ERP(統合基幹システム)の導入を検討するなら、近年はクラウド型が主流になりつつあります。ただし、オンプレミス型にも独自の強みがあるため、業務内容やITリソースに合わせて最適な形を選ぶことが大切です。
導入時は初期費用やランニングコスト、導入期間、日々の運用管理負担、セキュリティ面など、考慮すべきポイントが多岐にわたります。もし比較検討を怠ると、「思ったより使いにくい…」「予算を超えてしまった…」と後悔するケースも珍しくありません。
そこで本記事では、「クラウドERPとはそもそも何か?」という基本からやさしく解説したうえで、クラウド型とオンプレミス型を7つの観点で徹底比較します。自社に合った形を選ぶためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
クラウド型ERPとは

クラウドERPは、会社が行う会計・販売・在庫管理・生産・人事給与などを、ひとつのシステムでまとめて管理し、インターネット経由で利用できる仕組みです。「ERP(Enterprise Resource Planning)=企業資源計画」と呼ばれ、もともとは社内の業務をいっぺんに管理するための方法として生まれました。
たとえば、今までは部署ごとにExcelファイルを使っていて、在庫の数字が合わない…という経験はありませんか? クラウドERPなら、会計や在庫、生産などのデータがすべてリアルタイムに共有されるため、入力の手間や集計ミスを減らし、会社の状況をすぐに正確に把握しやすくなります。
以前は「オンプレミス型」といって、会社のサーバーにソフトウェアをインストールして使うのが主流でしたが、最近ではサブスクリプション型で導入できるクラウド版が注目を集めています。インターネットにつながるパソコンさえあれば使えるので、サーバーや機器を買う初期費用を抑えられ、「とりあえず試してみたい」という企業でも始めやすいのが特徴です。
クラウド型ERP選びなら、ぜひミツモアをご利用ください。欲しい機能などの各項目を画面上で選択するだけで、ぴったりの製品を最短1分で自動診断。理想のERPが見つかります。 |
代表的なクラウドERP機能の例
- 財務会計管理
伝票処理や決算業務など、お金の動きを正確に記録・管理する - 販売管理
見積から受注、出荷、請求・回収まで、営業プロセス全体を一括で管理する - 在庫管理
在庫の入出庫をリアルタイムに把握し、適正な在庫水準を維持する - 生産管理
生産計画や製造工程の進捗、原価計算などを総合的にコントロールする - 人事給与管理
社員情報・勤怠・給与計算といった人事業務を効率化する
クラウドERPとオンプレミスERPの特徴と違い

ここまででクラウドERPの概要を一通りご紹介しましたが、ERP導入を検討する際、まず悩むポイントのひとつが提供形態の選択です。現在は「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類が主流で、それぞれにメリット・デメリットがあります。
実際にはオンプレミス型にも大きな利点があり、企業の状況によってはオンプレミスERPのほうが適しているケースも考えられます。
そこで、この章ではクラウドERPとオンプレミスERPその特徴や違いを簡単に解説します 。
クラウドERP –「サービスをレンタルする」感覚
クラウドERPとは、インターネット経由で利用できるERPサービスのことです。自社でサーバーなどの機器を用意する必要がなく、提供会社(ベンダー)の管理下にある環境を借りるようなイメージです。インターネットにつながったパソコンさえあれば、どこからでもアクセス可能で、費用も月額または年額のサブスクリプション型で支払います。家具付きの快適なサービスアパートメントを借りる感覚に近いかもしれません。
押さえておきたい特徴
|
オンプレミスERP –「自分たちでシステムを構築・運用」するスタイル
オンプレミスERPとは、自社のオフィスやデータセンターにERPソフトをインストールして、自前で運用・管理する従来型の方法です。サーバーやハードウェアの調達からシステムの構築、日々の保守管理まですべてを自社で担うことになります。土地を買って自分たちの理想の家を一から建てるようなスタイルと言えるでしょう。
押さえておきたい特徴
|
どちらを選ぶかは、自社の規模や業務の特性、予算、将来の展望などを総合的に考慮する必要があります。
【本題】クラウド vs オンプレミス、7つのポイントで徹底比較!
ここからは、クラウドERPとオンプレミスERPを具体的に比較していきます。特に気になりやすい7つのポイントに着目し、それぞれの特徴をじっくり見比べてみましょう。自社にどちらが合っているのか、判断のヒントになれば幸いです。
まずは全体像を把握するために、下表をご確認ください。
| 比較観点 | クラウドERP(サービス型) | オンプレミスERP(自社運用型) |
|---|---|---|
| ① 導入コスト (初期費用) | 設備投資が不要で抑えやすい | サーバー購入やライセンス費用が発生し、高額になりがち |
| ② 導入期間 | ベンダー環境を利用するため、短期間でスタート | インフラ構築やソフト導入に時間がかかり、調整に手間が必要 |
| ③ ランニングコスト (運用費用) | 月額/年額の利用料が中心。長期的に見ると総支払額が増える可能性あり | 保守契約・維持費・人件費など、定期的な出費が発生(自社対応で変動) |
| ④ 運用・保守の負担 | ベンダーがシステム管理・更新を行い、IT担当の負担が軽減 | システム監視、アップデート、セキュリティ対策など、すべて自社で実施 |
| ⑤ カスタマイズ性・連携性 | 制限ありだが、API活用で他サービスと連携しやすい傾向 | 自社仕様に合わせて柔軟に改造可能。ただし開発コストやアップデート時のリスクも大きい |
| ⑥ セキュリティ | ベンダーのハイレベル対策を利用できるが依存度も高い | 社内ルールで厳格に運用できるが、資金・人員などのリソースが必要 |
| ⑦ アクセス性・BCP対策 | インターネット環境があればどこからでも利用可能。災害時のバックアップもベンダー頼り | 社内ネットワーク前提。BCP対策の構築・維持はすべて自社で行う必要あり |
それでは、各項目を(1)〜(7)に分けて見ていきましょう。
(1) 導入コスト(初期費用):はじめやすさに差が出る
- クラウドERP
クラウドERPの最大の特徴は、高価なサーバーやネットワーク機器を購入しなくても導入できる点です。初期費用としては、設定サポート料や最初の利用料などにとどまり、大きな設備投資を必要としません。「まずは小規模からスタートしたい」「導入コストを最小限に抑えたい」という企業には特に適しています。 - オンプレミスERP
オンプレミスERPの場合は、自社でサーバーやOS、データベースなどのインフラをゼロから用意する必要があります。ソフトウェアライセンスの購入費も含めると、初期費用は高額になりがちです。その分、長期的な投資回収計画をしっかり立てておくことが重要となります。
(2) 導入期間:運用開始までのスピード感
- クラウドERP
ベンダーがあらかじめ用意しているシステム環境を利用するため、契約から実際に使い始めるまでの期間は短めです。主な作業は、自社の業務フローに合わせた設定やデータ移行だけなので、スピーディーに運用を始めやすいでしょう。 - オンプレミスERP
オンプレミスの場合は、インフラ構築からソフトウェアのインストール、ネットワーク整備に至るまで、ひとつ 一つひとつ段階を踏んで進める必要があります。注文住宅を建てるようなイメージで、どうしても導入期間が長くなる傾向があります。「少しでも早くシステムを使いたい」という企業は、ある程度の時間がかかることを想定して計画を立てましょう。
(3) ランニングコスト(運用費用):使い続ける費用の考え方
- クラウドERP
主なランニングコストは月額・年額の利用料です。必要なユーザー数や機能に応じて変動するケースが多いため、「使った分だけ支払う」感覚に近いかもしれません。ただし、長期的に見るとトータルコストがオンプレミスよりも高くなる可能性もあるため、導入前の試算が欠かせません。 - オンプレミスERP
オンプレミスERPでは、ソフトウェアの保守契約料やサーバーの維持費(電気代や設置スペース代)、ライセンス更新料のほか、システム管理を担うスタッフの人件費などが定期的に発生します。これらは固定費として捉えられることが多いです。自社の状況次第では、クラウドよりもコストメリットを得られる場合もあります。
(4) 運用・保守の負担:管理作業は誰が担う?
- クラウドERP
システムのバージョンアップやセキュリティ対策、サーバー監視、障害対応など、手間がかかる作業は原則ベンダー側の担当です。そのため、IT部門のリソースを本来の業務や戦略的なIT施策に集中させられるメリットがあります。 - オンプレミスERP
ハードウェアの管理からソフトウェアのアップデート、セキュリティ対策まで、すべて自社責任で行う必要があります。専門スキルを持つスタッフを確保できるかどうかがポイントになるでしょう。システム障害が発生した場合なども、自社で原因を特定し対処するまで時間や手間がかかります。
(5) カスタマイズ性・連携性:自社の業務にどこまで合わせられるか
- クラウドERP
近年、クラウドERPのカスタマイズ性が向上している製品も増えていますが、一般的にはオンプレミスほど自由には作り込めないケースが多いです。多くの場合、標準機能に合わせて業務を見直すか、ベンダーの範囲内で設定変更やアドオン開発を行う形になります。ただし、APIを通じて他のクラウドサービスと連携しやすい製品も多いため、周辺システムとのデータ連携を重視する企業にはメリットが大きいでしょう。 - オンプレミスERP
自社独自の業務フローが特殊な場合でも、それに合わせて細部までカスタマイズできるのがオンプレミスの利点です。完全オーダーメイドに近い形でシステム構築が可能な一方、開発コストやアップデート時のメンテナンスコストが高額になるリスクは否めません。カスタマイズ内容が複雑すぎると、将来的なバージョンアップ時にトラブルが発生する可能性もあります。
(6) セキュリティ:大切なデータをどう守るか
- クラウドERP
ベンダーが提供する高度なセキュリティ対策(データセンターの厳重管理、不正アクセス防止策、通信の暗号化など)を利用できるのは大きな安心材料です。自社だけでこれらを整備するより負担が少ないケースがほとんどですが、セキュリティ運用の主体がベンダーである点には留意が必要です。契約前に、自社のセキュリティ基準や要件に適合しているかどうかを十分確認しましょう。 - オンプレミスERP
「重要なデータを自社内に留めたい」という場合にはオンプレミスが有力な選択肢です。セキュリティポリシーの策定から運用まで、すべて自社管理で行うため、自由度が高い反面、投資や体制構築への負荷も大きくなります。徹底したアクセス制限や監視体制を整えられるかどうかが重要です。
(7) アクセス性・BCP(事業継続計画):どこでも使える?災害時への備えは?
- クラウドERP
インターネットさえあれば、社外や海外拠点などからでもシステムにアクセス可能です。テレワークや多拠点運営が増えている企業にとっては大きなメリットでしょう。さらに、データセンターの地理的分散などによる災害対策がベンダー側で整っていることも多く、BCP面でも安心感があります。 - オンプレミスERP
基本的には社内ネットワークでの利用を前提とするため、外部アクセスにはVPNなど追加の仕組みが必要です。また、災害時のデータ保護や復旧手順(BCP対策)もすべて自社で構築・管理しなくてはなりません。自社設備が被災すれば長期的なシステム停止リスクがあることを想定しておく必要があります。
クラウドERP導入で得られる【4つのメリット】
中小企業が既存システムを刷新する際、クラウドERPとオンプレミスERPのどちらを選ぶべきか迷う方も多いかと思います。前章では両者の違いを整理しましたが、ここでは「クラウド型ならではの強み」をあらためて4つにまとめました。
【クラウドERPのメリット(1)】初期投資を抑えてスモールスタート
クラウドERPでは、大掛かりなサーバー機器やネットワーク設備を購入する必要がほぼありません。
- サブスクリプション型の料金体系
月額・年額の利用料でスタートできるため、大きな資金を一度に用意しづらい中小企業でも導入しやすくなります。 - 必要な範囲から導入可能
まずは会計や販売管理など、一部機能だけを導入してみて、状況に合わせて少しずつ拡張していける柔軟性があります。
一方、オンプレミス型ではサーバー購入やライセンス費用など、導入時に大きなコストがかかりがち。クラウドERPなら“小規模から段階的に導入”する「スモールスタート」が容易に実現できます。
【クラウドERPのメリット(2)】保守・管理の手間を大幅に削減
クラウドERPは、インフラ保守やソフトウェアのアップデートなどをベンダー側が担当してくれるため、企業の運用負担が軽減されます。
- 常に最新バージョンを利用できる
システムの老朽化リスクを抑えられ、セキュリティ面でも安心感が高まります。 - 専門人材を大量に抱えなくても済む
IT部門の人的リソースが限られる中小企業にとっては、非常に大きなメリットです。
オンプレミス環境を自社で保守する場合、障害発生時のトラブルシュートからアップデート作業まですべて社内対応となり、工数がかさみがちです。クラウドERPなら、こうした業務を“アウトソーシング”できる点も魅力です。
【クラウドERPのメリット(3)】どこからでもアクセス可能な利便性
クラウドERPはインターネット経由で利用するため、オフィス以外の場所からでもアクセスできます。
- テレワークや多拠点運営に対応しやすい
出張先や在宅勤務でも、同じデータベースにアクセスできるので、業務が滞りにくくなります。 - リアルタイム同期
部署間のデータが常に更新され、経営陣が最新情報をもとに判断しやすい環境を構築できます。
一方、オンプレミス型の場合は社内ネットワークが利用の前提となるため、外部からのアクセスにはVPNなど追加の仕組みが必須です。
【クラウドERPのメリット(4)】災害時のデータ保全やBCP対策に強い
クラウドERPの多くは、大手ベンダーの厳重なデータセンターで運用されており、BCP(事業継続計画)の観点でも優れた選択肢となり得ます。
- 高水準のセキュリティ&バックアップ体制
ISO27001などの認証を取得しているベンダーも多く、サーバーダウンや災害時の復旧が迅速に行われます。 - 常に最新の機能を適用
定期的なアップグレードが行われるため、従来のERPが抱えていたシステム老朽化のリスクを低減しやすいです。
オンプレミス型では、災害時のデータ保全や復旧手順を自社で確立しなければならず、コストと時間を要するケースが多い点はデメリットになり得ます。
導入前に知っておきたい【クラウドERPのデメリット・注意点】

クラウドERPには多くのメリットがありますが、導入後に「こんなはずではなかった」となるのを避けるため、いくつかのデメリットやリスクも事前に把握しておきましょう。
【クラウドERPのデメリット(1)】カスタマイズ制約への対応
クラウドERPはベンダー提供の標準機能を利用するスタイルが多く、大規模なカスタマイズは難しい場合があります。
- 大掛かりなカスタマイズは困難
独自の業務フローがある企業では、プロセス自体を見直さなければならない可能性があります。 - アドオン開発やAPI連携
ベンダーが提供する範囲内で、どの程度の拡張が可能かを確認しておくことが重要です。
オンプレミス型であれば大幅なカスタマイズがしやすい半面、開発コストやアップデート時の負担も大きくなりがちです。
【クラウドERPのデメリット(2)】セキュリティ管理のベンダー依存度
クラウドERPでは、セキュリティ対策やデータ保管を主にベンダーに委ねる形になります。
- ベンダーの実績・認証の確認
ISO27001の取得状況や、導入実績のある企業規模・業種など、信頼できるかどうかを事前に確認しましょう。 - 自社で対応する範囲の明確化
アクセス権設定やパスワードポリシーなど、自社で担当すべき管理部分を洗い出す必要があります。
オンプレミスERPなら社内にデータを置き、厳重管理が可能ですが、その分コストや人材面でのリソースが求められます。
【クラウドERPのデメリット(3)】インターネット接続が必須
クラウドERPはオンライン前提の仕組みのため、ネットワークが不安定だと業務に支障をきたす恐れがあります。
- ネット障害時のリスク
長時間アクセスできない状態が続くと、取引処理や在庫管理に大きな影響が及びます。 - VPN構築や回線の増強
複数拠点や海外支店などを運営している場合は、通信品質やセキュリティ対策を強化する必要があります。
【クラウドERPのデメリット(4)】ベンダーロックインのリスク
クラウドERPはサブスクリプション契約を継続することが前提なので、ほかのベンダーへ乗り換える際に手間やコストがかかる場合があります。
- 切り替え時のデータ移行リスク
運用中のデータ形式の違いや、連携システムの再設定などに時間と費用が発生しやすいです。 - ベンダーの料金改定・機能変更
長期的に見て、サポート内容や費用対効果が継続して自社に合うかどうか検討しましょう。
クラウドERPかオンプレミスERPか? 自社に合った形態を見極める判断基準

クラウドERPとオンプレミスERPのどちらが良いかは、企業の事情や優先度によって変わります。以下のポイントを目安に、自社の状況をチェックしてみてください。
クラウドERPが向いている企業の特徴
- 初期コストを抑えたい
大きな資本投下が難しく、まずは少人数・一部機能だけ導入したい場合 - 導入スピードを重視
インフラ構築不要で、短期間に運用を開始しやすい - IT部門のリソースが限られている
ベンダーに保守・管理を任せたい企業 - テレワークや多拠点運営が前提
場所を選ばずアクセスできる環境が必須 - BCPを強化したい
災害時のバックアップや復旧対応を外部に委託できる安心感
オンプレミスERPを選ぶメリットが大きい企業の特徴
- 大幅なカスタマイズが必要
独自の製造フローなど、標準機能では対応しきれないケース - 高いセキュリティ要件を満たしたい
社外にデータを置きたくない、または厳格な規制・コンプライアンスが存在する業界 - ネット接続が不安定、または社外アクセスを想定していない
オフライン環境で業務を継続する必要がある企業 - 既存システムとの緊密な連携が不可欠
レガシーシステムが多く、オンプレミス前提の連携設計が進んでいる
迷ったらクラウドERPがおすすめ
では、実際にどちらを選ぶべきか悩んだ場合、どうすればいいのでしょうか?
結論から言えば、「迷うならクラウドERPを選ぶ」のが無難です。近年の日本ERP市場ではクラウド型への移行が急速に進み、2021年度の市場規模は1,467億円(前年16.3%増)に達しました。法改正対応や老朽化システムのリスクを背景に、クラウド移行を本格化する企業が増えているようです。
特に、年商50~500億円の中堅企業向けERPが前年比9.1%増、5~50億円の中規模企業向けでは39.3%増というデータが示すように、「サブスクリプション型の導入ハードルが低い」ことで「クラウド型が最適」という評価が加速しています。さらに、2028年度には5,700億円規模に成長する見通しもあり、アップデートやセキュリティ対策をベンダーに任せられる利点が大きいのも事実です。
もちろん、高度なカスタマイズやオフライン運用が不可欠な企業ではオンプレミス型に軍配が上がる場合があります。しかし、「とにかく初期コストを抑えたい」「ITスタッフや予算が限られている」といった状況であれば、まずはクラウドERPを第一候補に検討してみるのが、業務効率化・コスト削減・BCP対策など総合的なメリットを享受しやすい選択といえます。
では、具体的にどんな企業特性に、どのERP形態が合うのか?次の章では、企業規模や要件別に「クラウド型」と「オンプレミス型」をざっくり比較した表をご用意しました。
企業特性とERP形態のざっくり比較表

下記は、企業特性ごとにクラウドERPとオンプレミスERPの相性をまとめた表です。自社の優先度を考えながらご覧ください。
| 企業特性 | クラウドERP | オンプレミスERP |
|---|---|---|
| 初期予算に余裕がない | ◎ 初期費用を大幅に抑えられる | △ サーバー購入など初期投資が大きい |
| 導入までのスピード重視 | ◎ 短期間で開始可能 | △ インフラ構築に時間がかかる |
| カスタマイズ性を最優先 | △ 制限あり | ◎ 自由度が高い |
| IT専門スタッフが少ない | ◎ 運用・保守をベンダーに任せられる | △ 自社で管理が必要 |
| セキュリティ要件が極めて厳しい | △ ベンダーに依存 | ◎ 自社のルールで制御可 |
| 複数拠点・リモートワークが前提 | ◎ どこからでもアクセス可 | △ 社内ネットワークが中心 |
クラウド型ERPおすすめ15選

おすすめのクラウド型ERPを15製品解説します。
「freee販売」従業員300人に対し経理・人事労務2人へと業務負担を圧縮可能
フリー株式会社が開発・提供する「freee販売」は、バックオフィス業務を組み合わせて導入できるサービスです。企業の成長に合わせてソフトを拡張していけます。
実際にfreee株式会社でも導入しており、従業員300名に対し経理担当1.5名、人事労務担当1名での対応を実現しています。一般的なレベルの半分以下に業務負担を圧縮できている状況です。
SalesforceやKintoneを使っている企業は、freee販売と連携させればデータが自動連携します。IPO準備や内部統制対応が充実しているのも強みです。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金 | 要問合せ |
| 無料トライアル | 要問合せ |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | – |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | メール、チャット、電話 |
「Oracle Fusion Cloud ERP」部門間のプロセスを自動化し、大幅な業務効率化を実現
「Oracle Fusion Cloud ERP」は幅広い種類の業務を標準機能でまかなえるクラウド型ERPです。会計・調達・生産・物流の部門間プロセスを自動化できます。
OracleのAI搭載デジタル・アシスタントを使用すれば一般的なタスクが簡略化され、業務の高速化が可能です。パーソナライズされたタスクが積極的に提供されるため、承認作業も迅速に行えます。
バージョンアップを含めた通常の運用は、すべてベンダーの専門家が行います。ソフトに組み込まれたAIも活用すれば、従業員はコア業務に集中できるでしょう。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金 | 要問合せ |
| 無料トライアル | 要問合せ |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | – |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | 要問合せ |
「マネーフォワード クラウドERP」1機能から導入可能!スモールスタートができて安心
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウドERP」は、バックオフィス業務の改善を図るクラウド型ERPです。自社の状況に合わせて1サービスから導入できます。
従来のERPに比べて大幅なコスト削減を実現している点が特徴です。ソフトを部分的に導入すれば、契約後最短1カ月のスモールスタートも可能です。
内部統制機能も充実しており、健全かつ効果的な運営を進められます。コンプライアンスやセキュリティ対策を重視する企業にもおすすめです。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金 | 要問合せ |
| 無料トライアル | 要問合せ |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | 〇 |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | ポータルサポート 等 |
「SAP Business One」シェアは世界トップクラス。他国の言語や税制にも対応
「SAP Business One」を提供するドイツのSAP社はERPで世界トップクラスのシェアを誇っている企業です。世界中のさまざまな言語・税制・商慣習に対応しているため、海外への進出を計画している企業にも向いています。
SAP Business Oneはビジネスに必要な基幹業務を統合したERPパッケージです。財務会計・販売管理・仕入管理・購買管理・在庫管理・顧客管理・営業支援保守サービスなどに役立ちます。
モバイルアプリを活用すれば、時間や場所を問わずソフトにアクセス可能です。全社規模で瞬時に利用できる分析・レポート機能も備わっており、的確かつ迅速な意思決定をサポートしてくれます。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金 | 要問合せ |
| 無料トライアル | 要問合せ |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | 〇 |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | チャット、電話 |
「奉行V ERPクラウド」69万社もの導入実績あり。高い信頼性のある内部統制・監査対応が魅力
純国産クラウド型ERPである「奉行V ERPクラウド」は、69万社の導入実績を誇る国内トップクラスのERPパッケージです。従来の購入型ERPに比べ、初期コストを大幅に抑えて導入できます。
信頼感のある奉行シリーズと事務業務系システムのノウハウを組み合わせています。標準化・最適化された業務プロセス・業務処理機能で、生産性の向上を図ることが可能です。
内部統制や監査対応の高い信頼性も魅力です。財務会計システムでは日本初となる情報セキュリティ評価基準「ISO15408」を認証取得しており、第三者からの保証を受けています。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金 | 要問合せ |
| 無料トライアル | 要問合せ |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | 〇 |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | 要問合せ |
「クラウドERP ZAC」広告やコンサル等、プロジェクト単位のビジネスに特化
「クラウドERP ZAC」はプロジェクト型ビジネスに特化したクラウド型ERPです。システム業・IT業・広告業・クリエイティブ業などにおける業務の統合・効率化に役立ちます。
プロジェクト型ビジネス向けのさまざまな機能を使えるのが特徴です。バックオフィス系の業務だけでなく、プロジェクト・販売・購買・在庫などを管理できる機能も含まれています。
各機能に組み込まれたワークフローにより、意識することなく社内統制を実現できる点も魅力です。数多くの財務会計ツールとの連携に対応し、各種データを仕訳データとして自動処理できます。
| 初期費用 | 10万円~ |
| 月額料金 | 要問合せ |
| 無料トライアル | 要問合せ |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | 〇 |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | 導入支援 等 |
「GRANDIT」高い操作性・運用性を兼ね備え、自社に合わせた拡張も自由自在
純国産の完全WebERPである「GRANDIT」は、基幹業務以外の機能も充実したオールインワンパッケージです。1,300社以上の導入実績を持ち、幅広い企業規模や業種に対応しています。
基幹業務の特性を徹底的に追求し、従来のクライアント・サーバーシステムを超える操作性と運用性をWebで完全に実現している点が特徴です。必要な機能を自由に組み合わせられる導入形態により、優れた総合力と拡張性を発揮します。
マルチブラウザ・マルチデバイスに対応し、ビジネス環境の変化にも柔軟に対応します。これからの企業システムとして、企業の働き方改革を促進してくれるでしょう。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金 | 要問合せ |
| 無料トライアル | 要問合せ |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | 〇 |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | 要問合せ |
「Clovernet ERPクラウド」経営データを連携・可視化し、組織力を向上
NECネクサソリューションズの「Clovernet ERPクラウド」は、財務会計とプロジェクト収支管理を軸にした、統合型クラウドERPです。販売・仕入・在庫から、給与・勤怠まで網羅しています。
重要な経営データをすべて連携し、経営情報の統合管理を実現できるのが魅力です。さまざまな角度から経営状況を可視化できるため、組織力の向上に役立てられます。
バックオフィスの効率化や、IT運用負荷の低減につながる点も特徴です。24時間365日の入退室管理・監視や専門セキュリティ監視体制など、セキュリティとサポートも充実しています。
| 初期費用 | 0円~ |
| 月額料金 | 7,500円~ |
| 無料トライアル | 〇 |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | 〇 |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | 電話、導入サポート(有償) |
「SMILE V Air」自動実行機能でルーティン業務を自動化できる!
大塚商会の主力ERPである「SMILE」シリーズは、国内のERP市場において、トップクラスのシェアを誇るサービスです。「SMILE V Air」はSMILEのクラウド版として、提供されています。
SMILE V Airでは販売・会計・人事給与を、単体で管理できるほか、情報系ソフトの各モジュールと連携することも可能です。自動実行機能を活用すれば、ルーティン業務を自動化できます。
データセンターが情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を取得しているため、企業の重要情報も、優れたセキュリティで保護されます。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金 | 要問合せ |
| 無料トライアル | 〇(30日間) |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | 〇 |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 要問合せ |
| サポート体制 | 要問合せ |
「スマイルワークス」豊富な機能をリーズナブルに提供。料金プランもわかりやすく安心
クラウド型ERP「スマイルワークス」を導入すれば、財務会計・販売管理・給与計算などの基幹システムを統合管理できます。中小企業の業務効率化に役立つサービスです。
豊富な機能をリーズナブルに利用できるのが強みです。必要な機能を自由に選択して利用できる、わかりやすい料金プランとなっています。
販売・給与データの仕訳を自動生成する連動機能のほか、販売管理機能では受発注の業務管理をブラウザ上でダイレクトに連携できる「EDI」を標準提供しています。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金 | 要問合せ |
| 無料トライアル | 〇(最大2か月) |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | – |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | 要問合せ |
「ALL-IN」各ソフトをすべて連携し、データに基づく経営を実現
株式会社エステイエスが提供する「ALL-IN」は、経営に必要な機能が豊富にそろったクラウド型ERPです。バックオフィス業務全般のサポート機能に加え、CRMやSFAも利用できます。
各ソフトはすべてつながっており、一度入力したデータは全体に瞬時に反映されます。グラフィカルなデータで目標値との差分を確認できるなど、データに基づいた経営に活用できる点も特徴です。
自社の現況や経営の状況は、インジケータで把握できます。インジケータにより経営の見える化が実現されれば、先進的な経営スタイルへの転換を図れるでしょう。
| 初期費用 | 30万円~ |
| 月額料金 | 75,000円~ |
| 無料トライアル | 〇 |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | 〇 |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | セミナー 等 |
「GEN」各機能は追加料金なしにカスタマイズでき、コスパが良い
「GEN(ジェン)」は幅広い機能の中から必要な機能を取捨選択できるERPです。生産管理・在庫管理といったモノの管理をはじめ、管理会計・顧客管理・ワークフローなどの機能も備えています。
ユニット化された各機能は追加費用なしでセルフカスタマイズが可能です。コストを抑えながら自社に合った最低限の機能を使いたい企業に適しています。
作り込んだシステムをデモの段階で提案してくれる点も魅力です。自社の業務フローにこだわりがある場合や、導入までの期間を短くしたい場合に向いているでしょう。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金(メーカー向け) | 2万5,520円~ |
| 無料トライアル | 要問合せ |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | – |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | 要問合せ |
「TeamSpirit」使いやすい画面設計で円滑な業務をサポート
クラウド型ERP「TeamSpirit」は、勤怠管理・工数管理・経費精算などのバックオフィス機能を一元化できるサービスです。さまざまなデータを可視化できるため、生産性の向上につながります。
柔軟なカスタマイズ性を特徴に持ち、企業特有のルールをソフトに反映させることも可能です。メンテナンスフリーで最新の法改正や働き方のトレンドに対応します。
UIの使いやすさにこだわっている点も魅力です。「よくある質問」を画面内にポップアップ表示できるため、ヘルプデスク業務の削減も図れるでしょう。
| 初期費用 | 要問合せ |
| 月額料金 | 18,000円~ |
| 無料トライアル | 〇 |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | 〇 |
| レポート分析 | 〇 |
| システム連携 | 要問合せ |
| サポート体制 | 要問合せ |
「キャムマックス」卸売業・製造業・小売業へ特化。あらゆる受注を取り込める
卸売業・製造業・小売業など中小企業に特化したソフトを使いたい場合は、株式会社キャムが提供する業種特化型ERP「キャムマックス」がおすすめです。
スマレジ・各種ECカート・モールなど、あらゆる受注を取り込めます。販売チャネルごとの受注処理に時間がかかっている企業に向いているでしょう。
時間や場所を問わずソフトにアクセスできるため、テレワークを導入している企業にも最適です。ワークフロー機能や各種帳票のPDF出力機能も標準装備されています。
| 初期費用 | 7万円~ |
| 月額料金 | 7万円~ |
| 無料トライアル | 〇(60日間) |
| 財務会計 | 〇 |
| 人事労務 | – |
| レポート分析 | – |
| システム連携 | 〇 |
| サポート体制 | 要問合せ |
クラウドERPで社内情報の有効活用を促進しよう

クラウドERPは、企業の基幹業務をぐっと効率化し、生産性を底上げするための頼れる味方です。オンプレミスERPと比べると、初期コストを抑えつつ導入が進めやすく、インターネットさえあれば場所を選ばず使えるのが大きな強み。法改正や災害対応など、意外と手間がかかる部分もベンダー任せにできるため、忙しい情報システム担当者にとってはうれしいポイントが盛りだくさんです。
こうしたメリットを活かして、クラウドERPは企業の成長をしっかり支える基盤になってくれます。自社の業務特性や予算、ITリソースに合わせて最適なサービスを選び、スモールスタートで始めてみるのもおすすめです。業務が回り始めてから少しずつ拡張していくことで、無理なくデジタル変革を進められるでしょう。
次の記事では、主要ERP製品の特徴や機能を一挙に比較しています。どのサービスを選べばいいか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
ぴったりのERP選びはミツモアで
ERPは製品によって特徴や機能もさまざま。「どの製品を選べばいいかわからない・・・」といった方も多いのではないでしょうか。
そんなときはミツモアにおまかせ。最短1分の自動診断で、ぴったりのERPが見つかります。
ぴったりのERPを最短1分で無料診断
従業員数や欲しい機能などの項目を画面上で選択するだけで、最適なERPを最短1分で自動診断。もちろん費用はかかりません。
ぴったりの料金プランも一緒にお届け
希望条件に沿った料金プランも製品と一緒に診断します。実際にかかる金額を見積もりからチェックして、理想のプランを探してみましょう。
診断結果は最大5製品!比較・検討で最適な製品が見つかる
最大で5製品の診断結果をお届けします。検討していた製品だけでなく、思わぬ製品との出会いもあるかもしれません。
ミツモアなら、ぴったりのERPがすぐに見つかります。















