従業員の能力や業績を評価する人事考課では、評価シートにコメントを書く必要があります。部下を評価する場合、何を書くべきか、どういう書き方をすればよいか迷うシーンも多いのではないでしょうか。
人事考課におけるコメントの例文や、書き方のポイントを業務別に解説します。
人事考課のコメント例文集【職種別】
評価シートに記載する具体的なコメント例を職種別に紹介します。あくまでも一例なので、自身の状況にあてはめて考えてみましょう。コメントを書く際のポイントもあわせて解説します。
【営業職・販売職】
コメントを書く際のポイント
営業職は数ある職種の中で、成果を数字で確認しやすいのが特徴です。
売上目標を数字で設定しておけば、目標達成率を客観的に評価できます。営業職の人事考課をする際には、売上などの達成率がどの程度だったのかを明示するようにしましょう。
なぜ目標数値を達成できたのか、あるいはできなかったのか、その要因と改善すべき事柄などをコメントすると伝わりやすいです。
営業職のコメント例【本人向け】
今期は前期比で120%を達成できた。勝因は、PDCAを回し、顧客のニーズ分析を丁寧に行ったことだと考える。自分だけではなく、他者を尊重し、声かけをすることでチーム全体をまとめあげる力を培うことができた。
来期はさらに売上を伸ばすために、既存の顧客に対しては満足度の改善を行う。さらに、ターゲット層の見直しをしたうえで、新規開拓にも力を入れる。 |
営業職のコメント例【評価者向け】
今期は売上目標の達成率が120%で、部署全体の目標達成に大きく貢献した点を評価したい。個人の営業スキルもさることながら、ほかの社員のサポートもうまく、営業チーム全体のモチベーションの向上にも一役買っている。他者にやる気を出させる能力もあるので、来期の新入社員の指導にも力を入れてもらいたい。
現状の課題としては、個人の営業スタイルに固執してしまう傾向があるので、ほかの営業担当者のやり方も参考にしてほしい。顧客によって柔軟にアプローチを変えられるようになれば、さらによい営業成績を残せるようになるだろう。 |
【事務職】
コメントを書く際のポイント
事務職は企業のバックオフィスとして、さまざまな定型業務を担うのが特徴です。
営業職のように、業務の成果が具体的な数字で出てこないため、日々のルーティン業務を淀みなく行えているか、業務効率を上げるためにどういった工夫をしているかなどが、評価のポイントとなります。
業務に取り組む姿勢や積極性なども、評価対象となるでしょう。具体的な業務の進め方を確認しつつ、仕事への意欲や努力の内容にも注目するのが大切です。
事務職のコメント例【本人向け】
今期は、個人の作業効率化を上げることを目標に掲げていた。結果、作業効率を2倍上昇させることができた。勝因は、複数の業務を同時に行うのではなく、優先順位を付けたうえで、一つ一つの業務に集中したことだと考える。
来期は、会社として取り組んでいるペーパーレス化に対し、手間取っている他の社員のフォローを積極的にしていきたいと考えている。 |
事務職のコメント例【評価者向け】
前期は複数の作業を同時並行でこなしており、作業効率が下がってしまう点が課題だったが、今期は作業項目に優先順位を付けて取り組もうとする姿勢が見受けられた。
その結果、一つ一つの作業に集中できるようになり、全体の作業時間の削減に成功した点を評価したい。また、部署のペーパーレス化に積極的に協力する姿勢もよかった。一方で、仕事を1人で抱え込んでしまう傾向があるので、作業が滞る前に周りに相談する姿勢も見せてほしい。 |
【企画・マーケティング職】
コメントを書く際のポイント
企画・マーケティング職は、主に市場データや顧客データなどの収集・分析を行った上で、売上につながる企画やプロモーション施策を打ち出すのが仕事です。
企画が成功したか、どれぐらいの売上につながったかなど、具体的な成果が主な評価ポイントとなるはずです。
営業職と同様に、具体的に成果を数字で示した上で、成果につながったエピソードなどを記載するとよいでしょう。
企画・マーケティング職のコメント例【本人向け】
不振が続いた〇〇(商品名)について、前期比20%向上させることができた。アンケートや口コミを分析し、顧客ニーズを再検討したことが勝因と考える。
しかし、チーム全体をまとめあげる上で改善すべき点があると考えており、来期ではマネジメントについても注力していきたい。 |
企画・マーケティング職のコメント例【評価者向け】
前期不振だった〇〇(商品名)のプロモーション企画について、チームの先頭に立って全面的な見直しを行い、成約率を20%向上させた手腕を高く評価する。皆の中心的な存在であり、部下の育成にも積極的な姿勢が見受けられる。
一方で、後輩社員を強く叱責してしまうことがあり、周囲を萎縮させてしまう場合があるので注意してもらいたい。指導に熱が入ってしまう気持ちはわかるが、チームメンバーにストレスなく仕事をしてもらうためにも、相手の視点から冷静に考える習慣を付けるとよいだろう。 |
【公務員】
コメントを書く際のポイント
公務員の業務は数値化できるものと、数値化が難しい業務があります。
数値化が可能な業務に関しては、具体的な数値を用いて評価しましょう。一方で、数値化が難しい業務に関しては、作業効率や正確性、取り組む姿勢や成果について評価しましょう。
公務員のコメント例【本人向け】
部署内にて書類の不備や業務のミスが多いことが課題であったため、率先して改善策の提示を行った。具体的には、マニュアルの作成や研修会の実施など、部署全体のスキルアップを促した。
既存の業務に関しては、ミスを30%削減することができたものの、ペーパーレス化などの新たな課題点が見えてきた。そのため、来期は正確性を保ちながら効率を上げる新たな仕組み作りに注力していきたい。 |
公務員のコメント例【評価者向け】
業務に関する課題に対し、先頭に立って改善策を提案していた姿勢を高く評価する。マニュアル作成や、研修会の準備・運営を行い、部署全体の業務効率化及びスキルアップにつなげた。
今期にて培ったリーダーシップを活かし、来期でも新たな仕組みづくりに期待している。 |
【看護師・介護職】
コメントを書く際のポイント
看護師や介護職の仕事は、決まった時間に、決まった業務を行うことがほとんどです。
一方で、突発的な問題や事態が発生することもあるため、日々の業務の正確さに加えて不測の事態への柔軟かつ迅速な対応ができているかが評価の対象となります。
看護師・介護職のコメント例【本人向け】
患者さんとのコミュニケーションを積極的に行うことで、一人一人に合わせた対応を心掛けた。結果、患者さんの異変にいち早く気が付くことができた。
患者さんとのやり取りをこまめに記録し、メンバー内で共有することで緊急時にも迅速な対応ができた。 |
看護師・介護職のコメント例【評価者向け】
日々の業務において、一つ一つの業務に対して丁寧かつ効率的に行っていた姿勢を高く評価する。患者さんだけではなく、メンバーとのコミュニケーションを積極的に取っていることから、全体のモチベーションの向上にも一役買っている。
緊急時も冷静に対応し、周囲への指示も適切であった。来期では、その能力を生かし、新入社員の指導にも力を入れてほしい。 |
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評価項目別のコメント例
人事考課は、「成果評価」「能力評価」「情意評価」の3つの評価項目に分かれています。人事考課を行う評価者向けに、各評価項目の説明と書き方のポイント、コメント例をご紹介します。
【成果評価】
成果評価とは、評価期間内で被評価者(部下)が出した業績や成果を評価することを指します。評価を行う上で、抽象的な文章ではなく、明確な数値の提示などが根拠として重要となります。
書き方のポイント
成果評価では、数字を基準にコメントすることが重要となります。
具体的な評価をすることで、文章が明確化されるだけではなく、具体的なイメージを与えることができるため、モチベーションの向上にも繋がります。また、数値化が困難な場合に関しては、目標の設定を事前に行い、評価基準を明確にすることが求められます。
成果評価のコメント例
今期の営業成績は、売上目標180%、新規顧客獲得率は15%アップを達成した。目標を大きく上回る実績であり、他の社員にとっても手本となる数字である。今後は、部署全体のパフォーマンスを上げるために、マネジメントにも力を入れてほしい。 |
【能力評価】
能力評価は、被評価者の問題は握力、企画力、実行力、改善力などの能力を評価するものです。
書き方のポイント
評価期間中に、上記の能力をいかに業務に活かすことができたのかを伝えることが求められます。
難易度の大きい仕事の達成度や、緊急時・突発時などの不測の事態への対応力に関して具体的に明記することが重要となります。
能力評価のコメント例
ここ数年売上が伸びなかった製品に対し、顧客ニーズの調査や分析に課題があると考え、実際に実行したことで、前年比120%を達成できたことを高く評価する。
メンバーの体調不良が相次ぎ、データ分析が進まない時期もあったものの、マネジメント力を生かし、チームのモチベーションを下げることなく業務を進めたことが目標達成につながったと考える。 |
【情意評価】
情意評価とは、業務に対する態度や姿勢に関して評価を行います。数値化が難しいものですが、責任感や規律性、協調性といった、立ち振る舞いや発言内容が評価対象となります。
書き方のポイント
情意評価を適切に行うためには、被評価者とコミュニケーションを積極的に取ることが重要となります。また、仕事に対する取り組み方など、一人の目線のみでは図りきれないため、部署内で複数人から話を聞いてみることをおすすめします。
情意評価のコメント例
業務に対して意欲的に取り組んでおり、周囲との連携も取れている姿勢がうかがえる。業務に不慣れな後輩社員に対しても積極的にコミュニケーションをとり、部署全体の雰囲気作りにも貢献しているため、高く評価する。 |
人事考課を書くうえでの注意点
続いて、人事考課のコメントを書く上での注意点を確認しましょう。相手が理解しやすい公正で書く必要があるのに加えて、言葉遣いや表現にも注意する必要があります。
プラス・マイナス評価をバランスよく
人事考課の目的の一つは、従業員の成長を促すことです。
プラス面あるいはマイナス面だけにフォーカスしてコメントしても、社員の成長にはつながらないでしょう。従業員が率直に評価を受け取れるように、プラス面とマイナス面の評価をバランスよく書くことが大事です。
厳しい評価をせざるを得ない従業員に対しても、どこかしら褒めるべき点があるはずなので、必ずポジティブな評価も織り交ぜるようにしましょう。
抽象的な書き方をしない
評価コメントは具体的な事柄をメインに据えるようにして、抽象的な書き方は避けましょう。
部下が目標を達成することができた場合は、具体的な数値を提示したうえで、どれくらい目標を達成することができたのかを伝えることが大切です。一方、目標を達成することができなかった場合は、原因と改善策を具体的に提示しましょう。
抽象的な内容ばかりになってしまうと、従業員は何をすべきかがわからず成長にもつながりません。評価者の意図しない解釈をされてしまう可能性もあるので、注意しましょう。
やる気をそぐ否定的な表現もしない
従業員のやる気をそぐような、否定的な表現をするのはNGです。
特に、相手の人格を否定するような言葉を使ってしまうのは、モチベーションに影響を与えるだけでなく、いわゆるパワハラとみなされてしまう可能性も否定できません。
また、従業員同士を比較するような表現も避けるべきです。ほかの従業員との差を指摘するのではなく、それぞれの業務成績や仕事に対する姿勢を評価する必要があります。できる限り個人的な感情を入れずに、客観的な視点でコメントすることが重要です。
やる気を出させるコツは公平性と表現
人事考課では褒めるべき点は褒め、改善すべき点は率直に指摘することで、従業員は自らの評価を受け止めやすくなり、次につながる行動が取れるようになります。
また、人事評価システムは目標設定や達成率などのデータを一括管理することができます。さらに人事評価の一連の流れをシステム上で管理することができ、評価の可視化が可能となります。詳しく知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。
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