まとまったお金がすぐに必要になったときに、家を売ることを検討するかもしれません。家を売る方法は6つあり、損をしないためには知っておくべきことがあります。
家の売り方のほかに、家を売るときに発生する費用やなるべく高く売るコツも解説します。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
お金がない時に家を売る方法は6つ
家を売ってお金を得る方法は6つあります。それぞれに特徴があり、状況によって適した手段が異なります。
家を売却する方法を表にまとめました。
方法 | 特徴 |
---|---|
買取 | 素早く現金化できる |
リースバック | 家を売却したあとも住み続けられる |
任意売却 | 比較的高額で売却できる 競売を回避できる |
リバースモーゲージ | 自宅を担保にしてお金を借りる |
仲介 | 比較的高額で売却できる |
個人間売買 | 仲介手数料不要で売却できる 手続きは全て当事者が行う |
買取と仲介に分けられる
家を売る方法は6つありますが、大まかに分けると買取か仲介のどちらかに当てはまります。
買取とは文字通り第三者に家を買い取ってもらうことを指します。
仲介は仲介業者に依頼して買主を見つけてもらい、売買契約が成立したら仲介手数料を支払います。
家を早く売りたいときの方法4種
できるだけ早く家を売却したいのであれば以下の4つの方法が取れます。
買取
買取は不動産会社に直接物件を売却します。メリットは3つあります。
● 買取のメリット
- 数日から数週間で現金化できる
- 契約不適合責任が免除されることが多い
- 契約が撤回されることがない
買取は素早く確実に現金化できる手段です。
不動産会社に買い取ってもらえるため、買主が現れるのを待つ必要がありません。個人に売るときは相手方がローン審査に落ちてしまったときに売買契約がキャンセルされる心配があります。しかし業者に売却するのであればキャンセルが発生する可能性は低いです。
デメリットは手元に入るお金が少ないことです。一般的に相場の6~8割の価格で買い取られます。現金化までのスピードと手元に入る金額のどちらを優先するか予め決めておきましょう。
リースバック
リースバックとは「セールアンドリースバック」の略称で、自宅を売却し賃貸契約を結ぶ取引方法が有名です。メリットは3つあります。
● リースバックのメリット
- 引っ越さず住み続けられる
- 固定資産税などの維持費が不要
- 将来的に買い戻すことも可能
子供の学費工面などの事情からまとまった資金が必要なものの、引越しはしたくないという人にリースバックはおすすめです。
リースバックのデメリットには相場よりも売却価格が安くなる傾向があることや月々の家賃が発生することが挙げられます。
任意売却
住宅ローンを滞納している場合などは任意売却を視野に入れましょう。
一定期間住宅ローンの返済が滞ると、マイホームが競売にかけられてしまいます。競売では市場価格の5~7割程度の価格で売却されるうえ、全額がローンの返済に回されるため手元にお金が残りません。
競売にかけられる前に任意売却の手続きをすれば、市場価格と同程度の金額で売却できる可能性が高いです。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージは自宅を担保にして借り入れをし、毎月利息分のみを返済するシステムです。
リースバックのように自宅に住み続けられるというメリットがある一方、利用条件が厳しい、借入金の使途が限定されていることが多いなどのデメリットがあります。
家を高く売りたいのときの方法2種
少しでも高く売却したいときは以下の2種類の方法を検討しましょう。
仲介
少しでも高く家を売ろうと考えた場合は、不動産業者に買主を探してもらうことが一般的です。これが不動産売買における仲介です。
メリットは以下の3つです。
● 仲介のメリット
- 多くの購入希望者にアプローチできる
- 高額で売却できるチャンスがある
- 買主との交渉を不動産会社に任せられる
仲介で売買契約が成立した場合、仲介手数料が発生することに注意が必要です。そのほかにも購入希望者に物件の内覧を行ったりなど、売買契約成立までの手間がやや多い点もデメリットです。
また3種類ある媒介契約の結び方によって、売主や不動産会社の対応が変化します。簡単に特徴を表にまとめたので参考にしてください。
媒介契約の名称 | 仲介を依頼する不動産会社の数 | 売主が買主を見つけても良いか |
---|---|---|
専属専任媒介契約 | 1社のみ | 見つけてはいけない |
専任媒介契約 | 1社のみ | 見つけても良い |
一般媒介契約 | 複数社に依頼可能 | 見つけても良い |
個人間売買
不動産は仲介業者を挟まず、自力で売却先を探すこともできます。
個人間売買をすれば仲介手数料が不要になりますが、手続きをすべて自分で行わなくてはならない点に注意してください。
とはいえ個人間売買をしているのは親族間やよく見知った間柄の人など、一定以上の信用・信頼関係がある相手がほとんどです。初めて不動産を売却するときに個人間売買で取引を完了させることはほぼありません。
また相場価格よりも著しく低い価格で売却すると贈与とみなされ、贈与税が課せられることがあります。周辺の相場をきちんと確認してから価格を設定しましょう。
家の売却で必要な費用
家を売ったら代金が全て手元に入ってくるわけではありません。家の売却にかかる経費とその相場をチェックしましょう。
仲介手数料
仲介で不動産を売却するときは、成約したら仲介業者に仲介手数料を支払います。不動産売買における仲介業者は不動産会社がほとんどです。
不動産売買の仲介手数料の上限は宅建業法(宅地建物取引業法)で決められているので、法外な額の仲介手数料を請求されることはありません。
仲介手数料の上限額は物件の価格によって決定します。ルールを知っていれば簡単に上限額を確認できるので、売却を検討している段階で仲介手数料の上限について知っておきましょう。
不動産の売買額 | 計算方法 |
---|---|
400万円を超える | 物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
200万~400万円以下 | 物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税 |
200万円以下 | 物件価格(税抜)×5%+消費税 |
一般的に仲介手数料は売買契約が締結されたときに半額を、物件引き渡し時に残りを支払います。
印紙税
印紙税とは契約書や領収書などを作成したときに、印紙税法に基づき文書に課せられる税金のことです。大手コンビニなどでも取り扱っている、切手に似た緑色の「収入印紙」を見たことがある人も多いかもしれません。
家を売却するときは売買契約書に印紙税がかかるので収入印紙を貼りつけます。納めるべき印紙税は契約金額によって決まっています。
2014(平成26)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に作成される書類に貼りつける印紙税額は軽減税率が適用されます。具体的な税額は以下の表をご確認ください。
記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
50万円以下または金額の記載がない | 200円 |
50万を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 5,000円 |
1000万円を超え5000万円以下 | 10,000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 160,000円 |
10億円を超え50億円以下 | 320,000円 |
50億円を超えるもの | 480,000円 |
収入印紙を貼らなかったり、本来の金額よりも安い印紙を貼りつけたりすると、過怠税として本来支払うべき印紙税額の3倍の金額が徴収されます。
もし収入印紙の貼り忘れなどに気づいたらすぐに税務署に申告しましょう。故意によるものではないと判断されれば、過怠税は本来支払うべき税額の1.1倍の金額を徴収されるだけですみます。
抵当権抹消登記費用
住宅ローンを支払っている途中の家を売るには、ローンを完済して抵当権抹消登記をする必要があります。抵当権の抹消手続きにかかる費用を抵当権抹消登記費用といいます。
抵当権抹消登記費用は1つの不動産に対し1,000円がかかります。住宅であれば土地と建物が別にカウントされるので、合計2,000円の抵当権抹消登記費用が発生します。
抵当権抹消手続きは自分でもできますが、手続きの煩雑さなどを考えると行政書士に依頼することをおすすめします。行政書士に依頼すると抵当権抹消登記費用のほかに、10,000~16,000円ほどの依頼料がかかることが多いです。
譲渡所得税
家を売却して発生した利益は譲渡所得といい、課税の対象です。譲渡所得には所得税、住民税、復興特別所得税が課せられ、この3つを総称して譲渡所得税といいます。
譲渡所得額と課税譲渡税額は以下の計算式で求められます。
課税譲渡税額=(譲渡所得金額-特別控除額)×税率(所得税・住民税)
譲渡所得税額を計算するときの税率は家の所有期間に応じて変わります。所有期間が短いと適用される税率は高くなる傾向があります。
特別控除はいくつかありますが、特に居住用財産の売却時に適用される特例は俗に「3000万円控除」と呼ばれるほど代表的なものです。
また10年以上所有している自宅を売却し譲渡所得が発生した場合は、特定の要件を満たすことで軽減税率の特例が適用されることがあります。
譲渡所得に関連する控除にはさまざまな種類があるので、事前に調べて当てはまりそうなものがないか探しておきましょう。
その他の費用
家を売却するときは売買に関する費用だけでなく、そのほかの費用がかかります。おおよその目安をつけて準備をしておきましょう。
● 家の売却時にかかるその他の費用例
- 引越し費用
- ハウスクリーニングの費用
- 家財等不用品の処分費
これらの費用は人によって必要な金額が大きく変わります。ミツモアで引越しやハウスクリーニング、不用品処分を依頼したときの費用相場については関連記事もチェックしてください。
少しでも高値で家を売るコツ
家を手放すのであればできるだけ高値で売却したいですよね。少しでも高く家を売るためには3つのコツがあります。
それぞれの特徴やタイミング、注意すべき点を解説します。
複数の不動産会社に査定を依頼する
家を売るときは必ず複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。複数社からの査定を見比べれば物件の相場が確認できます。
不動産の査定にはメールや電話で行う「簡易査定(机上査定)」と直接現地を確認して査定する「訪問査定」の2種類があります。先に簡易査定を依頼し、信用できる不動産会社に訪問査定を依頼するようにしましょう。
適正価格で売り出す
家の売却価格は売主が自由に設定できますが、理由もなく相場よりも高い値段を設定してしまうと購入希望者が見つかりづらくなります。売却価格や周辺の売却相場を考慮した適切な価格に設定しましょう。
相場観はレインズ・マーケット・インフォメーションや国土交通省の不動産情報ライブラリの情報を参考にすることをおすすめします。
なお家の売買を行うときは値引き交渉をすることが一般的なので、値引き交渉を受ける余裕を持って売却価格を設定しましょう。
需要が高い時期に売り出す
家を売却するタイミングをコントロールできるのであれば、需要の高い時期に売り出しましょう。
2~3月は進学や就職・転勤などで多くの人が移動する時期です。不動産の需要も高まっているので、高値で売り出しても成約する可能性が高いです。
査定から売り出しまでは2週間~1か月ほどかかるので、需要の高い時期に市場に出せるよう計画的に準備をしましょう。
自分にあった方法で家を売ろう
家を売却する方法は複数あるので、どの方法が誰に適しているかは一概には言えません。それぞれの売却方法について知り、自分に合った方法で売れるようにしましょう。
売却価格を決めるときはレインズの情報だけでなく、不動産会社に査定をしてもらうことをおすすめします。複数の会社から査定をしてもらい、自分の家の価値を見極めましょう。