ストレスチェックとは、従業員が仕事でどれくらいのストレスを感じているかを、アンケート形式で測る取り組みです。そして、部署や職種、年齢層など、ある特定の集団ごとに集計・分析することを「ストレスチェックの集団分析」と言います。
最終更新日: 2024年12月05日
この取り組みによって、個人だけでなく、職場全体のストレスレベルを客観的に把握することができ、原因の特定・適切な改善に役立ちます。
今回は、ストレスチェックの集団分析とは何か、目的や流れ、評価方法などを紹介します。
「従業員のストレスを軽減し、生産性を向上させたい」「従業員の定着率を高めたい」などと考えている方は、ストレスチェックの集団分析を行い、従業員が安心して働ける職場づくりを目指しましょう。
ストレスチェックの集団分析とは？
ストレスチェックの集団分析とは、簡単に言うと、会社のチームや部署ごとのストレスの状態を調べることです。
例えば、営業部は他の部署よりもストレスを感じているのか、それとも若手社員はベテラン社員よりもストレスを感じているのか、といったことを、たくさんの人のデータを集めて分析します。
この取り組みによって、どこの部署で特にストレスが多いのか、どんな仕事内容でストレスを感じているのかなどを詳しく調べることができ、問題の特定が可能です。
そして、適切な改善を行うことで、職場環境の改善・従業員のストレス軽減に役立てられます。
ストレスチェックの重要性や実施のメリット
そもそもなぜ、ストレスチェックを行うのでしょうか。
ここでは、ストレスチェックの重要性や実施するメリットについて、詳しく紹介します。
メンタルヘルス不調の予防
ストレスチェックは、従業員の心の健康を守るための重要な取り組みです。
特に仕事によるストレスは、うつ病などの心の病気を引き起こす可能性があります。
そのため、ストレスチェックを実施し、ストレスを抱えている従業員を早期発見し、適切なサポートによって深刻な問題に発展するのを防ぎます。
また、ストレスチェックの結果をもとに、職場環境の改善に活かすことが可能です。
従業員の心身が健康であれば、仕事のパフォーマンスも向上し、結果的に企業全体の生産性向上にも繋がるでしょう。
職場環境の改善
先ほど説明したとおり、ストレスチェックによって職場環境の改善に活かせます。
ある一定の集団のデータを集めて集計・分析すれば、部署や職種ごとのストレス要因を特定し、問題のある部分を具体的に把握することができます。そして、感覚的な判断ではなく、データに基づいて改善策を検討できるため、より効果的な対策が期待できるでしょう。
しかし、集団分析だけでは不十分であり、個別の対応や長期的な視点も必要です。従業員の協力も得ながら、組織全体で取り組むことで、より良い職場環境を築くことができるでしょう。
従業員のモチベーション向上
ストレスチェックは、従業員の心の健康を守るだけでなく、一人ひとりのモチベーション向上にも大きく貢献します。
例えば、ある部署で「仕事にやりがいを感じない」という声が多い場合、業務内容の改善や目標設定の見直しを行い、従業員のモチベーション向上に向けた対策を行うことができます。
ストレスチェックは、従業員が抱えている悩みや不満を可視化し、その解決策を見つけるための重要なツールです。従業員のモチベーションが向上すれば、仕事への満足度が高まり、結果的に企業全体の生産性向上にも役立つでしょう。
企業の生産性向上
ストレスチェックは、従業員の心の健康を守るだけでなく、企業全体の生産性向上にも繋がります。
例えば、営業部門の従業員が顧客とのやりとりに大きなストレスを感じている場合、研修体制の見直しやマニュアルの改善などを行います。その結果、営業成績の向上が実現できれば、企業全体の収益にも繋がるでしょう。
ストレスチェックは、従業員のモチベーションアップはもちろん、企業の生産性向上や利益率の改善に繋がり、企業全体の成長を後押ししてくれるツールと言えます。
法令遵守による従業員と企業の安心安全な関係性を確保する
ストレスチェックの集団分析は、企業が従業員の心の健康を守る上で欠かせない取り組みです。
法律で定められたストレスチェックを実施し、その結果を分析することで、従業員が抱えるストレスの原因を特定し、職場環境の改善につなげることができます。これにより、従業員は安心して働き続けられ、企業は生産性の向上や離職率の低下といったメリットを得ることができます。
また、ストレスチェック制度の適切な運用は、企業の社会的責任を果たし、従業員との信頼関係を築く上でも重要な役割があると言えるでしょう。
ストレスチェックの集団分析の流れ
次は、ストレスチェックの集団分析の流れについて紹介します。
実施のメリットや重要性だけでなく、正しい手順を理解して、職場環境の改善に努めていきましょう。
ストレスチェック導入に向けた準備をする
ストレスチェックを導入する準備段階では、以下が大切です。
- 経営層の理解と協力を得る
- 従業員への周知徹底
- 実施体制の構築
- 自社に合うツールを選定する
- 実施スケジュールの策定
ストレスチェック制度は、単なるアンケートではなく、従業員の健康と生産性を高めるための重要な取り組みです。目的や背景、回答の重要性をまずは経営層に理解してもらい、積極的に協力体制を築くことが重要です。その上で、従業員に周知徹底しましょう。
また、ストレスチェックの実施主体や、集計・分析を担当する部署、ストレスチェックの実施時期や頻度、回答期間などを明確にして、スムーズに運用できる体制構築も重要です。
ストレスチェックの調査票を作成する
ストレスチェックで正確なデータを収集するために、適切な調査票の作成が不可欠です。
調査票の作成では、以下の点に留意しましょう。
- 労働安全衛生法に基づく項目を網羅する
- 具体的な質問内容を設定する
- 回答しやすい形式を選ぶ
- 質問数と回答時間の調整をする
労働安全衛生法では、調査票に盛り込むべき項目が定められています。職場での心理的な負担の原因、心身の自覚症状、職場における支援に関する項目を必ず含めましょう。
回答形式は最も回答しやすい形式を選ぶことで、データが集まりやすくなります。
必要に応じて、産業医や臨床心理士などの専門家に相談し、より客観的で信頼性の高い調査票を作成するのも手です。
ストレスチェックの調査票を回収し、評価判定をする
従業員から回収されたストレスチェックの調査票は、企業が抱えている問題点や改善点を見つけるための重要なデータです。
分析項目としては、各質問項目に対する回答の分布、部署ごとの比較、職種ごとの比較などが挙げられます。
これらの分析により、どの部署や職種で特にストレスが集中しているのか、具体的な原因を突き止めることが可能です。
そして、分析結果に基づき、一定の基準を満たす者を「高ストレス者」として特定します。高ストレス者に対しては、産業医による面談や、カウンセリングなどの適切な支援が必要です。
ストレスチェックの結果を集団ごとに集計・分析する
ストレスチェックの回答が出そろったら、専用システムなどを活用し、部門や職種、属性ごとに集計しましょう。
統計的な手法を用いて、各質問項目に対する回答の分布を分析し、組織全体の傾向を把握します。例えば、どの部門で特定のストレス要因への不満が高いのか、あるいはどの職種で心身の不調を訴える人が多いのかといった、具体的な数値やグラフで可視化しましょう。
データの集計が終わったら分析結果をまとめ、高ストレス者の割合、ストレスの原因、改善策などを経営層や従業員代表に報告しましょう。
ストレスチェックの結果をもとに改善案・対策を検討、実施する
ストレスチェックの結果で得られたデータを分析したら、高ストレスの原因や、改善すべき点を特定しましょう。
例えば、特定の部署で長時間労働によるストレスが大きいことがわかれば、業務の効率化や人員配置の見直しなど、具体的な対策を検討します。
これらの改善策を実行することで、従業員のストレスを軽減し、働きやすい職場環境を実現することができます。さらに、定期的にストレスチェックを実施し、改善効果を検証することで、組織全体の健康状態を継続的に向上させることが可能です。
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ストレスチェックの集団分析の評価方法
ここからは、ストレスチェックの集団分析の評価方法についてみていきましょう。
主に3つの評価方法があり、それぞれの特徴なども交えて解説します。
量-コントロールモデルによる評価
量-コントロールモデルは、仕事の量と、その仕事に対するコントロール感の2つの要素に着目し、ストレスを評価するモデルです。仕事量が多く、かつコントロール感が低い状況にあるほど、ストレスを感じやすいと考えられています。
評価方法としては、ストレスチェックの結果から、これらの要素に関する質問項目の回答を分析します。例えば、仕事量が多いか少ないか、自分の仕事に責任を持てているかなど、具体的な質問に対する回答を統計的に処理することで、従業員全体のストレス状況を把握することが可能です。
職場の支援モデルによる評価
職場の支援モデルは、仕事だけでなく、周囲からのサポートがストレスに与える影響に着目した評価モデルです。具体的には、上司や同僚からの支援が、ストレスを緩和する働きを持つと捉えています。
評価方法としては、ストレスチェックの結果から、上司や同僚からのサポートに関する質問項目の回答を分析します。例えば、「上司から相談しやすい」「同僚と協力して仕事ができる」といった項目に対する回答を統計的に処理することで、従業員がどれほどのサポートを受けているかを把握することができます。
統計分析
統計分析は、ストレスチェックの結果を数値化し、客観的に評価するための手法です。
統計分析は、大規模なデータから客観的な事実を導き出すことができるのが特徴と言えます。
評価方法は、例えば、各質問項目に対する回答の平均値や標準偏差を計算し、部署ごとや職種ごとの違いを比較します。また、相関分析を行うことで、ある質問項目の回答と別の質問項目の回答との間に、どのような関係があるのかを調べることができます。
しかし、統計分析だけでは、個々の従業員の抱える問題を深く理解することは難しいという側面もあるため、注意が必要です。
ストレスチェックの集団分析結果を職場で活用する方法
ストレスチェックの集団分析の結果は、どのように職場で活用するとよいのでしょうか。
ここでは、5つの活用の仕方を紹介します。
職場のストレス状況の変化を確認する
ストレスチェックを定期的に実施することで、過去のデータと比較ができ、組織全体のストレスレベルが改善傾向にあるか、悪化しているか、あるいは横ばいなのかを把握できます。
また、改善を図るために実施した施策の効果検証にも活かすことが可能です。
例えば、ある施策を行った後にストレスレベルが低下していれば、その施策が効果的だったと判断できます。
このように一定のデータが溜まれば、ストレス状況の推移を確認することができたり、特定の施策を実施した後の変化を分析することで、その施策の効果を定量的に評価することにも役立ちます。
全国平均や同部署の経年変化と比較する
ストレスチェックの結果を、自社の状況だけでなく、全国平均や同部署の過去のデータと比較してみましょう。
業界全体の平均値や、類似する企業のデータと比較することで、自社の位置づけを明確にできます。そして、自社のストレス状況が業界水準と比べて高いのか低いのか、また、過去の改善策が効果を発揮しているのかどうかを客観的に評価することができるでしょう。
その際、経年変化をグラフなど視覚的に作成することで、ストレスレベルの変動を視覚的に捉えられます。分析したい内容に合わせて、適切なグラフの種類を選びましょう。
原因を推察する
ストレスチェックの結果から原因を推察することで、より効果的な対策を実施することができます。
たとえば、ある部署で「仕事量が多い」や「周囲からのサポートが得られない」といった質問項目のスコアが高い場合、その部署では、業務量の見直しや分担、チームワークの向上のための研修などの対策が必要だと考えられます。
ただし、原因は一つとは限らず、複数の要因が複雑に絡み合っている場合もあります。そのため、多角的な視点で分析し、従業員の意見も聞きながら、最適な対策を検討することが重要です。
集団分析結果と他の情報と照らし合わせる
ストレスチェックの結果は、組織全体のストレス状況を把握する上で非常に重要な情報です。しかし、この結果だけでは、ストレスの原因を特定することは困難な場合があります。
そこで、他の情報と照らし合わせることで、より深い分析が可能になります。
例えば、ある部署でストレスレベルが高い場合、その部署の業務内容が複雑で、かつ人員不足であることが判明した場合、業務の効率化や人員配置の見直しが必要だと仮説します。
その際、遅刻・早退の回数、病気休暇の取得日数など人事データなどと照らし合わせることで、より深く状況を把握でき、適切な対策を打つことができるでしょう。
職場環境改善の施策を実施する
ストレスチェックの結果をもとに、具体的な職場環境改善の施策を実施することで、従業員のストレスを軽減し、働きやすい職場環境を実現できます。
具体的には、施策の実施前後のストレスチェック結果を比較し、改善効果を数値で評価します。その際、従業員へのアンケートやヒアリングを実施し、主観的な意見も参考にしましょう。
ストレスチェックは、単に現状を把握するだけでなく、職場環境改善のきっかけになります。データに基づいた施策を実行し、継続的に改善することで、より働きやすい職場を築くことができるでしょう。
ストレスチェックの集団分析を実施するときのポイントや注意点
ストレスチェックの集団分析を実施するときは、いくつかポイントや注意点があります。
ここでは、どんなポイントに気を付けて実施するといいのか、詳しく紹介します。
匿名性を確保し、法令遵守する
ストレスチェックの集団分析を実施する際には、匿名性を厳守し、関連法令を遵守することが大切です。
従業員の心理的な負担を軽減し、正直な回答を引き出すためには、回答内容が特定されないよう匿名性が確保されていることを周知徹底する必要があります。
また、個人情報保護法をはじめとする関連法令を遵守し、得られた個人情報は適切に管理・活用することが求められます。
これらの点を徹底することで、信頼性の高いデータに基づいた分析が可能となり、より効果的な職場環境改善に繋げることができるでしょう。
分析対象を明確にしたうえで選定する
ストレスチェックの集団分析を実施する際は、分析対象を明確にしたうえで、適切な選定を行うことが重要です。分析対象を漠然としたまま進めてしまうと、得られた結果が不正確になったり、改善策が的外れになったりする可能性があります。
例えば、全従業員を対象に一括で分析するのではなく、部署ごと、職種ごと、年齢層ごとなど、分析目的に合わせて適切なグループに分け、それぞれの特性を考慮した分析が大切です。こうすることで、より具体的な問題点を見つけ出し、効果的な対策が可能です。
また、分析対象の選定は、企業の規模や業種、そしてストレスチェックの実施目的を考慮しましょう。そうすることで、得られた結果をより有効に活用することができます。
分析結果を踏まえて対策を検討する
ストレスチェックの集団分析は、ただの現状把握だけでなく、その結果を踏まえて具体的な対策を検討することが重要です。分析結果から浮かび上がった問題点に対して、組織全体で共有し、改善に向けた具体的なアクションプランを策定する必要があります。
ただし、対策を検討する際には、分析結果だけでなく、従業員の意見や現場の状況も考慮することが大切です。従業員が主体的に改善活動に参加できるような仕組み作りも、職場環境を改善するにあたってポイントになります。
集団分析の結果を活かし、組織全体の健康増進に繋がるような施策を計画し、実行することで、より働きやすい職場環境を実現していきましょう。
ストレスチェックの集団分析で職場環境の改善に努めよう
今回は、ストレスチェックの集団分析について、必要性や実施するメリット、導入における流れや評価方法などを紹介しました。
ストレスチェックの集団分析は、組織全体のメンタルヘルス状態を把握し、働きやすい職場環境を実現するために不可欠な取り組みです。個々の従業員のストレス状態だけでなく、部署や職種ごとの傾向を分析することで、組織全体の課題を可視化することができます。
しかし、ストレスチェックのシステムはたくさんあるため、どれを選べばいいのか迷いますよね。ミツモアを活用すれば、自社の従業員数やほしい機能などを選択項目にぴったりなシステムを診断してくれます。
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