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土地の相続|相続の流れや費用の算出方法・減額できる制度

最終更新日: 2024年06月07日

「親が亡くなって土地をもらうことになったけれども、どのような手続きが必要なのだろうか」
「相続税はどのくらいかかるのだろうか」
「他に何か費用は発生するのだろうか」

土地を相続することになると、このような疑問を抱く方が多いのではないでしょうか。土地の相続は人生でそうそうないので、わからないことばかりだと思います。

土地の相続について知りたい方のために、この記事では一つひとつ丁寧に解説します。

まず土地の相続には、大きく以下の6つの手続きが必要です。

  1. 遺言書の有無を確かめる
  2. 相続人を明らかにする
  3. 相続財産を把握する
  4. 遺産分割協議を行う
  5. 土地の名義を変更する相続登記を行う
  6. 相続税を申告・納付する

また相続にあたっては、相続税に加え登録免許税の支払いが発生します。特に相続税額の算出は、土地の評価額などさまざまな金額の確認が必要となり、非常に複雑です。

この記事では、土地の相続の流れ、相続税や登録免許税の算出方法、相続税を減額できる制度について解説しますが、「既に聞きなれないことばかりで不安…」という方はプロに相談するのもおすすめです。プロに頼って安心して相続を進めたい方は、「ミツモア」を利用して相続に詳しい税理士を探してみてください。

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土地を相続する流れ

ノートに書く様子

土地を相続するときには、主に以下の手続きを行います。

聞きなれない言葉が多くイメージしにくいかもしれませんが、一つひとつ丁寧に解説するのでご安心ください。

遺言書の有無を確かめる

初めに遺言書があるかどうか確認します。遺言書にて相続人や財産分割の方法が指定されている場合は、遺言書に沿って相続を進める必要があるからです。

遺言書には「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」と、作成方法や保管場所により3つの区分にわかれています。自筆証書遺言と秘密証書遺言に関しては、家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認する「検認」を行わなければなりません。

遺言書がないときは遺産分割協議を行いますが、遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合も遺言書に従わなければなりません。遺産分割協議は相続人全員で行います。

相続人を明らかにする

次に被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本を取り寄せて、誰が法定相続人であるか確定することも必要です。

一度遺産分割協議を行っても、その後に新たな法定相続人がいることが判明したら遺産分割を再度行わなければなりません。そのため、法定相続人は慎重に確定しましょう。

相続財産を把握する

次に相続財産を把握しましょう。相続手続きをスムーズに行うため「財産目録」も作成することをおすすめします

財産目録とは、相続財産を一覧でまとめたものです。不動産以外の預貯金や自動車などのプラスの財産だけでなく、住宅ローン、家賃などのマイナスの財産も記載します。

相続財産に不動産が含まれるかどうかは、固定資産税の「課税明細書」か「名寄帳」の写しで確認できます。課税明細書は市町村(東京23区は都税事務所)から届き、名寄帳の写しは市区町村の役所(東京23区は都税事務所)にて取得できます。

遺産分割協議を行う

遺言書がない場合や、あったとしても相続人全員の同意がある場合は遺産分割協議を行います。遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分割について合意を形成する話し合いです。

遺産分割協議をして財産の分割内容を決めたら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、土地を含む財産を誰がどのように相続するか記載し、相続人全員で記名捺印します。

土地の名義を変更する相続登記を行う

遺言書や遺産分割協議にて土地の相続人が決定したら、土地の名義を被相続人から相続人に変更します。名義を変更する手続きを「相続登記」といいます。

相続登記は令和6年3月末まで任意とされていましたが、令和6年4月から義務化されました。具体的には、相続により不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をする必要があります。

相続登記を怠ってしまうと10万円以上の過料の適用対象になります。忘れずに相続登記しましょう。

相続登記を行う際には、登録免許税を納付しなければなりません。相続における登録免許税の金額は「固定資産税評価額×0.4%」です。加えて、戸籍謄本や住民票などの必要書類の取り寄せ費用も発生します。

相続税を申告・納付する

相続税の申告書の提出・納付の期限は、原則として相続人が相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限内に申告と納付をしないと、無申告加算税や延滞税がかかったり、相続税に関する特例が適用できなかったりするので注意してください。

ただし相続税は、相続税額が10万円を超えていること、申告期限までに延納申請書を提出することなどいくつかの要件を満たせば延納が認められています。

ここまでの流れが不動産相続の主な手続きですが、「大変そうだ」と感じた方が多いのではないでしょうか。自分で進めるのが不安な方は、相続に強い税理士を探せる「ミツモア」を利用することがおすすめです。

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相続する土地の分割方法

計算機

不動産を相続する方法は、以下の4つの選択肢があります。

それぞれの内容と、メリット・デメリットを解説します。

現物分割:そのまま相続する

現物分割は、財産をそのままの形で相続することを指します

一番シンプルな分割方法で手続きも簡単です。各相続人が所有する不動産を独立して管理できるメリットもあります。

しかし、土地の評価額や地域が異なる場合は不公平感が生まれ、不満を持つ相続人が出てきてしまう恐れがあります。

代償分割:土地の相続人が他の相続人に代償金を支払う

代償分割は、財産を現物で相続した人が、その分の代償金を他の相続人に払う方法です。

土地の分割に関して相続人で争うことを避け、相続手続きをスムーズに進められます。また財産である住居に住んでいる相続人がいるときは、住み続けられるというメリットもあります。

一方で代償の評価や代償金の支払い方法について相続人で揉める恐れがあるほか、代償金を支払うための現金を用意しなければならない点がデメリットです。

換価分割:土地を売った現金を相続人で分割する

換価分割は、土地を売った現金を分割する方法です

まず土地を査定して価値を把握し、土地を売って得た代金を相続人で分割します。

公平な方法で不動産の価値を評価し、現金で均等に分けることができるのが利点です。また土地を現金にするため、不動産の管理や維持費の負担がありません。

しかし売却のための手数料や税金が発生するので、分割後の代金が元の不動産の価値よりも低くなるリスクがあります。また、相続人の間での売却方法や価格についての協議が難航することもあるでしょう。

共有名義:複数の相続人が共有名義で相続する

共有名義とは、土地の所有権を複数の相続人で共有する方法です。

複数人が共同で土地を所有するため、維持費などの負担を分散することが可能です。

しかし共有名義では、不動産の売却や貸し出し、処分などを行いたいときに、共有者全員の同意が必要なことを認識しておきましょう。将来的にトラブルが生じるリスクのある方法のため、相続人の間で十分に検討してください。契約書や合意書を作成しておくこともポイントです。

土地の相続にかかる費用

お金を積み重ねている様子

土地を相続する際には、税金が課されます。また、その他に費用も発生します。土地の相続にかかる税金と費用は、主に以下のとおりです。

各項目の算出方法や具体的な費用をご説明します。

相続税:基礎控除額を超えた分に課される

相続税は、下記の式で算出できる基礎控除額を超えた金額に対して課税されます。

基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば、相続人が配偶者1人と子1人の場合、基礎控除額は、3,000万円+600万円×2人で4,200万円となり、相続する財産が4,200万円までであれば相続税はかかりません。

基礎控除額を超えた分に対して相続税が課されますが、相続税がいくらになるかは、財産の金額によって定められている10%〜55%の税率と、0円〜7,200万円の控除額により決まります。

相続税の金額を求める際は下記の手順で計算します。

  1. 課税遺産総額を算出する(課税価格-基礎控除額)
  2. 相続税の総額を算出する(「課税遺産総額の法定相続分×相続税率」の総額)
  3. 各人の相続税額を算出する(相続税の総額×各人の課税価格/課税価格の合計額)

聞きなじみのない用語が多く、難しそうだと感じる方も多いと思います。そのようなときは税理士に相談することがおすすめです。相続に詳しい税理士を見つけたい方は「ミツモア」を利用してみてください。

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登録免許税:固定資産税評価額×0.4%

登録免許税とは、土地の登記をするときに納付しなければならない国税です。登録免許税の納付額は、固定資産税評価額×税率で決まります。固定資産税評価額は、市役所や都税事務所または県税事務所で閲覧できる固定資産課税台帳で確認が可能です。

相続登記での登録免許税の税率は以下の式で算出されます。

相続の登録免許税=固定資産税評価額×0.4%

登録免許税の税率は、贈与の際などは異なるので注意しましょう。

司法書士の報酬:5〜15万円

司法書士に登記手続きを依頼する場合は、5〜15万円の費用がかかります。自身で登記手続きを行うことも可能ですが、司法書士に依頼する方が多いです。

税理士の報酬:遺産総額の0.5〜1.0%

税理士に相続税申告を依頼した場合も、費用がかかります。申告を依頼した場合の費用としては、遺産総額の0.5%〜1%ほどとなる場合が多いです。

書類の取り寄せ費用・郵送費用

土地の相続登記を行う際、戸籍謄本や住民票、登記申請書が必要となります。例えば、戸籍謄本(除籍抄本)は1通あたり750円、住民票(除票)は300円、固定資産評価証明書は200円〜400円など、書類により、各数百円の取得費用が発生します。

さらにこれらの書類を法務局へ送る費用も必要です。

土地の相続税の算出方法

dentaku

土地の相続税の金額は、大きく以下の4ステップで算出します。

  1. 土地の評価額を確認する
  2. 課税遺産総額を算出する:課税価格-基礎控除額
  3. 相続税の総額を算出する:「課税遺産総額の法定相続分×相続税率」の総額
  4. 各人の相続税額を算出する:相続税の総額×各人の課税価格/課税価格の合計額

それぞれの計算方法を具体例とともにご説明します。

1.  土地の評価額を確認する

まずは土地の評価額を確認しましょう。土地の評価額は、基本的には路線価方式という方法で決まります。路線価がない場合は倍率方式という方法で決まります。

路線価方式とは、路線価をもとに不動産の評価を行う方法です。路線価は土地が面する道路ごとに定められた土地の価格で、国税庁の路線価図・評価倍率表で知ることができます。

倍率方式とは、固定資産税評価額に、土地ごとに定められた倍率をかける方法です。倍率は土地の面積や形状、立地条件などにより決まり、市場動向や需要供給の状況次第で変動します。

2. 課税遺産総額を算出する:課税価格-基礎控除額

手順1で確認した土地の評価額を含む全ての財産の評価額から、非課税分や負債を差し引いた金額が課税価格です。この課税価格から、下記の式で求められる基礎控除額を引くと課税遺産総額を算出できます。

基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば、課税価格が3億円で、相続人が配偶者1人と子2人の場合、課税遺産総額は以下のとおりとなります。

基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円

課税遺産総額:3億円-4,800万円=2億5,200万円

3. 相続税の総額を算出する:「課税遺産総額の法定相続分×相続税率」の総額

手順2で算出した課税遺産総額を法定相続分で分割します。そして、それぞれに相続税率をかけて相続人の相続税額を求めます。相続税率は財産の金額次第で、税率は10%〜55%、税額控除額0円〜7,200万円で定められています。この各人の相続税額を足すと、相続税の総額がわかります。

先ほどの例だと、相続税の総額は下記のとおりです。

配偶者の法定相続分:2億5,200万円×1/2=1億2,600万円

子①の法定相続分:2億5,200万円×1/4=6,300万円

子②の法定相続分:2億5,200万円×1/4=6,300万円

配偶者の相続税:1億2,600万円×40%-1,700万円=3,340万円

子①の相続税:6,300万円×30%-700万円=1,190万円

子②の相続税:6,300万円×30%-700万円=1,190万円

相続税の総額:3,340万円+1,190万円+1,190万円=5,720万円

4. 各人の相続税額を算出する:相続税の総額×各人の課税価格/課税価格の合計額

最後に、手順3でわかった相続税の総額を、各人が実際に取得した財産の金額割合で按分しましょう

ここまでの例において、各人が実際に取得した財産の金額が、配偶者2億円、子①6,000万円、子②4,000万円であったとすると、各人の相続税額は次のとおりです。

配偶者の相続税額:5,720万円×2億円/3億円=約3,813万円

子①の相続税額:5,720万円×6,000万円/3億円=1,144万円

子①の相続税額:5,720万円×4,000万円/3億円=約762万円

小規模宅地等の特例

付箋

小規模宅地等の特例とは、相続税を算出する際に土地の評価額を80%もしくは50%減額できる特例のことです。相続税が課される対象となる金額を小さくできるので、節税できます。

小規模宅地等の特例は下記の3つの土地に適用でき、種類によって上限面積と減額割合が異なります。

  • 特定居住用宅地等:自宅の敷地
  • 特定事業用宅地等(特定同族会社事業用宅地を含む):店舗など
  • 貸付事業用宅地等:貸付事業に使用されていた土地

特定居住用宅地等は、自宅がある土地を配偶者や親族が相続したケースで、面積の上限は330㎡、減額割合は80%です。

特定事業用宅地等(特定同族会社事業用宅地を含む)は、店舗などを一定の親族が相続した場合が当てはまります。面積の上限は400㎡、減額割合は80%と定められています。

貸付事業用宅地等は、被相続人の貸付事業、すなわち駐車場業や不動産貸付業に使われていた土地のことです。面積の上限は200㎡、減額割合は50%となります。

小規模宅地等の特例は相続税を抑えられるためぜひ活用したい制度です。しかし上記は適用要件の一部でその他細かい規定があるため、活用を検討している方は税理士に相談してみましょう。

土地の相続は税理士に相談しよう

スーツの男性と電卓

土地の相続は主に「遺言書を確認する、相続人を確定する、相続財産を確認して財産目録を作成する、遺産分割協議を行う、相続財産の名義を変更する、相続登記を行う相続税を申告・納付する」という流れで行います。

現物分割、代償分割、換価分割、共有名義の4つの遺産分割方法からどれを選択するか検討したり、土地の評価額を確認したりする慣れない手続きが必要です。

さらに相続税の計算は、「課税遺産総額を算出する、相続税の総額を算出する、各人の相続税額を算出する」という手順を踏まなければならず、初めて行う方には大変な作業となります。

相続は税金や大事な財産にかかわる内容なので、専門家に任せることで安心して進めることができます。土地の相続について税理士に相談したい方は、相続税に強い税理士から見積もりをもらえる「ミツモア」を利用してみてください。

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