企業が持つ膨大な情報や業務プロセスを効率化し、運営をスムーズに行うためのシステム「ERP(Enterprise Resource Planning)」。昨今において、企業に欠かせない存在となっています。特に大手企業にとっては、複雑で広範囲な業務を一元化できるERPシステムの導入が必須です。
本記事では、ERP選びのポイントや、大手企業向けにおすすめのERPシステム10社をご紹介します。大企業の導入事例についてもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
大手企業がERPを導入するメリット
大手企業がERPを導入するメリットは以下の通りです。
- 業務プロセスを統合・効率化できる
- データの一元化でリアルタイムな分析が可能になる
- コスト削減を実現できる
- ガバナンス強化・コンプライアンス対応につながる
業務プロセスを統合・効率化できる
大手企業であれば、複数の部門や拠点を持つことが多いでしょう。しかし、各々が異なるシステムやツールを使っていると、業務の進行にバラツキが生じて効率が低下します。ERPシステムを導入することで、業務プロセスを標準化し、企業全体で統一されたフローを実現できます。
ERPシステムの中には業務進行に必要なステップ・ルールを標準化する機能も備えているものもあり、全社で同じシステムを使うようになれば部門間によるばらつきがなくなります。
データの一元化でリアルタイムな分析が可能になる
大手企業では日頃から膨大なデータが処理されるため、バラバラに管理されている場合は、データ分析に時間がかかり、的確な意思決定が難しくなってしまいます。
そこでERPシステムを導入すれば、企業内のさまざまなデータを一元化でき、リアルタイムでのデータ分析が可能になります。
営業部門から生産部門、財務部門まで、すべての部署のデータをひとつのプラットフォームで管理でき、企業全体の状況をリアルタイムで把握できるようになります。
コスト削減を実現できる
大手企業では複雑な社内ルールに対応するために、各部門で手作業を行っていることも少なくありません。また、重複する業務も発生しがちです。
ERPは、手作業を自動化して重複業務を排除してくれるため、無駄な工数を削減できてコストカットに繋がります。
例えば、請求書処理や支払業務など、複数の部門で手作業が行われている場合、ERPによる自動化を進めることで、時間や人手を削減できます。また、リアルタイムでのデータ連携により管理業務の効率も上がり、コストを抑えられるようになります。
ガバナンス強化・コンプライアンス対応につながる
大手企業にとって、ガバナンス強化やコンプライアンス対応も非常に重要。
ERPシステムで財務報告や税務関連のデータを正確に管理できるようになれば、企業全体でのガバナンス強化を実現できます。
また、ERPには監査機能や報告機能も組み込まれており、コンプライアンスへの対応もしやすくなります。
大手企業がERPを選ぶときの4つのポイント
以下では、大手企業がERPを選ぶときのポイントをご紹介します。
- 業務適合性の高さはどうか
- セキュリティ・コンプライアンスへの対応が基準を満たしているか
- カスタマイズ性・拡張性があるか
- 導入実績と業界知識が豊富かどうか
業務適合性の高さはどうか
一口にERPシステムといっても、製品ごとに機能やカスタマイズ性は異なります。業務や業界特有の機能が必要な場合は標準機能だけでは間に合わない場合があるため、自社の業務要件にどれだけ適合するかをしっかりと評価しましょう。
例えば、小売業と製造業では必要機能が大きく異なります。小売業では在庫管理や顧客情報管理が重要なポイントとなる一方、製造業では生産計画や工程管理が重視されます。
また、導入後にシステムをカスタマイズすることも考慮して、標準機能でどこまでカバーできるかを確認しておきましょう。
セキュリティ・コンプライアンスへの対応が基準を満たしているか
大手企業は規模が大きく、法規制や業界特有のルールに従う必要があります。そのため、セキュリティ・コンプライアンスへの対応が基準を満たしていることは必須条件です。
検討中のシステムがどのようなセキュリティ対策を取っているのか、自社の基準を満たしているかなどを確認しましょう。
カスタマイズ性・拡張性があるか
カスタマイズ性や拡張性があることも重要です。大手企業では、事業拡大や組織再編に伴う業務フローの変更も多く、変化に対応できる柔軟性が必要です。
将来の成長を見越して、その都度業務の変化に対応しやすいシステムを選びましょう。
また、データ量や通信量が増加した際もシステムが対応できるよう、スケーラビリティの高いERPを選ぶことも欠かせません。
導入実績と業界知識が豊富かどうか
ERPシステムを選ぶ際は、導入実績や業界知識が豊富かどうかも重要なポイントです。特に大手企業にとっては、業種特有の商習慣や業務フローに対応できるシステムが必要です。同業種での導入実績が多いERPシステムなら、システムの適合度が高く、スムーズに導入しやすいでしょう。
大手企業向けERP10選
以下では、大手企業におすすめなERP10選をご紹介します。特徴や魅力をわかりやすくまとめたので、参考にしてみてください。
- SAP S/4HANA
- Oracle Fusion Cloud ERP
- Microsoft Dynamics 365
- OBIC7
- GLOVIA
- HUE
- Workday
- GRANDIT
- NetSuite
- Infor CloudSuite
SAP S/4HANA Cloud
SAP S/4HANA Cloudは、世界的に高いシェアを誇るSAP社が提供するERPシステムです。最大の魅力は、豊富に用意された機能群から自社に必要なものだけを選んで利用できる点。不要な機能をオフにすることで、ランニングコストを削減できます。
SAP S/4HANA Cloudはクラウドベースで提供されるため、専用のサーバーやインフラを自社で整備する必要もありません。初期投資や運用負担を軽減することができます。
Oracle Fusion Cloud ERP
Oracle Fusion Cloud ERPは、財務会計、購買管理、経費、人事など、さまざまな業務プロセスを統合的に管理できるシステムです。広範な機能により、さまざまな業種や規模の企業に対応可能で、リアルタイムでの業務分析を通じて、業務改善や経営戦略の策定に活用できます。
クラウドで提供されるため、低価格で迅速な導入が可能。拡張性と柔軟性にも優れており、自社のニーズに合わせたERPの構築ができます。さらに、1度構築したシステムに後からモジュールを追加できるため、段階的な導入にも柔軟に対応できます。
Microsoft Dynamics 365
Microsoft Dynamics 365 SalesはAIを活用して営業活動の効率化を実現するCRM/SFAツール。顧客情報を分析し、最も優先度の高い顧客に対して最適なアクションを提案してくれます。営業担当者は効率的に行動でき、業務がスムーズに進むでしょう。
ExcelやWordで管理している顧客情報を、Microsoft Dynamics 365 Salesとシームレスに同期できるため、二重管理のリスクも減らせます。情報を重複して管理する必要がなく、手入力も不要で、入力ミスや登録漏れの防止にもつながります。
OBIC7
OBIC7は、従業員に関連する情報を一元管理できるERPシステムです。フロント系の業務からバックオフィスの管理まで、様々な機能を備えています。
整ったサポート体制も魅力、コンサルティングからシステム導入・クラウド環境の構築までを丁寧に支援。OBIC7シリーズの豊富なラインナップを、クラウドを通じて利用できます。
自社のデータセンタで強固な運用管理を徹底しており、データセンターファシリティ基準Tier4レベル相当もクリアしています。
GLOVIA iZ
GLOVIA iZは、富士通が提供する次世代型の国産ERPシステムで、会計、人事給与、販売、生産といった4つの基幹業務で企業の経営基盤を支えます。
導入方法には、全ての業務を一度に導入する「ビッグバン型」と、段階的に導入を進める「ベストプラクティス型」の2つがあり、企業のニーズに合わせて柔軟な導入が可能です。
HUE
HUEは、日本の大手企業向けに開発された国産ERPシステム。豊富な実績をもとに、各企業の要件を標準機能として組み込んでおり、高い網羅性を誇ります。個別にカスタマイズする必要はなく、複雑な業務要件がある大手企業でも比較的スムーズに導入できる点が特徴です。
追加費用が発生せず、バージョンアップにも無償で対応しています。さらに、OSやブラウザのアップデートについても、標準保守料内で対応できるため、長期間にわたり安心して利用できます。
また、HUEはSaaSやECサイト、BIツールなどの外部システムとの連携が可能で、例えばECサイトと連携することで、カタログから商品を選び、購買申請を基幹システムに直接送信することができます。
Workday
Workdayは、1万社以上の企業で利用されているクラウドベースのサブスクリプション型プラットフォーム。財務、人事、プランニングなどの業務を一括管理できるのが特徴です。
従業員のエンゲージメント率やスキルを一目で確認できる機能も提供しており、画面上で数値やグラフを使ってスキルやエンゲージメントの状況を把握できます。従業員は自分の現在のスキルと今後必要とされるスキルを確認し、必要な学習コンテンツを簡単に見つけることが可能です。
高い拡張性も魅力で、既存のシステムに手を加えることなく独自のデータモデルを構築できます。急速に変化するビジネス環境や新しい働き方にも対応できるほか、操作も直感的で非常に使いやすいシステムとなっています。
GRANDIT
GRANDITは国内で開発されたERPシステム。販売、調達、在庫管理、経理、人事など、企業のさまざまな業務を一元管理できるのが魅力です。
特に「使いやすさ」に重点が置かれており、専門知識がなくても簡単に使える操作感が魅力です。
医療機器商社向けのソリューションを提供している点もGRANDITの特長です。医療業界特有のニーズに対応する機能が組み込まれているため、医療業界での導入もスムーズです。さらに、自社の業務に合わせて必要な機能を自由に選び、カスタマイズすることができるので、どんな企業でもぴったりのERPシステムを実現できます。
システムの拡張も非常に簡単で、アドオンやテンプレートを活用することで、標準機能に低コストで機能追加が可能です。これにより、大きなシステム変更をせずとも、業務を効率化できるため、コストを抑えながら業務の改善が図れます。
NetSuite
NetSuiteは、AIを搭載したERPシステム。ERP/財務会計やCRM、Eコマースといった主要業務を一元管理可能で、世界中で導入されています。
CFOや財務、経理部門リーダーのためのAIリソースハブが開設されていることも特徴。ブティック型ならではの高い柔軟性で、ニーズに寄り添った提案をしてくれます。
人数や売上規模、業種に合わせて、多彩なプランが揃っています。
Infor CloudSuite
Infor CloudSuiteは、製品中心型企業向けのクラウドERP。プロセス製造業と組立製造業との両者に対応するエンドツーエンドのシステムで、ニーズの変化に合わせてソリューションを変更可能なところも魅力です。
既存のソフトウェアの使用状況を把握できる診断ツールがあり、スムーズな導入も可能。柔軟で網羅性の高いシステムで、ビジネスニーズを的確にサポートしてくれます。
大手企業におけるERP導入の成功事例3選
最後に、大手企業におけるERP導入の成功事例をご紹介します。
- 株式会社タイトー(ゲーム・アミューズメント企業)
- 株式会社シード(コンタクトレンズメーカー)
- 鹿島建設株式会社(大手建設会社)
株式会社タイトー(ゲーム・アミューズメント企業)
株式会社タイトーは、ゲーム機の開発・販売、アミューズメント施設の運営などを展開する企業です。タイトーはレガシーシステムによる業務の属人化に課題を抱えていたことから、2018年にGRANDITの導入を決定。
スクウェア・エニックスの情報システム部門とGRANDIT社のプロジェクトにより、標準化を基本方針に据えた上でシステムを導入。2021年10月には、「次の10年を支える経営基盤」が整いました。
株式会社シード(コンタクトレンズメーカー)
株式会社シードは、コンタクトレンズの製造および販売を行う企業。2017年にSAP ERPのモジュール導入を決定し、SAPの標準機能でコンタクトレンズの付加情報を管理することに成功しました。
システム統合による受発注処理の自動化が進んだことで、業務全体が格段に効率化。運用開始後も月に1度のワークショップを実施し、業務改善に取り組んでいます。
鹿島建設株式会社(大手建設会社)
鹿島建設は、大型プロジェクトを多数手掛ける日本の大手建設会社。20年以上の度重なる機能追加により、レガシー化したシステムに悩まされていました。そこで、システムの刷新を検討し、建設業界特有のニーズを踏まえた「HUE SCMシリーズ」の導入を決定。
経理・財務会計システムも同時に導入することで、クラウド環境での対応が可能となり、テレワークの推進にも繋がっています。
また、年間100万枚もの書類が削減できるようになり、ペーパーレス化も実現できました。
大手企業に欠かせないERPで業務の効率化を
大手企業向けのERPについて解説しました。業務プロセスが複雑な大手企業では、ERP導入が欠かせません。自社に合ったERPを探して、業務の効率化を目指しましょう。
ERPシステムは利用条件やカスタマイズ内容に応じて価格が変動するため、相場を把握するために複数社からの見積もりを取得するのがおすすめです。「どのシステムが自社に合っているかわからない」「比較検討したいが、リソースが足りない」といった場合は、見積もり比較サービスの利用もおすすめです。
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