ERPとは「会計」や「生産」「販売」などの基幹業務を統合する基幹系情報システムを指します。
かつては大企業が1から自社に合わせて構築するオンプレミス型での提供がメインでしたが、最近ではクラウド製品や無料で使えるオープンソースでの提供もされるようになりました。
本記事では無料で使えるオープンソースのERP9選を紹介します。オープンソースERPの説明や各製品の特徴について、詳しく解説するので、製品選びの参考にしてみてください。
オープンソースERPとは?無料で使える理由も解説
オープンソースERPとは、オープンソースとして公開されているコードを使って設計するERPシステムのことです。オープンソースとはソフトウェアを構成するソースコードを、誰でも自由に使用、変更、配布できる形で公開しているライセンス形態を指します。
そのため、オープンソースを利用して自社内向けにソースコードをカスタマイズすれば、ライセンス料や初期費用をかける必要がなくなり、無料でERPを構築することが可能です。
ただ、ソースコードは無料で公開されていますが、システム構築のためのサーバー調達や導入後の運用は別途、自社で費用を負担しなければなりません。自社のエンジニアリソースに余裕がある、開発環境が整っている場合に導入した方がいいでしょう。
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ずっと無料で使えるのはオープンソースERPだけ
ERPシステムは「会計」「生産」「販売」「物流」「人事」といった企業の基幹業務を統合するシステムで、複雑で機能が多いという特徴があります。
また、企業ごとの要件に合わせてカスタマイズが必要なケースも多く、基本的に無料で使えるシステムではありません。
期間や機能をかなり限定した形なら無料で使えることもありますが、導入からずっと無料で使えるのはオープンソースERPだけです。そのため、自社内に構築環境が整っていない場合、有料でERPを導入した方が無難でしょう。
無料でERPを利用する他の方法
無料でERPを利用する方法は基本的にはオープンソースを利用する他ありませんが、期間や機能、組織を絞れば無料で使うことはできます。例えば、クラウド型ERPの無料トライアルを利用する、教育機関や非営利組織向きの特別プログラムを活用するなどです。
特にクラウド型ERPの無料トライアルは比較的、気軽に利用しやすいため、ERPがどんなシステムか使って確かめたい、無料で試したいユーザーにおすすめです。
無料トライアルを利用できる具体的な製品としては「freee(フリー)販売」や「GEN」などがあります。気になる機能があれば、一度お試ししてみてもいいでしょう。
オープンソースERPを使うには自力でカスタマイズが必要
オープンソースERPを使う上で最も重要なポイントは、自らカスタマイズが必要であることです。
オープンソースのメリットは自由度と費用負担の少なさにありますが、一方で、利用者自らが必要な機能を追加したり、設定を変更したりするための技術的スキルが求められます。
具体的には、どのような機能が必要か?既存データのどのデータを移行するか?などをしっかりと定義し、機能追加に必要なプラグインやモジュールを確認し、プログラミングをおこなうなどの作業が必要です。
他システムとAPI連携したければ、その際にもプログラミングが必要となります。
ユーザーは自社の業務プロセスに最適化した形でERPを設定するために、必要な知識を習得するか、外部の技術者に依頼するケースが一般的です。
オープンソースERPを利用するメリット
オープンソースERPは一般的なパッケージ化されたERPと比して、多くの手間は掛かりますが、利用にはいくつかのメリットがあります。
ライセンス費用がかからない
オープンソースERPを利用する大きなメリットは、ライセンス費用がかからず無料で導入できる点です。
一般的なERPソリューションでは通常、高額なライセンス料や定期的な利用料金が発生しますが、オープンソースであるため、それらの費用は不要になります。
ERPを自社内に構築したいものの、使える費用が限られている中小企業やスタートアップにとって、費用面での負担軽減は大きな魅力となるでしょう。
世界中のユーザーの手で品質改善される
オープンソースERPのもうひとつのメリットは世界中のユーザーコミュニティによって常に改善されていることです。
オープンソースの多くは、いくつもの開発者が参加し、フィードバックをもとにアップデートが行っています。そのため、問題点は迅速に解決され、新機能の追加も進められます。
コミュニティが活発であれば、製品の品質は向上し続け、結果としてユーザーは最新の技術を享受することができます。
特定のベンダーに依存しないので移行しやすい
オープンソースERP特有のメリットといえば、特定のベンダーに依存しないため、システムや機能の移行がしやすい点も挙げられます。
一般的なERPソリューションの場合、特定のプロバイダーによって提供されるため、契約期間やサポートが特定されてしまいます。
しかし、オープンソースERPは自社内でサポートもデータ移行や機能の追加もおこなうため、ベンダー側の制約に縛られることはありません。そのため、システム自体や機能、データの移行がしやすいです。
オープンソースERPの選び方
オープンソースERPの中から自社で活用できる製品を選ぶにあたって、以下のような点に注意するといいでしょう。
必要な機能が搭載され、利用にあたり制限がないか
無料のERPを導入する際は、必要機能が網羅されているか、機能に制限はないかをチェックするのがおすすめです。
会計や人事労務、販売・在庫管理等、ERPは製品ごとに持っている機能が異なります。小売業や流通業なら販売・在庫管理機能があるもの、経理や採用といった業務を連携させたい場合は会計・人事労務の機能があるもの等、自社に必要な機能が揃っているERPを選びましょう。
開発や利用者コミュニティが活発か
開発や利用者コミュニティが活発かどうかも、無料のERPを導入する際は注目する必要があります。
無料のERPの多くはオープンソースで、自由に利用できる代わりに不具合が起きた場合やカスタマイズしたい場合は自力での解決が求められます。そのため開発が多く行われていたり、利用者同士で解決できるコミュニティが活発に動いていたりするERPを選ぶと安心でしょう。
セキュリティ対策が十分か
セキュリティ対策が講じられていると、無料のERPでも安心して使えます。
オープンソース型のERPはセキュリティやコンプライアンスが担保されていないものもあります。ソースコードを読み込んだり、コミュニティから実際の利用者の声を見たりして、安全に運用できるか確かめてから導入しましょう。
無料で使えるオープンソースERP9選
以下にて、無料で使えるオープンソースのERPサービス9選を紹介します。
「Compiere」全世界で180万ダウンロード。顧客管理にも強い
- CRM(顧客情報)領域もカバー
- 使いやすいUI(ユーザーインターフェース)
- マルチ言語・マルチ通貨
「Compiere(コンピエール)」はCompiere社が提供するオープンソースのERPです。世界で180万ダウンロードの実績を持ち、導入企業数は全世界で2,000社を超えています。ベンダーによる保守サポートはないものの、バイナリーコードやソースコードが、無料で使用可能です。
Compiereの特徴はCRM(顧客管理)機能が統合されている点でしょう。これ一つで購買・物流・会計処理・経営分析などの基幹業務はもちろん、顧客管理やeコマース・販売促進といったCRM領域までカバーします。
企業の資源情報管理と販売情報管理を同一プラットフォーム上で行えるため、業務効率は一気に向上するでしょう。より充実した機能を求める場合は、有償のスタンダードエディションも選択できます。
無料期間 | 無制限 |
財務会計 | 〇 |
人事労務 | ‐ |
販売・在庫管理 | 〇 |
分析機能 | 〇 |
データ連携 | 〇 |
サポート体制 | セミナー など |
セキュリティ対策 | 要問い合わせ |
有料プランの料金 | 要問い合わせ |
「ADempiere」利用にはChrome等が使えて高機能。デバイスに依存せず、使いやすい
- 日本の商習慣に対応
- すべての業務を一つのブラウザで完結
- カスタマイズが容易
「ADempiere」は販売・購買管理・会計管理から生産管理まで、あらゆる基幹業務を一元管理できるERPです。経営部門・営業部門・工場部門がシームレスにつながり、全社的な業務効率アップが期待できます。
システムにアクセスするときは、Internet Explorer、Google ChromeなどのWebブラウザを通す仕組みです。個々のデバイスに依存せず、アクセスする場所も問いません。WebUIを備えた高機能なオープンソースERPは比較的珍しく、世界でも高い評価を得ています。
またモデル駆動アーキテクチャの採用によりカスタマイズも簡単です。アプリケーション辞書という仕組みを利用すれば、プログラミング知識がゼロの社員でもカスタマイズに困ることはないでしょう。
標準仕様で日本の商習慣に対応した債権債務管理機能も備えており、アドオン開発の必要がないのも魅力です。
無料期間 | 無制限 |
財務会計 | 〇 |
人事労務 | ‐ |
販売・在庫管理 | 〇 |
分析機能 | 〇 |
データ連携 | 〇 |
サポート体制 | ユーザーコミュニティ |
セキュリティ対策 | 要問い合わせ |
有料プランの料金 | 要問い合わせ |
「iDempiere」多言語・多通貨対応でグローバル化にも備えられる
- グローバル対応
- 業務アプリケーションの開発フレームワークとしても活用可能
- 内部統制機能
「iDempiere」はADempiereの後継として登場したERPです。多言語・他通貨に対応しており、グローバル化に備えられるのも魅力です。
「販売管理」「購買管理」「在庫管理」「生産管理」「会計管理(財務会計/管理会計)」「顧客管理(CRM/SFA)」の機能を搭載し、企業の基幹業務を集約して一元管理します。顧客管理には営業支援管理(SFA)も含まれており、顧客クレームの管理・共有や問い合わせ管理にも対応可能です。
業務アプリケーション開発のベースとなる機能はデフォルトで搭載されています。ユーザーはビジネスロジックのコーディングに集中すればよく、開発はスムーズです。
無料期間 | 無制限 |
財務会計 | 〇 |
人事労務 | ‐ |
販売・在庫管理 | 〇 |
分析機能 | ‐ |
データ連携 | ‐ |
サポート体制 | ユーザーコミュニティ |
セキュリティ対策 | 要問い合わせ |
有料プランの料金 | ‐ |
「JPiere」日本の商習慣にも無料で対応できる
- 日本の契約システムに対応
- 消費税処理もスムーズ
- 見積伝票も簡単作成
「JPiere」は日本仕様に最適化されたiDempiereのパッケージです。iDempiereのオリジナルは海外製で、日本企業が導入すると何らかのズレが生じます。JPiereはこのズレを最小限に抑えるために必要な、日本の商習慣に対応したさまざまなカスタマイズが施されているのが魅力です。
JPiereならではのカスタマイズとしては「契約管理機能」があります。これを利用すれば、販売や購買に関する各種伝票を簡単に作成することが可能です。
また消費税処理機能は、複雑な消費税処理をスムーズにするために加えられました。このほかに受注伝票で見積もりを行える機能なども搭載されています。
ただしパッケージツールという特性上、機能は標準化されたものばかりです。そのため導入に際しては、システムインテグレーター(SIer)に依頼してカスタマイズすることが推奨されています。
無料期間 | 無制限 |
財務会計 | 〇 |
人事労務 | ‐ |
販売・在庫管理 | 〇 |
分析機能 | ‐ |
データ連携 | ‐ |
サポート体制 | 要問い合わせ |
セキュリティ対策 | 要問い合わせ |
有料プランの料金 | 要問い合わせ |
「ERP5」カスタマイズ性・汎用性が高く、アパレルから銀行まで実績豊富
- すべての要素をオープンソースのみで構築可能
- 高いアクセシビリティ
- カスタマイズが容易
「ERP5」はPythonで書かれたオープンソースのERPです。ベースとなる型を自由にカスタマイズすることで、既製品にはない柔軟で自由なプラットフォームを設計できます。汎用性の高さから、銀行・病院・自動車産業や地方自治体・アパレル産業など、幅広い業界で導入されているERPです。
ERP5の構成要素はアプリに至るまで、オープンソースで提供されています。個別のアプリケーションコンポーネントをインストールすれば、自社ニーズに特化したERPの構築も可能です。
パッケージを利用しにくい特殊な業種・業界や、独自の業務工程を持つ企業でも、利用しやすいでしょう。
無料期間 | 無制限 |
財務会計 | 〇 |
人事労務 | 〇 |
販売・在庫管理 | 〇 |
分析機能 | ‐ |
データ連携 | ‐ |
サポート体制 | 要問い合わせ |
セキュリティ対策 | 要問い合わせ |
有料プランの料金 | ‐ |
「Openbravo」POSレジ機能を搭載。リアルタイムの在庫管理も可能に
- eコマースに必要なあらゆる機能を網羅
- 小売店やレストランに特化したPOS機能を選択可能
- レポート機能で日常業務を分析
「Openbravo」はクラウドで提供される、拡張性の高いオープンソースERPです。eコマース関連業務に特化しており、販売管理に関わるバックオフィス業務や注文管理・在庫管理などを一つのプラットフォームで実現します。
POS機能など、業務効率向上のための機能が豊富な点も特徴です。実店舗やオンラインショップの販売から支払い、返品までを処理したり、リアルタイムで在庫を管理したりすることができます。
また柔軟性の高いモジュラー アーキテクチャの採用により、高い拡張性を持つ点も見逃せません。自社で使用中のシステムと連携させれば、ビジネスの流れがより一層加速するでしょう。
無料期間 | 無制限 |
財務会計 | ‐ |
人事労務 | ‐ |
販売・在庫管理 | 〇 |
分析機能 | 〇 |
データ連携 | 〇 |
サポート体制 | サポートチームあり |
セキュリティ対策 | 要問い合わせ |
有料プランの料金 | 要問い合わせ |
「ERPNext」グローバル拠点にも対応!スマホやタブレットから使えてテレワークも促進
- 企業運用に必要な基幹業務を一元管理
- カスタマイズが容易
- マルチデバイス対応
「ERPNext」はグローバル拠点にも対応できる、グローバル・オープンソースERPです。4大経営資源といわれる「ヒト・モノ・カネ・情報」を適切に一元管理できます。すべての機能はダッシュボード上で操作できるため、ブラウザ上にいくつも画面を並べる必要はありません。
またERPNextはパソコンはもちろん、スマホやタブレットでの利用も可能です。いつでもどこからでもアクセスしやすく、テレワーク中の社員や遠方拠点の社員とも情報を共有できます。
機能は必要に応じて追加できるため、スモールスタートも可能です。企業の規模を問わずに導入しやすく、ERPの導入に不安がある中小規模の企業にもおすすめできます。
無料期間 | 無制限 |
財務会計 | 〇 |
人事労務 | 〇 |
販売・在庫管理 | 〇 |
分析機能 | ‐ |
データ連携 | ‐ |
サポート体制 | ヘルプデスクあり |
セキュリティ対策 | 要問い合わせ |
有料プランの料金 | 要問い合わせ |
「Axelor」機能追加はドラッグ&ドロップで簡単。プログラミング知識に自信がない人にも
- クラウド型オープンソースERP
- CRM・BPM・ERPを統合
- ローコードプラットフォーム
「Axelor」はシンプルで使いやすいUIを備えたオープンソースERPです。CRM、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)ツールの役割も果たし、顧客管理や業務管理の流れを定型化・最適化します。
Axelorの魅力は個々のニーズや課題に応じて、必要なモジュールを簡単に追加できる点です。プラットフォームへの機能の追加は、ドラッグ&ドロップのみで完了します。コードを書く必要がないため、プログラミング言語の知識がない人でも、戸惑うことはないでしょう。
またプラットフォームは完全にWeb上で展開されるクラウド型のため、デバイスを選ばないのも魅力です。ユーザーはインターネット環境の整っている場所からなら、いつでも必要な情報にアクセスできます。
サーバーの設置や保守管理の必要がなく、運用のコスト・手間もかかりません。
無料期間 | 無制限 |
財務会計 | 〇 |
人事労務 | 〇 |
販売・在庫管理 | 〇 |
分析機能 | ‐ |
データ連携 | 〇 |
サポート体制 | パートナーネットワーク 等 |
セキュリティ対策 | 要問い合わせ |
有料プランの料金 | 要問い合わせ |
「Apache OFBiz」注文や在庫管理も可能。製造業や小売業にぴったり
- Java ベースの Web フレームワーク
- 高い拡張性
- オンラインデモ付き
「Apache OFBiz」はJavaベースで開発された、スケーラビリティの高いERPです。ウィジェットベースの UIを備え、簡単にWeb アプリケーションのプロトタイプ作成・開発を行えます。搭載されているカスタム機能を使えば、フレームワークの拡張や強化も内製化が可能です。
すぐに利用できるコアモジュールとしては会計・CRM・注文管理・e コマースのほか、倉庫や在庫管理、製造、MRPなどがあります。特に製造業・小売業・流通業に携わる企業に必要な機能がそろっており、通常業務を加速してくれるでしょう。
フレームワークを活用してみたい場合はオンラインデモの活用がおすすめです。eコマースのウェブストアとバックエンド ERP アプリケーションから、自社ニーズに合うものを試せます。
無料期間 | 無制限 |
財務会計 | 〇 |
人事労務 | 〇 |
販売・在庫管理 | 〇 |
分析機能 | ‐ |
データ連携 | ‐ |
サポート体制 | 要問い合わせ |
セキュリティ対策 | 要問い合わせ |
有料プランの料金 | ‐ |
手軽に安くERPを導入したいならクラウドサービスも検討しよう
無料で使えるオープンソース型のERPは初期費用やライセンス費用がかからずに、低コストで導入可能です。しかし、いざ運用を考えていくと、インフラ環境の構築や運営・保守などを自社内でおこなう必要があります。
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