会社設立の前後には、煩雑な手続きが多数あります。設立までに必要な手続きから設立後に必要な手続きまでを流れに沿って解説しますので、ぜひスムーズな会社設立に役立ててください。そもそも会社を設立することにはどんなメリットがあるのか、また、会社設立に欠かせない定款作成や必要書類についても解説します。
この記事の監修税理士
京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台
会社設立のメリット・デメリット
新たな事業を始める際、必ずしも会社を設立する必要はありません。個人事業主として働く場合も「屋号」を定めることができるため、社名を有して運営していくことは可能です。
では会社を設立し、法人として事業を行うことにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。あらためて確認します。
会社設立のメリット・デメリット
会社設立のメリットとデメリットについて、個人事業主と比較しながら解説します。
税金面でのメリット・デメリット
まず税金面での大きな違いの1つが「自分への給与」の扱いです。
会社の場合は、法律上1人の人間として扱う「法人格」を得た会社から役員報酬(自分への給与)を支給することができます。これは「経営に必要な人件費を法人が負担している」とみなされるため、必要経費として計上できます。家族への役員報酬も同様です。
一方で、個人事業主は「自社の事業を利用して自分で稼いだ」という形になります。支出したという形にはならないことから、個人事業主は自身の給与を必要経費に含めることはできません。また、家族への給与を経費にしたい場合は、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。
しかし個人事業主には接待交際費の上限がないというメリットがあります。事業に関わる支出ならばすべて接待交際費として計上することができます。
一方で、法人には次の制限がかかります(1人あたり5,000円以下のものは除く)。
- 資本金1億円以下の法人:「年間800万円」と「接待交際費の50%」のいずれか大きい方まで認められる
- 資本金1億円超~100億円以下の法人:接待交際費の50%まで認められる
- 資本金100億円超の法人;接待交際費の全額が否認される
とはいえ、接待交際費に限らず経費全体で見ると、会社のほうが経費に計上できる幅が広いです。例えば以下のようなものも経費として計上することができます。
- 社長の日当
- 退職金
- 社宅扱いしている自宅の家賃等 など
また、赤字の繰越期間にも大きな違いがあります。青色申告をしている個人事業主は3年間まで赤字を繰り越せますが、法人は10年間繰り越すことができます。したがって、会社を設立したほうが長期的な展望に立った経営ができると言えるでしょう。
続いて大きな違いとして挙げられるのは、法人税率と所得税率の違いです。会社は法人税、個人事業主は所得税が課せられますが、税率に次のような違いがあります。
【法人税率】
- 年800万円までの所得:15.0~23.2%
- 年800万円超の所得:23.2%
【所得税率】
- 所得の金額に応じて:5%~45%
所得税は累進課税制度が適用されるので、所得金額が増えるにしたがって、税率も増加します。一方、法人の場合は税率が23.2%に抑えられているため、所得が一定の金額を超えた場合には、法人のほうが税額が少なくなる可能性があります。
また会社の場合は自身への給与に関して役員報酬として損金に算入することができるだけでなく、社長個人として給与所得控除の適用があるため、節税面でのメリットが大きいです。個人事業主では必要経費にできないため、自身への給与に関係する税制上の優遇は受けられません。
どちらの税金が安くなるかはケースバイケースですが、会社のほうが損金にできる幅が広く柔軟に調整できるため、節税対策は行いやすいでしょう。さらに資産の名義を法人にしたり役員を相続人にしたりすることで、代表者が亡くなった後の相続税対策にもなります。
会社設立は消費税対策になる場合もあります。個人事業主は原則として開業後2年間は消費税の納税が免除されますが、会社を設立すると会社設立年からさらに2年間消費税が免除されるため、免除期間は最大4年間となります(課税売上高や資本金などで条件あり)。
経営・事業面でのメリット・デメリット
経営・事業面で考えたときの会社設立のメリットとしては、社会的信用度の高さが挙げられます。個人事業主よりも信用を得やすく、人材や資金を集めやすくなります。個人事業主は会社と比べると社会的信用を得にくいため、取引先を新規開拓するときや求人募集をするときなどに、不便を感じることがあります。
しかし会社設立には費用がかかる点がデメリットです。株式会社なら20万円以上、合同会社でも6万円以上にプラスして、印鑑作成費も別途必要になります。廃業する際にもお金が必要です。一方、個人事業主は開業も廃業も費用はかかりません。印鑑が必要な場合は個人のものを使用できるため、印鑑作成費も不要です。
また、会社は設立すると個人としての税務と会社としての税務が発生するため、税務処理が複雑になり、一人ですべて扱うことは難しくなります。その点、個人事業主は確定申告でまとめて処理できるため、税務がシンプルです。
会社設立と個人事業主のどちらが良いか?
会社を設立する場合 | 個人事業主の場合 | |
メリット |
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デメリット |
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どちらにもメリットとデメリットがあります。基本的には所得額が一定以上になり、所得税率より法人税率のほうが低くなるタイミングが、会社設立の検討時期としておすすめです。
税務をシンプルにしたい方には個人事業主の方がいいでしょう。とはいえ、会社を設立する場合も税理士などの専門家に依頼することで税務処理を任せられるので、場合によってはデメリットを解消できます。
事業がある程度成長したら税理士に相談し、法人成り(会社設立)するほうがメリットが多いのか、まだ個人事業主として経営しているほうがよいのかを相談することをおすすめします。
株式会社か合同会社のどちらかを選ぶ
会社には、株式会社と合同会社、合資会社、合名会社の4つの種類があります。このうち、合資会社と合名会社の社員は無限責任を負う必要があるため、倒産時にあらゆる負債を背負うことになります。
個人が会社を設立する場合には「株式会社」か「合同会社」を選択することが一般的です。株式会社と合同会社の違いについて見ていきましょう。
株式会社の特徴
株式会社とは、株式を発行して投資家から資金を調達して事業を運営するタイプの会社です。不特定多数の投資家から資金調達が可能になります。資本金は1円以上、出資者1名以上から会社を設立でき、社会的信用度が高いため、日本の企業の多くが株式会社の形態を取っています。
株式会社の場合、出資者は出資した額の範囲内で責任を負うため、会社全体の債務が出資者や役員に課せられるわけではありません(有限責任)。そのため万が一倒産した場合でも個人事業主に比べて、生活への影響は少ない点はメリットと言えるでしょう。
大規模な経営を希望する場合には、資金調達がしやすく社会的信用度が高い株式会社が向いています。しかし決算のルールが厳しく、役員の登記も定期的に行う必要があるため、経理や税務、法務などについての理解と対応が必要です。
合同会社の特徴
合同会社とは2006年に誕生した新しい形態の会社です。資本金は1円以上で始められ、出資者すべてが経営に参加できます。特徴を見ていきましょう。
- 配当を自由に決められる
- 設立の実費を抑えて法人格を持つことができる
- 柔軟な期間設定ができる
- 出資した持分を限度として責任を負う(有限責任) など
株式会社では出資者と経営者は別ですが、合同会社では同じです。経営者以外にも株主が存在する株式会社とは違い、原則として経営陣のみで運営できることから、自分が経営主体となれる点もメリットでしょう。
運営も決算もルールが株式会社ほどには厳しくないため、柔軟な経営を目指している方には向いています。しかし、まだ新しい形態の会社であることから、株式会社ほどには社会的信用度が得られないというデメリットもあり、事業を大規模に行っていきたい場合には株式会社のほうが将来的に有利になるでしょう。
会社設立に係る費用の違い
会社にかかる費用の違いを以下の表にまとめました。
株式会社 | 合同会社 | |
実費 |
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その他の費用 |
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資本金 | 1円~ | 1円~ |
※1 1枚あたりの手数料を250円として一般的な枚数である8枚分で計算
※2 電子定款の場合は、定款貼付用収入印紙代なし
上記のように設立時にかかる費用が少ないのは合同会社です。なお専門家に作成や提出の代行を依頼した場合は、代行手数料もかかります。
株式会社と合同会社のどちらが良いか?
あらためて、株式会社と合同会社のメリットとデメリットを以下で比較しました。
株式会社 | 合同会社 | |
メリット |
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デメリット |
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合同会社の方が設立時の費用が低く、決算や経営もシンプルにできるため、すぐに会社を始められます。しかし、株式会社の方が多くの出資者から資金調達ができる上に社会的信用度が高いため、大規模に事業を展開させていきたい方には株式会社の方がいいでしょう。
会社設立の流れやかかる期間
必要書類を過不足なく揃えて管轄の法務局に提出すれば、会社設立は完了です。しかし、書類の準備や定款の作成などには、ある程度の期間が必要になります。会社設立の流れや、会社設立にかかる手続きの完了にかかる期間を見ていきましょう。
会社設立の流れ
まずは会社の形態を決定します。事業を進めていく上で、株式会社と合同会社のどちらが適しているのかを見極めていきましょう。どの会社の形態を選んだ場合でも、定款の作成は必要です。しかし、合同会社では公証人による認証を受ける必要がないため、上記の「定款の認証」のステップは省けます。
次に資本金の払い込みを行いましょう。その後、法務局に会社設立申請書と必要書類を提出して登記申請します。書類に過不足や間違いがないことが確認されて受理されれば、会社設立は完了です。
会社設立にかかる期間はどのくらい?
必要書類を集める作業と定款を作成する作業がスムーズに進み、なおかつ上記の流れが滞りなく進めば、2~3週間もあれば会社を設立できます。
株式会社の場合は定款を認証する時点において、発起人すべての印鑑証明書が必要です。もし発起人の中に書類提出が遅い方がいると、会社設立までに予想以上の時間がかかることもあります。
定款の作成(基本事項の決定)
次は定款の作成について紹介します。定款とは、先ほど紹介したように会社における憲法のようなもので、会社設立時には必要なものです。そのため、会社設立時には以下の14個の事項について決めて、定款に記載しなければなりません。
- 発起人を決める
- 設立方法を決める
- 商号を決める
- 株式の譲渡について決める
- 機関を決める
- 資本金を決める
- 出資額を決める
- 現物出資
- 株式について決める
- 役員を決める
- 本店所在地
- 事業目的を決める
- 公告方法を決める
- 事業年度を決める
以下、詳細について説明します。
①:発起人を決める
発起人とは会社設立に参画し、手続きを進め、その責任を負う者と定められています。発起人は誰でもなることができるのですが、株式を発行する際には必ず1株以上を引き受ける必要があります。また、発起人は複数人定めることができ、発起会を開いて発起人会議事録を作成します。
②:設立方法を決める
会社の設立方法には発起設立と募集設立の2種類があります。発起設立とは出資者が発起人だけで会社を設立することを言います。一方、募集設立とは株式引受人を募集して会社を設立することを言います。募集設立の場合は払込金の保管証明が必要など手続きが煩雑になることに注意が必要です。
③:商号を決める
商号とは定款や登記申請書に記載する会社名のことです。商号にはいくつかルールがあり、必ず株式会社の文字を入れる、同一住所で同一商号は不可などの決まりがあります。なお、他社の商号と似たような商号にすると不正競争防止法などに抵触し、問題になる恐れがあります。
④:株式の譲渡について決める
株式会社を設立するときに株式を自由に譲渡できるか、譲渡には会社の承認が必要かを決める必要があります。前者を公開会社、後者を株式譲渡制限会社といいます。会社を設立するときには株式譲渡制限会社にすることをおすすめします。その理由は機関設計や運営などにおいて自由度が高く、いろいろ試すことができるからです。
⑤:機関を決める
機関とは、株主総会や取締役など会社を運営する際に必要になる会議体や役職のことです。会社を設立する際には機関を決めて、定款に記載する必要があります。株式譲渡制限会社であれば、自由に機関を設定することができますが、株式会社の設立には株主総会と取締役は必要になります。
⑥:資本金を決める
資本金とは会社への総出資額のことで、会社の規模を表すことができます。株式会社を設立する際、資本金は1円でも問題はありませんが、特別な理由がなければ、「開業から半年程度の間必要となる運転資金の額」にする場合が多いです。
⑦:出資額を決める
資本金に対する各出資者の出資額を決めます。発起人は必ず1株以上保有しなければならないのですが、注意するべきことは株式の保有比率が株主総会の議決権の比率を決めていることです。設立する株式会社の経営者は会社の決定権を握れる程度は出資しなければなりません。
⑧:現物出資
株式会社の場合、原則的に出資は金銭に限られています。しかし、発起人に限り現物出資をすることができます。例えば、不動産やパソコンなどです。ただし、出資額が500万円を超えると検査役を選任する必要があり、それにさらに費用が掛かることに注意が必要です。
⑨:株式について決める
株式については(1)株券発行の有無、(2)株式の価格、(3)発行可能株式総数の3つを決める必要があります。(1)については発行しないことが基本になっていますし、(3)は会社法で様々な決まりがあります。これらについても定款に記載する必要があります。
⑩:役員を決める
誰がどの役員になるのかを定款に記載します。ただし、法人や服役中の人が取締役や監査役などの役員になることはできません。また、役員には任期が決められており、変わるたびに登記する必要があります。
⑪:本店所在地
定款では本店所在地を記載する必要があります。本店所在地は日本国内であれば問題ありません。また、会社の本社を本店所在地として記載する必要はありません。ただし、株主総会議事録などは本店と登記した場所に備え置かなければいけません。
⑫:事業目的を決める
事業目的とは、株式会社が行う事業内容のことで複数記載することができます。なお、事業目的に記載されていない事業を行うことはできません。また、専門用語で記載してはいけないなど事業目的の記載時にルールがあることにも注意が必要です。
⑬:公告方法を決める
公告とは決算や合併など会社法で定められた事項について公開する手続きのことです。通常は官報と電子公告(ホームページ上での公告)が多いため、この2つを選びます。電子公告の場合、費用はほとんどかからないのですが、全文記載する必要があります。
⑭:事業年度を決める
事業年度とは会社の会計上の計算期間のことです。事業年度の期間は1年以内であれば自由に設定できますし、期日についても自由に設定することができます。通常、事業年度は1年間で、4/1~翌年の3/31で設定されることが多いです。
⑮:印鑑を作成
会社設立の際には「代表者の実印」と「銀行印」、「社印(角印)」が必要です。印鑑専門店に行けば「会社設立3点セット」のような形で販売していますので、迷わずに購入できるでしょう。
また、株式会社の場合には発起人全員の印鑑登録証明書の提出が求められます。実印がなく、印鑑登録を済ませていない発起人がいる場合は、実印の作成が必要です。既存の印鑑を使用する場合には時間がかかりませんが、こだわってオーダーする場合は1週間ほど時間がかかることもあるでしょう。
上記の3点セットのほかには、簡易的な利用や署名で使うゴム印を作成する会社もあります。
定款の認証
会社設立に関する基本事項を決めて、定款を作成しても、そのまま法務局に提出することはできません。定款を作成した後、記載している内容が正しいか、会社法に抵触しないか確認する必要があります。この確認について公証役場で認証してもらいます。ここからは定款作成後の定款認証の流れについて説明していきます。
定款認証とは
定款認証とは、定款が発起人によって正しく作られたことを公証人が確認・証明することと定められています。株式会社の定款は公証人による認証を受けなければ効力はありません。定款認証は本店所在地と同一の都道府県にある公証役場で行います。
定款認証の流れ
定款認証の流れは以下のフローチャートのようになります。
まずは、会社概要に基づいて定款を作成します。その際に発起人全員の印鑑証明書もとっておきます。次に公証役場に連絡し事前チェックを受けてから発起人全員が実印を押し、定款を完成させます。その際に同じ定款を3部作成し、3部ともに発起人全員の実印を押します。その後、公証役場に連絡し予約をとり、公証役場で認証を受けます。公証人が定款を確認した後、収入印紙を貼り、消印を押します。最後に認証済みの定款を受取ります。この際、登記用(謄本)と会社保管用(原本)の2部が返還され、収入印紙を貼ったものは公証役場で保管されます。
出資金の払込み
定款の認証が完了したら、次は出資金の払込みを行います。株式会社では出資金の額に応じて配当金や株主総会での議決権数が変わるため、丁寧な確認や証明書の保管が重要になります。ここの段階では、いくつか注意点があるので、つまずかずしっかり準備ができるように説明します。
出資金を払込む口座の準備
出資金を提供するために払込を行うための口座を準備します。基本的には発起人の個人口座がその口座になります。登記前の段階では会社名義の口座を作ることができません。そのため、発起人個人の口座を使うことになります。なお、払込を行う口座は普段使っている金融機関のもので問題ありません。
払込の流れ
払込の流れは以下のフローチャートのようになります。
最初に(1)定款が認証されてから入金を行います。その後、(2)入金を証明するために通帳のコピーを取ります。最後に(3)払込証明書を作成します。それぞれの手続きにおけるタイミングなどのポイントは次の見出しで紹介します。
それぞれのタイミングにおけるポイント
(1)入金は定款認証後でなければなりません。万が一、定款認証前に入金すると法務局で受理してもらえない可能性があります。
(2)通帳のコピーは3枚必要で、通帳の表紙・表紙の次のページ・入金が確認できるページをコピーします。なお、入金が確認できるページではコピー後、ラインマーカーなどで確認やすくする必要があります。
(3)払込証明書の作成では、すべて会社の実印を使います。発起人の実印ではないことに注意が必要です。
現物出資がある場合
現物出資を行う場合も注意するべきことがあります。まず、現物出資は発起人しかできません。また、現物出資額の評価額が500万円を超えると裁判所に検査役の選任・調査を依頼しなければならず、これに100万円の費用が掛かります。さらに現物出資を行う際には、現物出資財産引継書・調査報告書・資本金の額の計上に関する証明書の3つの書類を作成する必要があります。
登記の書類作成と申請
払込の手続きが終わると次は登記を行います。登記を行うことで設立する会社を法人として認めてもらうことができ、万が一のことがあれば、法的に対抗することができます。そのため、登記は会社設立において非常に重要な手続きであると言えます。ここでは登記の方法や場所、登記の流れについて説明します。
登記とは
登記とは、法務局に備えられている登記簿に権利関係や重要事項を記載することを言います。これにより権利関係などを第三者に対抗することができます。登記には不動産登記と商業登記があり、会社の重要事項や設立に関するものは後者の方になります。
登記する方法と場所
登記の申請方法には、下記の3種類があります。
(1)書面一式を法務局の窓口に提出する方法
(2)管轄の法務局に郵送する郵送申請
(3)インターネットで提出するオンライン申請
いずれの場合も、申請する場所は法務局になります。なお、会社の設立日は登記の申請日になります。
登記する事項
法務局では、以下の事項を登記します。書類に過不足がないよう、正確に記しましょう。
- 商号
- 本店住所
- 公告の方法
- 目的
- 発行可能株式総数
- 発行済株式の総数
- 資本金の額
- 株式の譲渡制限に関する規定(設定する場合)
- 役員に関する事項:取締役の氏名、代表取締役の住所・氏名、監査役の氏名
- 取締役会の設置、監査役の設置(取締役会を置く場合)
申請の流れ
登記の申請の流れは以下のフローチャートのようになります。
まずは、書類の作成・準備を行います。この段階で取締役の印鑑証明書も準備しておきます。次に、必要書類の押印を確認し、順番になるようにセットします。法務局への登記を申請し、必要があれば補正します。書類に問題がなければ、登記完了となります。登記完了になるまでは申請から1週間前後かかります。
登記申請の際に必要となる書類は以下の通りです。
- 「設立登記申請書」と「登録免許税貼付台紙」
- 「登記すべき事項」の提出(FD、CD-R、オンライン申請)
- 「印鑑届書」
- 添付書類一式(定款や印鑑証明などの書類)
登記が完了すると会社を設立したことになり、事業をスタートさせることができます。
各役所での手続き
法務局への登記が終われば、役所での手続きはすべて終わりということではありません。いずれも会社として事業を行っていく上で欠かせない手続きなので、所定の期間内に済ませましょう。税務と社会保険の2つに分けて見ていきます。
なお、書類提出時には登記簿謄本が別途必要なケースも多いので、併せて準備しておくことをおすすめします。
税務署と都道府県税事務所に提出する書類
税務署と都道府県税事務所に提出する書類と、それぞれの提出期限は以下の通りです。法人設立届出書に関しては、それぞれの都道府県税事務所や市区町村役場ごとに提出期限が異なるため、ホームページか電話で確認しておきましょう。
提出する書類 | 提出する場所 | 提出期限 |
法人設立届出書 | 都道府県税事務所 | 自治体によって異なる |
市区町村役場 | 自治体によって異なる | |
税務署 | 会社設立2か月以内 | |
給与支払事務所等の設立届出書 | 税務署 | 1回目の給与支払日まで |
青色申告承認申請書 | 税務署 | 原則として設立3か月以内 |
社会保険
会社設立には社会保険への加入が伴います。それぞれの提出する場所と提出期限は以下の通りです。
社会保障の種類 | 提出する書類 | 提出する場所 | 提出期限 |
厚生年金 | 新規適用届 | 年金事務所 | 設立後5日以内 |
新規適用事務所現況書 | 設立後5日以内 | ||
被保険者資格取得届 | 被保険者の資格取得後5日以内 | ||
健康保険 | 新規適用届 | 年金事務所 | 設立後5日以内 |
新規適用事務所現況書 | 設立後5日以内 | ||
被保険者資格取得届 | 被保険者の資格取得後5日以内 | ||
労災保険 | 保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 労働雇用日から10日以内 |
概算保険料申告書 | 労働雇用日から50日以内 | ||
雇用保険 | 適用事務所設置届 | ハローワーク | 設立後10日以内 |
被保険者資格取得届 | 被保険者の資格取得した事実があった翌月10日まで |
なお社会保険被保険者に扶養者がいる場合には、年金事務所に「健康保険被扶養者(異動)届」と「国民年金第3号被保険者届」も会社設立後5日以内に提出しましょう。
会社設立により必要になるもの
会社を運営していくためには、書類の提出以外にも必要な手続きが存在します。例えば法人クレジットカードや法人口座は、取引や営業をする上で欠かせないものです。
「期限は決まっていないけれども早めに準備することが望ましいもの」について見ていきましょう。
法人クレジットカード
会社関係の出費を1つのクレジットカードにまとめると、明細票による経費の管理や計算が簡単になり、キャッシュフローが分かりやすくなります。
また、従業員がいる場合は追加カードを発行すれば、従業員がある程度自由に使える上に支出を1つ口座にまとめられるので、経理作業の簡略化に役立つでしょう。
法人口座
会社のお金と個人のお金を明確に分けて管理するためにも、法人口座は欠かせません。金融機関によって口座開設に必要な書類が異なるので、確認しておきましょう。一般的には、登記事項証明書や代表者の印鑑証明書、定款などの多数の書類提出が必要です。
なお、書類が不備な場合や資本金の額が少ない場合は、口座開設を断られる可能性があります。事前に基準についても尋ねておきましょう。
オフィス
オフィスを構えることで顧客や取引先からの信用度を上げることができます。オフィスを借りる費用や水道光熱費などは経費として計上可能です。しかしオフィスを構えるためには、敷金や不動産仲介手数料、家具代などの初期費用がかかるため、事業が軌道に乗ってからという選択肢もあります。
会社設立後の名義変更
最後に、番外編と題して、会社設立後の名義変更について紹介します。事業を法人化させる際、主体が個人から会社に変わるため、様々なものについて名義変更をする必要があります。ここでは名義変更が必要なものや名義変更における注意点などについて紹介します。法人化の際に名義変更の抜け漏れがないよう注意しましょう。
事務所、店舗、駐車場などの賃貸借契約
1つ目は賃貸借契約における名義変更です。事務所や店舗、駐車場などの契約が該当します。法人化後もそのまま使用する場合には、個人名義から会社名義への変更手続きを行う必要があります。
車両と車両保険
2つ目は車両や車両保険の名義です。個人名義の事業用の車両を法人後も使用する場合は名義変更手続きを行うようにします。合わせて、車両保険の名義も変更しましょう。
電話などのインフラ契約、リース契約
3つ目はインフラ契約、リース契約です。インフラ契約には電話や電気、ガス、水道、インターネット通信があります。法人後も引き続き使用する場合は名義変更を行います。リース契約についても同様に会社名義に変更します。
借入金
借入金も必要があれば、名義変更します。特に個人事業の時に金融機関から事業用融資を受けていた場合、それを会社が引き継ぐのであれば、その金融機関に必ず名義変更を依頼するようにしましょう。
取引先との契約書
5つ目は取引先との契約書です。取引を継続する場合、取引先が変わることになるため、契約は必ず会社名義に変更しておきましょう。
会社設立の際に手続きを頼める専門家
会社設立の際には手続きが多く、設立後も税関係・社会保障関係と多数の手続きがあります。書類提出には期限がある上に、作成枚数も多いです。そこで会社設立をスムーズに行うために手続きの外注も検討してみましょう。
ここからは手続きを依頼できる専門家を紹介します。
税理士
税理士は税関係の手続きを行う専門家です。会社設立後に税事務所や市役所に提出する書類の作成や提出は、税理士に代行してもらうことができます。また、税の専門家のため、会社設立後に節税について相談したり、税務処理を依頼したりすることも可能です。会社設立当時からよい税理士とつながることで、経営や税務上で大きなメリットになります。
行政書士
行政書士は行政に提出する書類を作成する専門家です。会社設立においては定款認証手続きの代行や、市区町村役場への提出書類の作成・提出を依頼できます。
司法書士
司法書士は法務関係の手続きの専門家です。会社設立においては法務局での登記申請手続きを代行を任せられます。法務局での登記手続きの代行は司法書士の独占業務です。つまり会社設立の手続の代行を専門家に依頼するときは、必ず司法書士が関わることになります。
社労士
社労士(社会保険労務士)は、社会保険に関わる手続きの専門家です。会社設立においては年金事務所や労働基準監督署、ハローワークへ提出する書類の作成や届出を任せられます。
会社設立後は、自社の労務や勤務体制、各種保険制度についての相談も可能です。従業員の採用拡大や就業規則の変更などを考える場合は、引き続き社労士とのパートナーシップを結んでおきましょう。
会社設立はプロに相談しよう
複雑な手続きも、専門家に依頼すればスムーズに完了します。個人で手続きをする場合、書類に不備等があって何度も役所に通うことにもなりかねないため、専門家に依頼するほうが安心です。
また「法制度や税制度の改訂」や「会社設立の際に利用できる補助金」などの知っておきたい情報も得られるというメリットもあります。今後の経営を考えた際も、専門家への依頼はおすすめです。
監修税理士のコメント
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