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【税理士監修】現物出資で増資できるの?メリット・デメリットは?

最終更新日: 2019年12月24日

会社の設立・運営には資本金が多いと有利ですが、「現物出資を利用して現金がなくても増資できる!」と聞いたことがあるのではないでしょうか。当記事では「現物出資とはなにか?」を始めとし、現物出資のメリットやデメリット、手続きの流れや税金関係についてご紹介します。

この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区北品川

 
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現物出資の概要

現物出資の概要や基礎知識
現物出資は現金以外を資本金にすること

「最低資本制度」の撤廃によって、資本金1円以上あれば法人が設立できるようになりました。しかし資本金が多いとさまざまなメリットがあるため、資本金は多ければ多いほど有利なのが現状です。もし手持ちの自己資金以上に資本金を増やしたいなら、一度現物出資を検討してみましょう。

現物出資って一体何?

現物出資とは「お金以外の資産を出資し資本金にする」ことを指します。ここでの現物とは「金銭以外の財産で金銭的価値があるもの」です。たとえばあなたが新会社を設立する時、自己資金や集めたお金だけでは足りない場合に現物出資を行えば、自分1人でも資本金を増やせます。

現物出資は新しい会社の設立時だけでなく、M&A(企業の合併・買収・業務提携など)の条件クリアや新株式発行のためにも行われるのが現状です。そのため、会社設立や運営の助けになる出資方法と言えるでしょう。

現物出資の対象になる資産って何?

現物出資の対象になる資産は何かというと、簡単に言えば「金銭以外の財産」です。正式には会社法第199条第1項の3にある「金銭以外の財産」すべてに当てはまります。対象となる主な資産は以下のとおりです。

<現物出資の対象になる資産一覧>

  • 動産(ローンの支払を終えた車・パソコン・OA機器など)
  • 不動産(土地・建物・設備など)
  • 債権(相手に特定の行為や給付を請求できる法的権利)
  • 有価証券(株式・債券・手形・小切手など)
  • 無体財産権・知的財産権(特許権・実用新案権・商標権など)
  • 無形固定資産(営業権・ノウハウなど)
  • ゴルフやリゾートの会員権

発起人のみ出資可能

「現金以外で出資できるなら、あの人に車とか土地を出資してもらって設立しよう!」と思うかもしれませんが、それはできません。なぜなら、会社設立時の現物出資は発起人にしか行えないためです。発起人とは、会社を設立する時に定款作成・資本金の出資等の手続きを実施した代表者を指します。

◆会社設立後の現物出資なら発起人以外でも可能

会社設立時以外の増資等で現物出資を行うケースだと、発起人以外でも出資できます。金銭振込みに関して定められているのは、設立時の株式引き受け時のみです。

現物出資のメリット

現物出資を行うメリットとは
現金以外の資本を補給できる等が現物出資のメリット

現物出資を利用することで、会社設立や運営時にさまざまなメリットを享受できます。現金がなくても資本金を増やせるだけでなく、社会的信用や減価償却の面でも非常に有利になるのです。ここからは現物出資を行うメリットをご紹介します。

現金がなくても資本金を増やせる

現物出資の大きなメリットとして、「手持ちの現金がなくても資本金を増やせる」点が挙げられます。会社を設立する場合、会社法第25条第2項の「各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。」も影響し、発起人の自己資金をベース資本金とするケースが多いです。

ここで「もっと資本金がほしい」と思った時、自己資金に加えて現物出資があれば資本金をかさ増しできます。さらに現金0円の現物出資のみでの会社設立もできるため、現金がなくても「発起人になれる」もしくは「発起人として加わることができる」のです。

社会的信用を得られる

資本金が多いと「財政的に安定している」「会社の事業に対して真剣に取り組んでいる」と判断されます。また、社会的信用を得ることで以下のような恩恵が受けられるでしょう。

<社会的信用が得られるメリット>

  • 信用格付けが高くなり銀行からの融資が受けやすくなる・額が大きくなる
  • 人の採用拡大・入社や定着率上昇につながる
  • 取引先・仕入先からの評価・信頼度が上がり取引しやすくなる

とくに設立して間もない企業にとって、社会的信用度は事業展開や人脈形成において欠かせない評価です。現物出資によって資本金額を上げることは、ビジネスチャンス拡大につながります。

減価償却が可能

現物出資した資産が「減価償却資産」だと減価償却が行えるため、課税所得額を減らし税金を抑えることができます。減価償却とは、長期使用で経年劣化が生じる資産を取得した場合、取得にかかった費用を資産の耐用年数(法定耐用年数による)の間で分散して費用計上できる会計処理です。

減価償却についてさらに知りたい場合は、下記の記事をぜひご覧ください。

関連記事:減価償却とは?基礎から計算まで詳しく解説!|ミツモア

◆現物出資した物は会社備品にして経費で落とせる

減価償却とは別に、現物出資にした現物を備品扱いとして経費計上も可能です。必要経費として節税が行えるのも、現物出資するメリットの1つと言えます。

現物出資のリスクとデメリット

現物出資を行うリスクやデメリット
便利な分さまざまなリスクやデメリットがある現物出資

現物出資のメリットはお金がなくても出資できることですが、癖が強い分リスクやデメリットもよく見ておく必要があります。安易に手を出してしまうとお金のやり繰りが大変になったり、下手すると経営難に陥ったりする可能性も否定できません。以下より、現物出資に伴うリスクやデメリットも確認してください。

資金として充てることが不可能

現物出資による増資はすぐに現金化できないため、運営に使う資金に充てられません。いくら高価な不動産や車を資本金としても、それらを使って物を買ったり設備のメンテナンス費用に充てたりすることは不可能です。つまり会社を運営する場合は、現物出資した額以外の資金繰り・手元資金の調達計画を立てる必要があります。

また金融機関からの融資を受けたい時も、現物出資額と自己資金のバランスに気をつけましょう。たしかに資本金が高額だと信用格付けが上がり融資を受けやすいですが、実際に運用する自己資金額が少ないと融資されない場合があります。日本政策金融公庫の創業融資を受けるにも、「融資資金総合額の1/10以上の自己資金」が必要です。

譲渡所得

不動産を現物出資すると譲渡所得となり、その所得に対して所得税がかかる可能性があります。不動産関係を会社に現物出資するのは譲渡に当たり、所得税の課税対象になるためです。

額は不動産の時価ではなく、出資で手に入れた株式や出資持分の時価になります。さらに不動産の時価と株式等の時価の差で発生した「譲渡益」も課税対象です。不動産の時価が200万で引き受けた株式の時価が220万だと、差額の20万に課税されます。

不動産流通税

不動産を現物出資の資産にすると「設立した会社・法人が新しく不動産を取得した」と見なされるため、資産が不動産流通税(不動産取得税と登録免許税)の課税対象になります。簡単に言えば、不動産を資産として動かす時や不動産の所有権を移転する時にかかる税金です。

現物出資に不足が生じた場合は、差額分を支払わなければならない

現物出資の不足、要するに「現物出資した実際の資産の価格が見積もった時の価格より低かった」場合、その差額分を出資者や取締役が支払わなければなりません。あなたが出資者で「400万だと思ったら実際は200万の価値しかなかった」となれば、あなたは200万円を補填する義務が生じるのです。

この決まりは会社法52条において、以下のように定められています。

(出資された財産等の価額が不足する場合の責任)
第五十二条 株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。

引用:e-Gov|会社法

手続きが面倒

現物出資を行うためには、非常に複雑かつ面倒な手続きを踏まなくてはなりません。「手続きはどれくらい大変なのか?」については、次章「現物出資の手続きの方法」にて詳しく解説します。

現物出資の手続きの方法

現物出資の手続方法
面倒でも覚えておきたい現物出資の手続き方法

現金出資と比べ、現物出資の手続きは非常に手間がかかります。ここでは現物出資を行うために必要な調査や書類作成などを見ていきましょう。

現物出資は500万円以下に抑えておこう!

現物出資額に上限はありませんが、会社設立時や増資時には500万円以下に抑えることをおすすめします。なぜなら500万円を超えると、裁判所が選出した「弁護士や公認会計士などの検査役」から「価格の調査と証明」をしてもらう必要があるためです。

会社法第33条では「発起人は第28条に定めた要素を入れた定款を作成し、裁判所に検査役の専任を申し立て調査してもらう」と書かれているのです。しかし同条第10項の1には「記録された価額が500万円を超えない場合は適用しない」とあります。つまり現物出資額の合計が500万円以下だと、検査を受けなくて良いのです。

10 前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。
一 第二十八条第一号及び第二号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が五百万円を超えない場合 同条第一号及び第二号に掲げる事項

引用:e-Gov|会社法

検査には数ヶ月の日数と労力、100万円近い調査費用を要します。ただでさえ面倒な現物出資をスムーズに進めるためにも、現物出資額は500万円以下に抑えることをおすすめします。

◆その他検査役が必要なくなるパターン

会社法第33条第10項にある検査役が必要なくなるパターンは、他にも以下のケースが存在します。

  • 市場価格のある有価証券で、価格が法務省令で定める市場価格を超えない時
  • すでに弁護士や公認会計士、不動産鑑定士、税理士等から価格に問題ないと証明を受けている時

【STEP1】出資する物の現物時価調査

まずは現物出資する予定物の、時価の調査を行います。本来は裁判所が選出した検査役が実施しますが、500万円以下に抑えておけば発起人や取締役全員での調査で判断可能です。車であれば車種や中古価格市場を調べる、不動産であれば不動産鑑定士に調査依頼をしましょう。ここで調査した内容をもとに、「調査報告書」を作成します。

【STEP2】定款に記載

会社法第28条に従い、定該(会社の商号・事業内容・所在地等の会社の基本ルール)に必要事項を記載します。

<定該に記載する内容>

  • 金銭以外に出資する者の氏名および名称
  • 現物出資する財産やその価格
  • 現物出資する物に割り当てる設立時の発行株式の数

【STEP3】調査報告書の作成

出資する現物の価格や財産の種類を調査したら、取締役や監査役が結果をまとめた「調査報告書」を作成しましょう。作成した報告書は設立登記申請書の添付書類として、管轄の法務局に提出します。この時に調査内容と時価にズレがあると、差額分を発起人や取締役が補填しなければならないので注意してください。

参考記事:法務局|商業・法人登記の申請書様式

◆株式会社設立登記申請書とは

株式会社設立登記申請書とは、法務局に登記申請する際に提出する書類です。会社を設立し、法人格を得るためには必要な手続きですので、こちらも忘れないようにしてください。

【STEP4】財産引継書の作成

現物出資は「発行株式と引き換えに発起人の財産を会社に渡す」形式になるため、財産引継書を作成し出資者から会社に正式に渡ったことを証明しなければなりません。もし出資者が複数人である時は、出資者ごとに財産引継書の作成が必要です。こちらも株式会社設立登記申請書添付書類として、管轄の法務局に提出しましょう。

◆その他必要な手続きは?

もし現物出資の対象が不動産の場合は所有権移転登記、証券や車などの場合は名義更新手続き等も行う必要があります。

現物出資は税金がかかる!?

現物出資には税金がかかるケースがある
場合によっては税金がかかる現物出資

現金出資を行うと、その形式やケースによって税金がかかります。事前に知っておかないと、予定より出費がかさんで会社運営に支障を来すかもしれません。ここからは現物出資で注意すべき課税についてご紹介します。

現物出資は消費税等が課税される場合がある!

現物出資は直接的な金銭ではないものの、消費税や所得税などさまざまな税金が課税される場合があります。主な税金を以下の表にまとめました。

消費税 現物出資は消費税法施行令第2条第2項に該当するため、消費税の扱いは他の資産と同じような扱いになる
所得税
  • 会社に不動産を現物出資すると発生する譲渡所得税
  • 不動産取得税や登録免許税
  • 年式や車種によってかかる自動車所得税や譲渡所得税 など
贈与税 会社に対して現物出資してくれた株主の株式価額が下がった時、下がった分の金額は出資者から贈与されたものとして扱われる

監修税理士のコメント

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区北品川

現物出資には、様々な手間が発生します。そのため、現物出資をする場合には、土地や建物を出資先の会社で引き継いて使う予定があるなど特別な状況があれば選択をしていただければ思います。そのような特別な事情がなければ、現預金での出資をまずはご検討いただくのが良いでしょう。
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この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区北品川

風間優作(かざまゆうさく) 1985年千葉県銚子市出身。兵庫県立大学大院卒業。 上場会社経理部にて一般経理実務を経験した後、Big4監査法人及び税理士法人にて、公認会計士・税理士としての実務を経験し独立開業を果たす。現在は会計監査やIPO実務だけではなく、個人・法人税務からM&Aや事業承継に係る税務業務まで幅広く対応している。
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