給与所得者異動届出書は住民税にかかわる書類です。従業員の退職や転職により給料から住民税を支払う必要がなくなった際、企業はこの書類を役所に提出します。今回は住民税の徴収方法をもとに、給与所得者異動届出書の概要や手続き方法を紹介しましょう。
住民税の主な徴収方法
市区町村に納める税と都道府県に納める税という2種類の地方税をまとめた総称が「住民税」です。前年度の所得に応じて徴収額が決まり、特別徴収と普通徴収の2つの方法で徴収されます。
給与所得者異動届出書の概要を確認する前に、まずは住民税の徴収方法について把握しましょう。
特別徴収
特別徴収は従業員の代わりに企業が住民税の納税を行う制度です。納税は所得税の源泉徴収のように給与から差し引く形で行われます。
このような形で徴収が行われる理由は、特別徴収が効率的かつ確実に納税できる方法だからです。従業員としても面倒な納税の手間がかかりません。
特別徴収が行われるのは、行政と納税者の双方にメリットがあるからと言えるでしょう。
普通徴収
普通徴収とは個人が自ら納税する制度です。対象となるのは個人事業主や退職後に就職先が決まっていない人、業務委託契約で契約をしている人など、給与所得以外の方法で収入を得ている人です。
徴収は年4回に分けられており、納税月は6月・8月・10月・翌年1月です。徴収権は1月1日に納税義務者が住んでいる自治体にありますが、年度の切り替わりが6月と少し変則的な税金となっています。
この徴収時期が決められている関係で、特別徴収から普通徴収に切り替わる際に、一括徴収といって、未納分をまとめて納税しなければならないケースがあります。
給与所得者異動届出書とは
住民税の徴収方法を理解したところで、給与所得者異動届出書が実際にどのような書類かくわしく確認していきましょう。
給与所得者異動届出書は税に関する書類
給与所得者異動届出書は、納税義務者が特別徴収の対象から外れ、自治体に特別徴収ができない旨を知らせるための書類です。
主に従業員が転職や退職をして企業から去った場合や、休職や死亡などにより給与の支払いがなくなったときに提出します。
提出するのは特別徴収義務がある企業で、提出先は従業員が住む自治体です。従業員の税金の徴収を行政に伝える書類のため、提出期間が定められています。
もし期間内に提出しなかった場合、企業に督促状などが送付されることがあるので、素早く確実な処理が必要です。
転職・退職後の徴収方法
住民税の徴収は、会社を去った時期や従業員のその後の就業形態により徴収方法が異なります。また税金にかかわることだけに、退職や転職をする従業員から質問を受けることも少なくありません。
スムーズに答えられるように転職や退職後、どのように住民税が徴収がされるか把握しておきましょう。
従業員が他社に転職した場合
従業員が他社に転職した場合、特別徴収の継続が可能です。
給与所得者異動届出書の必要事項を記入し、転職先の企業が従業員の住む自治体へ提出することで特別徴収が継続されます。
しかし従業員が次の転職先で働き始めるまでに間があり、給与が発生しない期間がある場合、特別徴収から普通徴収に切り替わります。
特に退職時期が1月1日~4月30日までの場合、未納分の住民税を一括徴収で納付する必要があるため注意が必要です。最後の給与から大きな額が差し引かれることになるため、従業員の退職時期によっては丁寧な説明が必要になります。
従業員が退職した場合
従業員が退職し、就業先が決まっていない場合は普通徴収に切り替わります。ただし1月1日~4月30日の間に退職した場合、給料や退職金から一括徴収で企業が納税を行います。
6月1日~12月31日での退職は、企業による一括徴収か、退職する従業員が自ら収める普通徴収とするか、従業員に選択してもらいます。
退職日が5月1日~5月31日だった場合、未納の住民税は5月分のみです。最後の給料から従来どおりに住民税額が引かれるので、特別な手続きは必要ありません。
また退職金や最後の給与から住民税を一括徴収する際に、支払いがマイナスとなる場合があります。そうしたケースでは一括徴収ではなく普通徴収に切り替わるため、従業員が自ら納税する必要があります。
給与所得者異動届出書など各種帳票の管理を効率化できるソフト選びなら、ぜひミツモアをご利用ください。従業員数や欲しい機能などの各項目を画面上で選択するだけで、ぴったりの製品を最短1分で自動診断。理想の労務管理システムが見つかります。 |
給与所得者異動届出書の手続きは?
給与所得者異動届出書は、手続きに問題が発生すると退職・転職した従業員だけでなく、会社に催促状が届くこともあります。そうならないためにも、手続き方法をしっかり確認しておきましょう。
手続きや行政への提出方法
従業員への給与の支払いが終わった場合、給与所得者異動届出書を従業員が住んでいる自治体へ提出する必要があります。書式は自治体ごとに異るため、提出先に確認しましょう。
書類は窓口でも受け取れますが、ホームページでダウンロードができる自治体が多くなっています。提出期限は基本的に退職した翌月の10日までです。
退職する従業員が年内に別の市区町村へ引っ越していた場合は注意が必要です。住民税は当年の1月1日に居住していた自治体に課税権があるので、この場合、従業員の現住所ではなく旧住所の自治体へ提出しなければなりません。
従業員の採用時にも手続きが必要
従業員の退職時に注目されがちな給与所得者異動届出書ですが、従業員を採用した際にも提出が必要です。転職で中途入社してきた従業員が給与所得者異動届書を持っている場合、速やかにその従業員が住む自治体に提出しましょう。
ちなみに過去に所得がある場合は住民税が課されていますが、新入社員など前年度に所得がなかった人であれば提出する必要はありません。
また、まれに入社してきた従業員が普通徴収を希望するケースがあります。普通徴収切替理由書を提出することで普通徴収にできますが、自治体が定める普通徴収を認める場合の基準に適合していなければなりません。
普通徴収を希望してきた場合、本人に事情を確認して対応しましょう。
給与所得者異動届出書を理解しよう
説明してきたように、給与所得者異動届出書は特別徴収の開始や停止にかかわる大切な書類なので、企業は正しく処理する必要があります。
従業員が転職や退職で会社から去る際、時期や場合によっては一括で住民税を徴収することもあります。この一括徴収に関しては退職する従業員から質問されるケースも多いため、手続き方法だけでなく住民税の徴収方法についても把握しておくことが必要です。
そのため住民税の徴収方法とともに給与所得者異動届出書を理解しておくと、業務がスムーズになるでしょう。
ぴったりの労務管理システム選びはミツモアで
労務管理システムは製品によって特徴や機能もさまざま。「どの製品を選べばいいかわからない・・・」といった方も多いのではないでしょうか。
そんなときはミツモアにおまかせ。最短1分の自動診断で、ぴったりの労務管理システムが見つかります。
ぴったりの労務管理システムを最短1分で無料診断
従業員数や欲しい機能などの項目を画面上で選択するだけで、最適な労務管理システムを最短1分で自動診断。もちろん費用はかかりません。
ぴったりの料金プランも一緒にお届け
希望条件に沿った料金プランも製品と一緒に診断します。概算金額を見積もりからチェックして、理想のプランを探してみましょう。
診断結果は最大5製品!比較・検討で最適な労務管理システムが見つかる
最大で5製品の診断結果をお届けします。検討していた製品だけでなく、思わぬ製品との出会いもあるかもしれません。
ミツモアなら、ぴったりの労務管理システムがすぐに見つかります。