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不動産の相続手続き|相続方法・評価方法と必要な費用・書類

最終更新日: 2024年06月28日

「急に不動産を相続することになったけど手続きがわからない」
「相続する不動産を親族と分けることになったけど、金額や比率で揉めそうで不安…」

不動産を相続する場面になると、このような悩みに直面する方が多いです。多くの方にとっては初めてのことなので、どのように手続きを進めればいいのか、親族とどのように折り合いをつけていくべきか、不安でいっぱいでしょう。

実際の不動産の相続の流れをまとめると、以下の6つのステップに分かれます。

  1. 遺言書を確認する
  2. 相続人を確定する
  3. 相続財産を確認して財産目録を作成する
  4. 遺産分割協議を行う
  5. 相続財産の名義を変更する相続登記を行う
  6. 相続税を申告・納付する

この記事では、それぞれのステップで具体的にどのように手続きをするべきか説明した後に、費用の算出方法や手続きに準備が必要な書類などを解説します。不動産相続の流れ・支出などが一通りわかるように紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

なお、ミスなくスムーズに手続きを進めたい場合は、税理士に相談するのもおすすめです。こちらから登録すると、不動産相続に詳しい税理士から見積もりをもらうことができます。プロに最適なコストで依頼したいという方は、ぜひご利用ください。

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自身でできる限り理解したいという方は、ぜひ最後までご一読ください。

不動産相続の流れ

スートの男性と印鑑

不動産の相続は以下の流れで行います。

それぞれの手続きの詳細をご説明します。

遺言書を確認する

まず初めに、遺言書の有無を確認しましょう。遺言書があれば、その内容に基づいて相続の手続きを進めなければなりません。遺言書にて、相続人や財産分割の方法が指定されている場合があります。

遺言書がなければ相続人全員で遺産分割協議を行いますが、もし遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合は遺言書に従います。

遺言書には「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があり、遺言の種類や保管場所によって、家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認する「検認」の手続きが必要となる場合があります。

相続人を確定する

法定相続人を確定することも必要です。誰が法定相続人となるかは、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本で確認することができます。

遺産分割協議を行ったあとに新たな法定相続人がいることが判明した場合、遺産分割を再度行わなければならないため、法定相続人の確定は慎重に実施しましょう。

相続財産を確認して財産目録を作成する

次に相続財産を確認します。相続手続きをスムーズに行うため、相続財産を一覧でまとめる「財産目録」も作成した方が良いです。

財産目録には、不動産以外の預貯金や自動車などのプラスの財産と、住宅ローン、家賃などのマイナスの財産も記載します。

相続財産に不動産が含まれるかどうかは、市区町村から届く固定資産税の「課税明細書」か、市区町村の役所(東京23区は都税事務所)にて取得できる「名寄帳」の写しで確認することができます。

遺産分割協議を行う

遺言書がない場合は、遺産分割協議を行います。遺産分割協議では、相続人全員で遺産の分割について話し合い、合意を形成します。

遺産分割協議により分割内容を決定できたら、遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書には、不動産を含む財産を誰がどのように相続するか記載し、相続人全員の記名捺印が必要となります。

相続財産の名義を変更する相続登記を行う

遺言書や遺産分割協議により不動産の相続人が決まったら、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きが必要です。この手続きを「相続登記」といいます。

相続登記は令和6年3月末まで任意とされていましたが、令和6年4月から義務化されました。具体的には、相続により不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をする必要があります。

相続登記を怠るとペナルティとして10万円以上の過料の適用対象になる為、注意が必要です。

相続登記を行う際には、登録免許税を払わなければなりません。相続の登録免許税の金額は、「固定資産税評価額×0.4%」です。その他に、戸籍謄本、住民票などの必要書類を取り寄せる費用も発生します。

相続税を申告・納付する

相続税の申告書の提出と納付は、原則として相続人が相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。期限内に申告と納付ができなければ、無申告加算税や延滞税がかかったり、相続税に関する特例が適用できなかったりするので注意しましょう。

ただし、相続税額が10万円を超えていること、申告期限までに延納申請書・担保提供関係書類を提出することなど、いくつかの要件を満たせば延納が認められます。

ここまでの流れが不動産相続の主な手続きですが、「大変そうだ」と感じた方が多いのではないでしょうか。自分で進めるのが不安な方は、相続に強い税理士を探せる「ミツモア」を利用することがおすすめです。

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不動産相続の方法

紙を分割する様子

不動産を相続する方法は、以下の4つの選択肢があります。

それぞれの内容と、メリット・デメリットを解説します。

現物分割:そのまま相続する

現物分割は、不動産を含む財産をそのままの形で相続する方法です。

最もシンプルな分割方法で手続きも簡単であり、それぞれの相続人が所有する不動産の管理を独立できることがメリットです。

一方で、不動産の評価額や地域に差がある場合は不公平になってしまい、相続人の間で不満が生まれる可能性があります。

代償分割:不動産を相続した人が他の相続人に代償金を支払う

代償分割は、現物で財産を相続した人が、他の相続人に代償金を支払う方法です。

相続人の間での不動産分割に関する争いを避け、円滑に相続手続きを進められます。また、財産である住居に住んでいる相続人がいる場合は、そのまま住み続けられることがメリットです。

しかし、代償の評価や支払い方法についての合意形成が難航する可能性もあります。また、代償金を支払うための現金を用意できなければ、代償分割は行えません。

換価分割:不動産を売却して得た現金を相続人で分割する

換価分割は、不動産を売却し、その代金を分割する方法です。

まず、不動産を公正な方法で査定し、その価値を把握します。その後、売却手続きを進め、得られた代金を相続人で分割します。

メリットは、公平な方法で不動産の価値を評価し、その代金を均等に分割できることです。また、不動産を現金化するため、不動産の管理や維持費の負担を回避できます。

一方で、売却に伴う手数料や税金の支払いが発生するため、分割後の代金が元の不動産の価値と比べて減少する可能性があります。また、相続人の間での売却方法や価格について合意が難しいこともあるでしょう。

共有名義:複数の相続人が共有名義で相続する

共有名義とは、複数の相続人が不動産の所有権を共有する方法です。

複数人が共同で不動産を所有するため、維持費などの負担を分担することができます。

しかし、共有名義の場合、不動産の売却や貸し出し、処分などの際に、共有者全員の同意が必要となります。将来的にトラブルが生じやすい方法のため、相続人の間で十分に検討し、契約書や合意書を適切に作成することが重要です。

相続税の算出方法

電卓

相続税は以下の流れで算出します。

   1.課税遺産総額を算出する(課税価格-基礎控除額)

不動産を含む全ての財産から非課税財産や負債を引いて、課税価格を求めます。さらに課税価格から、下記の式で求められる基礎控除額を引いて課税遺産総額を算出します。

基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば、課税価格が2億円で、相続人が配偶者1人と子2人の場合、課税遺産総額は以下のとおりとなります。

基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円

課税遺産総額:2億円-4,800万円=1億5,200万円

   2.相続税の総額を算出する(「課税遺産総額の法定相続分×相続税率」の総額)

まず、1で求めた課税遺産総額を法定相続分で分割し、それぞれに相続税率をかけて各人の相続税額を算出しましょう。

相続税率は財産の金額によって、10%〜55%までの税率と0円〜7,200万円までの控除額が定められています。次に各人の相続税額を足して、相続税の総額を求めます。

先ほどの例だと、相続税の総額は以下のとおりとなります。

配偶者の法定相続分:1億5,200万円×1/2=7,600万円

子①の法定相続分:1億5,200万円×1/4=3,800万円

子②の法定相続分:1億5,200万円×1/4=3,800万円

配偶者の相続税:7,600万円×30%-700万円=1,580円

子①の相続税:3,800万円×20%-200万円=560万円

子②の相続税:3,800万円×20%-200万円=560万円

相続税の総額:1,580円+560万円+560万円=2,700万円

   3.各人の相続税額を算出する(相続税の総額×各人の課税価格/課税価格の合計額)

2で算出した相続税の総額を、各人が実際に取得した財産の割合で按分します。

   これまでの例で、各人が実際に取得した財産を配偶者が1億2000万円、子①600万円、子②が200万円であったとすると、各人の相続税額は以下のとおりとなります。

   配偶者の相続税額:2,700万円×1億2,000万円/2億円=1,620万円

   子①の相続税額:2,700万円×6,000万円/2億円=810万円

   子①の相続税額:2,700万円×2,000万円/2億円=270万円

上記のとおり、相続税の算出方法は非常に複雑でわかりにくいため、専門家に任せるのが安心です。「ミツモア」を使えば、相続税に強い税理士に相談することができます。

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不動産の評価額の確認方法

地図の上に虫眼鏡

相続税の算出の際に必要となる、不動産の評価額の確認方法は土地、家屋、マンションでそれぞれ以下のとおり異なります。

土地の評価額は路線価方式か倍率方式で決まる

土地の評価額は、基本的には路線価方式で決まりますが、路線価がない地域は倍率方式で決まります

路線価方式は、土地が面する道路ごとに定められた土地の価格である路線価を基に、不動産の評価を行う方法です。路線価は、国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。

倍率方式は、固定資産税評価額に、その土地で定められた倍率をかけて評価額を算出する方法です。土地の面積や形状、立地条件などによって倍率が異なり、市場動向や需要供給の状況によって変動します。

家屋の評価額は固定資産税評価額となる

家屋の評価額は、固定資産税評価額です。固定資産税評価額は市町村長によって決定され、固定資産課税台帳に登録されています。

固定資産税評価額を確認するには、課税通知書の記載内容を見る、市区町村役場の窓口で問い合わせるなどの方法があります。

マンションの評価額は建物と土地の評価額の合計で算出する

マンションの一室(居住用の区分所有財産)の評価は、区分所有権(建物)と敷地利用権(土地)の評価額の合計となります。それぞれの算出方法は以下のとおりです。

区分所有権(建物)の評価額=従来の 区分所有権の価額×区分所有補正率

敷地利用権の価額=従来の敷地利用権の価額×区分所有補正率

相続登記にかかる費用

お金に芽が生える様子

相続財産の名義を変更する「相続登記」を行う際には、以下の費用が発生します。

  • 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%
  • 司法書士の報酬:5〜15万円
  • 雑費:必要書類の取り寄せ・郵送費用など

登録免許税:固定資産税評価額×0.4%

登録免許税とは、不動産を登記するときに課される国税です。登録免許税の金額は、固定資産税評価額に税率をかけて決まります。相続の場合は、以下のとおりです。

相続の登録免許税=固定資産税評価額×0.4%

なお、贈与など場合によって税率が異なるので注意してください。

司法書士の報酬:5〜15万円

登記をする際は、自身で行うこともできますが、多くの場合は専門家である司法書士に依頼します。

その場合、5〜15万円ほどの報酬が必要になります。

雑費:必要書類の取り寄せ・郵送費用など

相続登記には、戸籍謄本や住民票、登記申請書が必要です。書類により、各数百円の取得費用が発生します。

例えば、戸籍謄本(除籍抄本)は1通あたり750円、住民票(除票)は300円、固定資産評価証明書は200円〜400円かかる自治体がほとんどです。

加えて、必要書類を法務局へ送る郵送費用もかかることを認識しておきましょう。

相続登記に必要な書類

サインしている様子

相続登記には、遺言による場合、法定相続の場合、遺産分割協議の場合の主に3パターンが存在します。3パターンに共通して必要な書類は、以下の4つです。

  • 戸籍謄本(除籍抄本):本籍地の市町村役場で取得する
  • 住民票(除票):居住地の市町村役場で取得する
  • 固定資産評価証明書:不動産所在地の市(都)税事務所か市町村役場で取得する
  • 登記申請書:法務局のホームページからダウンロードする

遺言による場合、法定相続の場合、遺産分割協議の場合にそれぞれ追加で必要な書類もご説明します。

遺言の場合は遺言書も用意する

遺言による相続登記のときは、遺言書も必要となります。遺言書には「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があり、「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」は原則として、相続開始後に家庭裁判所で検認を行わなければなりません。

つまり、遺言により相続する方は以下の5つの書類を準備しましょう。

  • 戸籍謄本(除籍抄本):本籍地の市町村役場で取得する
  • 住民票(除票):居住地の市町村役場で取得する
  • 固定資産評価証明書:不動産所在地の市(都)税事務所か市町村役場で取得する
  • 登記申請書:法務局のホームページからダウンロードする
  • 遺言書:場合により家庭裁判所での検認が必要

法定相続のときは相続関係説明図も事前に手配

遺言書がなく、遺産分割協議が行われない、または合意に至らない状況のときに行うのが法定相続分での相続登記です。

法定相続の場合は、被相続人と法定相続人の関係がまとめられた家系図のようなもので、相続登記の申請者が作成します。相続関係説明図は必須の書類ではありませんが、相続登記の申請時に添付することで戸籍謄本の原本還付が受けられます。

法定相続のときに必要な書類をまとめると以下のとおりです。

  • 戸籍謄本(除籍抄本):本籍地の市町村役場で取得する
  • 住民票(除票):居住地の市町村役場で取得する
  • 固定資産評価証明書:不動産所在地の市(都)税事務所か市町村役場で取得する
  • 登記申請書:法務局のホームページからダウンロードする
  • 相続関係説明図:申請者が作成する ※必須ではない

遺産分割協議なら相続関係説明図のほかに遺産分割協議書・印鑑証明書も

遺言がなく、相続人全員で遺産分割協議を行い相続登記するときには、遺産分割協議書と印鑑証明書も必要となります。

遺産分割協議書には、相続人全員が実印で記名捺印しなければなりません。また、法定相続のときと同様に、相続関係説明図も作成すると戸籍謄本の原本還付が受けられます。

遺産分割協議での相続登記に必要な書類は以下の7つです。

  • 戸籍謄本(除籍抄本):本籍地の市町村役場で取得する
  • 住民票(除票):居住地の市町村役場で取得する
  • 固定資産評価証明書:不動産所在地の市(都)税事務所か市町村役場で取得する
  • 登記申請書:法務局のホームページからダウンロードする
  • 相続関係説明図:申請者が作成する ※必須ではない
  • 遺産分割協議書:相続人が作成する
  • 印鑑証明書:居住地の市町村役場で取得する

不動産の相続は税理士に相談しよう

スーツの男性

不動産を相続する際は、遺言書、相続人、相続財産を確認したうえで遺産分割協議を行い、相続登記を行って相続税を申告・納付する手続きを行います。

遺産の分割方法には、現物分割、代償分割、換価分割、共有名義の4つの選択肢があり、それぞれの特徴を理解して最適な方法を相続人の間で決めることになります。

分割方法が決まったら相続税を算出し、相続税を申告・納付しますが、相続税の金額の求め方は非常に複雑です。

ミツモア」であれば、相続に強い税理士を探すことができます。税理士に任せるとスムーズに手続きを進められるので、ぜひ相談してみてください。

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