法定三帳簿は会社で適切に作成・管理・保存しておかなければならない重要書類です。
保存期間や作成しないリスクを知った上で、自社に合った作成・保存方法を見つける必要があるでしょう。法定三帳簿の必要性や種類、作成方法について解説します。
法定三帳簿とは
法定三帳簿とは、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の書類のことです。これらの書類は、会社で適切に管理・保存することが労働基準法によって義務付けられています。
法定三帳簿は、労働者の労務管理を適切に行うための重要な帳簿です。労働者1人につき1セットの法定三帳簿を作成する必要があります。
「法定」と付いているのは、これら3書類の作成や保存が法律で義務づけられているためです。労働基準法や厚生労働省のガイドラインなどにより、3書類の記載内容や保存について細かい規則が設けられています。
労働者名簿:労働者の個人情報を記載
労働者の個人情報を記載する帳簿が労働者名簿です。「労働者ごと」かつ「事業所ごと」に作成しなければなりません。
項目の種類は以下のとおりになります。
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従業員が30人未満の場合は、「従事する業務の種類」の記入は不要です。そして記載内容に変更があった場合は、すぐに書き換えを行わなければなりません。
【労働者名簿の様式】
労働者名簿は厚生労働省の以下のサイトでテンプレートをダウンロードできます。
また以下の記事で解説していますので、もっと詳しく知りたい方はご覧ください。
賃金台帳:労働者の給与を記録する帳簿
賃金台帳は労働者の給与について記録した帳簿です。日雇い労働者を含めた全ての労働者が対象となります。
記載すべき項目は以下のとおりです。
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賃金台帳は対象者ごとに記録し、給与を支払うたびに遅れることなく記入する必要があります。管理監督者は「労働時間、時間外労働、休日労働の時間数」の記載が不要とられていますが、深夜労働の時間数については記載が必要となります。
【賃金台帳の様式】
賃金台帳は厚生労働省の以下のサイトでテンプレートをダウンロードできます。
出勤簿:従業員の勤怠の状況を記録
出勤簿は労働基準法には明確な規定がなく、厚生労働省のガイドラインを根拠として保存する必要があるとされています。
記載すべき項目は以下のとおりです。
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出勤簿の作成はタイムカードや勤怠管理システムのデータをそのまま使用して効率よく行いましょう。
出勤簿で重要なポイントは、使用者が労働者の労働時間を正確に把握していることと、労働者自らも確認を行っていることの2点です。記録の正確さと、使用者・労働者の確認の有無に注意して作成しましょう。
基本的にフォーマットがないため、各社で管理が必要です。近年では勤怠システムを利用し管理する企業が増えています。
法定三帳簿の作成時期
帳簿は従業員が入社するたびに追加していくようにしましょう。法定三帳簿の作成時期は以下のとおりです。
労働者名簿:まず初めに作成し、変更があるたびに更新する
賃金台帳:給与支払いを行うたびに作成する 出勤簿:勤怠管理システムを用いて毎日記録を行う |
法定三帳簿に関する法律
従業員を一人でも雇用している場合、労働基準法で法定三帳簿の作成・管理・保管が義務付けられています。
【労働基準法第107条】
使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
【労働基準法第108条】
使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
出勤簿については、労働基準法に明記されているわけではありませんが、一般に労働基準法施行規則第54条の内容などから保管が必要であるとされています。
また「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」には、出勤簿やタイムカードを保存しなければならないことが明記されています。
法定三帳簿は全ての企業に作成・管理の義務がある
法定三帳簿の作成・管理は、企業の規模に関係なく、従業員を1人でも雇っているすべての企業に義務付けられています。書類を作成していない場合や、保存義務を守っていない場合は、ペナルティを科される恐れがあるため注意しましょう。
役員だけの会社は賃金台帳のみでも可
しかし役員のみの場合や役員とパート従業員のみ場合は、法定帳票のうち労働者名簿と出勤簿の作成は不要とされています。賃金台帳は所得税の年末調整や算定基礎届けにおいて必要となるため常備するようにしましょう。
雇用形態に関わらずすべての従業員で作成
正社員・契約社員・パートタイマー・アルバイトなどの雇用形態に関わらず、すべての従業員が対象となります。ただし日雇い労働者の場合は作成が不要です。
日雇い労働者以外の従業員を1人でも雇っている場合は、必ず作成するようにしましょう。
法定三帳簿の保存期間
作成した法定三帳簿は労働基準法により、3年間保存しなければならないと定められています。また、保存期間起算日は5つの規定により定められています。
法定三帳簿は3年間の保存が基本
法律で定められている法定三帳簿の保存期間は、3種類とも原則として3年間です。
【労働基準法第109条】
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ただし、2020年4月施行の改正法ではそれぞれの保存期間が5年間となったたあめ、経過措置終了後は5年間の保存を求められることになります。
また、保存期間起算日については「労働基準法施行規則第56条」で以下のように定められています。
【労働基準法施行規則第56条】
法第百九条の規定による記録を保存すべき期間の計算についての起算日は次のとおりとする。
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法定三帳簿の保存期間と保存期間起算日をまとめると以下のとおりです。
帳簿 | 保存期間 | 保存期間起算日 |
労働者名簿 | 3年間 | 労働者の死亡・退職・解雇の日 |
賃金台帳 | 3年間(源泉徴収簿を兼ねる場合は法定申7年間) | 最後に記入した日
(例えば2021年末日に記入した賃金台帳は、2024年の末日まで保存) |
出勤簿 | 3年間 | 最後の出勤日
(例えば2021年11月末日まで出勤していた従業員の出勤簿は2024年11月の末日まで保存) |
法定三帳簿を作成していないとどんな罰則が?
労働基準法第120条により、作成・管理・保管していない場合労働基準法により30万円以下の罰金と定められています。
また労働基準監督署による帳簿提出の拒否や嘘の記載をした際にも、処罰の対象となるでしょう。
法廷三帳簿はどんな時にチェックされる?
労働者名簿や出勤簿は基本的に提出を求められる場面は少ないでしょう。
ですが賃金台帳に関しては、以下の場面で提出が求められます。
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労働者名簿と出勤簿も、労務に関する企業と労働者間のトラブルが起きたときや、思わぬ場面で提出を求められることがあります。
提出頻度は少ないですが、日常的につけていないともしもの時に大変困ることになるでしょう。
そのため、日頃から運用できる体制が必要です。
法定三帳簿を効率よく作成する方法
法定三帳簿はテンプレートや電子ソフトをなどを使用して効率よく作成しましょう。
作成方法には以下に挙げるようなものがあります。使い勝手やコストが異なるため、自社に合った方法を選びましょう。
【労働者名簿・賃金台帳】厚生労働省のPDFやクラウドソフトで管理
労働者名簿・賃金台帳に関しては、厚生労働省のホームページにテンプレートがPDFファイルで用意されています。ダウンロード後に印刷すれば、紙の書類としても使用可能です
労務管理ソフトや給与計算ソフトの導入予定がなければ、こちらを使うと良いでしょう。
データで管理したい場合は、エクセルで用意するもしくは労務管理ソフトや給与計算ソフトの運用を視野に入れましょう。
エクセルでは以下からDLできます。
労務管理システム、給与計算ソフトを利用する場合は、必ずしも労働者名簿・賃金台帳がついている訳ではないので注意が必要です。
以下の記事にておすすめのソフトを紹介しているので、参考にしてみてください。
>>労務管理システムをお探しの方はコチラ
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法定三帳簿対応の勤怠管理システムを活用
法定三帳簿を作成する方法としては、勤怠管理システムの導入も挙げられます。勤怠管理システムとは、主に労働者の出退勤時刻や残業時間などを管理できるシステムです。
勤怠管理システムの中には、法定三帳簿の作成に対応しているものも数多くあります。そもそも多くの勤怠管理システムが、労働者のさまざまな情報を一元管理できるシステムとなっているため、法定三帳簿も作りやすくなっているのです。
勤怠管理システムでは、給与計算や入退社管理など、人事労務関連の業務をまとめて行えます。人的ミスや作業時間を大幅に削減できることもメリットです。
法定三帳簿を正しく作成・保存しよう
法定三帳簿とは、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿等の総称です。それぞれが労務管理を適切に進めるための大事な帳簿であり、作成・管理・保存が法律で義務づけられています。
3種類の帳簿について、書き方や保存方法をしっかりと理解しておくことが重要です。自社に合った作成方法を選び、適切な管理を心がけましょう。
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