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自治体向け勤怠管理システム5選|LGWAN対応・会計年度任用職員の課題を解決

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最終更新日: 2025年12月16日

地方自治体の勤怠管理は、2020年度の会計年度任用職員制度導入で大きく複雑化しました。

正規職員に加えて、フルタイムから週数日のパートタイムまで多様な勤務形態の会計年度任用職員が在籍しており、それぞれ異なる報酬単価と休暇付与ルールが適用されます。

従来のExcelや紙での管理は限界を迎えています。同時に、庁内DX推進の中でLGWANのセキュリティ要件を維持しながらクラウドを導入する難題に、多くの担当者が直面しています。

本記事では、これらの壁を突破するための具体的な選定基準と、自治体での実績が豊富な5つの勤怠管理システムを解説します。

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自治体向け勤怠管理システムの最適解とは?「雇用形態の複雑さ」と「LGWAN」が選定の鍵

自治体の勤怠管理システム選定で最も重要なのは、会計年度任用職員を含む多様な勤務パターンの自動判別機能と、LGWAN環境との親和性です。

民間向け汎用システムをそのまま導入すると、必ず壁にぶつかります。

1つ目の壁は「用語とルールの不一致」です。

民間の「残業」は公務員では「時間外勤務」であり、事前命令と事後確認のワークフローが必須です。

「欠勤」ではなく「病気休暇」扱いで、有給・無給期間の自動判定が求められます。

2つ目の壁は「LGWAN環境」です。

人事給与データは機微情報を含むため、LGWAN接続系で扱う必要があり、インターネット上のSaaSに直接アクセスできません。

最初から自治体制度に対応した「自治体特化型」、あるいは柔軟なカスタマイズ性を持ちLGWAN接続方式が明確な「SaaS型」を選ぶべきです。価格だけで選ぶと、導入後に高額なカスタマイズ費用が発生します。

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なぜ今、自治体の勤怠管理システム刷新が急務なのか? 3つの構造的課題

自治体を取り巻く環境変化は、勤怠管理の刷新を「できればやりたい」から「やらなければ破綻する」レベルへと押し上げています。

会計年度任用職員制度で管理が複雑化

2020年度の制度導入以降、人口5万〜20万人規模の自治体でも数百人から千人規模の会計年度任用職員が在籍しています。

週所定労働日数に応じた有給休暇付与日数計算、任期ごとの契約更新管理、期末手当の支給要件判定、そして最も複雑なのが再任用時の有給残日数繰越ルールです。

各所属部署の紙やExcel管理では、関数破損や属人化で引継ぎ不全が起き、給与の未払い・過払い問題に直結します。単なるミスではなく、住民や議会からの信頼失墜を招く要因です。

働き方改革関連法と地方公務員法の遵守

2019年の労働安全衛生法改正で、公務員も客観的方法で労働時間を把握することが義務化されました。

従来のハンコでの自己申告は法的に認められません。地方公務員法に基づく条例でも、時間外勤務の上限規制が明文化され、原則月45時間・年360時間の厳格運用が求められています。

PCのログオン・ログオフ時刻と申告時間の乖離は「サービス残業の温床」とみなされ、人事委員会や外部監査の厳しい指摘事項です。

年5日の有給取得義務も、システムでの自動アラートがなければ管理漏れが発生します。

DX推進とセキュリティのジレンマ

政府主導の「自治体システム標準化・共通化」で、基幹業務システムのガバメントクラウド移行が進んでいます。

業務系パッケージのクラウド市場は継続的な成長を続け、自治体向けでもSaaS型が主流化しています。

しかし、LGWANの壁が立ちはだかります。自治体ネットワークは「マイナンバー利用事務系」「LGWAN接続系」「インターネット接続系」の3層に厳格分離され、人事給与データは最もセキュアなLGWAN接続系で扱われます。

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自治体向け勤怠システム選定で外せない4つのチェックポイント

PCを操作する男女

会計年度任用職員の複雑な管理とLGWAN環境の2つの壁を突破するため、システム選定で見極めるべき4つの判断基準を提示します。

これらは仕様書作成時の評価軸としても機能します。

1. 「公務員特有の勤務ルール」に標準対応しているか

民間向けシステムを安易に導入すると、用語・ルールの不一致で現場が混乱します。

民間の「残業」は公務員では「時間外勤務」であり、事前命令と事後確認のワークフロー、予算科目ごとの集計機能が必須です。

「休日出勤」は「休日勤務」と「週休日勤務」に明確に区別され、それぞれの割増賃金率設定が必要です。

「代休」「振替」は4時間単位や1時間単位での処理と、振替可能期間の制限管理が求められます。

「欠勤」は「病気休暇」扱いで、有給期間90日と無給期間の自動判定、給与減額計算へのデータ連携が不可欠です。

特に重要なのが「年次有給休暇」管理です。1日・半日・時間単位の取得管理に加え、会計年度任用職員の任期更新時の残日数繰越ルール対応が必須で、この自動判定の可否が年度末・年度始めの残業時間を数百時間単位で左右します。

2. LGWAN環境での利用形態とセキュリティ

LGWAN対応」には複数の実装方式があり、セキュリティ強度、コスト、ユーザビリティが大きく異なります。

LGWAN-ASP型は、J-LIS登録事業者がLGWAN網内にサーバー設置してサービス提供する方式で、LGWAN系端末から直接高速・安全にアクセスでき、情報漏洩リスクが極小です。

ただし対応ベンダーが少なく、選択肢は限られます。

ブラウザ分離型は、インターネット上のSaaSに庁内の無害化ソリューション経由でアクセスする方式。

民間の最新・安価なSaaSを使えますが、画面転送特有の描画遅延が発生しやすく、全職員が毎日使うシステムでは致命的な欠陥となります。

ローカルブレイクアウト型は、特定クラウドサービスへの通信のみLGWANを経由せず直接インターネットへ抜ける構成。

通信速度は速いものの、ネットワーク構成の大幅変更が必要です。

ISMS認証やプライバシーマークなどの第三者認証の有無も必須確認事項です。

3. 誰でも使える「UI/UX」とマルチデバイス対応

自治体職員は、デスクワーク中心の一般行政職だけでなく、保育士、技能労務職、土木技術職、医療職など、PCを一人一台持たない職種も多数います。

年齢層も幅広く、ITリテラシーには大きなばらつきがあります。システムは「マニュアルを読まなくても直感的に操作できるUI」が絶対条件です。

複雑なメニュー階層や専門用語が並ぶ画面は、問い合わせ対応工数を増大させます。外勤職員や出先機関向けに、スマートフォンやタブレットでの打刻・申請対応も重要です。ただし私物スマホの利用可否や位置情報取得の是非を運用ルールとセットで検討する必要があります。

マイナンバーカードやIC職員証をかざすだけで打刻できる物理打刻機の連携も、PCを持たない職員にとって有効です。

4. 導入実績とベンダーのサポート体制

自治体システムでは「実績」が何よりの信頼の証です。

特に人口5万〜20万人規模の自治体は、大都市とも小規模町村とも異なる特有の組織力学や予算規模があるため、同規模の導入事例が重要な判断材料となります。

ベンダーのサポート体制として確認すべきポイントは以下の3点です。

  • プロポーザル支援
    公平性を保ちつつ自庁要件を的確に反映した仕様書案の作成支援
  • 移行支援
    既存システムやExcelからのマスタデータ・過去の勤怠データの移行支援
  • 制度改正対応
    将来的な法改正時の改修費用が保守費用に含まれるか、都度見積もりか

特に制度改正対応の費用体系は、5年間のトータルコストを大きく左右します。

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自治体におすすめの勤怠管理システム5選

自治体での実績が豊富で、LGWAN対応や特殊ルール対応に強みを持つシステムを厳選して紹介します。

TimePro-VG(アマノ株式会社)

出典:「TimePro-VG」公式サイト

90年以上の歴史を持つ勤怠管理の老舗です。

長年にわたり自治体の給与システムとの連携を行ってきた実績から、複雑な超勤計算ロジックや特殊な休暇制度への対応力が極めて高く、公務員適合度は最高レベル

オンプレミスからクラウドまで選べる提供形態を持ち、近年は「TimePro-VG Cloud」としてクラウドシフトを進めています。LGWAN-ASP提供実績もあり、庁内LANから直接接続する構成を採用できます。

ハードウェアメーカーとしての強みを活かし、既存のアマノ製タイムレコーダーをそのまま活用できる点は、資産有効活用の観点から財政課への説得材料となります。

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KING OF TIME(株式会社ヒューマンテクノロジーズ)

KING-OF-TIME_
出典:「KING OF TIME」公式サイト

クラウド勤怠管理市場でシェアNo.1を誇るSaaS製品です。

圧倒的な機能数とコストパフォーマンスの高さが魅力で、1ユーザー300円からという低価格を実現。

頻繁なバージョンアップで常に最新機能が使え、API連携も豊富で他システムとの連携が容易です。

標準機能の設定自由度が高く、公務員特有のルールもパラメータ設定でカバーできる領域が広くなっています。

LGWAN環境下での利用は、「セコムあんしん勤怠管理サービス」などのOEM版を利用するか、LGWANボット等を介した接続構成で実績を伸ばしています。

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ジョブカン勤怠管理(株式会社DONUTS)

ジョブカン勤怠
出典:「ジョブカン勤怠管理」公式サイト

導入ハードルの低さと、必要な機能だけを選んで契約できるプラン設定が魅力です。

シリーズ累計導入実績は非常に多く、変形労働時間制やフレックス制への対応が柔軟です。

多様な働き方を推進する部局には適しています。全庁導入では、公務員特有の複雑な給与連携データの作成に工夫が必要なケースがあります。

LGWAN対応は無害化通信経由での利用が前提のため、レスポンス検証が不可欠です。

予算が限られている場合や、スモールスタートで一部の外郭団体、特定の部局から導入を開始したい場合に適しています。

機能単位での契約が可能な点は、段階的導入を検討する自治体にとって大きなメリットです。

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公開羅針盤(株式会社両備システムズ)

公開羅針盤
出典:「公開羅針盤」公式サイト

自治体業務を知り尽くした両備システムズが提供する、自治体専用グループウェアおよび勤怠管理システムです。

最初から「LGWAN-ASP」として設計されているため、セキュリティとネットワーク構成の親和性は最強で、LGWAN内で完結します。用語も「年休」「病休」「職専免」がデフォルトで設定されており、導入時のカスタマイズ負荷が非常に低くなっています。

両備のグループウェアを既に導入している、あるいは導入予定の自治体であれば、シームレスな連携が可能で、ユーザー管理の一元化メリットも享受できます。

民間向け製品のカスタマイズに不安があり、最初から「自治体専用品」を選びたい保守的な層に最適です。

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TeamSpirit(株式会社チームスピリット)

TeamSpirit(株式会社チームスピリット)
出典:「TeamSpirit」公式サイト

Salesforce基盤上で動作する高機能システムです。

勤怠管理機能に加え、「工数管理」機能に強みを発揮。

どの政策やプロジェクトに、誰が、どれだけの時間を割いたかを見える化できるため、行政評価や業務棚卸しの基礎データとして活用できます。

単なる勤怠管理を超えて、職員の生産性向上や働き方の質的転換を目指す先進的な自治体に最適。

ただしSalesforceのライセンスが必要なため、コスト構造の確認は必須です。

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自治体が勤怠管理システムを導入するまでの流れ

民間企業とは異なり、自治体のシステム導入には厳格なプロセスが存在します。実務担当者が踏むべき6つのステップを解説します。

導入前年度の4月から6月:現状調査と課題の棚卸し

各課の庶務担当者にヒアリングを行い、現在使用している出勤簿・休暇簿の様式を全パターン網羅します。Excel管理している会計年度任用職員の人数と計算ロジックを把握し、現行システムへの不満点と解決したい課題をMust要件とWant要件に切り分けます。

7月から8月:情報収集(RFI)と概算予算の把握

ベンダー各社にRFIを送付し、製品情報と概算見積もりを取得、LGWAN接続方式や公務員機能への対応可否をスクリーニングします。

集まった見積もりを基に、ライセンス費用だけでなく導入支援費用や5年間の保守運用費を含めたトータルコストを算出し、次年度の予算要求資料を作成します。

9月から12月:予算要求と査定

財政課への予算要求と査定です。

費用対効果として、集計工数の削減時間やペーパーレス効果を定量的に示します。たとえば人事課の集計作業が月72時間から4時間に削減されれば94%減で、こうした数値が予算確保のカギとなります。

1月から2月:仕様書(RFP)作成と公示

予算確保後、具体的なRFPを作成し、入札またはプロポーザルを公示。仕様書の品質が導入の成否を決定づけるため、曖昧さを排除した記述を心がけます。

導入年度の4月から9月:選定・契約と導入作業

提案書の審査、プレゼンテーションを経てベンダーを選定・契約し、詳細要件定義、設定作業、データ移行、操作研修を行います。

 10月から翌年3月:テスト運用と並行稼働

数ヶ月間の並行稼働期間を設け、給与計算結果に差異がないかを徹底検証し、問題がなければ次年度4月から完全移行します。

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システム導入を成功させるための「仕様書」作成のポイント

PCを操作する手元

ベンダー選定で、自治体が主導権を握るための唯一の武器が「仕様書」です。記載漏れがあると、後から追加費用を請求されたり期待した機能が実装されなかったりするトラブルに発展します。

必ず仕様書に盛り込むべき項目を、機能要件と非機能要件に分けて整理します。

機能要件のチェックポイント

  • 会計年度任用職員対応:再任用時における年次有給休暇の残日数および付与日数を、任用期間および週所定労働日数に基づき自動計算できること
  • 超過勤務命令フロー:事前命令、事後実績入力、所属長承認のワークフローを有し、予算科目ごとの集計およびCSV出力が可能であること
  • 休暇管理:病気休暇等の期間計算で、暦日計算および勤務日計算の双方が設定可能であり、給与減額対象期間の判定が可能であること
  • ログ管理:操作ログを5年間以上保存し、監査時に速やかに出力できること。打刻時刻とPCログオン時刻の乖離リストを出力できる機能を有すること

非機能要件(性能・セキュリティ)のチェックポイント

  • レスポンス性能:LGWAN接続端末からの画面遷移および打刻処理で、実用上支障のない応答速度、例えば平均3秒以内を維持すること。提案時に実機でのデモンストレーションまたは検証結果を提示すること
  • セキュリティ認証:ISMSまたはプライバシーマークを取得していること。データセンターは国内に設置されており、災害対策が講じられていること
  • サポート体制:制度改正等に伴う機能改修が必要な場合、保守費用の範囲内で対応すること、または対応方針を明確にすること
  • データ移行支援:既存システムおよびExcel台帳からの職員マスタ、過去の休暇残日数データの移行支援を行うこと

これらの項目を明記することで、ブラウザ分離型の描画遅延リスクを事前に排除し、5年間のトータルコストを見通せるようにします。

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まとめ:勤怠管理システムの導入は「自治体DX」の第一歩

自治体の勤怠管理システム刷新は、単なる事務効率化にとどまりません。複雑化する公務員の人事労務管理をデジタルの力で適正化し、法令遵守と職員のウェルビーイングを両立させるための投資です。

たとえば、システム導入で人事課の集計作業時間を大幅に削減し、給与計算ミスをゼロにした自治体もあります。

担当者からは「Excelの数式が壊れていないかを毎月怯えながらチェックしていたストレスから完全に解放され、空いた時間で職員の研修企画や健康管理施策に注力できるようになった」という声も聞かれます。

選定には「公務員特有のルール」と「LGWANセキュリティ」の2つの壁が存在しますが、適切な知識と準備があれば十分に乗り越えられます。

安易に「民間で流行っているから」と選ぶのではなく、自庁の規模、ネットワーク環境、そして抱えている会計年度任用職員の課題に最もフィットするシステムを見極めることが肝要です。

まずは主要3社程度に資料請求を行い、同規模自治体での導入事例、特にLGWAN接続方式と運用ルールを確認することから始めましょう。

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