自社の商品の改善や質の向上に、顧客の声(ユーザーボイス)を生かす重要性は理解しているものの、具体的にどうすべきか分からない人は少なくないようです。ユーザーボイスをサービスの改善につなげるメリットと、顧客の声の集め方を解説します。
ユーザーボイスとは?
ユーザーボイスとは簡単に言えば、商品・サービスに対する要望や意見、クレームなど、顧客からの「反応」を指します。
ユーザーボイスと呼ばれることもあれば、「VOC(Voice of Customer)」と呼ばれることもあり、さまざまな表現がありますが、いずれも「顧客の声」である点に違いはありません。
VOC(Voice of Customer)の重要性
「VOC(Voice of Customer)」は、企業のコールセンターやヘルプデスクなどの分野で主に使われている用語です。
コールセンターは業務の性質上、顧客と直接スタッフが会話をするため、率直な意見や要望、クレームなどを耳にする機会が多くなります。
そういった顧客からの声をVOCとしてまとめれば、サービスの改善や新たな商品開発に結びつけることができ、結果として売り上げの向上を実現できるでしょう。
近年はコールセンターに限らず、さまざまな方法で顧客の声を収集し、積極的にサービスの向上に努める企業が増えているようです。
ユーザーボイスをビジネスに生かすには?
ユーザーボイスを自社の商品開発やサービスの改善に生かす重要性は、多くの企業が認識しているはずです。しかし、実際には顧客の声を活用できていない企業は多く、そもそもユーザーボイスを集める発想も持っていないところも珍しくありません。
計画的に顧客の声を収集し、商品・サービスの改善に生かすためには、具体的に「いつ」「どのようなタイミング」で顧客の声を集め、それをどのように活用するかを全社的に決めておく必要があります。
特定の部署だけの課題とするのではなく、マネジメント層が積極的に関与し、全社的な取り組みとして打ち出すことが第一歩です。
ユーザーボイスを集めるメリット
ユーザーボイスを積極的に集め、活用するメリットを確認しておきましょう。商品・サービスの改善を通じて顧客満足度が向上し、結果的に自社の売り上げの向上につながります。
商品・サービスの質を向上できる
顧客の生の声を集めることで、自社の商品・サービスの問題点や課題を浮き彫りにできるため、商品の品質向上や、顧客ニーズに合ったサービスの提供などが可能になります。
顧客から評価されている点を全社的にシェアすれば、企業全体のサービスの質が向上するでしょう。逆に、顧客が抱える不満やクレームなどに耳を傾ければ、マーケティングリサーチなどでは分からなかった改善点を見いだせるはずです。
また商品に関して自社がアピールしたいポイントと、顧客が求めているポイントがズレているケースは珍しくありません。
ひとりよがりなアプローチを続けていても、売り上げが伸びることはないでしょう。ユーザーボイスをしっかりと確認すれば、自社の気付かなかった改善点が明確になるため、より市場に広く受け入れられる商品の開発が可能になります。
顧客満足度の向上を実現できる
ユーザーボイスを真摯(しんし)に受け止め、改善を重ねることで顧客満足度の向上を実現できます。顧客からすれば、自分の抱える不満や意見などをしっかりと受け止め、商品やサービスの改善に生かしている企業に対しては、自然と好印象を持つものです。
当然、全ての顧客のニーズに対応するのは不可能ですが、できるだけ多くの顧客が感じている不満点を解消することで、企業全体の印象が良くなり、新規顧客も獲得しやすくなるでしょう。
顧客増と売り上げアップに寄与する
ユーザーボイスを生かしたビジネスを展開することで顧客ロイヤルティーの向上につながり、結果的に顧客増と売り上げアップを実現できます。
より顧客ニーズに合致した商品を売り出せるようになるため、おのずとリピート購入が増え、新規のお客さんも増えるようになるでしょう。
売り上げアップのために、膨大なコストを投じて市場リサーチをしている企業は珍しくありません。
しかし多額の費用を負担しなくても、ユーザーボイスをしっかりと集め、そこで明らかになった課題を解消していけば、徐々に顧客ニーズに合った理想的な商品・サービスが提供できるようになります。
ユーザーボイスの集め方
それではユーザーボイスの具体的な集め方を紹介します。いずれも難しい手法ではなく、業界・業種にかかわらず、どのような企業でも実践できるものです。自社の環境に照らしながら、導入しやすい方法を選択しましょう。
アンケートを活用する
古くから活用されているユーザーボイスの収集法として、アンケート調査があります。店舗にアンケート用紙を置いたり、取引の際にアンケートの記入をお願いしたりする方法は、多くの企業が実践しているはずです。
特に近年はオンラインでのアンケート調査が主流になっており、メールやアンケートフォームを活用して、気軽に顧客に答えてもらえるようになっています。
アンケート調査は手軽に実施できるのがメリットですが、顧客の「本音」が結果に正しく反映されるとは限らないので注意しましょう。ありきたりな質問では、顧客が感じている不満がはっきりとしない可能性もあります。
また時間をかけてアンケートに答えるのをわずらわしいと感じる顧客もいるので、割引や特典を用意するなどして、顧客が積極的に調査に協力してくれるような工夫が必要です。
モニターを募集する
無料で自社の商品を使ってくれるモニターを募集し、感想を伝えてもらったり、機能やサービスの改善について意見をもらったりする方法もあります。
無料ならば商品を使ってみようと考える人は多いため、特に新商品のリリース前にモニターを募集し、できるだけ顧客ニーズに合わせて品質や機能を改善してから、本格的に発売するケースは少なくありません。
大々的にモニターを募れば、さまざまなユーザーボイスを集められるだけでなく、募集自体が商品の宣伝にもなるのでおすすめです。
SNSの投稿を集める
近年、多くの消費者が購入した商品や、利用しているサービスの感想などをSNSに投稿しています。X(旧Twitter)やInstagram、FacebookなどのSNSの投稿を調査すれば、自社の商品の強みや改善点はもちろん、企業としてのイメージなども確認できます。
さらにSNSで企業のアカウントを作成し、商品を使った感想などを広く募集すれば、コストをかけず効率的にユーザーボイスを集められるでしょう。
このようにSNSを活用して顧客の声を収集し、マーケティングに活用する手法は「ソーシャルリスニング」と呼ばれ、多くの企業が導入しています。
SNSを利用すれば、ほとんどコストをかけずに顧客の生の声を集められるので、積極的に活用していきましょう。
ユーザーボイスを活用する際の注意点
最後に、ユーザーボイスを自社のマーケティングに活用する際の注意点を解説しておきます。ユーザーボイスを集める方法はさまざまですが、以下の点は必ず押さえておかなければいけません。
掲載する際は必ず許可を取っておく
商品・サービスの改善のために顧客の声を集めるだけならば問題ありませんが、それをウェブサイトや広告などに掲載する場合、必ず顧客から許可を得ておく必要があります。
名前を伏せるので許可なしで問題ないと考えている企業もありますが、ユーザーボイスであっても、無断使用は著作権や肖像権の侵害になる可能性があるので注意しましょう。顧客としても、無断で掲載されると気分の良いものではないはずです。
個人名や写真は掲載しても問題ないか、実名は伏せてイニシャル表記にすべきかなど、必ず確認して許可を得るようにしましょう。
目的に応じて設問を考える
顧客に質問形式で商品の使用感や要望、改善点などを確認する場合、目的に応じて設問を臨機応変に変えることが大事です。
例えば、商品の使用感を知ってもらうためにユーザーボイスを集めているのに、設定された設問が商品価格に関するものばかりだった場合、使用感に関する顧客の声を集めることはできないでしょう。
当たり前の話ではありますが、ユーザーボイスを集める目的と、アンケートなどの設問がマッチしていないケースは決して少なくありません。
アンケートなどの設問に限らず、まずはどういう目的で顧客の声を集めたいのかを明らかにして、それに合った施策を考える必要があります。
ユーザーボイスをマーケティングに活用しよう
ユーザーボイスの概要と、収集するメリットを解説しました。ユーザーボイスとは「VOC」や「顧客の声」などと呼ばれるものです。
企業の場合、自社の商品・サービスを使った人(顧客)の感想や意見などを指し、マーケティングや商品開発に生かすことで、売り上げアップにつなげられます。
顧客の声を確認してから、商品の購入を決める人も少なくないので、サービスの改善に生かすだけでなく、ウェブサイトや広告などに積極的に掲載すると良いでしょう。
ただしユーザーボイスを掲載する際には、必ず該当する顧客に許可を取る必要があります。無断で掲載すると、後から問題になる可能性もあるので十分注意しましょう。
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