会社の設立を税理士に依頼する場合、報酬の費用相場は12,000円~287,000円(※)と幅があります。設立する法人の種類によって報酬額は変動するので、事前の見積もりが重要です。


会社の設立を税理士に依頼することには節税以外にもメリットがあります。起業を考えたときにどのタイミングで依頼をすべきか、顧問契約の必要性などをチェックしてスムーズに開業をしましょう。
※ミツモアにおける「会社設立・起業開業に強い税理士」サービスの成約価格から算出。(2024年1月1日~12月31日)
会社設立の税理士費用相場
会社設立を税理士に依頼する場合、設立する会社の種類によって費用が変動します。
| 依頼内容 | 費用相場 |
|---|---|
| 個人事業主の設立サポート | 10,000円~20,000円 |
| 株式会社の設立サポート | 8,000円~33,000円 |
| 合同会社の設立サポート | 10,000円~13,000円 |
| 一般社団法人の設立サポート | 50,000円~150,000円 ※1 |
| NPO法人の設立サポート | 100,000円~300,000円 ※2 |
| 設立サポート(形態検討中) | 10,000円~12,000円 |
| 創業融資の申請 | 100,000円~104,000円 |
| 創業補助金の申請 | 19,000円~66,000円 |
※ミツモアにおける「会社設立・起業開業に強い税理士」サービスの成約価格から算出。(2024年1月1日~12月31日)
※1,※2 ミツモア調べ(2025年7月時点)
会社設立で必ずかかる費用
会社設立では、代行の有無にかかわらず必ずかかる費用があります。それを法定費用と言います。
法定費用は株式会社か合同会社によって費用が変わります。
| 費用の項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 150,000円または資本金の0.7%の高い方 | 60,000円 |
| 定款認証手数料 | 50,000円 | 0円(不要) |
| 定款印紙代 | 40,000円(電子定款の場合は不要) | 40,000円(電子定款の場合は不要) |
| 印鑑作成費用 | 5,000円~10,000円 | 5,000円~10,000円 |
| 費用の合計 | 205,000円~ | 110,000円~ |
電子定款を作成するには、税理士など専門家に依頼する必要があります。定款印紙代の40,000円が節約できるうえ、そのほか節税に関するアドバイスを受けられるため、税理士等の助けを借りることがおすすめです。
会社を設立する手続き
会社の設立は以下の流れで行います。
会社設立手続きには、数週間~1か月ほどかかることが多いです。
① 会社印(実印)を作成する
会社を設立するには法務局に登録する「会社実印」の作成が必須です。会社実印は会社の最も重要な印鑑であり、契約書など重要書類に使用します。
会社実印を作成するときに以下の印鑑を作成すると、業務がスムーズに進みます。
| 印鑑の種類 | 使う場面 |
|---|---|
| 銀行印 | 会社名義の銀行口座の開設 |
| 角印 | 請求書や領収書に押す |
印鑑の作成には数日から1週間ほどかかるケースが多いです。会社設立を決めたら、早めに印鑑を作成することをおすすめします。
② 定款を作成する
定款とは会社の基本的なルールを定めた重要な書類です。以下の事柄を定めます。
- 商号(会社名)
- 事業の目的
- 本店所在地
- 資本金額
- 発起人の氏名・住所
- 株式の譲渡制限に関する定め
- 役員報酬の決定方法
- 株主総会の招集方法や決議要件の特例
- 取締役・監査役の人数や構成
会社の運営はすべて定款に基づいて行われるので、慎重に内容を決定しましょう。事業目的の記載が不十分な場合、許認可が取得できなくなったり、融資が受けにくくなったりするリスクがあります。
税理士などの専門家に相談のうえ、適切な定款を作成しましょう。
③ 定款の認証を受ける
作成した定款は公証役場に持参し、定款が正当な手続きによって作成されたものを証明する「認証」を受ける必要があります。認証手続きには以下2つの費用がかかります。
| 定款の認証に関わる費用 | 費用 |
|---|---|
| 定款認証手数料 | 約50,000円 |
| 定款印紙代 | 40,000円 |
紙の定款の場合は、40,000円の収入印紙を貼り付ける必要がありますが、電子定款の場合は収入印紙代が不要になります。
電子定款を作成するには、税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。個人でも電子定款を作ることそのものは可能ですが、ICカードリーダライタなどの専用機材や専用ソフトが必要になるのでコストパフォーマンスが低いです。
④ 資本金を払い込む
定款の認証が完了したら、発起人個人の銀行口座に定款で定めた資本金を払い込みます。この段階ではまだ会社の銀行口座は開設できないため、一般的に発起人の代表者の個人口座を使用します。
誰がいくら払い込んだかが分かるように通帳に記帳することが重要です。
払い込みが完了した通帳のコピーは、会社設立の登記申請を行う際に、資本金が確かに準備されたことを証明する「払込証明書」として必要になります。
⑤ 登記申請書類を作成し申請を行う
すべての準備が整ったら、法務局へ会社の設立登記を申請します。
必要な書類の例は以下の通りです。
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 定款(認証済み謄本)
- 発起人の決定書または議事録
- 印鑑届出書
- 資本金の払込証明書
登記申請が受理され、登記が完了した日が会社の設立日になります。
書類に不備があると修正のために複数回法務局に運ぶことになり、設立が遅れてしまいます。
なお登記申請は司法書士の独占業務です。会社設立の手続きを税理士に依頼した場合でも、提携する司法書士が代理申請を行います。
会社設立の税理士費用を安くするコツ
会社設立を税理士に依頼する場合、費用を安くするには一括見積もりサイトの活用をおすすめします。
一括見積もりサイトで複数の税理士から見積もりを取りましょう。見積もりを取ったら、以下のポイントを確認してください。
- 基本報酬額
- 追加報酬の額と加算タイミング
- 基本報酬に含まれる作業内容
見積もりを比較するときは基本報酬額だけでなく、チェックポイントすべてを比べて、総合的にコストパフォーマンスの高い税理士を見つけましょう。
会社設立を税理士に依頼するメリット
会社設立を税理士に依頼することには4つのメリットがあります。
① 設立にかかる手続きの手間を抑えられる
会社を設立するときは、書類作成や申請、法務局や税務署への届け出など、複雑で面倒な手続きが多く発生します。
税理士に会社設立を依頼すれば、必要書類の作成から申請方法の案内、期限の管理まで一括サポートを受けられます。そのため、自分で進める場合に比べて手間や時間を大幅に削減できる点がメリットです。
ほかにも、書類の不備やミスによる手戻りのリスクも減り、スムーズに設立手続きができます。
② 受けられる補助金や助成金・融資のアドバイスをもらえる
起業時には、国や地方自治体が提供する様々な補助金や助成金、日本政策金融公庫などからの創業融資など、資金調達の選択肢が複数あります。
しかしどのような制度が利用できるか、申請にはどの書類が必要なのかを起業家本人がすべて把握することは現実的ではありません。
会社設立サポートに長けている税理士であれば、資金調達に関する最新情報に精通しており、事業計画書の作成支援を含め、自社が活用できる制度について的確なアドバイスをしてくれます。
ただし補助金・助成金に関するアドバイスについては、税理士の専門性に個人差がある点に注意が必要です。依頼する前に自分が設立したい会社の業界・業種に詳しい税理士であるか、よくチェックしましょう。
② 税務申告書の申請なども一括で依頼できる
会社を設立すると様々な書類を提出する必要があります。
会社設立に伴う提出書類
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払い事務所等の開設届出書
これらの書類の提出先は税務署や都道府県、市区町村など様々です。提出期限が短く、出し忘れると税制上の優遇措置が受けられなくなるなど、大きな不利益につながるリスクがあります。
税理士に設立を依頼し、そのまま顧問契約を結ぶことで、こうした設立直後の煩雑な税務手続きも、漏れなく適切なタイミングで代行してもらえます。
④ 司法書士と連携して会社設立を代行してくれる
会社を設立するときには、登記申請など税理士だけでは行えない手続きがあります。
多くの税理士事務所では、司法書士と連携したワンストップサービスを提供しています。そのため、会社設立に関するすべての工程をトータルサポート可能です。
司法書士と連携している税理士事務所に依頼すれば、書類ごとに異なる専門家へ依頼をする必要がなくなり、相談する窓口が1つにまとります。
会社設立に強い税理士を見分けるポイント
税理士の中でも特に会社設立のサポートに強みを持つ税理士を見分けるポイントは6つあります。
① 創業融資や資金調達に詳しい
創業期は運転資金が不足することが少なくありません。事業を円滑に進めるためには融資など資金調達を行う必要があります。
日本政策金融公庫からの創業融資など、資金調達に関する知識と実績が豊富な税理士は非常に頼りになる存在です。
融資審査を通過するには、説得力のある事業計画書を作成しなければなりません。税理士に事業計画書を作成してもらえば、知識のない人が作成するよりも融資の成功率が非常に高くなります。
税理士事務所によっては「創業融資成功率90%以上」など非常に高い実績を示していることがあります。資金調達を考えている場合は、融資成功率の高い税理士事務所に依頼しましょう。
補助金や助成金の申請サポートも併せて行える税理士であれば、より多角的な資金調達が可能です。
② 許認可事業に詳しい
特定の事業は設立時に行政の許可・認可・登録・届出が必要なケースがあります。許認可が必要な業種のうち、代表的な業種と申請先をまとめると以下の通りです。
| 業種 | 申請先 |
|---|---|
| 飲食店・食品販売 | 保健所 |
| 不動産業(宅地建物取引) | 都道府県庁、国土交通省 |
| 古物商(リサイクルなど) | 警察署(公安委員会) |
| 旅館・ホテル業 | 保健所 |
| 旅行業 | 都道府県庁・運輸局 |
| 介護・福祉サービス | 都道府県庁・市町村 |
設立時に許認可が必要にも関わらず、認可等を取らないまま営業を始めてしまうと、営業停止や罰則の対象になるのでご注意ください。
許認可申請は行政書士の専門分野となるケースが多いです。しかし許認可に詳しい税理士であれば、事業目的にどのような記載が必要か、資本金はいくらに設定すべきか、など定款作成の段階から許認可取得を見据えた的確なアドバイスを受けられます。
③ 自社の業種や規模に近い設立実績がある
税理士ごとに得意な業種は異なります。自社が展開する事業と同じ、または近い業種の会社設立サポート実績が多い税理士であれば、業界特有の会計処理や税務上の慣行、経営課題などを深く理解したうえでのサポートを期待できます。
税理士事務所のウェブサイトや利用者からの口コミを確認して、どのような業種の設立サポートの経験があるかをチェックしましょう。
また、無料面談を活用して開業予定の業種の設立サポートができるかを尋ねてみることも大切です。
④ 司法書士や行政書士など他士業とも連携している
会社の設立手続きの中には、税理士だけではできない業務が存在します。
| 業務内容 | 依頼先 |
|---|---|
| 設立登記の申請 | 司法書士 |
| 許認可の申請 | 行政書士 |
税理士資格のほかに司法書士や行政書士の資格を持っていたり、他の士業との連携を行っていたりする税理士事務所に依頼すれば、設立登記から許認可申請、税務届出までワンストップで行えます。
⑤ 税務調査に対応している
設立した事業が軌道に乗り、数年経過すると税務署による調査が行われる可能性があります。
税務調査というと、脱税を疑われているのではと不安になりがちですが、一般的に行われるのは「任意調査」といい、納税者の協力のもと行われる調査です。しかしながら不備が見つかれば追加徴税などのペナルティが科される可能性があるので注意してください。
顧問契約を結んでいれば税務調査の立ち会いをしてもらえます。税務調査の際に税務署との交渉や対応を代理で行ってもらえるので、追加徴税などのリスクを抑えられます。
税務調査への立ち会い経験が豊富で、その際の対応方針などについても明確な考えを持っている税理士を選びましょう。
⑥ クラウド会計ソフトなどIT化・デジタル化をしている
経理業務の手間を減らすために、クラウド会計ソフトを活用するケースが増えています。
freeeや弥生会計、マネーフォワードなどの最新のツールに精通し、デジタル化に積極的な税理士を選ぶことで経理業務の大幅な効率化ができます。
チャットツールなどを活用して、日々のコミュニケーションがスムーズに行えるかどうかも重要です。
税理士と顧問契約を結ぶメリット
税理士と顧問契約を結ぶことには3つのメリットがあります。
経営においてはいずれも大きなメリットなので、ある程度経営が軌道に乗ってきたら顧問契約を結ぶことも検討しましょう。
① 節税に関するアドバイスをもらえる
顧問税理士は月々の業績を把握しながら年間を通した計画的な節税対策を提案します。
たとえば利益が多く出そうなタイミングで、将来への投資として設備を購入する、あるいは役員報酬の額を適正化するなどのアドバイスが挙げられます。
会社の業績に沿った節税対策のアドバイスをするには、日ごろから会社の財務状況を共有している必要があります。
② 税務調査に立ち会ってもらえる
税務調査は定期的に行われるものなので、どの会社でも起こりうる出来事です。
税務調査では調査官から、税務や経理に関する専門的な質問が行われます。税務調査を経営者1人で対応することは精神的にも負担が大きいです。
顧問税理士がいれば、調査の事前準備から当日の立ち会い、調査後の税務署との交渉まで全面的にサポートしてくれます。
日頃から適切な経理処理を行っていることを専門家の立場から主張してくれるため、不当な追徴課税を防げます。
③ 月次の業績把握や決算予測ができる
顧問税理士は毎月の試算表を作成し、会社の業績が現在どのような状況であるかを客観的に示します。試算表の作成により、経営者は自社の財務状況をリアルタイムで把握できるので、迅速な経営判断を下せます。
決算が近づいてくればその時点のデータから最終的な利益と納税額を予測し、納税額の目安を算出することが可能です。納税資金を慌てて準備するといった事態を避けることができ、計画的な資金繰りが実現します。
会社設立に強い税理士は一括見積もりで見つけよう

会社設立は個人で行うのではなく、税理士に依頼することをおすすめします。会社設立を税理士に依頼するとコストが発生しますが、発生するコスト以上のメリットがあります。
会社設立の代行費用は税理士ごとに異なります。一括見積もりサイトを活用して見積もりの比較をし、自分に最適な税理士を見つけましょう。
