通常の通勤に加えて、アルバイトで他の病院に勤務している人のガソリン代や高速料金なども対象
転居費   転居に伴う引越し費用や交通費など
研修費   研修会のほか、学会や講演会の参加費や交通費など
資格取得費   認定医・専門医の資格を取得する費用や更新料など
帰宅旅費   転勤で単身赴任したときや、自宅へ帰省するときの交通費など
勤務必要経費以下(計65万円まで対象) 図書費 医学書や定期刊行物、新聞・雑誌、電子書籍、有料メルマガなど
衣料費 白衣や術衣など
交際費 医局の親睦会や医師との交際・接待費など

さらに令和2年以降、勤務する場所を離れて仕事をするために必要な旅行でかかる職務上の旅費も特定支出になります。

これらの支出については、いずれも勤務先の病院が必要経費であることを証明しなければ認められません。

特定支出控除を受けるために必要なもの

特定支出控除を受けるためには、確定申告をしなければいけません。その際、以下の3つが必要です。

  • 特定支出に関する明細書
  • 特定支出に関する給与支払者の証明書(勤務先の病院に書いてもらう)
  • 源泉徴収票(勤務先の病院からもらう)

なお「特定支出に関する給与支払者の証明書」に関しては、国税庁がその様式を定めているのでそれに従うようにしましょう。

参考:給与所得者の特定支出控除に関する証明書の様式等の制定について|国税庁

節税方法2.プライベートカンパニーを設立する

個人の業務や資産管理をする会社がプライベートカンパニーです
個人の業務や資産を管理をする会社がプライベートカンパニーです

個人の収益や資産を管理することを目的とする「プライベートカンパニー」をご存じでしょうか?実は最近、勤務医がプライベートカンパニーを設立する例が増えているのです。大幅に節税できる方法として有効なプライベートカンパニーによって経費になるものや、その設立によるメリットとデメリットを解説します。

プライベートカンパニーの設立で経費になるもの

勤務医が節税対策としてプライベートカンパニーを設立した場合、その業務に関係する支出として認められるものはすべて経費になります。具体的には

  • パソコンの購入費
  • 車両購入費
  • 不動産の購入費(社宅として)
  • 医学書の購入費
  • 接待交際費

などがあります。勤務医個人であれば経費にできない車両購入費や不動産の購入費、また特定支出控除の範囲内の図書費なども、プライベートカンパニーの必要経費にすることができます。

プライベートカンパニー設立のメリット

勤務医がプライベートカンパニーを設立する1つ目のメリットは、勤務先からの給与以外で得た収入を会社の収入とすることで大きく節税できるという点です。他の病院で非常勤勤務を担当したり、講演をしたり、書籍や雑誌などを執筆したりといった副業をされている方におすすめです。

会社の収入にすると、その収入にかかる税金は会社が支払うことになります。個人にかかる税金より法人税の税率の方が低いため、負担が軽くなります。

2つ目のメリットは、先ほど挙げたような仕事に関連する費用を経費として計上できる点です。家族をプライベートカンパニーの社員として雇用し、所得を分散することもできます。

以上のことから、勤務医の節税方法として会社設立は有効だといえるでしょう。

プライベートカンパニー設立のデメリット

一方で、勤務医がプライベートカンパニーを設立する際にはそのデメリットも考えておかなくてはいけません。

その主なデメリットは、コストがかかるということです。会社として登記する際の費用は、設立する会社の種類によって10~30万円程度かかります。また、事務所の経費や光熱費などのランニングコストも発生します。さらに、決算書類を作成する際は税理士に依頼することが多いので、その顧問料も発生します。

法人がたとえ赤字になっても、最低年間70,000円程度の法人税がかかることにも注意が必要です。これらのコストと先ほど述べたメリットを比較しつつ、プライベートカンパニーを設立するかどうかを判断してください。

関連記事:【2019年決定版】会社設立の流れを徹底解説|ミツモア

節税方法3.その他の節税方法3選

不動産投資などは、効果的な節税方法です
不動産投資は、効果的な節税方法です

特定支出控除やプライベートカンパニーの設立のほかにも、医師が活用できる節税テクニックがあります。ここでは、おすすめする3つの節税方法について解説します。

1)ふるさと納税

勤務医が節税テクニックとして簡単にできるものの一つに「ふるさと納税」があります。「納税」とついていますが、ふるさと納税は「寄付」の一種です。控除限度内であれば、納税額が高いほど翌年の控除額が高くなるという特徴があります。

所得に応じて限度額は異なりますが、自己負担金2,000円を除く寄付額はすべて税金控除額です。また、額に応じた返礼品が手に入るというメリットもあります。節税しながら地方自治体の応援ができ、そのうえ返礼品を楽しめるのはふるさと納税ならではの特典です。

関連記事:【税理士監修】ふるさと納税は節税になる?優遇措置を丁寧に解説!|ミツモア

2)確定拠出年金(iDeCo)

iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金のことで、老後の資金を自分で作る制度です。60歳になるまでの期間、毎月一定金額の掛金を出して投資信託や保険などの金融商品を運用し、60歳以降に運用資産を受け取ります。

iDeCoのメリットは、掛金の全額が所得控除されることです。また、運用中の利益に税金がかからないという特徴もあります。運用資金を受け取る際にも控除があり、税金の優遇が受けられます。所得税率が高くなる高所得の人ほど節税効果が大きいので、勤務医の方にとってはまさに有効な節税方法でしょう。

3)不動産投資

不動産投資をすると支出の一部が経費になります。また不動産所得の赤字分を給与所得から差し引くことで、課税所得を減らすことが可能です。これにより節税ができます。

マンションやアパートを購入する際に、銀行からの融資を受ける場合も多いでしょう。社会的信頼度・収入が高い医師は、地方銀行に加えてメガバンクの融資審査も通りやすくなります。メガバンクから受ける融資の特徴は、他の銀行より金融機関としての格が高いということと、低金利でローンが組めることです。

不動産投資の特徴として、減価償却費が経費計上できるということがあります。不動産投資にかかる経費の多くを占める経費が減価償却費で、建物の金額や構造によって変わります。購入時に減価償却費を十分に考慮しないと、不動産投資の節税効果は十分に得られないので注意が必要です。

その他、不動産の管理委託手数料や修繕費など、経費計上できる項目は多数あります。家賃収入があったとしても、経費合計から差し引くと、実際現金の動きはなくても会計上赤字になることも少なくありません。赤字の分を給与所得から差し引けばその分節税になります。

ただし、減価償却には上限年数があり、長期的に活用できる方法ではないことにも注意しておきましょう。

関連記事:【税理士監修】不動産投資が節税になる仕組みを徹底解説!|ミツモア

自分に合った節税方法を

節税方法は、歯科医などの専門職の方でも活用できます!
節税方法は、歯科医などの専門職の方でも活用できます!

開業医や歯科医の方でも利用可能

勤務医が活用できる節税方法には、特定支出控除やふるさと納税、iDeCoのように手軽にできるものから、不動産投資やプライベートカンパニーの設立といった大掛かりなものまで、さまざまな方法があります。その節税効果は手法によって大小さまざまです。自分がやれるところから活用してみるのがよいでしょう。

またこれらの方法は勤務医だけでなく、開業医や歯科医などの専門職の方にも適用されるものです。勤務医の方が独立した後も活用できます。

特定支出控除とプライベートカンパニーの設立は税理士に頼もう

さまざまな節税方法の中でも、特に特定支出控除やプライベートカンパニーの設立については、テクニックや専門知識が必要です。たとえば、特定支出控除の対象になるか否かの判断を誤ってしまうと、個人でも税務調査の対象になることがあります。

プライベートカンパニーの設立はさらに判断が難しい方法です。初心者にとって会社設立の手続きは煩雑なため、本業と同時並行でできない可能性が高くなります。

そんなとき強い味方になってくれるのが、税金のプロである税理士です。これまでの事例や判例などを基に節税を手助けしてくれます。確かに相談料や顧問料は必要ですが、節税のメリットを考えると専門家の判断をあおぐのがおすすめです。さらに会社の設立や確定申告手続きなどを任せられるという利点もあります。

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