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企業会計原則とは?7つの基本原則についてもわかりやすく解説

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最終更新日: 2024年03月04日

企業会計原則とは何か、どのような原則なのか知りたいのではないでしょうか?企業会計原則とは、すべての企業が従うべき会計の指針です。

この記事では企業会計原則の基礎とも言える、7つの基本原則と重要性の原則について解説します。

企業会計原則とは?

企業会計原則とは
企業会計原則とは

企業会計原則とは何か、破ったらどうなるのか、どのような原則で構成されているのかについて解説します。

全ての企業が従うべき会計の指針である

企業会計原則とは企業会計の最高規範であり、全ての企業が従うべき会計の指針です。

企業会計の実務において慣習として発達したものの中から一般に公正妥当だと認められた事項をまとめたものであり、会計公準の範囲内でこうするべきであるという指針を示しています。

企業会計は基礎となる「会計公準」、具体的な行動規範が示されている「会計原則または会計基準」、具体的な会計処理を取り扱っている「会計手続き」の3つから構成されています。

企業会計原則を破ったらどうなる?

企業会計原則自体は、法令ではないため法的な拘束力のあるものではありません。

企業会計原則の前文には、以下の文章があります。

企業会計原則は,企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから,一般に公正と認められたところを要約したものであって,必ずしも法令によって強制されないでも,すべての企業がその会計を処理するのに当って従わなければならない基準である.

「法令によって強制されない」という表記があるように、法的な拘束力がないことが分かります。

一方、会社法第431条には、以下のように書かれています。

株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。

企業会計原則は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」のひとつと考えられています。つまり、企業会計原則に従わなければ、会社法第431条違反となる可能性があるということです。

上記のように、会社法をはじめとしたさまざまな法律は、企業会計原則を前提としていることが多く、企業会計原則を順守していない場合には、結果として法令違反となる場合もあります。

企業会計原則の構成

企業会計原則は、主に一般原則・貸借対照表原則・損益書原則の3つから構成されています。加えて、重要性の原則について書かれた企業会計原則注解もあります。

「一般原則」の概要

一般原則は、企業会計全般に対する理念や理想など、包括的な指針が書かれた原則です。包括的原則とも呼ばれています。

貸借対照表と損益計算書を作成する際の基本的な考え方が書かれており、貸借対照表原則・損益書原則の前提原則と言えるでしょう。

「貸借対照表原則」の概要

損益計算書原則は、損益計算書における費用と収益を、どのように会計処理するべきか、どのように表記すべきかが書かれた原則です。

以下の9つの項目で構成されています。

  • 損益計算書の本質
  • 損益計算書の区分
  • 営業利益
  • 営業外損益
  • 経常利益
  • 特別損益
  • 税引前当期純利益
  • 当期純利益
  • 当期未処分利益

「損益書原則」の概要

貸借対照表原則は、貸借対照表における資産・負債・資本を、どのように会計処理するべきか、どのように表記すべきかが書かれた原則です。

以下の5つの項目で構成されています。

  • 貸借対照表の本質
  • 貸借対照表の区分
  • 貸借対照表の配列
  • 貸借対照表の分類
  • 資産の貸借対照表価額

「企業会計原則注解」の概要

企業会計原則の注解では、以下のような内容と、上記原則の補足説明が書かれています。

  • 重要性の原則の適用について
  • 重要な会計方針の開示について
  • 重要な後発事象の開示について
  • 注記事項の記載方法について

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一般原則とは?7つの基本原則を押さえよう

一般原則とは?7つの基本原則を押さえよう
一般原則とは?7つの基本原則を押さえよう

企業会計原則の一般原則は、7つの原則で構成されています。

それぞれの原則の内容と、注解で書かれている重要性の原則について解説します。

【一般原則】真実性の原則

企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

真実性の原則は、企業会計原則の基礎と言える原則です。虚偽の申告ではなく、真実の申告が求められています。

真実性の原則で書かれている「真実性」とは、相対的な真実を指します。

会計処理においては、複数の会計処理から選択することが可能です。例えば、固定資産を減価償却する場合に、定額法と定率法のどちらを用いても問題はありません。固定資産の耐用期間をどのように見積もるかなどについても、企業ごとに適した方法を採用することが認められています。

一方、会計処理の方法が異なる場合、財務諸表に表記する数値や項目も異なります。10万円の備品を購入したときに、固定資産とするか消耗品費とするかで計上する項目が異なりますが、10万円の備品を購入したという事実は変わりません。つまり「数値」という絶対的な真実は会計方法によって変化しますが、相対的な事実は変わらないということです。

真実性の原則においては、特定の会計方法を要求していません。企業ごとに適切な処理を行うことが重要です。

【一般原則】正規の簿記の原則

企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

正確な会計帳簿とは、網羅性・検証可能性・秩序性の3つの要素が備えられたものです。

網羅性 すべての取引を網羅して記録すること
検証可能性 客観的な証拠により検証できる事実を記録すること
秩序性 すべての取引を秩序のある形式で記録すること

上記の3つを備えた会計帳簿は、複式簿記です。日々の取引を決まったルールで記録する簿記には、単式簿記と複式簿記の2種類があります。複式簿記は、取引で発生したお金の増減と原因を、借方と貸方に分けて記録する仕組みです。一方、単式簿記は複式簿記を簡略化したものです。

企業会計において単式簿記が認められていないわけではありませんが、網羅性・検証可能性・秩序性を備えた複式簿記が採用されています。

また、企業会計原則の注解には、重要性の低い事項については、単式簿記のような簡便な方法で処理しても、正規の簿記の原則に従った処理として認められると書かれています。

つまり、正規の簿記とは複式簿記だけを指すのではありません。単式簿記を含めて正確な会計帳簿を作成することが重要です。

【一般原則】資本取引・損益取引区分の原則

資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

用語の意味は以下の通りです。

資本取引 資本を直接変動させる取引
損益取引 資本を運用することで発生する取引
資本剰余金 株式の取得や増資などで増加もしくは減少するお金
利益剰余金 商品の売買などで得られた利益のうち、社内に留保するお金

資本取引と損益取引を区別する必要があるのは、株式の発行や増資などによる資本の増加もしくは減少と、資本を運用することによる資本の増加もしくは減少を区別するためです。

株式を取得した株主から支払われたお金と、商品の取引で得られたお金では、同じお金でも性質が異なります。会社の財政にかかわるお金なのか、業績にかかわるお金なのかを区別するために、資本取引と損益取引の区別は必要です。

資本剰余金と利益剰余金を混同してはならない理由は、資本剰余金の目的が会社の維持であるのに対し、利益剰余金の目的が株主への配当であるからです。

貸借対照表における純資産の部では、資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金に分類され、利益剰余金は利益準備金と任意積立金、繰越利益剰余金に分類されます。貸借対照表に適切に表記するためにも、間違って理解しないようにしましょう。

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【一般原則】明瞭性の原則

企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

投資家や金融機関は、財務諸表を読むことで企業の状態を確認し、投資先として妥当かを判断しています。財務諸表が分かりやすく表記されていなかったり、重要な事項が表記されていなかったりすれば、判断を誤ってしまうかもしれません。必要な情報を、適切な方法で過不足なく表記することが明瞭性の原則です。

明瞭表示のための具体的な方法として、「明瞭表示」と「適切開示」の2つがあります。

明瞭表示とは財務諸表を見やすくすることで、適切開示とは財務諸表に含まれない重要な事実を注記として開示することです。

注解の中では、明瞭性の原則に対して、重要な会計方針や後発事象などの情報開示が必要であると補足説明されています。

重要な会計方針とは、以下のようなものです。

  • 有価証券の評価基準及び評価方法
  • 棚卸資産の評価基準及び評価方法
  • 固定資産の減価償却方法
  • 繰延資産の処理方法
  • 外貨建資産、負債の本邦通貨への換算基準
  • 引当金の計上基準
  • 費用・収益の計上基準

重要な後発事象の例として、以下のようなことが考えられます。

  • 火災、出水等による重大な損害の発生
  • 多額の増資又は減資及び多額の社債の発行又は繰上償還
  • 会社の合併、重要な営業の譲渡又は譲受
  • 重要な係争事件の発生又は解決
  • 主要な取引先の倒産

【一般原則】継続性の原則

企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

企業会計においては、複数の会計処理が認められています。一例を挙げると、固定資産の減価償却においては、定額法か定率法のどちらを選択しても問題ないということです。

ただし、始めに定額法で計上したら、翌年以降も毎期定額法で計上する必要があります。企業の都合で定額法から定率法へ変更することは認められません。一度選択した会計処理を、継続して採用し続けることが継続性の原則です。

継続性の原則が定められている理由は、以下の2点です。

  • 企業外部の利害関係者が誤った判断を下さないようにするため
  • 企業の決算書を期間比較しやすくするため

毎期、異なる会計処理で財務諸表を作成することは、利益操作にも繋がります。固定資産の減価償却費を定額法から定率法へ変更することで、費用を多く計上し利益を少なくすることが可能です。

上記のように、会計処理を恣意的に変更することで企業が利益を操作すれば、企業外部の利害関係者が誤った判断をする恐れがあります。

また、会計処理を毎期変更すると、決算書の期間比較が正確に行えなくなるという問題も発生します。

【一般原則】保守主義の原則

企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

保守主義の原則の分かりやすい例は、貸倒引当金の設定です。掛け取引においては、相手が倒産すれば債権を回収できない可能性があります。

貸し倒れというリスクに対して、貸倒引当金の設定という備えを行うように義務付けているのが、保守主義の原則です。

ただし、過度な保守主義には注意する必要があります。貸倒引当金を多めに計上した場合、税務上の損金として認められない可能性があるので注意しましょう。

【一般原則】単一性の原則

株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

財務諸表は、株主総会や金融機関、税務署など、提出先によって異なる形式で作成することがあります。

単一性の原則では、提出先に応じて財務諸表の形式を変えることは認めています。しかし、企業の都合によって本来の事実とは異なる内容の財務諸表を作成することは認められません。形式の異なる財務諸表を複数作成する場合でも、同じ会計帳簿から作成する必要があります。つまり、2重帳簿や裏帳簿を作成してはならないということです。

【注解】重要性の原則

企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

重要性の原則では、以下のような項目の中で重要性が低い事項については、簡便な会計処理を認めています。

  • 消耗品や備品
  • 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益
  • 引当金
  • 引取費用、関税、買入事務費、移管費、保管費等の付随費用
  • 分割返済の定めのある長期の債権又は債務

消耗品や備品は会社の資産なので、本来は棚卸資産として扱うべきものです。しかし、購入金額が安く、重要性が低い消耗品や備品については、資産として計上するのではなく、購入時に費用として計上することが認められています。具体的な例は、20万円未満の消耗品や備品を、一括償却資産として経費処理する場合です。

重要性の原則の適用例

重要性が低い項目 認められること
消耗品や備品 購入時・支払い時に費用として処理できる
前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益 経過勘定項目として処理しなくても良い
引当金 計上しない
引取費用、関税、買入事務費、移管費、保管費等の付随費用 取得原価に算入しない
分割返済の定めのある長期の債権又は債務 固定資産又は固定負債として表示する

企業会計原則を押さえて適切な会計処理を行おう

企業会計原則を押さえて適切な会計処理を行おう

公正妥当な会計処理を行うためには、企業会計原則を押さえておくことが大事です。会計担当者だけでなく、経営者にとっても重要な原則となっています。社会からの信頼を得るためにも、企業会計原則を押さえて適切な会計処理を行いましょう。

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