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IFRS(国際財務報告基準)とは?日本の会計基準との違いや導入のメリットをわかりやすく解説

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最終更新日: 2024年06月05日

「IFRSがどのような会計基準なのかよくわからない」「IFRSと日本基準では何が違うの?」といった疑問をお持ちではないでしょうか。

IFRS (アイファース / イファース)とは「世界共通の会計基準」を実現するべく定められた国際会計基準のことです。これまでEU諸国をはじめとした海外での適用が進められてきましたが、昨今の日本企業におけるグローバル化の波にしたがって、国内でも注目される機会が増えてきました。

IFRSの特徴や日本基準との違い、導入のメリットなど「IFRSとは何か」をわかりやすく理解するためのポイントを解説します。

IFRS(国際財務報告基準)とは

電卓

「IFRS (国際財務報告基準)」とは「International Financial Reporting Standards」の略語で「国際会計基準」とも訳されます。「世界共通の会計基準」の実現を目的として、ロンドンを拠点とする民間団体の「国際会計基準審議会 (IASB)」によって策定された会計基準です。

2005年にはEU諸国の上場企業にて適用が義務化され、現在では110以上もの国と地域で採用されています。日本でも2010年の3月より適用可能となりましたが、強制適用は定められていません。

日本ではグローバル展開を実施する企業を中心に導入が進んでおり、今後も適用企業数は増加する見通しです。

会計基準の種類のひとつ

IFRSは貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を作成するためのルールである、会計基準のひとつです。

会計基準はそれぞれの国で独自に定めたルールを各国の企業が採用しているのが現状で、日本でも企業会計基準委員会が設定した基準を採用している企業がほとんどです。

日本の場合は独自の会計基準をはじめ、IFRSや米国の会計基準、そして日本版のIFRSであるJ-IFRSの4種類から選べるようになっています。

IFRSが策定された背景

IFRSはもともと、EU(欧州連合)が域内の上場企業に対して採用を義務付けたことで普及しはじめたもので、ここ10年ほどで急速に広まっています。

その背景としては、欧州諸国の金融市場を活性化するという目的がありました。各国が独自の会計基準を用いて財務諸表を作成していたのでは、国外の投資家にとってわかりづらいため、EU全体で会計ルールを統一する必要があったわけです。近年はEUを中心に、世界中でIFRSの採用が広がっています。

日本企業におけるIFRSの採用状況

日本では固有の会計基準を採用している企業がほとんどで、2020年の時点でIFRSを採用している企業は200社程度に過ぎませんが、毎年導入企業が増えている状況ではあります。

日本の会計基準は、日本企業になじみやすいのがメリットといわれていますが、国際的な基準とは異なる部分も多くあります。そのため海外に拠点を持っている企業を中心として、今後さらにIFRSを採用する企業が増える見通しになっているのです。

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コンバージェンスとアドプションの違い

IFRSの導入には「コンバージェンス」と「アドプション」といった2つのアプローチがあります。

種類 特徴
コンバージェンス
  • 自国の会計基準にIFRSを取り込むアプローチ
  • 会計基準の設定主体は自国
アドプション
  • IFRSそのものを自国の会計基準として採用するアプローチ
  • 会計基準の設定主体は国際会計基準審議会 (IASB)

これまで日本や米国においては、自国基準とIFRSとの差異を縮めることで同様の会計基準を実現する「コンバージェンス」が進められてきました。

昨今ではEUをはじめとして中国やカナダ、オーストラリアなど、IFRSの導入が世界100か国を超える流れを受けて、日本や米国の対応は「アドプション」に変化してきています。

IFRSの特徴

電卓とノート

IFRSの特徴は大きく分けて次の3つです。

  • 原則主義の採用
  • 貸借対照表の重視
  • 注記開示量が多い

原則主義の採用

IFRSは日本の基準のように、会計処理方法を細かく規定する細則主義ではなく、考え方の指針や原理・原則だけを示す「原則主義」を採用しているのが特徴です。

その理由は採用する国々の法制度が異なる場合でも導入しやすく、国によって柔軟な解釈を可能にするためといわれています。おおまかなルールや解釈の指針だけを示すことによって、より多くの国に採用されるようにしているわけです。

原則主義では考え方の指針や原理・原則を示すだけにとどまるので、細かなルールが存在しません。そのためIFRSを適用する各企業は、考え方をよく理解して「会計方針」を作成する必要があります。

貸借対照表の重視

財務諸表の中で、特に貸借対照表(バランスシート)を重視しているのもIFRSの特徴です。これはIFRSが「資産負債アプローチ」と呼ばれる考え方を指針としており、投資家に対して将来のキャッシュフローの現在価値を明らかにするのを重視しているためといわれています。

一方、日本の会計基準は損益計算書を重視しており、会計期間中の損益を投資家に明示することを主な目的としています。投資家に対してどのような情報を提供するべきか、ベースとなる考え方が違っているわけです。

注記開示量が多い

IFRSは注記開示量が多い特徴があります。原則主義を採用していることから、会計方針を注記として開示するように義務付けられているのです。詳細なルール設定がなされていないため、数値に対する内訳も説明しなければなりません。

注記とは

注記とは決算書を読み解く際の参考内容を補足するものです。たとえば資産の評価や減価償却、引当金の計上などの方法や、会計方針の変更内容やその理由を記載します。

IFRSと日本会計基準の違い

書類を通じて握手を交わすビジネスマン

IFRSと日本会計基準では次のような違いがあります。

項目 IFRS 日本会計基準(J-GAAP)
会計処理の考え方 原則主義 (プリンシプル・ベース) 規則主義 (ルール・ベース)
収益認識基準 時価評価 実現主義、収益が実現した段階で計上
重視する財務諸表 貸借対照表 (企業価値重視) 損益計算書 (業績重視)
税務への配慮 なし あり
のれん 非償却 20年以内に定額償却
固定資産の耐用年数 企業が予定する固定資産の使用期間 法人税法における耐用年数

IFRSと日本会計基準においては会計処理の考え方や収益の認識基準などが異なります。

またIFRSでは貸借対照表をベースとして企業価値を重視する「資産負債アプローチ」を取っています。一方で日本会計基準では損益計算書を重視しており、業績重視の「収益費用アプローチ」を採用しています。

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IFRSを導入するメリット

グラフ

IFRSを導入するメリットは次の3点があげられます。

  • 資金調達方法の多様化
  • 海外子会社との連携強化
  • 国際取引で財務諸表をそのまま使用可能

資金調達方法の多様化

IFRSを導入すれば、資金調達の幅が広がる効果が期待できます。

これは「世界基準」の会計基準であるIFRSを採用することで、海外の投資家にとって財務諸表の透明性をアピールできるためです。海外企業や海外投資家にとっては、国際的な基準であるIFRSの方が、日本独自の会計基準よりも理解しやすいのは間違いありません。

財務状況の把握など海外の投資家にとって投資しやすい環境が整うため、国内に依存しない資金調達の実現可能性が高まります。

海外子会社との連携強化

海外子会社と同様の会計基準で財務情報を均一化できることから、国内親会社との連携強化の効果も見込めます。各国の制度に依存せず、それぞれの差異を考慮する必要性がなくなるため、会計における認識のズレも防ぐことが可能です。

財務状況の正確な把握は運営方針の策定にも役立つでしょう。

国際取引で財務諸表をそのまま使用可能

IFRSを導入すれば、国際取引の際に財務諸表をわざわざ書き換える必要もありません。日本基準から相手国の会計基準に合わせて資料を変換(コンバージョン)することなく、そのまま使うことができます。

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IFRSを導入するデメリット

PCをマウスで操作する男性

IFRSの導入はメリットばかりでなく、いくつかのデメリットも考えられます。

運用までに時間と費用がかかる

IFRSの導入から運用までには時間がかかります。制度が難解なだけでなく、現状の会計基準からの変更に伴ったシステムの変更や、担当者への教育コストなども必要となるでしょう。

また時間だけでなく、移行に関する外部のアドバイザー費用やシステムの変更対応、追加の監査報酬など、多額の費用が必要となるケースが多いです。

財務報告時の変換が必要

連結計算書類をIFRSに基づいて作成した場合でも、会計法上、個別財務諸表については日本会計基準で作成・開示する必要があります。そのため、担当者は財務報告の際に複数帳簿を完備しなければなりません。

また日本会計基準で作成した個別財務諸表は連結時にIFRSに変換しなければならず、担当者はそのぶんの労力と時間を必要とします。

事務処理コストの増加

IFRSでは原則主義を取っているため、説明責任を果たすための注記を大量に記す必要があります。また規定を改正する頻度も高いため、事務処理コストが日本会計基準と比較して増加するのです。

IFRSの導入方法

パソコンで作業する男性

IFRSの導入は次の流れにしたがって行います。

  1. 計画書の作成
  2. 会計方針の決定とモデル財務諸表の作成
  3. 運用の開始と計画の修正

計画書の作成

まずはじめに適用時期を決めて、計画書を作成します。

適用時期を決定したあとは人材の教育やグループ全体の業務標準化を推進して行いましょう。会計基準の差異や、既存の業務・システムへの影響範囲も把握が必要です。

会計方針の決定とモデル財務諸表の作成

計画書に則って会計方針の文書化や、モデル財務諸表の試作を実行します。モデル財務諸表の試作は、準備段階後半から導入初期にかけて行うとよいでしょう。また財務諸表本体の数値だけでなく、注記情報の元となるデータも集めなければなりません。

運用の開始と計画の修正

構築した新システムに基づいて運用を開始し、浮き彫りとなった問題点は修正します。新しい体制で業務を行い、実務として定着させていきましょう。

グローバル化を考えているならIFRSの採用検討を

PCで作業をするビジネスウーマン

EUを中心に普及が進んでいるIFRSの特徴と、日本の会計基準との違いを解説しました。IFRSを採用する企業は世界中で増えているものの、日本では採用している企業が少ないのが現状です。

しかし海外に子会社を持っている企業や、海外企業との取引を積極的に進めている企業を中心に、徐々に採用が広がっています。今後、海外進出する予定の企業は、ぜひこの機会にIFRSの理解を深めておきましょう。メリットとデメリットを理解し、自社のビジネス環境にあった会計基準を選択することが重要です。

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