相続税の申告が必要になった時、「税理士費用は誰が支払うべきなのか」「相続税申告の依頼費用の相場はどのくらいなのか」など疑問に思うことは多いでしょう。
相続に関する費用は相続のケースによって、推奨される支払い者が異なります。また、依頼内容や相続人数によって報酬も異なるため、事前に把握しておくことが重要です。
本記事では相続ケースごとでの一般的な税理士費用の支払い者や、相続分割を円満に進めるコツなどを紹介しています。
相続手続きを円滑に進めたい、費用相場を知りたいという方はぜひ参考にしてください。
相続税の申告の際に依頼する税理士費用は誰が払ってもよい
相続税の申告の際に依頼する税理士費用は、誰が払っても問題ありません。
相続人の代表者が全額負担する、相続人で税理士費用を等分するなど、支払い方は自由です。
税理士への依頼は相続人の代表者がおこなうため、相続人間で支払い額を等分した場合でも請求は税理士へ依頼した代表者へ個別でいきます。
補足として、相続税は全員一緒に申告しなければならないという決まりはないため、相続人それぞれが個別で申告をおこなうことも可能です。
ただし、相続人それぞれが別の税理士へ依頼した場合は、個々で税理士費用が発生することになります。
相続人が複数であっても、1枚の申告書で連名で申告するパターンが多いでしょう。
その場合、費用は申告書1枚分の料金となりますが、「相続人一人につき基本報酬×⚪️%」が追加報酬として加算されるケースが多いため、事前に費用を詳しく確認しておきましょう。
【パターン別】相続の税理士費用を誰が払うか迷った時に推奨される支払者
相続の税理士費用を誰が払うか迷った時に推奨される支払い者は主に下記のようになっています。
相続人との関係 | 推奨される支払い者 |
---|---|
親子関係 | 被相続人の配偶者 |
親子関係以外 | 各相続人 |
それぞれについて詳しくみていきましょう。
相続人が親子関係にある場合|被相続人の配偶者が全額負担
相続人が親子関係にある場合、被相続人の配偶者が全額負担するのが一般的です。
被相続人の配偶者が負担することが推奨される理由は以下2点です。
- 配偶者の税額軽減が適用される
- 二次相続の税負担が軽減できる
まず、被相続人の配偶者が全額負担することで、配偶者の税額控除が受けられます。
配偶者の税額控除とは、被相続人の配偶者が相続した遺産総額が以下の金額に満たない場合は、どちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
- 1億6千万円
- 配偶者の法定相続分相当額
この制度を活用して全財産を配偶者に相続させれば、場合によっては一次相続にかかる相続税が0円になる可能性もあります。
詳しくは国税庁サイトを参考にしてください。
相続人が親子関係にない場合|相続分に応じて各々負担
相続人と親子関係ではない場合は、税金の控除が難しいため、相続分に応じて各々負担するのが公平であると考えられます。
相続人それぞれの相続額は遺言や法定相続優位によってが決定するため、相続額が決定した後に割合に応じて分割すると良いでしょう。
相続割合が分からない、相続人同士の関係性が複雑で話し合いでの分割が難しい場合は、税理士や弁護士などのプロに相談して、割合まで決めてもらうことがおすすめです。
相続税申告を税理士に依頼する場合の報酬相場
相続税の申告時に依頼する税理士の報酬相場は、相続財産の0.5%〜1.5%とされています。
ただし、上記は基本報酬であり、状況に応じて加算報酬の支払いが必要です。
加算報酬が発生するケースと費用の例を以下の表にまとめました。
加算対象業務 | 追加報酬 |
---|---|
非上場株式の評価 | 1社につき16.5万円 |
相続人数 | 2人目以降、1人あたりの申告料金の10% |
土地の評価 | 1利用区分ごとに5万円 |
税務調査の対策 | 5.5万円 |
共同相続者が多いと、追加人数あたりの追加報酬がかかることが一般的であるため、相続人数が何人いるかは事前に確認しておくと良いでしょう。
相続税の申告を依頼する税理士の報酬以外にかかる費用例
相続税の申告を依頼する税理士の報酬以外にかかる費用の例として、以下を解説します。
- 遺産分割協議書作成費用
- 弁護士報酬
- 測量費用
- 登記費用
それぞれについて詳しくみていきましょう。
遺産分割協議書作成費用
相続税の申告を依頼する税理士の報酬以外にかかる費用の例の1つ目は、遺産分割協議書作成費用です。
遺産分割協議書とは、相続人全員が遺産の分割方針に合意した内容を記した、相続手続きを進めるために必要な書類のことで、まとめると「誰が何をどれだけ相続することにみんな納得しました」というのを記録しておくものです。
遺産分割協議は相続人間の話し合いで自由におこなえますが、法的に効果のある遺産分割協議書の作成は専門家への依頼が必要になります。
遺産分割協議書の作成自体はさまざまな専門家が対応できるため、依頼したい相続手続きの内容に応じて依頼する専門家を選ぶと良いでしょう。
専門家の種類 | 依頼内容 |
---|---|
税理士 | 相続税申告と遺産分割協議書作成 |
司法書士 | 相続登記と遺産分割協議書作成 |
弁護士 | 相続における揉め事の解決と遺産分割協議書作成 |
行政書士 | 遺産分割協議書作成のみ |
弁護士報酬
相続税の申告を依頼する税理士の報酬以外にかかる費用の例の2つ目は、弁護士報酬です。
相続の際に遺言書が無く相続人間での遺産分割方法を話し合いで決めないといけない場合、揉め事に発展する可能性があります。
そういった場合、紛争解決のために弁護士に相談することが考えられます。
弁護士へ依頼した場合、代理人となって遺産分割協議や自分以外の相続人との話し合いを代行してくれるため、穏便に相続を済ませることができるでしょう。
測量費用
相続税の申告を依頼する税理士の報酬以外にかかる費用の例の3つ目は、測量費用です。
相続財産の中に不動産が含まれている場合土地の測量が必要になり、測量費用がかかってきます。
相続対象である土地を相続人間で分割して相続する場合、土地を複数に分割して登記しなおす文筆登記の手続きが必要です。
分筆登記には地積測量図の作成が必要であるため、専門家である測量士や土地家屋調査士に依頼しましょう。
測量費用は、測量を必要とする相続人が個別で負担するのが一般的です。
登記費用
相続税の申告を依頼する税理士の報酬以外にかかる費用の例の4つ目は、登記費用です。
被相続人の不動産を相続人が引き継いで名義変更することを、相続登記と呼び、不動産の相続が発生した場合には相続登記の手続きをしなければなりません。
相続登記が必要な際は、司法書士に依頼すると良いでしょう。
また、登記にかかる費用については不動産を必要とする相続人が個別で負担するのが一般的です。
税理士費用は相続税の申告時の控除対象になる?
結論として、税理士費用は相続税の申告時の控除対象にはなりません。
ただし、被相続者が亡くなった時点で支払うことになっていたものについては、控除対象とすることが可能です。
控除対象となる費用の例には以下のようなものがあります。
- 債務
- 葬儀費用
税理士費用は亡くなった後に発生する費用にあたるため控除対象にはなりませんが、上記については控除対象となります。
相続時に依頼する税理士費用を誰が払うかを円満に決めるためのコツ
相続時に依頼する税理士費用を誰が支払うかを円満に決めるために必要なことは以下の3つです。
- 遺産の種類や評価額を正しく把握して相続対象者に配分する
- 被相続人への貢献度をもとに相続対象者全員でよく話し合う
- 相続や税務に詳しいプロに相談して支払う人・割合を決めてもらう
それぞれについて詳しくみていきましょう。
遺産の種類や評価額を正しく把握して相続対象者に配分する
相続時に依頼する税理士費用の支払者を円満に決めるコツの1つ目は、遺産の種類や評価額を正しく把握して相続対象者に配分することです。
相続が発生した際はまず相続する遺産の内容を正しく把握して、相続人間でどのようにして分けるかを吟味しなければなりません。
遺産評価額に応じて不動産・株などを分けたり、均等に分けるなら現金に換金するなど、工夫が必要です。
被相続人への貢献度をもとに相続対象者全員でよく話し合う
相続時に依頼する税理士費用の支払者を円満に決めるコツの2つ目は、被相続人への貢献度をもとに相続対象者全員でよく話し合うことです。
遺産の分け方の規定とは別に、寄与分(貢献度)に応じて分割割合を決めることも可能です。
寄与分とは、被相続人の資産の維持や資産増加に貢献していた場合、他の相続人よりも相続割合を大きくできるという制度です。
相続人の協議による決め方を取る家族もあると考えられるので、協議の際の観点の1つとして被相続人への貢献度にも着目すると、遺産分割方法をスムーズに決められるかもしれません。
相続や税務に詳しいプロに相談して支払う人・割合を決めてもらう
相続時に依頼する税理士費用の支払者を円満に決めるコツの3つ目は、相続や税務に詳しいプロに相談して支払う人・割合を決めてもらうことです。
遺産相続について相続人間の話し合いで円満に決められそうにない場合は、専門家に相談して法律に則り決めてもらうのが公平だと言えます。
また、相続や税務に詳しい専門家に任せることで、相続人である自分たちも煩雑な手続きを任せて労力を抑えられるでしょう。
話し合いでどうしても決まらないといった場合も、第三者として専門家を入れて協議することで、公平に話をまとめられます。
そもそも相続税申告を税理士に依頼する必要性は?
相続税の申告を税理士に依頼するメリットとして、以下の3点を解説します。
- 相続税の申告漏れや疑いによる税務調査のリスクを下げられる
- 財産評価を誤って相続税を払い過ぎるリスクを避けられる
- 税額控除や特例を活用して節税を適切に実施できる
それぞれについて詳しくみていきましょう。
相続税の申告漏れや疑いによる税務調査のリスクを下げられる
相続税の申告を税理士に依頼するメリットの1点目は、相続税の申告漏れや疑いによる税務調査のリスクを下げられることです。
相続税の申告は専門的な知識や経験が必要であり、自分で対応しようとすると申告漏れなどのミスが起こる可能性があります。
申告漏れやその疑いがあると、税務調査が実施されるリスクがあるため、税務の専門家である税理士に任せて確実に申告を済ませることがおすすめです。
財務省の国税庁実績評価によると、相続税の申告が発生した相続のうち、税理士が関わった割合は86%と非常に高くなっています。
税理士に依頼することで申告を正確に済ませられる他、もしも税務調査が来た場合、調査の対応までお願いすることが可能です。
税務調査で誤りが発覚すると追徴課税が発生する可能性もあるため、相続が発生した際は税理士に相談すると良いでしょう。
財産評価を誤って相続税を払い過ぎるリスクを避けられる
相続税の申告を税理士に依頼するメリットの2点目は、財産評価を誤って相続税を払い過ぎるリスクを避けられることです。
相続税の金額は、被相続者の財産の総額によって変動します。
財産評価には専門的な知識が必要です。
財産の中には現金以外に、不動産や有価証券など評価が難しい財産もあり、財産評価を正しくおこなえなかった場合、余分に相続税を支払ってしまう可能性があります。
相続税で損しないためにも、税理士に依頼して正確に財産評価してもらうことが重要です。
税額控除や特例を活用して節税を適切に実施できる
相続税の申告を税理士に依頼するメリットの3点目は、税額控除や特例を活用して節税を適切に実施できることです。
相続税に関する控除や特例は知っていないと適用が難しいだけでなく、適用できたとしても計算が非常に難しい傾向にあります。
誤って控除を当てはめてしまうと申告漏れなどに繋がるため、専門家である税理士に依頼すると良いでしょう。
相続税の申告時に依頼する税理士の選び方
相続税の申告が必要になった際に依頼する税理士の選び方の例として、以下の3点があります。
- 知り合いからの紹介を受ける
- 関係業者の紹介を受ける
- インターネットで探す
知り合いからの紹介では信頼のできるセカンドオピニオンを聞いた上で税理士と契約できるというメリットがあります。
しかし、他の税理士との比較検討が難しいというデメリットもあるため、インターネットを活用するなどして自分に合った税理士を探すなど、状況に応じて適切な調査をすることが必要です。
詳しくはこちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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相続税の申告が発生した場合、「誰が税理士費用を負担するのか」「相続分割はどのようにすればよいのか」など、対応に困ることが多いと考えられます。
知識のない状態で自分で対応しようとすると、多大な労力がかかったり、相続税申告の申告ミスなどが起こる可能性があるため、まずは専門家である税理士に相談することがおすすめです。
相続税の申告に強い税理士を探すには、ミツモアを活用すると良いでしょう。
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