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役員借入金は相続財産に含まれる|例外ケースや解消方法

最終更新日: 2024年10月16日

会社経営において、役員が会社に資金を貸し付けるケースは珍しくありません。これを役員借入金と言いますが、実は役員借入金は相続においても重要な要素となります。

本記事では、役員借入金が相続財産に該当する理由、相続財産にならないケース、そして役員借入金を解消する方法について詳しく解説します。

役員借入金は相続財産に該当する

札束

会社は通常、事業に必要な資金を銀行などから借り入れます。しかし、状況によっては、役員、特に社長個人から資金を借り入れることがあります。これが役員借入金です。

役員借入金は相続財産に該当します。なぜなら、会社が役員から借り入れたお金は役員から見れば会社に貸し付けたお金、要するに貸付金であるとみなされるからです。

そして、役員が亡くなった際に相続が発生した場合、貸付金はプラスの財産として相続財産に含まれます。

役員借入金が相続財産にならないケース

経営が破綻している場合、役員借入金は相続財産に含まれません。これは、会社が倒産して債権回収の見込みが全くない状態では、役員借入金も事実上価値のないものとみなされるからです。

例えば、会社がすでに破産手続きに入っている、債務超過で事業継続が不可能などの状況であれば、役員借入金は相続財産として計上されない可能性が高いでしょう。

また、役員借入金が会社の経営悪化を招いた原因であると判断される場合も、相続財産から除外される可能性があります。

会社の役員借入金を解消する方法

悩んでいる人

役員借入額が増えると、役員が亡くなった際に役員の親族の相続税負担が大きくなってしまいます。また、会社側にとっても役員死亡時に急に返済を求められるリスクを抱えることになります。そのため、役員借入額は可能な限り解消しておくのがおすすめです。

会社の役員借入金を解消する方法は以下のとおりです。

  • 役員報酬を減らす
  • 役員が債権放棄を行う
  • 貸付金を贈与する
  • DESを行い資本金に振り替える
  • 金融機関からの借入で増資する

役員報酬を減らす

役員報酬を減額することで役員借入金を減らすことができます。減額した分の役員報酬を返済に回すことで、実質的に役員への支払総額を変えずに役員借入金を減らすことが可能です。

例えば、役員報酬が月100万円、役員借入金残高が1,000万円あるとします。役員報酬を月875万円に減額し、減額分25万円を返済に充てると、40ヶ月後には役員借入金残高はゼロになります。

ただし、役員報酬の減額は役員のモチベーション低下や優秀な人材の流出につながる可能性もあるため、実施するには役員との十分な話し合いが必要です。

役員が債権放棄を行う

役員が債権放棄を行うことで、会社の役員借入金を帳簿上から消滅させることができます。債権放棄とは、役員が会社に対する金銭債権を放棄する意思表示であり、会社は借入金を返済する義務を免れることが可能です。

しかし、債権放棄を行うことで、会社には債務免除益が発生します。これは、会社が本来返済すべき債務を免除されたことによる利益であり、課税対象となります。

DESを行い資本金に振り替える

会社の役員借入金を解消したい場合、DES(デット・エクイティ・スワップ)の活用も効果的です。役員借入金を資本金に振り替えることができます。

DESとは、企業が抱える債務を株式化することで資本に組み入れる財務戦略です。役員が会社に貸し付けている役員借入金を株式と交換することで、会社は借金を帳消しにし、役員は会社の株主となります。

ただし、新たに株主となった役員に対して、将来的に配当金の支払いが発生する可能性があります。また、役員が株主となることで、経営への介入や干渉が強まる可能性がある点にも注意が必要です。

金融機関からの借入で増資する

金融機関からの借入で増資を行うことで、役員借入金を解消することも可能です。金融機関からの借入金を増資に充当することで、実質的に役員借入金を資本金等に振り替えることができます。

役員借入金が3,000万円ある会社があるとします。この会社が金融機関から3,000万円の借入を行なった場合、会社の資本金は3,000万円増加します。そして増加した資本金の中から役員借入金を返済することで、実質的に役員借入金を資本金に振り替えたことになります。

この方法は、複雑な手続きを伴うDESとは異なり、比較的シンプルな手続きで役員借入金を解消できる点が大きなメリットです。ただし、金融機関からの借入には利息が発生するため、返済計画をしっかりと立て、会社の財務状況を悪化させないよう注意しましょう。

貸付金を贈与する

役員借入金を直接解消できるわけではありませんが、役員が会社への貸付金を推定相続人に贈与することで、役員借入金の相続税を減額できます。

贈与税の基礎控除額は年間110万円です。この範囲内であれば贈与税はかかりません。役員借入金を贈与する際には、この基礎控除額を有効活用することが重要です。数年に分けて贈与を行うことで、贈与税を支払うことなく役員借入金を贈与できます。

ただし、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算され、相続税が課税される可能性があるため注意が必要です。

役員借入金の相続処理を正しく理解して適切な準備・対応を

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役員借入金は、会社が役員個人から借り入れた資金であり、役員の相続時に相続財産に含まれます。ただし、会社が経営破綻している場合や、役員借入金が経営悪化の原因とみなされる場合は、相続財産から除外される可能性があります。

役員借入金が増加すると、会社にとっては借入金を一気に返済しなくてはならないリスクがあります。役員の相続人にとっても未返済の貸付金分も相続税を負担するリスクがあるため、可能な限り解消しておくのがおすすめです。解消方法としては、役員報酬の減額、役員の債権放棄、DESによる資本金への振り替え、金融機関からの借入、貸付金の贈与などが挙げられます。

それぞれメリット・デメリットがあるため、会社の状況に合わせて適切な方法を選択することが重要です。

役員借入金に限らず、会社を相続する際は様々な手続きが必要です。もし不安なことがある場合は専門家である税理士に一度相談してみましょう。

その際におすすめなのが「ミツモア」です。いくつかの簡単な質問に答えるだけで、あなたの状況に合った税理士を紹介してもらえます。是非利用してみてください。

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