IT機器やネットワークの発展により、ソフトウェア上でハードウェアを再現する仮想化が進んでいます。仮想化のなかでも特に注目されているのが、仮想ネットワークです。今回は複雑な仮想ネットワークを、注目される理由も含めてかんたんに解説します。
最終更新日: 2024年06月28日
仮想ネットワークとは？
仮想ネットワークとは文字どおり、ネットワークを仮想空間で構築したものです。仮想化の説明の前に、まずは仮想ネットワークの概要を紹介します。
仮想化されたネットワーク環境
仮想化ネットワークはコンピューターやサーバー内部の仮想マシン同士を接続し、仮想環境内で構築されたネットワークです。
仮想ネットワークでは物理的にはひとつしかないパソコン上で複数のネットワークがあるように見えたり、複数のネットワークをひとつのネットワークに見せたりすることが可能になります。
さらに仮想環境のコンピューターでは、仮想のネットワークアダプタやIPアドレスなどを付与することで、現実と同じようなネットワークを構築できます。
つまり仮想ネットワークとは、ハードウェアや外部装置に依存せず、ソフトウェアのみで作られたネットワークとも説明ができます。
仮想ネットワークが注目される理由は？
仮想ネットワークが注目される理由には、仮想化が急速に発展している状況と、仮想化においてはネットワーク機器がハードウェアに依存しないことがあげられます。
仮想化技術の発展により、ソフトウェア上でサーバーやコンピューター(仮想マシン)を簡単に構築・再現できるようになりました。しかし仮想マシンをつなぐスイッチやルーターなどのネットワーク機器は、以前として物理的なハードウェアが必要になります。
そのためいくら簡単に仮想マシンを大量に構築できても、機器の準備が仮想マシンに追いつかず、運用や構築に制約が発生していました。そうした状況を改善すべく、ネットワーク機器を仮想環境内で再現するために生まれたのが仮想化ネットワークです。
仮想ネットワークが注目を集めている理由は、増加するネット環境に対応するためといえます。
そもそも仮想化とは？
ないものをあると見せかける仮想化は、一般的には理解が難しい技術です。仮想ネットワークの基礎技術である「仮想化」について解説します。
パソコン内に作ったパソコン
仮想とは「実際にはないが、仮にあることを想像して考える」ことを指します。IT関係では主にソフトを使用し再現した環境を指す単語です。
たとえばコンピューターを仮想化した仮想マシンは、物理的に存在するコンピューター上でソフトを使用し、実際には存在しない仮想のコンピューターを再現しています。
具体的な事例で説明すると、Windowsが稼働しているコンピューター上でソフトを利用し、Linuxや別のバージョンのWindowsの環境を再現している状況です。
このように個別にハードウェアを用意せずとも、1台のコンピューターのソフト上で様々な環境を用意できるのが仮想化です。
仮想化のメリットは？
仮想化のメリットはたくさんあります。ハードウェアの運用台数が減るほか、効果的にハードウェアを使用できるのです。
仮想化ではひとつのハードウェアで、複数の環境を構築できます。そのため環境ごとに必要だった物理的なハードウェアを、1台に集約することができるのです。
複数の環境をひとつのパソコンにまとめているため、物理ハードウェアのリソースを複数の環境で分配できます。
物理依存の環境ではないため、環境をデータ単位で扱えます。コンピューターやサーバーをファイルのように管理できるのも、大きなメリットといえるでしょう。
最近では仮想サーバーも
コンピューターやサーバーの性能が飛躍的に発達したため、最近ではサーバーも仮想化することが増えてきています。
そもそもサーバーは急激なアクセスや攻撃などに備え、データ量や運用にはじゅうぶんな余裕を持って設置されます。そのためリソースを使い切ることは、ほとんどありません。
余裕のある物理サーバー内に仮想サーバーを構築することで、1台のサーバーのリソースを効率的に使用することが可能になります。
大規模なサーバーを複数持つ会社は、サーバーの仮想化を進めているといわれます。仮想ネットワークは、そのような動きに対応すべく生まれた技術です。
仮想ネットワークのメリット
仮想ネットワークを構築することで、どのようなメリットがあるのでしょうか？仮想ネットワークのメリットを確認しましょう。
コスト削減
仮想化を行うことで大幅なコスト削減ができます。これはハードウェアの集約により、不要となったハードウェア費用を削減できるだけではありません。集約によってサーバーやネットワーク機器の電気代、設置スペース費用といったランニングコストの削減もできるためです。
またハードウェアや物理的なネットワーク機器が減ることで、システムを保守するための人件費も削減できます。
仮想ネットワークのリソースはソフト依存です。物理ハードウェアのリソース余剰分があるのであれば、そのリソースを使用し簡単に拡張・縮小することができます。ハードウェアを新規購入せずに済むので、コスト面で優れているともいえます。
環境構築がかんたんに
ソフト上で稼働している仮想環境なので、構築も簡単にできます。
たとえば従来の物理サーバーは、物理サーバーにスイッチやケーブルが接続されるため、ハードウェアとネットワークが一体となっていました。そのため環境を変更する場合は、両方の変更を行う必要がありました。
しかし仮想ネットワークは仮想のため、ハードウェアとネットワークが分離されています。ネットワーク環境を変更する場合も、ソフトウェアから簡単に変更でき、ハードウェアを変更する必要はありません。
また仮想環境はソフト上で構築することが可能です。サーバーがある現地に赴き変更することもなく、リモートで構築できるのも大きなメリットといえます。
大規模なテストも可能に
仮想環境はソフト上で稼働するため、従来は難しかったテストや構築が可能です。
たとえば稼働中の大きなサーバーやネットワークを接続するような、大規模な環境を構築する場合、従来はサーバーを止めるような大きなテストを行うことができませんでした。
しかしひとつのハードウェア内に二つの環境を再現することができれば、従来は難しかったシステムの統合テストといった、複雑なテストを行うことが可能になります。
さらに仮想環境なので、大きな問題が発生してしまったとしても、仮想環境をソフトウェア的にリセットすることができます。
仮想ネットワークに関連する技術
仮想ネットワークはさまざまな技術を使用しています。そのため、仮想ネットワーク以外にも難しい単語がしばしば登場します。今回はそんな技術の中でも、知っていると仮想ネットワークの理解が深まる二つの技術を紹介します。
仮想NIC(仮想LANカード)
NICとは「ネットワークインターフェイスカード(Network Interface Card)」の略です。NICはコンピューターのネットワークを行うための部品です。パソコンについているLANケーブルの差込口や、ネットワーク関係の回路部品を指します。
本来であれば外部装置であるNICを、仮想環境上で再現したものが「仮想NIC」です。仮想NICがあれば部品がなくてもインターネットの設定をするだけで、通常と同じようなネットワークを行うことができます。
仮想環境に応じて物理的なNICを用意する必要が無いため、環境構築が簡単になります。仮想ネットワークを構築するために必要な技術といえます。
仮想ネットワークゲートウェイ
仮想ネットワークゲートウェイとは、Microsoft社が提供するクラウドサービス「Azure」で利用できるサービス「Azure VPN Gateway」の接続ポイントのことです。
インターネット回線から、Azureの仮想ネットワークに安全に接続するためのサブネットのゲートウェイを指します。
テレワークのためのVPN接続環境として有名になりました。仮想ネットワーク関連で話題となったため、仮想ネットワークを調べると登場する単語です。
仮想ネットワークに安全に接続するためのサービスと認識してよいでしょう。
仮想ネットワークの概要を把握しよう
仮想ネットワークは注目される技術のひとつです。仮想化というIT技術の上にあるシステムなので、理解が難しいものであるといえます。
しかし仮想化について概要を把握してしまえば、仮想化ネットワークは非常に便利なものだと理解できるでしょう。
今回は仮想化ネットワークの解説に加え、仮想化の概念やメリットも解説しました。わかりにくい仮想化ネットワークを理解し、業務に生かしてみましょう。
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