苦労して採用した新入社員がすぐに辞めてしまうと、企業側は大きな損失を被ります。そこで企業の採用活動で注目されている取り組みがRJP(Realistic Job Preview)です。RJPの概要やメリットを紹介します。またRJPを実践する際の注意点も見ていきましょう。
RJPとは何か?
採用活動においてRJPを実践する企業が増えています。RJPの意味や注目されている理由などを紹介します。
RJPの意味
RJPとはRealistic Job Previewの略語であり、企業が採用活動する際に自社の良い部分も悪い部分も、ありのままに情報開示することです。
正確な情報開示により、企業側と求職者側とのミスマッチを防ぎ定着率を高める取り組みであり、多くの企業に注目されています。
アメリカの産業心理学者であるジョン・ワナウス氏が提唱した採用理論であり、別名「本音採用」とも呼ばれています。
入社後の現実と入社前イメージとのギャップを埋めることで企業と求職者の双方にメリットをもたらすといわれています。
注目されだした理由
RJPが注目されだした背景には入社して間もない社員の高い離職率にあります。
厚生労働省による「新規学卒就職者の離職状況」によると、2017年3月卒業者が就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者で39.5%、新規大卒就職者で32.8%にも上ります。
さらに、今後の少子高齢化により、これからの時代は労働人口が減少していくといわれ、企業にとって労働力の確保は急務となっています。
離職の多くの原因が入社後のミスマッチです。この問題を解消するためにRJPが注目されているといえるでしょう。
RJPに期待できる効果
RJPは就活生に対して、仕事に関する情報を正しく開示するという営みですが、就職する前に企業のリアル像を知ることができるため、求職者には大きなメリットがあるといえます。RJPに期待できる効果を紹介します。
ワクチン効果
事前に会社の現実を伝えることで心理的な免疫を作れます。これを「ワクチン効果」と呼びます。入社後、たとえ厳しい現実があっても、事前情報として把握しておくことで離職を防ぐことが期待されます。
新入社員にはあらかじめリアルな情報を提供されているので、職場や仕事に対して起きる、過剰な期待を抱かせず、入社後のギャップを抑えてくれます。
たとえば、システム会社の現状を伝えると世の中を豊かにするシステムを作るだけでなく、顧客との折衝や契約処理などの一般的な作業も必要になります。
場合によってはシステムを作るよりも地道な仕事が多くなる場合もありますが、ワクチン効果により、辞めたいという気持ちを緩和してくれる可能性が高まります。
スクリーニング効果
RJPに取り組めば求職者は会社や業界の現状を知るでしょう。そこで本当に自分にあっているのか改めて判断を促すスクリーニング効果もあります。
ここで一度求職者に考えてもらい、クリアできそうだと判断した人のみ、次のステップに進んでもらえるのです。考えた結果離れていく人もいますがお互いにとってメリットのあることといえます。
文字通りふるいにかける効果があるため企業と社員が納得のいく採用ができます。あわないと思った求職者は無理せず別の企業にアプローチすることでミスマッチを防ぎます。
コミットメント効果
企業が正直に情報を開示することで求職者は企業に対して誠実さを感じられるでしょう。そのため企業に対する信頼感や愛着心が高まる効果があります。
「コミットメント効果」といいますが、入社した後は長く働くことや、会社に貢献したいという思いを強くしてもらえるメリットがあります。
人間関係も同様です。正直に話してもらうとその人の信頼性が高まるのと同じ効果になります。
逆に事実と異なることを伝えたり重要なことを伝えなかったりすると、会社に対する不信感が募り早期退職の原因にもなりかねません。
役割明確化効果
求職者に何を期待しているのか正直に伝えると、入社後の働くイメージが湧きやすく仕事に対する意欲向上につながる効果があります。
これを「役割明確化効果」と呼びます。自分の役割を具体的に与えられることで、モチベーションを上げる効果です。
本来であれば入社後に伝えられる情報だったり営みであったりするのですが、採用試験時に伝えると入社前から意欲を高める効果に期待が持てます。
求職者は企業に対し思い描いた理想ではなく、現実的な目標を持てるようになるでしょう。
RJP理論を活用する際の注意点
メリットの多いRJPですがいくつか注意しなければならない点があります。RJPに取り組む際のポイントを紹介します。
発信する情報のバランスを取る
RJPにおいて重要なポイントはポジティブな情報とネガティブな情報の開示バランスです。あまりにも正直にネガティブな情報を発信してきまっては、求職者も引いてしまうでしょう。
逆にポジティブな情報ばかりを伝えても入社後のギャップが大きくなる可能性があります。
求職者の理想と現実を埋める営みは大切ですが、求職者の熱が冷めてしまい誰も入社しなくなっては採用活動の意味がありません。
自社が誇れるポジティブな情報をしっかり伝えたうえで、仕事の厳しさや難しさを伝えてみましょう。
受け入れ部署と人事部の連携
正確な情報を求職者に伝えるためには人事部と受け入れ部署がしっかり連携しなければなりません。現場を把握しないまま人事部が求職者に間違った情報を伝えるとRJPの効果が薄れてしまいます。
採用面接の中に人事部だけでなく受け入れ部署の管理者が立ち会うのもおすすめです。現場のリアルなやりがいや楽しさ、厳しさを正確に伝えられるでしょう。
また人事部が受け入れ部署が求めている人物像を正確に把握しないと、入社したのはいいものの求めていた人材とは異なるといった事態が起きてしまいます。
RJP理論の導入事例
理論的には定着率の向上に期待が持てるRJPですが、実際の効果が気になるところです。RJPを導入した企業の事例を紹介します。
数多くの面接で志望意欲を醸成 ノバレーゼ
2000年設立の「ノバレーゼ」は、婚礼プロデュース業やホテル・レストラン経営を主な業務としています。
創立時から新卒採用に力を入れ、2010年には正社員約500人、アルバイト約300人という構成になっています。
採用試験方法の特色は面接の多さです。多い人で10回もの面接を通して適した人材を選定しています。
この営みはただふるい落とすだけの面接とは異なり、採用したい人材の志望意欲を醸成させる目的もあります。
面接だけでなく現場のさまざまな場面も見せることで、定着率を高めているのです。
誰もがアルバイト採用「ヴィレッジ・ヴァンガード・コーポレーション」
『遊べる本屋』を売りとして書籍や雑貨を売るヴィレッジ・ヴァンガード・コーポレーションは、2010年時点で正社員300人以上を雇っています。臨時雇用者は約2500人です。
必ずアルバイトから採用することで本当に自社が好きな人に長く勤めてもらう仕組みを取り入れています。
アルバイトから社員店長に昇格する正社員雇用制度があるため、人材不足で困ることもほとんどありません。
社風を理解した社員が長く勤められる工夫を取り入れているのが、ヴィレッジ・ヴァンガード社の強みといえます。
過不足のない採用で定着率アップを
RJPを実践することで求職者が入社した後の理想と現実のギャップを大きく埋められます。これにより定着率が増え人材確保に大きく影響を与えてくれるでしょう。
RJPは離職率を抑えてくれるだけではありません。企業に貢献しようとするコミットや入社前のモチベーションを高めてくれる効果にも期待できます。
ただしあまりネガティブな情報ばかり偏って開示してしまうと、辞退する人が増えてしまいます。情報開示にはポジティブな情報とネガティブな情報とのバランスを考えましょう。
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