ミツモア

ストレスチェック義務化とは?担当者のための実践ロードマップ

ぴったりのストレスチェックシステムをさがす
最終更新日: 2025年09月30日

「昨年、従業員が50名を超え、突然ストレスチェックの担当者に任命された。何から手をつければいいのか全く分からない…」 本記事は、まさにそのような人事・労務担当者のための実践的なガイドブックです。

ストレスチェック義務化の法的な基本はもちろん、担当者が明日から取るべき具体的なアクション、避けては通れない費用やサービス選定の問題、さらには義務を「攻め」の経営戦略に変える活用法まで、必要な情報のすべてをこの記事に凝縮しました。

ストレスチェック義務化とは?担当者が知るべき5つの要点

休憩中にオフィスで談話する従業員

ストレスチェック義務化とは、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対し、年1回のストレスチェック実施と労働基準監督署への結果報告を課す制度です。

2015年からストレスチェックは労働者数50名以上の事業所で義務化されており、2025年5月の法改正によって今後3年以内にすべての事業所で義務化される予定となりました。

未実施自体への直接の罰則はありませんが、報告義務違反には罰金が科されるリスクがあります。これは単なる義務ではなく、メンタルヘルス不調を未然に防ぎ、職場環境を改善するための重要な取り組みです。

1. 義務化の対象:常時50人以上の労働者を使用する事業場

義務化の対象となるのは、法人単位ではなく「事業場」単位です。本社、支店、工場などがそれぞれ独立した事業場としてカウントされます。

ここで重要なのが「常時使用する労働者」の定義です。正社員はもちろん、以下の条件を満たすパートタイマーやアルバイトも人数に含める必要があります。

  • 契約期間が1年以上であること(または更新により1年以上となる予定があること)
  • 週の労働時間数が、同事業場の通常の労働者の4分の3以上であること

自社が対象かどうか、まずはこの基準で正確に労働者数を把握することが第一歩です。

2. 実施義務の内容:年1回のストレスチェックと労基署への報告

事業者に課せられる義務は、大きく分けて2つです。

  1. 年1回のストレスチェック実施: 医師や保健師などの「実施者」を定め、全対象従業員がストレスチェックを受けられる機会を提供しなければなりません。ただし、従業員側に受検する義務はないため、受検を強制することはできません。
  2. 労働基準監督署への結果報告: ストレスチェックと面接指導の実施状況を、所轄の労働基準監督署に所定の様式で報告する必要があります。

この2点を確実に実行することが、法定義務を遵守する上での最低条件となります。

3. 罰則の有無:直接の罰則はないが「報告義務違反」には罰金も

ストレスチェック義務化」という言葉から、未実施の場合に厳しい罰則を想像するかもしれません。しかし、ストレスチェックそのものを実施しなかったことに対する直接的な罰則規定は、現在のところ存在しません。

ただし、安心は禁物です。前述した労働基準監督署への報告を怠った場合、または虚偽の報告をした場合には、労働安全衛生法に基づき50万円以下の罰金が科される可能性があります。法的なリスクを回避するためには、実施から報告までをワンセットで捉え、確実に行う必要があります。

4. 制度の目的:メンタルヘルス不調の未然に防止と職場環境の改善

この制度は、企業に負担を強いるためだけのものではありません。その根底には、3つの段階的な目的が存在します。

  • 一次予防: 従業員自身がストレス状態に気づき、セルフケアを行うきっかけとする。
  • 二次予防: 高ストレス状態にある従業員を早期に発見し、医師による面接指導などを通じて、メンタルヘルス不調へと発展するのを未然に防ぐ。
  • 集団分析の活用: 部署やチームごとのストレス傾向を分析し、職場環境そのものを改善する。

単なる「義務の消化」で終わらせるか、組織を強くする「投資」と捉えるかで、その価値は大きく変わります。

5. 50人未満の事業場:現在は「努力義務」、2028年度から義務化の可能性も

従業員数50人未満の事業場においては、ストレスチェックの実施は現在「努力義務」とされています。法的な強制力はありませんが、従業員の健康を守る観点から実施が推奨されています。

注目すべきは、今後の法改正の動向です。2028年度を目途に、50人未満の事業場においても義務化される可能性が示唆されており、決して他人事ではありません。 また、努力義務期間中の企業がストレスチェックを実施する際には、国からの助成金が活用できる場合もあります。将来への備えと従業員の健康確保のためにも、早期の導入を検討する価値は十分にあります。

担当者になったらやるべき7つのステップ

義務化の全体像を理解したところで、次はいよいよ実務です。担当者に任命されたら、具体的にどのような手順で進めていけばよいのでしょうか。このセクションでは、キックオフから報告完了までの一連の流れを、7つの具体的なステップに分解して解説します。このロードマップ通りに進めれば、初めての方でも迷うことはありません。

ステップ1:社内方針の表明と体制づくり(衛生委員会での審議)

まず最初にやるべきことは、会社としてストレスチェック制度に本格的に取り組むという方針を経営層から社内全体へ明確に表明することです。これが曖昧なままでは、従業員の協力は得られません。

具体的なアクションとしては、衛生委員会(または安全衛生委員会)で、ストレスチェックの実施方法、スケジュール、担当部署などを審議します。ここで、誰が中心となってプロジェクトを進めるのか、実施体制を明確に定義することが、円滑な進行の鍵を握ります。

ステップ2:実施者と実施事務従事者の選定

ストレスチェックは誰でも実施できるわけではありません。法律で定められた「実施者」を選定する必要があります。実施者になれるのは、医師、保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士に限られます。

多くの場合、産業医が実施者を務めますが、産業医の選任義務がない企業の場合は、地域産業保健センターに相談したり、外部の専門サービスに委託したりすることで実施者を見つけることができます。 また、結果の回収やデータ入力といった事務作業を行う「実施事務従事者」も決めますが、人事権を持つ者はこの役職に就けない点に注意が必要です。

ステップ3:実施方法と質問票の決定(外部委託か内製か)

実施方法には、大きく分けて「外部委託」と「内製」の2つの選択肢があります。

  • 外部委託: 専門のサービス会社に依頼する方法。コストはかかりますが、セキュリティ面での安心感や、担当者の手間を大幅に削減できるメリットがあります。
  • 内製: 厚生労働省が無料配布している「ストレスチェック実施プログラム」などを活用し、自社で全てを行う方法。コストを抑えられますが、担当者には相応の知識と工数が求められます。

どちらを選ぶべきか、コスト、手間、ノウハウの観点から慎重に比較検討してください。外部サービスを選ぶ際は、後述する「サービス選定の5つのチェックポイント」が判断の助けになります。

ステップ4:社内規程の作成と従業員への周知

ストレスチェック制度を社内に定着させるため、実施に関するルールを明文化した社内規程を作成します。規程には、制度の目的、実施体制、プライバシーの保護、不利益な取り扱いの禁止などを盛り込みます。

規程を作成したら、従業員への周知を徹底します。説明会を開催したり、社内イントラネットに資料を掲載したりして、「なぜこれを行うのか」「個人結果は本人の同意なく会社に知られることはない」といった点を丁寧に伝え、従業員の不安を払拭することが、高い受検率に繋がります。

ステップ5:ストレスチェックの実施と結果の通知

いよいよストレスチェックの実施です。受検率を上げるためには、実施期間を十分に確保することや、未受検者へのリマインドアナウンスを複数回行うといった工夫が有効です。

最も重要な原則は、検査結果は実施者から直接、従業員本人にのみ通知されるという点です。会社側が本人の同意なく、個人の結果を閲覧することは法律で固く禁じられています。この秘匿性の担保が、制度全体の信頼性の根幹を成します。

ステップ6:高ストレス者への面接指導の実施

ストレスチェックの結果、「高ストレス者」と判定された従業員から面接指導を受けたいという申し出があった場合、会社は1ヶ月以内に医師による面接指導を設定する義務があります。

申し出がない限り、会社から面接を強制することはできません。しかし、安全配慮義務の観点から、申し出を促す声かけは重要です。面接指導後、医師から意見があった場合には、残業制限や配置転換といった必要な就業上の措置を講じる必要があります。

ステップ7:集団分析と労働基準監督署への報告

個人の結果とは別に、10人以上の集団(部署、課など)の結果を統計的に分析する「集団分析」を行います。これにより、個人を特定することなく、どの部署にストレス要因が高い傾向があるかを把握でき、具体的な職場環境改善のアクションに繋げられます。

そして、一連のプロセスが完了したら、所定の様式(心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書) を作成し、所轄の労働基準監督署長に提出します。これが、義務化対応の最終ステップです。

ストレスチェックの費用相場とサービス比較

オフィスで電話するビジネスウーマン

担当者にとって最大の懸念事項の一つが「費用」です。ここでは、外部委託と内製それぞれのコスト構造を明らかにし、サービス選定で失敗しないための具体的なチェックポイントを提示します。予算確保と意思決定のために、必ず押さえてください。

外部委託する場合の費用相場(1人あたり500円~数千円)

外部サービスを利用する場合の料金は、主に「初期費用+従業員数に応じた単価」で構成されます。従業員1人あたりの単価相場は500円〜数千円と幅広く、以下の要素によって変動します。

  • 実施形式: Web受検か、紙の調査票か。
  • 集団分析のレベル: 基本的なレポートか、詳細な分析やコンサルティングを含むか。
  • サポート体制: 電話やメールでの問い合わせ対応、説明会の代行など。

単純な価格比較だけでなく、自社に必要なサービスレベルを見極めることが重要です。

内製する場合のコスト(無料プログラムの活用)

厚生労働省が提供する「ストレスチェック実施プログラム」を利用すれば、システム費用は無料です。しかし、これは「コストがゼロ」という意味ではありません。

担当者が実施マニュアルを読み込み、社内調整、結果の集計、報告書作成などを行う**人件費(工数)**が、目に見えないコストとして発生します。他の業務と兼任している担当者の時間をどれだけ投下できるか、現実的に試算した上で、内製が可能かどうかを判断すべきです。

失敗しない!外部委託サービス選定の5つのチェックポイント

数あるサービスの中から、自社に最適なものを選ぶためには、明確な基準が必要です。以下の5つのポイントを必ず確認してください。

  1. セキュリティ体制は万全か?
    • 従業員の機微な個人情報を扱うため、プライバシーマークやISMS認証を取得しているかなど、第三者認証の有無は必須の確認項目です。
  2. サポート体制は充実しているか?
    • 導入時の設定支援はもちろん、実施期間中の従業員からの問い合わせ対応や、トラブル発生時の迅速なサポートが期待できるかを確認します。
  3. 集団分析の質は高いか?
    • 単に結果をグラフ化するだけでなく、業種平均との比較や、課題解決のための具体的な提言が含まれているかなど、分析レポートの質を見極めます。
  4. 自社の規模や業種に合っているか?
    • 企業の規模やITリテラシーに合わせたプランが提供されているか。同業種での導入実績が豊富であれば、より的確なサポートが期待できます。
  5. 導入実績は豊富か?
    • 豊富な導入実績は、サービスの信頼性と安定性の証です。公式サイトで公開されている導入事例などを参考にしましょう。

ストレスチェックを経営に活かす「攻めの活用法」

ストレスチェック義務化への対応を、単なる「コスト」や「守りのコンプライアンス」で終わらせてはなりません。これは、組織の生産性を高め、持続的な成長を促す「攻めの投資」になり得ます。経営層を説得し、全社的な取り組みへと昇華させるための3つの視点を紹介します。

データで見るメンタルヘルス対策の重要性(生産性向上・離職率低下)

従業員のメンタルヘルスは、企業の業績と直結します。各種調査データによれば、従業員の心理的安全性が高く、メンタルヘルスが良好な企業は、そうでない企業に比べて生産性や創造性が高いことが示されています。

逆に、メンタル不調による休職者や離職者が1人発生した場合の損失コストは、数百万円にものぼると言われます。ストレスチェックをきっかけに職場環境を改善することは、こうした目に見えない休職・離職コストを削減し、企業の利益に直接貢献するのです。

「集団分析」から始める職場環境改善の具体例

ストレスチェックの真価は「集団分析」にあります。これは、組織の健康状態を示す貴重なカルテです。例えば、以下のような具体的なアクションに繋げることができます。

  • 分析結果: 特定の部署で「仕事の量的負担」のスコアが突出して高い。
    • 改善アクション: 当該部署の業務フローを見直し、人員配置の最適化や業務の平準化を検討する。
  • 分析結果: チームAで「上司の支援」のスコアが著しく低い。
    • 改善アクション: チームAの管理職向けにコーチング研修を実施し、定期的な1on1ミーティングの導入を促す。

このように、データに基づいた客観的なアプローチによって、効果的な打ち手を講じることが可能になります。

企業の健康経営をアピールし、採用力強化に繋げる

ストレスチェックへの積極的な取り組みや、その結果に基づいた職場環境改善の実績は、「従業員の健康を大切にする企業」であることの何よりの証明となります。

こうした姿勢は、いわゆる「健康経営」の一環として、企業のウェブサイトや採用媒体で対外的にアピールできます。これにより、企業のブランドイメージが向上し、特に優秀な人材の獲得競争において大きなアドバンテージとなるでしょう。働きがいを求める現代の求職者にとって、魅力的な企業として映ることは間違いありません。

よくある質問(Q&A)

最後に、担当者が実務で直面しがちな、細かいけれど重要な疑問についてQ&A形式で回答します。

Q1. 従業員がストレスチェックの受検を拒否したらどうすればいい?

A. 受検は従業員の権利であり、義務ではありません。したがって、企業が受検を強制することはできませんし、受検しないことを理由に不利益な扱いをすることも禁じられています。

ただし、企業としては、受検しやすい環境を整えることが重要です。制度の目的やプライバシー保護について丁寧に説明し、安心して受検できる雰囲気を作ることが、結果的に受検率の向上に繋がります。パワーハラスメントと受け取られない範囲で、受検を推奨する声かけを行うことは問題ありません。

Q2. 高ストレス者から面接指導の申し出がありません。放置して大丈夫?

A. 従業員からの申し出がなければ、企業に面接指導を実施する法的な義務は発生しません。そのため、放置しても直ちに法律違反とはなりません。

しかし、企業には従業員に対する「安全配慮義務」があります。高ストレス状態であることを知りながら何もしなかった場合、万が一その従業員がメンタルヘルス不調に陥った際に、この義務違反を問われる可能性があります。産業医や保健師といった専門家から、本人に面接指導を勧めてもらうなど、企業としてできる働きかけを検討すべきです。

Q3. パートやアルバイト、派遣社員は対象になりますか?

A. 「常時使用する労働者」に該当するかどうかで判断します。パートやアルバイトであっても、契約期間や週の労働時間数が一定の基準(前述)を満たせば、ストレスチェックの対象となります。

一方、派遣社員の場合は、原則として派遣元の事業者にストレスチェックの実施義務があります。ただし、集団分析については、労働環境の実態を把握している派遣先の事業者が、派遣社員も含めて実施することが望ましいとされています。

まとめ

オフィス街を歩くキャリアウーマン

本記事では、ストレスチェック義務化について、担当者が知るべき要点から、具体的な7つの実践ステップ、費用、そして経営に活かす活用法までを網羅的に解説しました。

重要なのは、この制度を単なる法的義務と捉えず、従業員の健康を守り、より良い職場環境を築くための絶好の機会と認識することです。

初めての担当で不安も大きいかと存じますが、この記事で提示したロードマップは、貴社が着実に義務を履行するための道しるべとなるはずです。まずは最初のステップである「社内方針の表明と体制づくり」から、今日から早速アクションを始めてみてください。あなたのその一歩が、会社の未来をより健康的なものへと変えていきます。

ぴったりのストレスチェックシステム選びはミツモアで

ストレスチェックシステムは製品によって特徴や機能もさまざま。「どの製品を選べばいいかわからない・・・」といった方も多いのではないでしょうか。

そんなときはミツモアにおまかせ。最短1分の自動診断で、ぴったりのストレスチェックシステムが見つかります。

ぴったりのストレスチェックシステムを最短1分で無料診断

従業員数や欲しい機能などの項目を画面上で選択するだけで、最適なストレスチェックシステムを最短1分で自動診断。もちろん費用はかかりません。

ぴったりの料金プランも一緒にお届け

希望条件に沿った料金プランも製品と一緒に診断します。概算金額を見積もりからチェックして、理想のプランを探してみましょう。

診断結果は最大5製品!比較・検討で最適なストレスチェックシステムが見つかる

最大で5製品の診断結果をお届けします。検討していた製品だけでなく、思わぬ製品との出会いもあるかもしれません。

ミツモアなら、ぴったりのストレスチェックシステムがすぐに見つかります。

ぴったりのストレスチェックシステムを無料診断する

サービス提供事業者さま向け
ミツモアにサービスを
掲載しませんか?
ミツモアにサービスを掲載しませんか?

ミツモアは依頼者さまと事業者さまをつなぐマッチングサイトです。貴社サービスを登録することで、リードの獲得及びサービスの認知度向上が見込めます。 さらに他社の掲載サイトとは違い、弊社独自の見積システムにより厳選されたリード顧客へのアプローチが可能です。 ぜひミツモアにサービスをご登録ください。

サービスを掲載する