製造業に携わる人の多くが目にし、耳にし、取扱ったことがある筈の生産管理システム。具体的に何に役立つシステムなのか、深く追求することはあまりないのではないでしょうか？
最終更新日: 2024年06月28日
今回、そんな生産管理システムについて、基本的な構造や機能、どんな業種で使われているかを簡単にまとめました。
生産管理システムとは
生産管理システムとは製造業における生産活動を一括管理するシステムです。
日本規格協会のJIS規格Z 8141:2001では「生産管理を系統的に行うために、生産に伴う現品、情報、原価（価値）の流れを統合的、かつ、総合的に管理するシステム」 と定義されています。
「モノを作る計画を立てる→必要な材料を発注する→人や設備を割り当てる→進捗を確認する→モノを出荷する」までの情報をまとめることで、業務を効率的に管理します。
| ※ 参照：JIS規格検索｜日本規格協会 |
生産管理システムが必要な理由
生産管理システム最大の特徴はモノを作ってから売るまでの流れをまとめて効率化できる点です。
例えば、仕入れや在庫、販売などの各フェーズごとに異なるシステムを使って情報を管理しようとするとどうなるでしょうか？
欠品や過剰在庫の把握、納期や出荷状況に合わせた計画、材料費や労務費を含めた原価管理など、フェーズをまたぐ作業が難しくなるでしょう。二重作業や不要な手配がおこる可能性もあります。
そこで各フェーズの流れを一括して管理できる生産管理システムが必要となってくるのです。製造現場はコストと納期に追われがちです。一連の流れをみながら業務を効率化しなければいけません。
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生産管理システムの利用業界・業種
生産管理システムはおもに製造業の生産管理部門で使われます。ただ、ひとくちに製造業といってもさまざまな分野、業種が存在します。
どのような業界、業種で利用されるのか、業種ごとに必要な機能についてかんたんにまとめました。
組立業
例）工作機械、医療機器、産業ロボット、電子機器、自動車、航空機など
→在庫管理の最適化が必須であるケースが多いため、部品構成表にもとづいた所要量の調整、在庫状況のリアルタイム反映が可能なシステムが向いています。
加工業
例）金属加工、プラスチック製品、木材・紙、ガラス製品、繊維加工、ゴム製品など
→加工業は加工工程の最適化が重用視されるため、生産計画の立案機能がしっかりしたシステムが向いています。計画の自動立案機能や工程ごとのマスター管理機能に目を向けるといいでしょう。
配合業
例）化学肥料、医薬品、化粧品、飼料、インク・塗料、調味料、食品など
→医薬品や食品を取り扱うことが多い観点から、配合表に合わせた在庫管理が柔軟なシステムがオススメです。賞味期限などを考慮した有効在庫機能があるものを選びましょう。またGMPやHACCPに則った品質管理機能があるとより効率的です。
生産管理システムの主な機能
生産管理システムは基本的に、生産計画から出荷までの工程に関わるさまざまな機能が揃っています。
| 機能名 | 活用業務 |
| 生産計画作成機能 | 長期計画表、基準日程計画の作成 |
| 資材・仕入れ管理機能 | 発注業務や入庫検収業務など |
| 工程管理機能 | 製造工程の進捗確認、設備管理 |
| 品質管理機能 | 製品の品質チェック、トレーサビリティ管理 |
| 在庫管理機能 | 棚卸作業、在庫計画の調整業務 |
| 原価管理機能 | 製造原価の計算、設定原価の分析 |
以下の記事では生産管理システム各機能の詳細を解説しています。あわせてご参考にしてください。
生産管理システムを導入するメリット
生産管理システムは生産活動を一括管理して、さまざまな業務を効率化するシステムであるため、複数のメリットがあります。
利益率の改善とコスト削減に繋がる
生産管理システムでは、常に製造原価のチェックが可能です。資材や製造の工程にかかるコストが可視化され、より詳細な原価計算ができるようになります。
また在庫管理によって余剰在庫が見える化されます。作り過ぎの防止に繋がるだけでなく、不動在庫を処理すれば保管コストの削減が実現するでしょう。
作業負荷がわかり品質が向上する
生産管理システムで情報を一元管理すれば、複数の生産工程が存在する製造現場で、どこに負荷が偏っているかが分かります。これによって、作業を平準化できるでしょう。
また属人化されていた作業を平準化すれば、全ての工程において安定した品質を保て、品質向上にも寄与します。
リードタイムを短縮できる
生産管理システムを導入すれば部署を横断した一元管理が可能になるので、資材発注や次の工程に移るタイミングを逃しません。
各工程での業務効率改善は微々たるものでも、全体を通して見ればリードタイムの大幅な短縮が実現するでしょう。
人的ミスを大幅に減らせる
生産管理システムはUIの操作性が高く、Excelなどを用いた手入力管理と比べて簡単・正確に管理が可能です。また部署ごとの情報共有もしやすく、伝達ミスや連携漏れが発生しにくくなります。
結果的に人的ミスの発生を大幅に減らすことができるでしょう。
生産管理システム導入時の注意点
生産管理システムを導入するとメリットも多いですが、いくつかの注意点もあります。以下の事項を留意しておきましょう。
セキュリティやリスク管理が大変
生産管理システムを導入する時はセキュリティやリスク管理に注意する必要があります。
運用する際にGDPRやHIPAA、ISO 27001などの規制への対応やセキュリティポリシーを遵守しなければいけません。場合によっては、専門家の雇用や定期的な監査、セキュリティ意識向上のプログラムなどを実施する必要もあります。
従業員の教育に時間がかかる
生産管理システムを導入する際、従業員の教育に時間がかかる可能性も考慮しましょう。一部の従業員は生産管理システムの導入に抵抗を抱えていることもあり得ます。
新しいワークフローに対応できるよう、教育やトレーニング、サポートが必要になります。
システム導入以外にも費用が必要
生産管理システムの導入には予期せぬ費用がかかるかもしれない点に注意しましょう。
導入するシステムにもよりますが、ソフトウェアライセンスやハードウェアの購入費用のほか、従業員の教育費用や専門家の採用費用などがかかる可能性もあります。
システムを要望に合わせてカスタマイズする場合、追加の時間と費用がかかるため、あらかじめ見積もりをしておきましょう。
自社に合った生産管理システムを導入しよう
生産管理システムは企業規模や業種、導入方式などに合わせたさまざまな製品が販売されています。何を基準として製品を選ぶか、生産活動のどの場面に課題を感じるかで選び方が変わってくるでしょう。
だからこそ、しっかりと自社に向き合ったうえで生産管理システムの導入を検討する必要があります。
以下の記事では製品ごとの特色や機能、種類についてわかりやすく解説しています。参考にご覧ください。
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