激化する人材獲得競争において、福利厚生の充実はもはや「コスト」ではなく、採用力強化と人材定着に直結する「戦略的投資」です。帝国データバンクの2025年10月の調査でも、国内企業の約5割が福利厚生の充実に前向きな姿勢を示しています。
しかし、多くの人事・総務担当者は「採用活動」や「人材育成」といった中核業務に追われ、「担当リソースの不足」という壁に直面しているのも事実です。
この記事は、その課題を解決するための実践的なガイドです。福利厚生サービスの大手各社を、全従業員を幅広くカバーする「総合型」と、特定の課題を深く解決する「特化型」に分類。2025年最新の調査データに基づき、自社の課題に最適なサービスを選び抜くための比較ポイントを徹底的に解説します。
大手福利厚生サービス比較9選【2025年最新】
このセクションでは、導入実績が豊富な大手福利厚生サービス9社を「総合型」と「特化型」の2種類に分けて紹介します。まずは、各社の特徴を一覧できる比較表で全体像を掴んでください。
総合型・特化型 大手9社の比較一覧表
| タイプ | サービス名 | 導入実績 (2025年最新) | 料金 (月額/1名) | 特徴 |
| 総合型 | 福利厚生倶楽部 | 25,800団体
(シェアNo.1) |
800円~1,000円 | 業界最大手。健康経営優良法人の認定実績あり。 |
| 総合型 | ベネフィット・ステーション | 16,000団体 | 要問い合わせ | 福利厚生・健康支援・教育までオールインワンで提供。 |
| 総合型 | WELBOX | 約1,400団体 | 要問い合わせ | 健康経営の推進支援に強み。認定取得サポート実績多数。 |
| 総合型 | ライフサポート倶楽部 | 2,000社 | 350円~ | 圧倒的な低コスト。※100名未満は初期費用に注意。 |
| 特化型
(食事) |
チケットレストラン | 3,000社 | (非課税枠3,500円/月内) | 実質手取りUP。離職防止に貢献した事例あり。 |
| 特化型
(食事) |
オフィスグリコ | 約10万台 | 要問い合わせ | 「置き型」の代表格。コミュニケーション活性化に。 |
| 特化型
(食事) |
オフィスオアシス | (実績データなし) | 0円~ | 省エネなコンビニエンスストア形式。飲料・食品が充実。 |
| 特化型
(健康) |
RIZAPウェルネスプログラム | 500社 | 要問い合わせ | 参加率100%など、”結果にコミット”する健康経営。 |
| 特化型
(学習) |
Schoo for Business | 2,433社 | 1,650円/ID
(最低20ID~) |
「学び」を福利厚生に。「組織エンゲージメント」との相関を実証。 |
【総合型】大手パッケージプラン4選
「総合型」は、レジャー、グルメ、育児、介護、学習まで、あらゆる福利厚生メニューを一つのパッケージで提供するサービスです。最大のメリットは、人事担当者の管理工数を大幅に削減できることと、全従業員の多様なニーズを広く浅く満たせる点にあります。
福利厚生倶楽部(株式会社リロクラブ)
業界シェアNo.1(54%)を誇る、大手福利厚生サービスのリーディングカンパニーです。25,800団体、1,340万人の会員基盤を持ち、圧倒的なスケールメリットを活かしたサービス展開が強みです。
地域間のサービス格差を解消するメニュー開発に注力しているほか、提供元であるリロクラブ自身が「健康経営優良法人2025」に認定されており、クライアント企業の健康経営推進を支援するパートナーとしての実績も豊富です。
ベネフィット・ステーション(株式会社ベネフィット・ワン)
業界最大級の会員数を持ち、16,000団体での導入実績を誇る総合型サービスです。福利厚生、健康支援、教育・研修支援がオールインワンで揃っており、企業の管理負担を軽減します。
日常で利用できる約140万件もの特典を提供し、従業員とその家族の生活を多角的にサポート。Netflixプランなど、時代に合わせた多様なニーズへの対応力も魅力であり、離職率抑制にも貢献します。
WELBOX(株式会社イーウェル)
約1,400団体に導入されているWELBOXの最大の特徴は、「健康経営」の推進支援に特化した手厚いサポート体制にあります。単に健康メニューを提供するだけでなく、クライアント企業が「健康経営優良法人」の認定を取得するためのパートナーとして機能します。
実際に、2025年度の認定においてクライアント23社(うちホワイト500は5社)の認定取得を支援した実績を持ち、健康を軸にした企業ブランディングを目指す企業にとって最適な選択肢となります。
ライフサポート倶楽部(リソルライフサポート株式会社)
2,000社以上で愛用されるこのサービスは、1人あたり月額350円からという圧倒的な低コストが最大の魅力です。コストを抑えながらも、宿泊、レジャー、育児、介護に至るまで幅広いメニューを提供します。
ただし、この低コストプランは一定の従業員規模以上を想定している可能性があり、従業員100名未満の企業には初期費用45万円からの別プランが適用される場合があるため、導入前の確認が必須です。
【課題特化型】大手サービス5選
「特化型」は、「食事補助」「健康増進」「スキルアップ」など、特定の経営課題をピンポイントで解決するために設計されたサービスです。導入目的が明確であるため、ROI(投資対効果)を測定しやすいのが特徴です。
チケットレストラン(株式会社エデンレッドジャパン)
全国25万店以上の飲食店やコンビニで利用できるICカード型の食事補助サービスで、3,000社以上が導入しています。最大の強みは、国税庁の非課税枠(月額3,500円まで)を活用できる点です。
これにより、企業は社会保険料の負担なく、従業員にとっては所得税の対象とならない形で「実質的な手取り額」を増やすことが可能です。ある導入企業では、この制度が転職を考えていた従業員の「引き止め」に繋がったという強力な事例も報告されています。
オフィスグリコ(江崎グリコ株式会社)
「置き型社食」の代表格であり、約10万台の設置実績を持つサービスです。オフィスに専用のボックスや冷蔵庫を設置し、お菓子や飲料を手軽に購入できます。
従業員のリフレッシュを促進するだけでなく、「グリコの前で雑談が生まれる」といった、偶発的なコミュニケーションの活性化にも寄与します。商品補充や管理は専門スタッフが担当するため、総務担当者の負担もありません。
オフィスオアシス(株式会社オアシスソリューション)
オフィス内に飲料や食品を充実させたいニーズに応える、コンビニエンスストア形式のサービスです。自動販売機よりも省エネルギーで運用できる点が特徴です。
設置費・管理費・撤去費がすべて0円で、管理もオアシスソリューションに任せられます。必要な費用は電気代のみなので、低コストで質の高い福利厚生を求めている企業におすすめです。
RIZAPウェルネスプログラム(RIZAP株式会社)
“結果にコミットする”RIZAPが提供する、法人向けの健康経営支援サービスです。富士フイルムグループをはじめ、500社以上に導入されています。
単なるコンテンツ提供に留まらず、行動変容を促すプログラム設計に強みを持ちます。ある社員30名の企業では、参加率100%を達成し、従業員全員で平均6.2kgの減量を実現。健康課題に対して具体的な「結果」を求める企業に最適です。
Schoo for Business(株式会社Schoo)
2025年3月時点で2,433社が導入する、法人向けオンライン学習サービスです。近年ニーズが高まる「リスキリング」や「スキルアップ」を、福利厚生の一環として提供できます。
料金は1IDあたり月額1,650円(税抜)、最低20IDから導入可能です。Schooが発行した2025年のレポートでは、「学び合う」行動が「組織エンゲージメント」や「自己効力感」の向上と強く相関することがデータで実証されており、単なるスキル習得を超えた、組織文化の醸成にも貢献します。
大手福利厚生サービスの選定ポイント
自社に最適なサービスを選ぶためには、単に「大手だから」で選ぶのではなく、明確な戦略が必要です。ここでは、担当者が押さえるべき3つの選定ポイントを解説します。
自社の課題(総合型 vs 特化型)で見極める
まず、福利厚生を導入する「目的」を明確にしてください。
もし目的が「管理工数を削減しつつ、全従業員の満足度を広く底上げしたい」のであれば、「総合型」が適しています。
一方で、「採用面接で『学びの機会』についてよく聞かれる」「特定の健康課題を持つ従業員が多い」「離職率を下げたい」といった明確な経営課題がある場合は、「特化型」の方が、投資対効果をはっきりと示せます。
担当者の運用工数(アウトソース範囲)
福利厚生サービスを導入する最大の動機の一つは、人事・総務部門の「リソース不足」の解消です。
したがって、選定時には「どこまで業務をアウトソースできるか」を厳密に確認してください。単にシステムを提供するだけでなく、利用促進のサポート、税務処理の管理、あるいは「健康経営優良法人」の申請支援まで含まれているかどうかが、真のパートナーを見極める鍵となります。
従業員の利用率を上げる仕組み
福利厚生は「導入して終わり」ではありません。従業員に使われなければ、その投資は意味を成しません。
RIZAPの事例(参加率100%)や、Schooの事例(エンゲージメントとの相関)が示すように、重要なのは「いかに利用されるか」「どう組織文化に貢献するか」です。利用率が低いサービスを導入するのではなく、利用促進の仕組みや、参加を促す設計が組み込まれているサービスを選定すべきです。
導入時の注意点(税務リスク)
福利厚生の導入で最も注意すべきは「税務リスク」です。設計を誤ると、従業員への「現物給与」とみなされ、所得税の課税対象となる可能性があります。特に注意すべき2つのルールを解説します。
食事補助の非課税枠(月3,500円)
「チケットレストラン」のような食事補助を非課税で運用するには、国税庁が定める以下の2つの条件を両方満たす必要があります。
- 従業員が食事費用の50%以上を負担していること。
- 企業の負担額が、1人あたり月額3,500円(税抜)以内であること。
この要件を満たせば、企業は費用を経費計上でき、従業員は非課税で補助を受けられるため、極めて強力な制度となります。
カフェテリアプランの課税ルール
従業員がポイントを自由に使える「カフェテリアプラン」は、そのポイントが「給与」とみなされるリスクがあります。
非課税の福利厚生として認められるには、「役職や報酬額でポイントが変わらず、全従業員が平等に利用できること」「換金性が高くないこと」「社会通念上妥当な内容であること」が求められます。例えば、従業員本人の人間ドック利用は非課税ですが、「家族」の利用分は課税対象となるケースが一般的です。導入前に、ベンダーがこの課税・非課税の管理をどうサポートしてくれるかを確認してください。
福利厚生が採用・定着に貢献した事例
福利厚生は「コスト」ではなく「戦略的投資」です。最後に、その投資が具体的な「採用力」や「定着率」に結びついた2つの事例を紹介します。
事例:実質手取り増が「転職の引き止め」に貢献
ある企業が、賃上げ以外の方法で従業員の実質手取りを増やす施策として「チケットレストラン」を導入。これにより、従業員は「会社が自分たちを大切にしてくれている」と感じるようになりました。
その真価が発揮されたのは、ある優秀な従業員が他社から好待遇のオファーを受けた時です。その従業員は最終的に、「自社より好待遇の企業はなかった」と述べ、転職を思い留まりました。月額3,500円の投資が、数百万円の採用・再教育コストの発生を未然に防いだのです。
事例:参加率100%の健康経営が組織を変革
従業員30名、うち8割が健康課題を抱えていた企業が「RIZAPウェルネスプログラム」を導入しました。
結果、このプログラムは従業員の参加率100%を達成し、参加者全員で平均6.2kgの減量という具体的な成果を生み出しました。従業員が一体となって健康に取り組んだこの経験は、組織の一体感を高め、活力ある職場風土の醸成にも繋がりました。
まとめ:福利厚生は「戦略的投資」である
大手福利厚生サービスを選ぶプロセスは、もはや単なる「割引クーポンの選定」ではありません。
本記事で紹介した事例が示すように、福利厚生は「採用力」と「人材定着」という、現代の企業が直面する最も困難な課題に直接作用する「戦略的投資」です。
重要なのは、まず自社の課題を「総合型」か「特化型」かで見極めること。次に、人事のリソース不足や税務リスクを管理してくれるパートナーを選ぶこと。そして何よりも、導入したサービスが従業員のエンゲージメント向上にどう貢献するかを、データや事例に基づいて見極めることです。
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