遺産相続について相談できる場所は、大きく分けて6種類あります。それぞれ得意な手続きや内容が異なるため、自身の質問内容に応じて相談先を選ぶことが重要です。
この記事では、遺産相続についての相談先や相談できる範囲について詳しく解説していきます。
遺産相続について相談できる専門家が、それぞれどんな状況に適した相談先なのかをまとめました。
相談先 | 依頼すべきケース |
自治体 |
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税理士 |
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弁護士 |
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司法書士 |
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行政書士 |
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銀行 |
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遺産相続の相談ができる各専門家の業務範囲
「士業」には弁護士や行政書士などさまざまな種類がありますが、それぞれの違いについて正確に把握している人は少ないと思います。
以下に、相続に関して相談できる4種類の士業とそれぞれの対応業務をまとめました。
相談内容 | 弁護士 | 行政書士 | 司法書士 | 税理士 |
相続人調査 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
相続登記 | × | × | 〇 | × |
相続放棄 | 〇 | × | 〇 | × |
金融機関における相続の手続き | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
相続税申告 | × | × | × | 〇 |
紛争の仲介・解決 | 〇 | × | × | × |
遺言書の作成 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
遺産分割協議書作り | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
以下ではそれぞれの詳しい特徴を解説していきます。
【自治体】遺産相続全般の相談
〈自治体の基本情報〉
できること | 注意点 | 費用 |
|
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無料 |
多くの自治体は、住民に向けて相続の無料相談窓口を設けています。
遺産相続について「何から始めたらよいのか分からない」という方は、まず自治体に相談するのがおすすめです。
無料と言っても、相談窓口の対応をするのは弁護士・司法書士・行政書士・税理士などの専門家なので、回答の信頼性はある程度は担保されています。
ただし、基本的にその場で具体的な相続手続きの依頼はできません。相談時間も限られているので、あらためて専門家へ相談することになります。
自治体に相談する流れ
以下は自治体の無料相談窓口を利用する流れの一例です。
- 相談を受け付けている日時を確認する
- 希望の日時に予約を入れる
- 相談時に持参する資料をそろえる
- 相談に行く
まずは自治体のWebサイトなどで、無料相談を受け付けている日時を確認し、予約を入れます。人数制限が設けられている可能性があるので、なるべく早めに連絡すると良いでしょう。
相続関係や固定資産評価額が分かる資料を持参すると相談がスムーズになります。
自治体に遺産相続を相談する際の注意点
自治体の無料相談には時間制限や回数制限があります。
事前に質問したい内容を整理したり、優先順位を付けたりしておかないと、有益なアドバイスを受けるのは難しいです。
また個別の相談者にかけられる時間が短い分、専門家の回答も一般論にとどまることが多いです。
個々の事情に寄り添ったアドバイスが欲しい場合は、改めて専門家に依頼する必要があります。
対応してくれた専門家に再度相談したい場合は、直接事務所に連絡を入れましょう。無料相談の場では直接依頼できないケースがほとんどです。
【弁護士】遺産相続トラブルの相談
〈弁護士の基本情報〉
できること | 注意点 | 費用 |
|
費用が高額になりがち | 100万~200万円程度 |
遺産相続について揉めており、当事者間での解決が難しい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
具体的には、以下のような状況が起こったときは弁護士に依頼すべきでしょう。
- 遺産分割について相続人同士で揉めており、話し合いで解決できない
- 遺言書の無効を主張されている
- 遺留分の侵害額を請求したい・請求する相続人がいる
弁護士の強みは、相続争いの仲裁や代理交渉を担当できる点です。
遺産相続では取り分を巡って、相続人同士が対立するケースが少なくありません。
自分の代わりに揉めている相手方と交渉を行ない、専門知識をもって不利益を被らないように尽力してくれるので、心理的負担が軽減されるでしょう。ただし報酬額はほかの専門家と比べて高めです。
弁護士に相談する流れ
弁護士に遺産相続を相談・依頼する場合の流れは、以下の通りです。
- 依頼したい弁護士を探して連絡を取る
- 相談して弁護士の見解を聞き、依頼を決めたら契約する
- 着手金を支払う
- 交渉・調停・訴訟などに対応してもらう
- 業務完了後、残りの報酬を支払う
まずは弁護士に状況を説明し、弁護士の見解や解決に向けての方向性を聞きましょう。納得できたら契約書を交わし、正式に依頼します。
弁護士に遺産相続を相談する際の注意点
弁護士は複雑な法律相談に対応するため、他の専門家と比較して報酬が高額になる傾向があります。
遺産相続についての争いが長引いた場合、遺産の取り分が弁護士報酬で消えてしまうかもしれません。
また、弁護士に依頼すると、他の相続人に警戒される点にも注意が必要です。
自分が不利になると考える相続人なら、同じく弁護士を雇って対抗しようとするかもしれません。遺産争いがより一層激化し、裁判沙汰にまで発展する可能性もあります。
【税理士】遺産相続の税金に関する相談
〈税理士の基本情報〉
できること | 注意点 | 費用 |
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税務関連の手続き以外には基本的に対応していない | 遺産総額の「0.5%~1%」が相場 |
遺産の額が大きく、相続税に関する相談がしたい場合は税理士に相談するのがおすすめです。
相続税には「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」という申告期限が設けられています。短期間で遺産調査から納税まで済ませるには、税務の専門家の助けが必要です。
税理士によって得意分野が異なるので、相続税申告に詳しい税理士を探す必要があることには注意しましょう。
なお、そもそも遺産額が少なく相続税申告が不要なケースでは、税理士に依頼するメリットはあまりありません。
税理士に相談する流れ
税理士に遺産相続を相談する場合の流れは、以下の通りです。
- 依頼したい税理士を探して連絡を取る
- 相談して依頼内容の見積もりをもらい、納得したら契約する
- 着手金を支払う
- 業務を実施する
- 最終報告後、報酬の残金を支払う
税理士に遺産相続を相談する際の注意点
税理士も遺産分割協議書の作成はできますが、税務署に提出する必要がある場合に限定されます。
税務関連の手続きが必要ない場合は、税理士に相続相談をするメリットはほとんどありません。相続税が発生しない・準確定申告が不要な人は、税理士以外の相談先を探しましょう。
また遺産相続で相続税が発生する場合は、期限内の申告・納付が必須です。相続税申告を税理士に依頼しようと考えている方は、早めに依頼先を探すことをおすすめします。
【司法書士】不動産登記の相談
〈司法書士の基本情報〉
できること | 注意点 | 費用 |
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税務関係書類の作成・提出代行や相続トラブルへの対応、行政に提出する書類の作成・提出代行は依頼できない | 10万円前後 |
相続財産の中に不動産が含まれる場合は、まず司法書士に相談するのがおすすめです。
2024年1月からは相続登記が義務化され、相続から3年以内の移転登記が必須となります。遺産相続で不動産登記に関わる手続きを代行できるのは、司法書士のみです。
紛争の対応や税申告はできませんが、相続トラブルがなく、多額の相続税に悩まされる状況でなければ、司法書士に依頼するのも1つの手でしょう。
ただし、司法書士によって得意分野が異なるので、相続手続きに詳しい司法書士を探す必要があります。
司法書士に相談する流れ
司法書士に相続の相談を行った場合、以下のような流れとなります。
- 依頼したい司法書士を探して連絡を取る
- 相談し、依頼内容の見積もりをもらい、納得したら契約する
- 着手金を支払う
- 業務を実施する
- 書類などを受け取り、報酬の残金を支払う
司法書士に依頼する場合は、相談・見積もりから始まるのが基本です。依頼者が内容に納得したら契約を結び、着手金を支払うこととなります。
司法書士が全ての業務を遂行すれば、依頼は完了です。必要な書類を受け取った後、依頼者は残金を支払います。
司法書士に遺産相続を相談する際の注意点
司法書士には税務関係書類の作成・提出代行や相続トラブルへの対応、行政に提出する書類の作成・提出代行は依頼できません。
不動産の登記手続きが不要な人は、他の専門家に依頼することも検討しましょう。
また相続分野に不慣れな司法書士に依頼してしまうと、希望するサポートを得られません。
理想的なのは専門性に加えて、提案力や相続手続きの実績がある司法書士です。
加えて弁護士や税理士などとネットワークを持っている司法書士なら、遺産相続全体の手続きがよりスムーズになります。
【行政書士】遺産相続書類の相談
〈行政書士の基本情報〉
できること | 注意点 | 費用 |
戸籍謄本などの必要書類の収集
遺言書・遺産分割協議書の作成 相続財産の調査 |
不動産登記や相続税に関わること・法律に関係することには対応できない | <平均費用>
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基本的に自分で相続手続きを進めるつもりで、書類の収集や作成のサポートだけしてほしい場合は、行政書士に相談するのがおすすめです。
行政に提出する書類の作成や、権利義務に関する書類の作成・事実証明に関する書類の作成は、行政書士の独占業務です。
相談したい内容が遺産相続の書類作成や手続きに関することのみであれば、行政書士に依頼すれば費用がおさえられます。
「遺産相続トラブルが発生するリスクはほぼない」「土地や家屋を相続しない」「相続税が発生しない」など、相続がスムーズに進みそうな場合は、検討してみると良いでしょう。
行政書士に相談する流れ
行政書士に遺産相続について相談する場合、以下の流れとなるのが一般的です。
- ヒアリング
- 見積もり
- 契約・依頼
- 業務遂行
- 報酬支払い・書類の引き渡し
正式な依頼を行う前に、個々の状況についてヒアリングが行われるのが基本です。依頼者はヒアリングの内容が反映された見積もりを確認し、納得できれば本契約に進みます。
契約後は行政書士が契約内容に沿って書類作成・提出を代行します。業務が完了し依頼者が報酬を支払えば、行政書士から関係書類が引き渡されることとなるでしょう。
行政書士に遺産相続を相談する際の注意点
行政書士は不動産登記や相続税に関わること・法律に関係することには対応できません。
不動産を引き継ぐケース・相続税の申告・納付が必要なケース・調停が必要なケースでは、他の専門家への相談が必要です。
また行政書士といっても専門はさまざまです。スムーズな相続を目指すなら、遺産相続手続きへの対応実績が豊富な行政書士を選びましょう。
【信託銀行】高額な遺産相続の相談
〈信託銀行の基本情報〉
できること | 注意点 | 費用 |
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100万円以上 |
信託銀行は個人の財産を管理・運用する「信託業務」を行っている銀行です。多少費用がかかっても、相談先を1つにまとめたいときは信託銀行に相談するのがおすすめです。
被相続人が資産運用・管理を依頼していた銀行がある場合、遺産相続についても相談できます。
どこに何を相談すべきかは、銀行が判断し、提携先の専門家につないでくれるので、自分で専門家を探す手間がありません。
ただし費用は、各専門家に直接依頼するよりも高額です。
また被相続人が「遺言信託」を利用していた場合、信託銀行が「遺言執行者」となり、遺産の調査から分割・納税まで信託銀行に一任できます。
信託銀行に相談する流れ
信託銀行に相続に関して相談する場合は、予約が必要です。電話やWebを通して希望日・希望時間に予約を入れましょう。
予約した日に窓口へ足を運べば、担当者が対応してくれます。
信託銀行に遺産相続を相談する際の注意点
信託銀行に相談した場合、相続財産の評価額に、一定の率を乗じた手数料の支払いが必要となります。銀行によっては最低手数料額を110万円(税込)としているケースもあり、手数料の負担は決して小さくはありません。
また信託銀行の場合には資産運用についての提案も行われます。興味のない金融商品の提案に、戸惑う人もいるようです。
金融知識に不安のある人は、提案される金融商品のリスクを見極められません。言われるがままに金融商品を選ぶと、元本割れで損をする恐れもあります。
遺産相続の相談先を適切に選ぶためのポイント2つ
遺産総額の相談先を適切に選ぶには、以下2点を意識することが欠かせません。
- 相続に関する悩みを明確にする
- 状況によっては複数の相談先を利用する
相続に関する悩みを明確にする
遺産相続で「何に困っているのか」を明確にしましょう。悩みの内容によって、選ぶべき相談先は変わります。
たとえば、相続の紛争解決や仲裁・裁判手続きなどは、弁護士しか行なえません。税務は税理士、相続登記は司法書士など、得意分野はそれぞれ異なります。
相続にまつわる課題に対応できない専門家を選ぶと、相続手続きが遅れたり手間が増えたりする可能性があります。手続きの期限が決まっているものもあるので、悩みに対応できる専門家を適切に見極めましょう。
状況によっては複数の相談先を利用する
前述の通り、遺産相続手続きの一部は、特定の専門家の専業です。解決したい課題が広範囲にわたる場合は相談先を統一するのが難しく、複数の専門家をまたいだ相談が必要となります。場合によっては3人以上の専門家とやり取りするケースもあるでしょう。
もし相続争いが発生している場合は、まずは弁護士に依頼するのがおすすめです。
遺産相続では「誰が」「何を」「どのように」相続するかを決定しないと、その後の手続きが進みません。相続トラブルは最優先で解消すべき問題であり、これに対応できるのは弁護士のみです。
弁護士の中には税理士・行政書士などとの、シームレスなネットワークを構築している人もいます。ネットワークの広い弁護士を選べば、他の専門家に依頼したい場合もスムーズです。
遺産相続は状況に合わせて専門家に相談しよう
遺産相続は何回も経験する出来事ではないので、いざというときにどこに相談したら良いのか迷ってしまうかもしれません。
相続税申告や不動産の相続登記など、まずどんな手続きが必要なのかを整理して、適切な専門家を探しましょう。
「ミツモア」では、遺産相続手続きに詳しい税理士や行政書士を探すことができます。
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