FXの法人化をするメリットは?
「欠損金を10年間繰り越しできる」「経費の範囲を拡大できる」「決算期の選択が自由になる」「他事業との損益通算が可能になる」といったメリットがあります。
FXの法人化をするデメリットは?
「設立・維持に費用がかかる」「会社のお金を自由に使えない」「社会保険料コストがかかる」「赤字でも納税義務が発生」といったデメリットがあります。
「欠損金を10年間繰り越しできる」「経費の範囲を拡大できる」「決算期の選択が自由になる」「他事業との損益通算が可能になる」といったメリットがあります。
「設立・維持に費用がかかる」「会社のお金を自由に使えない」「社会保険料コストがかかる」「赤字でも納税義務が発生」といったデメリットがあります。
FXの法人化を目指す目的は、「節税」と「ハイレバレッジ」にあると言われます。しかし、節税には必ずクリアすべき条件がつきますし、レバレッジの高さは、「益」だけではなく相応のリスクにつながるため、過去に50倍、25倍と相次いで規制が強化されてきました。
これらの事情を踏まえ、以下、解説を進めていきます。
FX法人化で節税効果を得るためには、まずFXに関する課税制度を知る必要があります。
個人がFXで利益を得た場合は、「先物取引に係る雑所得等」として、利益に対して所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%(所得税の2.1%を2037年12月31日まで)の計20.315%が課税されます。
この手続きは、「総合課税における確定申告」ではなく、「申告分離課税」として区分されるため、他の事業所得との損益通算ができない点に注意が必要です。
一方、FXを法人化すると、個人は法人から役員報酬を受けることになります。役員報酬は法人にとっては費用となって課税所得が減少し、個人にとっては給与所得控除を受けることで相対的(分離課税に対して)に税率が下がる効果があるので、個人・法人トータルで節税することが可能です。
ただし、役員報酬については、法人税の計算上、損金として認めてもらうためには、下記のとおり備えるべき要件や規制があるため、単なる節税目的だけで報酬額を安易に決定すると、思わぬ落とし穴に落ちることになります。
(表1)法人税法で定められた損金算入の要件と規制内容
区分 | 内容 | |
1,一般的な給与 | 定期同額給与 | 支給時期が2カ月以下の期間ごとで、その事業年度の毎月の支給額が同額であること。 |
事前確定届出給与 | 株主総会や取締役会で所定の時期と支給額を確定し、かつ、所轄税務署に届け出ている内容に基づき支給される給与。 | |
利益連動給与 | 有価証券報告書に記載されるその事業年度の利益の指標に基づき算定される給与(主に上場会社が対象です)。 | |
2,不相当高額給与 | 実質基準と形式基準があり、どちらに該当しても不相当です。形式基準とは、定款の規定、株主総会、社員総会等で決議される役員給与の総額を言います。実質基準は、役員の職務の内容と規模が同等の同業他社の支給額等から相当性を判断します。 | |
3,不正経理による支給 | 事実を隠蔽又は仮装して経理し、支給された役員給与は損金に算入できません。 | |
4,経済的利益 | 1~3には、債務の免除及びその他の経済的な利益が含まれます。 |
※ 2006年の法人税法改正により、税法上、「役員報酬」は「役員給与」と呼称が変更されています。
このように、要件に適合しない場合や規制に抵触して損金不算入となれば、費用は支出したものの課税所得が増えて法人税も増えるという逆効果になりますので、正確な知識と適正な会計処理が求められます。
金融庁のレバレッジ規制は、もう一段強化されるのではないかという懸念が広がっています。
2018年2月12日に日本経済新聞が、「金融庁が最大レバレッジを10倍に引き下げを検討している」旨を報じましたが、金融庁の正式発表前だったこともあり、FX業者や個人投資家に動揺が広がりました。その後の反響の大きさもあり、5月に入って金融庁はこの規制を見送ったという経緯があります。
このような更なる規制強化の動きが、FX投資家に、個人口座より高いレバレッジを活用できる法人化や、さらにハイレバレッジが効かせる海外FXの口座開設へと誘う契機になりました。
海外FX業者は、税制の違いや800倍を超えるハイレバレッジをはじめ、ゼロカット制度によって追証の必要がないなど、国内業者にはないメリットが多く見られます。
一方で、言葉の壁や信託義務がないなど、海外業者特有のリスクやデメリットも存在するため、単に国内業者より魅力があるという理由だけで海外業者を選ぶのは危険です。
FXは人気の高い投資法ですので、インターネット上で、口コミや多様な角度から情報を得ることができます。これらを活用し、メリット・デメリットを多角的に評価した上で、国内外を問わず自分にとって有益な業者を見極めることが重要です。
FXの法人化を目指すにあたり、「ハイレバレッジ」という仕組みや、特有の課税制度に対する「節税」という部分に目が行きがちですが、一般的に、個人事業者が法人化を目指す目的やメリットとデメリットを見れば、もっと多角的な視野で検討することができます。
たとえば、メリットについては以下のように整理することができます。
FX法人化を目指す目的(4つのメリット)
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以下、この4つのメリットについて詳しく説明していきます。
法人化を目指す動機やその適否は、事業目的によって若干の相違があるかもしれませんが、ほとんどの場合、表2に記載した事項が法人化を目指す目的であり、メリットとなるものです。
このメリットの内容を知れば、FX法人化のための一つの目安となります。
法人税法では、前期以前に生じた赤字は、「欠損金の繰越控除」の規定により当期の損金に算入できます。一方、所得税法(個人の場合)においても、「純損失の繰越控除」が認められており、当年度の所得から控除することができます。
繰越控除をできる期間は、個人は3年、法人の場合は10年間可能であり、繰越控除と損益通算等に関する法人と個人の相違点は以下の通りです。
(表2)欠損金の繰越控除に係る対照表
個人の場合 | 法人の場合 | |
一般要件 | 1青色申告であること(白色でも許容される場合あり)
2純損失を生じた年に確定申告書を提出していること 3純損失の確定申告以降連続して確定申告書を提出していること |
1青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金であること
2欠損金を生じた年度以降連続して確定申告書を提出していること 3欠損金が生じた事業年度の帳簿が保存されていること ※なお、資本金が1億円を超える大法人は、控除される欠損金に制限があります。 |
効果 | 1, 3年間の繰り越しが可能
2, 事業所得、不動産所得等と通算して控除しきれない額が残った場合、繰り越すことができます。 |
1, 最大10年間の繰越が可能(2018年4月1日以後に開始する事業年度に生じたもの。それ以前は9年。)
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FX関係の損益通算等 | FXは、「先物取引に係る雑所得等」として「申告分離課税」のため、そもそも他の所得(事業所得、不動産所得等)との損益通算ができません。ただし、他の「先物取引に係る雑所得等」との損益通算は可能で、この損益通算でなお引ききれない損失額がある場合は、一定要件の下で、翌年以後3年以内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額から控除することができます。 | 定款に定めた事業として取り組むFXは、その他の事業を含めた全事業を合計して法人税の計算が行われるため、結果として損益通算効果があります。 |
FXの法人化で最も効果が大きいのは経費の範囲が広がることです。
前述の通り、法人から経営者に支払われる役員報酬は、要件を満たせば損金算入できますので、法人税の節税に直結します。また、経営者の配偶者等も役員に加えることで、会社から経営者側に支払われる費用が増え、結果として法人の節税と個人の税率抑制にもつながります。
このほか、自宅を会社事務所とすることで、光熱費や固定資産税、通信費、賃借物件の場合の賃借料等の一部を損金算入できるなど、メリットが大きいです。
個人の場合、所得の締め切りは暦年(1月~12月)で区切られ、毎年3月中旬を期限とする確定申告を行って納税するという流れです。一方、法人の場合は、資金繰りや業務の繁閑を考慮し、事業年度を定款で自由に定めることができます。
投資が順調で利益が出ていれば法人税や事業税、法人住民税などの税金の支払いにも多額の現金を用意しなければなりません。投資資金以外の現金を用意しやすい時期を決算期とするなど、実情に応じて決めることができます。
(表2)で示したように、法人の場合は、定款にFXとともにその他の事業を目的として定めておけば、法人税は全事業を合計して計算するため、損益が通算され、FXで損失が出ても他事業の利益と相殺できる点で個人よりも税制的に有利です。
このような利点もあることから、収益変動の大きいFXのみを事業目的とするのではなく、法人化当初から、事業範囲を広げておくことも検討すべきでしょう。例えば、不動産や株式への投資を事業目的に加え、法人として、複数の収益の柱を設けることも必要です。
期中で新規事業を始めようとしても、定款に定めがなければ法人として取り組むことはできません。このため、FX法人化の時点で、取り組む可能性のある全ての事業を定款に定めておくことが肝要です。
メリットが、お金の増える話しなら、デメリットは、お金が出ていく話しが中心です。お金の減少は、最小支出で済ませるなど、資金効率を上げることで対処しなければなりません。
以下、そのデメリットと対処法について解説します。
「法人化=会社設立」となりますが、そのためには様々な費用がかかります。会社と言えば株式会社が一般的ですが、近年は、設立費用の安さや簡便な手続き、そして設立後のオペレーションのしやすさから、合同会社で起業するケースが急激に増えています。
わかりやすくするため、この両者を対比してみましょう。
(表3)会社設立費用の概算額
項 目 | 株式会社 | 合同会社 | 摘 要 |
定款認証印紙代 | 0円 | 0円 | 電子定款を利用すると無料です。 |
公証人による定款認証費用 | 50,000円 | 0円 | 合同会社はこの手続きは不要です。 |
登録免許税(注1) | 150,000円 | 60,000円 | ここでは法定の最低額を記載。 |
設立費用 計 | 200,000円 | 60,000円 | 司法書士費用は別途必要です。 |
(注1)登録免許税
商業登記に係る登録免許税は、株式会社と合同会社については資本金の0.7%で計算されますが、計算した額が法定の最低額に達しない場合は最低額が適用されます。また、定款認証印紙代については、ここでは電子定款利用を前提として無料としていますが、紙の場合は、両者ともに4万円が必要です。
なお、FXの法人化手続きを司法書士などに依頼する場合は、別途費用が必要ですが、司法書士によって、サービスと価格設定が微妙に異なり、画一的な価格ではご紹介できません。一般的には5~10万円程度と幅があるので、個別に確認が必要となります。
このほか、会社設立後にも各種の手続きが必要です。
具体的には、所轄税務署、都道府県税事務所、市町村への「法人設立届出書」を含めた各種税務関係書類の届出のほか、社会保険・労働保険関係等の手続が必要です。
これは、当初の手続きだけではなく、届出以降、事務的な負担が恒常的に発生するということであり、専任の事務担当者の人件費や税理士費用等が発生することになります。
個人事業の場合、事業で獲得した利益は自分で自由に使うことができますが、法人化すると、会社の資産・負債と個人のそれは明確に区分しなければなりません。このため、オーナー社長といえども、会社のお金を自由に使うことができなくなります。
また、自分の生活に関わる資金を会社から借り入れるような場合でも、約定利率やその支払期日を含めた正式な内容の金銭消費貸借契約書を締結し、実際に利息も支払わなければなりません。
これを怠ると、別の税金関係が発生するなど、経理・税務の両面で不都合が生じることになります。
従業員が常時5人未満の個人事業の場合は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は任意ですが、法人の場合、会社役員は加入義務が発生することとあわせ、雇用した従業員も一定の要件に該当する場合は加入義務が生じます。このため、労使折半となる社会保険料の費用負担が発生することになります。
また、労働保険は個人・法人の別を問わず、従業員を一人でも雇用すれば加入が強制され、社会保険とは別の費用とリスクを抱えることになりますので、法人化の際の人的体制は入念に検討しなければなりません。
税金関係では、国税である法人税のほか、所在する都道府県及び市町村が課税する「法人事業税」と「法人住民税」があります。
このうち「法人事業税」は、法人税の課税標準に準じた所得額によって計算されますので、赤字の場合は課税されません。
一方、「法人住民税」は、「法人税割」と「均等割」で構成されており、赤字の場合は「法人税割」は課税されませんが、「均等割」は、資本金等の額と事業所の従業員数によって課されるため、たとえ損益が赤字であっても課税されます。
金額は自治体によって異なりますが、最低額で見ても、7万円(都道府県:2万円、市町村:5万円)程度がかかります。
FX事業を法人化すると、損金繰り越しや経費拡大など、大きなメリットを得られます。しかし、そのメリットを最大限享受できるようにするためには、法人化するタイミングを見極めなければなりません。
ここではFX事業の法人化に適しているタイミングの目安を解説します。
法人化するのに最適なタイミングを知るには、利益がプラスになるポイントである損益分岐点の見極めが重要です。
個人事業主の場合と異なり、法人には所得税(支払った役員報酬分のみ)と法人税がかかります。役員報酬にかかる所得税には、個人事業主には適用できない「給与所得控除」が適用でき、大幅に課税所得額を減らすことが出来ます。同時に役員報酬で支払った分は、一定条件を満たせば損金として会社の経費に算入できるので法人税の節税にもなるでしょう。
また法人税は所得税より累進性が低く、かつ個人事業主の場合よりも多くの経費項目が存在しているので、これらを十分に活用できれば個人事業主の場合よりも法人化した方が節税できるといえます。
上記を考慮すると、一般的に事業所得600万がそのボーダーとされています。
ただし法人化に適したタイミングは、事業の状況など個々のケースで異なるので、自己判断せずに、税理士に相談するのがおすすめです。
課税売上高が1,000万円を超えるタイミングを目安に法人化すると、2年間は消費税免税事業者になれます。
個人事業主の場合、2年前の課税売上高が1,000万円を超えると消費税課税事業者になります。ここでポイントになるのは「2年前と現在の事業形態」です。
2年前は個人事業主で現在は法人の場合、課税売上高の額に関わらず、事業形態の異なる別人格として扱われます。つまり法人化1年目は、その2年前には法人ではないため、消費税納税事業者の判断材料となる課税売上高はゼロです。同じく法人化2年目も、その2年前には法人ではないため、消費税免税事業者となります。
FX事業を法人化する際には、トラブルを避けたり法人事業としてスムーズに進めたりするために、次のような気を付けたいポイントがあります。
ここではこの4つについて、順番に解説していきます。
副業禁止の会社に勤めているサラリーマンは、FX法人からの役員報酬をもらわないことをおすすめします。
サラリーマンが2ヶ所以上から所得がある場合、総所得が増える=住民税が増えることになります。サラリーマンの住民税は、給与から天引きされるのが基本です。そのため、会社の給与分よりも多い額の住民税が給与から天引きされ、会社以外からも所得を得ていることがバレてしまう可能性があります。
FX法人に限らず、副業を禁止している会社は注意が必要です。
法人化する場合、資本金は100万円以上1,000万円未満にするのがおすすめです。
資本金額を明示しているFX業者は多くはないため、1円からでもFX法人化は可能です。しかし銀行口座開設の審査に通ることを考えた場合、銀行口座開設の最低資本金額として明示されているケースの多い100万円を資本金として用意するとよいでしょう。
また資本金額を1,000万円以上にすると、法人化1年目から消費税納税事業者となってしまうだけではなく、法人住民税も高くなってしまいます。法人の節税効果を活かすためにも、資本金は1,000万円未満に抑えましょう。
FX法人の会社名には、「FX」を入れないのがおすすめです。
後で別の事業にも参入する場合や、FX事業を辞めて別の事業に変更する場合にも、そのままの会社名を使用できます。また銀行口座開設の審査などの場面では、会社名に「FX」が入っていると、信用の低い会社だと映ってしまうこともあります。
法人を設立する場合、定款に法人の事業目的や組織などを明記しなければいけません。この事業目的には、「FX」以外の事業も複数記載しておきましょう。
法人事業に関わる場面では、定款の謄本の提出を求められることがあります。このときにFX事業しか記載されていないと、提出先の信用を得にくいことがあるのです。
また「FX」以外の事業を行う場合、費用をかけて後から定款に事業目的を追加するよりも、最初から将来を見越して複数の事業目的を記載しておくといいでしょう。
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