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労務コンプライアンスとは | 違反事例とチェックすべき項目

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最終更新日: 2024年06月28日

近年の働き方改革の進展にともない「労務コンプライアンス」という言葉が良く聞かれるようになりましたね。

しかし具体的に労務コンプライアンスとは何か、自社の状況が果たして違反になるのか、あまり分かっていないという人も少なくないのではないでしょうか。

労働基準監督署から是正勧告を受けるなど、労務コンプライアンスは軽視していると思わぬトラブルに発展する可能性があります。労務コンプライアンスのチェックリストや具体的な違反事例を知り、法律を守った企業経営を行いましょう。

労務コンプライアンスとは労働関係法令を守ること

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労働関係法令を守り労務管理を実施することを「労務コンプライアンス」といいます。労働基準法はもちろん、他の法律も遵守しなければいけません。関連する代表的な法律は下記の通りです。

  • 労働組合法
  • 最低賃金法
  • パートタイム労働法
  • 男女雇用機会均等法
  • 育児介護休業法
  • 高齢者雇用安定法

これらの法律を守った上で事業を運営するために、企業は「就業規則」を作ります。就業規則には給料や休日を始め、さまざまな社内の決まりを盛り込みます。このとき必ず全ての法律を守った内容にしなければいけません。

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労務コンプライアンスのチェックリスト

チェックリスト

それでは実際に労務コンプライアンスはどんな点に着目すれば良いのか、主な項目別にチェックしてみましょう。1つでもNGがある場合は迅速に改善してください。

労働条件

労働条件に関する法律は労働者が健全に働き続けられるよう定められています。就業規則の作成や健康診断の実施、社会保険への加入など基本的なことが多いですが、適用するにあたり細かな条件もあるので気をつけましょう。

  1. 就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ている〈労基法89条〉
  2. 就業規則・法に基づいた労使協定を労働者に周知している〈労基法106条〉
  3. 採用または労働条件変更の際、条件を記載した書面を交付している〈労基法15条〉
  4. 深夜業従事者を含む労働者に対し、雇入れ時及び定期的な健康診断を実施している〈安衛法66条〉
  5. 一定要件(週20時間以上の勤務、31日以上雇用の見込み)に該当する労働者を雇用保険に加入させている〈雇用保険法〉
  6. 常時雇用する労働者(週・月の労働時間が正社員の4分の3以上であるパートタイマー等含む)を社会保険(厚生年金、健康保険)に加入させている〈厚生年金保険法、健康保険法〉

労働時間・休日・年次有給休暇

近年の働き方改革により、時間外労働を労働者に行わせる際の条件が厳しくなったので注意が必要です。休日や年次有給休暇もきちんと法律に則って与えなくてはなりません。

  1. 時間外労働・休日労働の労使協定(36協定)を締結したうえで、時間外労働をさせている〈労基法36条〉
  2. 労働時間の適用除外となる管理監督者(労働条件の決定・その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者)の範囲は適正である〈労基法41条、通達 基発17号・150号〉
  3. 毎週少なくとも1回の休日(法定休日)を与えている〈労基法35条〉
  4. 法定の年次有給休暇(6か月以上かつ全労働日の8割以上を勤務した労働者に対し10労働日)を与えている〈労基法39条〉
  5. パートタイマーにも年次有給休暇(所定労働日数に応じた比例付与)を与えている〈労基法39条、労基則24条の3〉
  6. 有給休暇を取得した労働者に対して不利益な扱いをしていない〈労基法136条〉

また時間外労働についてより詳しく知りたい方は以下をご参照ください。

関連記事:時間外労働とは?上限規制や36協定、賃金計算を解説

賃金

賃金に関しては、労働者が時間外労働や休日労働、深夜労働を行った際は割増賃金になるので特に注意しましょう。また都道府県ごとに定められた最低賃金以上を支払うことも法律で定められています。

  1. 労働者に最低賃金以上の額(例:2021年10月1日より 東京都1,041円/時間)を支払っている〈労基法28条、最賃法〉
  2. 時間外労働・休日労働を行った場合、法定の割増賃金(法定時間外労働は2割5分以上、法定休日労働は3割5分以上、法定時間外労働が月60時間を超えた分は5割)を支払っている〈労基法37条〉
  3. 深夜労働(22時~5時)を行った場合、法定の割増賃金(2割5分以上)を支払っている〈労基法37条〉
  4. ペナルティーによる減給は法定の範囲内(1回の減額は平均賃金の1日分の半額以下 等)で実施している〈労基法91条〉

育児・介護など

育児や介護に関する制度を利用した労働者に不当な扱いをするのは法律で禁じられています。不当な扱いをさせないためにも、社内で働く労働者たちに法律の存在を周知するのが重要です。

  1. 労働者が請求した場合、産前休暇(出産予定日まで6週間、多胎妊娠の場合は14週間以内)を与えている〈労基法65条〉
  2. 産後8週間を経過しない労働者を就業させていない〈労基法65条〉
  3. 婚姻・妊娠・出産・産前産後休業を取得したことを理由とする不利益な扱いをしていない〈均等法9条、育児介護休業法〉
  4. 出産・育児・介護に関する制度利用を申し出た・利用した際に不利益な扱いをしていない〈育介法10条〉

高年齢者の雇用確保

定年年齢や65歳までの雇用確保措置など、高年齢者の雇用に関する保護も法律で定まっています。自社の就業規則が適切か、今一度確認してみましょう。

  1. 定年を定めている場合、定年年齢は60歳以上である〈高齢法8条〉
  2. 65歳までの、高年齢者雇用確保措置(定年の引上げ・継続雇用制度の導入・定年の定めの廃止 のいずれか)を講じている〈高齢法9条〉

解雇、雇止め、無期転換

合理的な解雇事由か、30日前に予告が為されたかなど、解雇に関しては特に厳重に法律で定められています。雇止めの際も同様です。

  1. 解雇事由は就業規則において定められており、合理的である〈労契法16条〉
  2. 解雇する場合、解雇予告(原則として30日前の解雇予告か、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払い)をしている〈労基法20条〉
  3. 一定の者(3回以上契約を更新又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者)について雇止めをしようとする場合は、少なくとも契約満了日の30日前までに予告している〈労基法14条、厚労省告示357号〉
  4. 無期雇用契約転換(雇用契約を更新し5年以上となった労働者が対象)の申し出に対応している〈労契法18条〉
参考:労務コンプライアンス チェックシート

労務コンプライアンス違反の事例

深夜にビジネスミーティングをするビジネスマン

労務コンプライアンス違反の具体的な事例としては長時間労働、未払い賃金、ハラスメント問題などが挙げられます。個人の問題だと考えず、企業全体として改善を図ることが重要です。

長時間労働

適正な残業代を支払っているとしても、労働基準法に定められた労働時間を超えて労働者を働かせることはできません。1日8時間以内・週40時間以内が基本です。

時間外勤務を命じられる「36協定」を結んでいる場合でも、原則月45時間・年360時間の上限があります。

何より長時間労働は労働者のうつ病や過労死を引き起こしかねないので、自社の環境が法律に抵触していないか注意を払いましょう。

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賃金の未払い

労務コンプライアンス違反としてよくニュースなどでも報じられるのが「賃金未払い」です。令和2年度には労働監督署からの是正勧告を受け、1,062の企業が未払いだった賃金を労働者へ支払っています。

本来の給与をきちんと支払っているとしても、残業代が未払いになっているケースは少なくありません。法令違反ではなくても、企業と労働者の認識の違いから残業代の未払いをめぐるトラブルへ発展する可能性もあります。

ハラスメント

代表的なハラスメント問題としてはパワハラ、セクハラが挙げられます。

ハラスメント問題は個人の問題ではありません。企業がハラスメント対策を取っていなければ、安全配慮義務違反として責任を追及されることもあります。労働者にハラスメント対策の講座受講を義務付けるなど、社内への注意喚起を徹底しましょう。

労務コンプライアンスを甘くみるリスク

SNSトラブルで困る女性

労働者を守る労務コンプライアンスの遵守は企業を守るものでもあります。労務コンプライアンス違反がある状態で事業を運営し続けるのは、企業にとって大きなリスクです。トラブルに発展すれば訴訟に至ることもあるでしょう。

債務の経営圧迫

未払い賃金や長時間労働といった労務コンプライアンス違反に対応せずにいた場合、労働者から請求された場合に莫大な債務を負いかねません。

賃金の未払いが常態化している企業では、1人の労働者から未払い賃金の指摘・請求が行われれば他の労働者が追従する可能性が高いといえます。仮に1人当たりの未払い賃金が50万円でも、10名なら500万円、100名なら5,000万円です。

未払い賃金を支払わずにいたことで債務を抱えれば、事業継続が難しくなる可能性も考えられます

優秀な労働者の離職

離職率の上昇は、労務コンプライアンス違反により企業が被る不利益の最たるものです。

賃金や労働時間が不適切な企業では、一般企業と比べて退職者が増加します。特に転職市場で引く手あまたの優秀な人材であるほど、早い段階で退職を決断する可能性が高いでしょう。

口コミによる営業・採用活動への影響

離職者が増えれば、短期間で必要な人数を確保するため、採用基準を下げざるを得ない事態に陥る可能性もあります。

また退職した元労働者が企業の労務コンプライアンス違反をSNSで発信することも考えられるでしょう。ネガティブ情報が広まれば、募集をしても応募者が集まりにくくなる可能性があります。

労働基準監督署に通報される

従業員によって、労務コンプライアンスについて労働基準監督署に通報される可能性があります。

通報された場合、労働基準監督署からの立ち入り調査が行われ、違反している場合には是正勧告を受けることになります。

是正勧告についてより詳しく知りたい方は以下をご参照ください。

関連記事:是正勧告とは?罰則や未然に防ぐポイント、対処法をわかりやすく解説

刑事罰などの法的処分

労務コンプライアンス違反があまりにひどいと経営者や従業員が逮捕され、罰金刑や懲役刑といった刑事罰を科される場合もあります

また元従業員から損害賠償請求や未払い賃金請求が行われれば、民事事件として損害賠償責任等を追及されることも考え得るでしょう。

一度でも法的処分を受ければ、世間からは「法的処分を受けた企業」として認知され業績に著しい影響が出てしまいます。外部専門家に定期的に監査をしてもらう等、対策をきちんと取りましょう。

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就業規則や労働者が働く現場で、労務コンプライアンス違反が起きていないか確認するには専門的な知識が欠かせません。企業が自力でリスクを洗い出すのは難しいケースも多いでしょう。

そのようなときには「労務監査」を社会保険労務士へ依頼することをおすすめします。定期的にチェックしてもらえるよう、業務委託契約を結ぶのも一つの方法です。

労務監査では主に下記の3点について、整備状況や法律に違反でないか、運用実態などを確認します。

  • 就業規則を始めとする労務に関する規則
  • 労使協定といった労働関係法令の書類や法定帳簿
  • 労働・社会保険関係の手続書類

単に労務コンプライアンス違反のリスクを防ぐためだけでなく、労働者の意欲向上や上場を目指す準備として実施する企業が増えています。

社会保険労務士とは

社会保険労務士(社労士)は労務関連に精通した専門家です。国家資格に合格した人のみが社会保険労務士としての業務に従事できます。従事する主な業務は下記の3種類です。

  • 1号業:行政機関へ提出する書類の作成や提出の代行
  • 2号業:労働社会保険関係法令にもとづく帳簿書類の作成
  • 3号業:労務に関する相談業務

3種類の業務のうち1号業・2号業は社労士の独占業務であり、有資格者でなければ対応できません。

労務コンプライアンスへの理解を深めよう

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複数の労働関係法令の遵守を労務コンプライアンスといいます。労務コンプライアンスの遵守は労働者と企業を守るために欠かせないものです。まずは自社が労務コンプライアンス違反を犯していないかチェックしてみましょう。

また正確にリスクを洗い出すには専門知識が欠かせません。法令の解釈違いや知らなかったことにより発生するトラブルを未然に防ぎたい場合は、社会保険労務士へ労務監査を依頼するのがひとつの解決策です。

労務コンプライアンスへの理解を深めることで、リスクを低減し労働者が意欲的に働きやすい環境作りを実現できるでしょう。

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