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個人事業主の所得税について計算例や納付方法を詳しく解説!

最終更新日: 2023年02月16日

個人事業主は、勤務先から源泉徴収されるサラリーマンと異なり、所得税を自分で計算して期限までに納税しなければなりません。

個人事業を始めたばかりで「どの程度の所得税を納めなければならないのか」「計算方法や納付方法などがわからない」など、不安をお持ちの方もいるでしょう。

そこで今回は、個人事業主の所得税について詳しく解説します。所得税の計算方法や納付方法が気になる方はチェックしてください。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

 

個人事業主が納める所得税とは

個人事業主が納める所得税とは
個人事業主の所得税は総収入から経費や各種控除を差し引いた金額

個人事業主は一定額以上の所得を得たら、確定申告で所得税を申告しなければなりません。また、個人事業主には所得税以外にも納める税金があります。詳しくみていきましょう。

所得税とは

所得税とは、毎年1月1日から12月31日までに得た所得にかかる税金です。個人事業主であれば、総収入から経費や所得控除を差し引いた金額に所得税が課されます。総収入とは売掛金を含む売上や未収入金などの合計額です。所得税の計算は収入ではなく、経費や所得控除を差し引いた「課税所得」によって算出されます。

個人事業主の所得税は、原則として毎年2月16日から3月15日まで1ヶ月の間に確定申告しなければなりません。

「収入」と「所得」の違い

収入とは1年間で得たお金の総額を指します。一方、収入から経費を差し引いた金額が所得です。所得税は所得に対して課されます。

所得の区分

個人事業主は確定申告で支払う所得税算出のために、まずは所得の種類を明らかにする必要があります。所得の種類はその性格によって分けられ、所得区分は以下のとおり全部で10種類です。

  • 利子所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得

所得の種類によって所得税の計算方法が異なります。計算方法を大きく2つに分けると、1年間でその人が手にした所得の合計に対して課税する総合課税方式と、他の所得とは合算せず所定の税率を課す分離課税方式です。

所得税以外に個人事業主が納める税金

個人事業主の納める税金は所得税だけではありません。条件によっては、下記の税金を納める必要があります。

住民税

住民税は居住している市区町村に納める税金であり、所得税の確定申告書に記載した内容によって自動的に計算されます。自治体から送付される納税通知書に基づいて一括払い、または4回の分割払いで納めますが、いずれによるかで税額の違いはありません。

個人事業税

年間290万円以上の事業所得を得た個人事業主に課され、都道府県に納める地方税です。指定された業種によって税率に違いがあり、所得税の確定申告書をもって個人事業税の申告書も提出されたとみなされます。

消費税

物品やサービスを販売した際にかかる税金です。個人事業主の場合は小規模事業者の納税義務の免除により、前々年(基準期間)の課税売上金額が1,000万円以下の場合は消費税の納税義務が免除されます。

所得税の計算方法

所得税の計算方法
2037年までは復興特別所得税の計算も必要

所得税は総収入から必要経費や所得控除を差し引いて計算します。とくに、所得控除にはさまざまな種類があり、自分に当てはまるかをしっかりと確認しなければなりません。また、所得税のほか2037年までは復興特別所得税を納める必要があります。所得税と復興特別所得税の計算方法をみていきましょう。

所得税の計算式

個人事業主の所得税は、下記の計算式で算出します。

所得税額=(総収入金額-必要経費-青色申告特別控除額-所得控除額)×所得税率-課税所得金額に応じた控除額

また、2011年に発生した東日本大震災の復興財源の確保として、2013年から2037年まで「復興特別所得税」が課されます。税率は2.1%ですが、所得ではなく所得税額から計算されるため注意してください。

復興特別所得税=所得税額×2.1%

では、所得税額の計算式で使用する項目について詳しくみていきましょう。

収入から必要経費を差し引く

事業で収入を得るために生じた費用が必要経費です。商品の仕入代金や水道光熱費、通信費など科目は多岐にわたり、多くの経費を計上するほど課税所得を減らして節税になります。

関連記事:個人事業主の必要経費とは|車や家賃も経費で落とせる?

所得控除を差し引く

さまざまな個人の事情を考慮して、税の負担を調節しているのが所得控除です。扶養家族の人数に応じた控除や多額の医療費を支払った際の医療費控除など、適用条件によって一定額を控除できます。

所得控除一覧

個人が適用可能な所得控除の種類は全部で以下の15種類です。申告しなければ適用を受けられないため、当てはまるものが無いか事前にチェックしておきましょう。

控除の種類 概要 控除の金額
配偶者控除 納税者に配偶者がいる場合、合計所得金額が納税者本人が1,000万円以下、配偶者が48万円以下であれば受けられる控除 一般配偶者は納税者の所得額に応じて13万円~38万円、配偶者が70歳以上の場合、16万円~48万円
配偶者特別控除 納税者に配偶者がいる場合、合計所得金額が納税者本人が1,000万円以下、配偶者が48万円超133万円以下であれば受けられる控除 1万円~38万円
扶養控除 納税者に扶養親族がいる場合に適用可能な控除 扶養親族の年齢や同居の有無等に応じて、38万円~63万円
医療費控除 納税者が自分と、自己と生計を一にする配偶者や親族の医療費を支払った場合に、一定の金額を越えれば受けられる控除 医療費の合計額から、保険金等で充当された金額と10万円を差し引いた額
社会保険料控除 納税者が自分と、自己と生計を一にする配偶者や親族の社会保険料を負担した場合に受けられる控除 実際に支払った金額の全額
生命保険料控除 納税者が生命保険料・個人年金保険料・介護医療保険料を支払った場合に適用できる控除 一つの種類につき最大4万円
地震保険料控除 納税者が地震保険料を支払った場合に適用可能な控除 最大5万円
小規模企業共済等掛金控除 納税者が小規模企業共済の掛金や個人型確定拠出年金の掛金を拠出した場合に適用可能な控除 実際に支払った掛金の全額
寄付金控除 納税者が国や自治体・特定公益増進法人に対して、特定寄付金を支払った場合に受けられる控除 年内に拠出した特定寄付金の合計額、もしくは総所得金額等の40%相当額のうち低い金額から2,000円を差し引いた額
障害者控除 納税者、または同一生計配偶者や扶養親族が所得税法上の障害者に該当する場合、受けられる控除 障害者の区分に応じて、27万円~75万円
ひとり親控除 婚姻関係並びに事実上婚姻関係と同様の事情と認められる人がおらず、生計を一にする子供が存在し、年間の合計所得金額が500万円以下の場合、受けられる控除 35万円
寡婦控除 夫と離婚した後婚姻をしておらず扶養親族がいる人や、死別後に婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の場合に受けられる控除 27万円
勤労学生控除 納税者自身が勤労学生である場合に受けられる控除 27万円
雑損控除 災害や盗難・横領によって資産に損害を受けた場合に受けられる控除 損失額から総所得金額等の10%を差し引いた額、もしくは損失額のうち災害関連支出の金額から5万円を差し引いた額の多い方
基礎控除 納税者本人の合計所得金額が2,500万円を越える場合を除き、適用可能な控除 所得の額に応じて最大48万円

青色申告特別控除

個人事業主で一定の条件を満たせば、青色申告特別控除を受けられます。青色申告とは事業所得・不動産所得・山林所得を得ている人が利用する確定申告です。一方、白色申告はおもに給与所得者が給与以外の所得を得たときや、控除を適用させたいときに利用します。

青色申告特別控除とは青色申告を利用している人が受けられる控除であり、複式簿記で記帳をおこなう場合は控除額55万円(e-Taxで申告する場合は65万円)、簡易的な帳簿づけをおこなう人は10万円の控除を受けられる制度です。

所得税率を掛けて所得税額を算出する

総収入から必要経費と所得控除を差し引いたら、所得税の速算表で適用される税率と対応する控除額から所得税額を計算します。

所得税の速算表
所得税の速算表 出典:No.2260 所得税の税率|国税庁
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

税額控除を差し引く

個人事業主が所得控除以外に適用を受けられる控除として税額控除があります。所得控除は控除の対象が課税所得である一方、税額控除は所得税額から控除されるのが相違点です。つまり、所得控除では控除額の一部分が、税額控除では控除額がそのまま減税となります。そのため、所得控除より税額控除の方が一般的には節税効果が高いです。

税額控除の種類としては、配当所得の一定割合を控除する配当控除や外国で生じた所得がある場合に控除を受けられる外国税額控除等があります。税額控除も所得控除と同様、自分で申告しなければ適用を受けられないので注意してください。

復興特別所得税額を計算する

個人事業主は確定申告の際に、所得税だけでなく復興特別所得税も合わせて納付する必要があります。

復興特別所得税は東日本大震災の復興のために新たに創設された税金で、課税される期間は2037年までです。納税者全てが支払う必要があり、基準所得税額に2.1%をかけて算出されます。基準所得税額とは所得税額から配当控除などを引いた後の金額です。計算にあたり端数が生じた場合は、その端数を切り捨てる形になります。

源泉徴収されている場合

これまで支払った源泉徴収の金額が実際に支払うべき所得税額より少なければ不足額を納付し、逆に越えていれば差額分を還付金として受け取ることができます。

源泉徴収とは事業者があらかじめ所得税を納税者の代わりに納める制度です。原稿料や講演料などを個人事業主が受け取る場合、クライアントが報酬を支払う際に報酬額の10.21%(100万円を超える部分は20.42%)の金額を源泉徴収しています。

源泉徴収は所得税の前払いであり、実際の所得税額は年度末を迎えないと確定しません。このため、年度内に源泉徴収された金額をきちんと記録しておきましょう。ちなみに所得税額は、国税庁の早見表を利用すれば金額を出せます。

個人事業主の所得税シミュレーション

個人事業主の所得税シミュレーション
所得税の速算表と照らし合わせて税率と控除額を確認しよう

では、個人事業主の所得税をシミュレーションしてみましょう。事業を手伝っている配偶者と二人暮らしを想定し、そのほか下記を条件とします。

  • 総収入:500万円
  • 必要経費:100万円(配偶者への給与月額5万円を含む)
  • 社会保険料控除:年間59万円
  • 基礎控除:48万円
  • 青色申告特別控除:65万円

はじめに課税所得額を計算します。総収入の500万円から必要経費・社会保険料控除・配偶者特別控除・基礎控除・青色申告特別控除の額を差し引きます。

総収入500万-必要経費100万円-社会保険料控除59万円-基礎控除48万円-青色申告特別控除65万円=228万円

課税所得金額が228万円ですから、所得税の速算表に照らし合わせて「195万円を超え330万円以下」の税率10%と控除額97,500円から所得税を計算します。

所得税の速算表
所得税の速算表 出典:No.2260 所得税の税率|国税庁
所得税額:課税所得額228万×税率10%-97,500円=130,500円

復興特別所得税も納める必要があるので、税率2.1%を掛けて算出します。

復興特別所得税:130,500円×税率2.1%=2,700円(100円未満切り捨て)

したがって、このケースで納める所得税額は復興特別所得税とあわせて、133,200円となります。

個人事業主は所得税をいつ払う?

個人事業主は所得税をいつ払う?
所得税の納付期限はおおむね毎年2月16日から3月15日の1か月間

個人事業主の所得税は確定申告期限内に納めなければなりません。おおむね毎年2月16日から3月15日が納付期限です。確定申告の提出方法や所得税の納付方法、仕訳の方法を解説します。

確定申告の時期

確定申告の時期は、毎年2月16日から3月15日と定められています。ただし2月16日や3月15日が土日祝日の場合は、次の平日が開始日または最終日です。

つまり、2022年1月1日から2022年12月31日に生じた個人事業主における所得税の確定申告は、2023年2月16日から3月15日の間に行う必要があります。

期限を過ぎると無申告加算税や延滞税など追徴税が生じる危険があるので、確定申告書は早めに準備するようにしてください。

確定申告の方法

確定申告書の提出方法には、以下の3つの方法があります。

  • 税務署の窓口で提出する
  • 税務署へ郵送する
  • e-TAX(国税電子申告・納税システム)を利用して電子申告する

税務署へ持参する場合は、時間外であれば税務署のポストに投函できます。また、近年国税庁が推進しているのがe-TAXでの納税です。令和2年分以後の青色申告特別控除については65万円の要件を満たしていても、e-TAXで電子申告しない場合は55万円に減額されることが決定しています。

所得税の納付方法

個人事業主の所得税納付方法は、以下の6パターンに分かれます。

  • 現金納付:納付書を添えて、期限までに所轄税務署もしくは金融機関で支払う方法
  • 振替納税:金融機関を指定し、口座引き落としで納税する方法
  • 電子納税:預貯金口座からの振替、もしくはインターネットバンキング等から納税する方法
  • クレジットカード納付:専用サイトで手続きして、手持ちのクレジットカードで納付する方法
  • スマホアプリ納付:専用サイトで手続きして、スマホアプリからPay払いで納付する方法
  • コンビニエンスストア納付:国税庁のサイトから出力したQRコード、または税務署から交付されたバーコード付き納付書のどちらかを使い、コンビニの窓口で納付する方法

個人事業主の税金納付スケジュール

個人事業主の税金納付スケジュール
個人事業主の税金納付スケジュール

個人事業主が支払う必要がある税金は所得税だけではありません。一般的には「所得税」「住民税」「個人事業税」「消費税」の4つを支払う必要があります。そして、それぞれ納税時期が異なるので、スケジュールの把握が必要です。個人事業主が税金をいつ払うのか、納税における注意点などを解説します。

所得税

所得税は1月1日から12月31日までに生じた所得に対して課せられる税金です。個人事業主は事業により所得を得ているので、事業所得等の申告が必要になります。所得税の納付期間は、原則、毎年2月16日から3月15日の間です。

「予定納税」に注意

当年分の所得税を前納する予定納税が必要な人もいるので注意してください。前年分の確定申告で納税額が15万円を越えた人は、予定納税の義務が発生します。予定納税の義務者は、第一期分として7月中に、第二期分として11月中に、予定納税額を納付しなければなりません。この金額はあくまでも前年度の納税額を元にした予定額なので、確定申告を行ない、実際の納税額を確定させる必要があります。

住民税

住民税は所得税とは異なり地方税の一種で、住所地を管轄する自治体に納付の必要がある税金です。住民税の金額は確定申告で申告した所得額をもとに自治体が算出し、だいたい課税所得の1割程度が年間に支払う住民税額となります。

支払時期は年4回に分かれ、納付期限は第一期が6月末、第二期が8月末、第三期が10月末、第四期が来年1月末です。自治体によっては一括前納を行なえば割引されるケースもあるので、気になる個人事業主の方は納税前に自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

個人事業税

所得税とは異なり、個人事業主のみが対象の税金が個人事業税になります。個人事業税がかかる業種は法律で定められており、課税所得に対して3~5%の税率です。ほとんどの業種で個人事業主は支払う必要がありますが、執筆業等いくつか対象外の事業もあります。

個人事業税は年2回納付の必要があり、8月末と11月末が納付期限です。個人事業税の算出における所得は住民税の課税所得と異なり、収入から必要経費や、事業専従者控除などの各種控除、290万円の事業主控除を差し引いた後の金額となります。

消費税

消費税の納付期間は翌年の1月1日から3月31日までで、国に対して納付します。

消費税支払の対象になるかどうかは過去の売上で判断し、具体的には2年前もしくは1年前の上半期における売上が1,000万円以上だった場合、消費税を納めなくてはいけません。言い換えると、所得税とは違い、開業1年目や売上が大きくない事業者は消費税の支払義務が免除されます。

消費税の算定方法は、消費者から受け取った消費税から仕入れ等で支払った消費税を差し引く原則課税方式と、みなし仕入れ率を用いて手続きを簡素化する簡易課税方式の2方式です。

「中間申告」に注意

消費税では中間申告制度が存在し、対象者は中間申告と納税の義務があります。中間申告とは、簡単に言うと確定申告で金額が確定する年税額を前払いしているイメージです。このため、中間申告で消費税を納めたなら確定申告の際にその分が控除されます。

消費税の中間申告が必要な人は、直前の課税対象期間において確定消費税額が48万円を越える場合です。また、直前の消費税納税額に応じて、中間申告の回数が異なります。400万円以下なら年1回、400万円超4,800万円以下なら年3回、4,800万円越なら年11回です。

中間申告の納付期限は原則、各中間申告の対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内になります。所得が4,800万円を越えているなら、毎月申告を行う必要があるので納付漏れが無いよう注意しましょう。

個人事業主は納めた所得税を経費にできる?

個人事業主は納めた所得税を経費にできる?
個人事業主は納めた所得税を経費にできる?

中には支払うべき所得税を経費にして課税所得を減らしたいと考える人もいるかもしれません。個人事業主の節税方法として経費を増やすのは王道です。特に、予定納税で前納した場合は実際にお金が無くなっていますから、経費にしたいと考える人も多いでしょう。

所得税は経費にならない

所得税は今年度の事業の売上に関係なく支払う税金ですから、経費とはみなされません。個人事業主の経費は、事業に関係ある場合のみ計上して良いとされ、事業との関係性を説明できれば、カフェの飲食代や祈祷代も経費にできる場合があります。中には租税公課といって経費にできる税金もありますが、所得税は対象外です。所得税以外で経費にできない税金には、住民税や相続税、贈与税などがあります。

経費になる税金

所得税は経費にできませんが、個人事業主では事業と関係がある税金なら租税公課として経費に計上できます。租税公課の例は下記の通りです。

  • 事業税
  • 固定資産税
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 自動車税
  • 自動車取得税
  • 自動車重量税

例えば自宅にかかる固定資産税は、単に居宅としてではなく自宅兼事務所に使用している場合、租税公課に算入が可能です。ただし、税額全てが租税公課にできるわけでなく、あくまでも事業に関係する部分しか計上できません。そして、事業に関連する経費の比率を明らかにすることを家事按分と言います。家事按分をするためには、面積や時間など客観的な指標で事業との関連性を示すことが必要です。

所得税を納付した場合の仕訳

個人事業主が所得税を納付した場合、経費には該当せず租税公課として処理できません。一般的には、所得税や住民税を事業用の口座から支払った場合、「事業主貸」勘定を使って仕訳します。

事業主貸は事業用の資金を私的な用途に使用した場合に使われる勘定です。例えば、確定申告で100,000円の所得税を納付した場合、借方に事業主貸100,000円、貸方に普通預金100,000円と記帳します。ちなみに源泉徴収で所得税が徴収された場合も、入金時に控除された金額を事業主貸を使って処理するケースが多いです。

個人事業主が所得税を払えない場合は?

個人事業主が所得税を払えない場合は?
個人事業主が所得税を払えない場合は?

個人事業主は予期せぬ状況で売上が落ちたり損失の補填に追われたりして、所得税を払えない場合もあるでしょう。とはいえ、所得税は原則必ず支払わなくてはいけません。支払が滞ればペナルティを受けることになってしまいます。実は納税の猶予制度を利用すれば、納付期限の延長も可能です。

所得税を払わないとどうなる?

個人事業主が3月15日の所得税納付期限に間に合わないと、延滞税や無申告加算税といった追徴金が課されます。さらに、税務署からの催促に応じなければ財産の差し押さえを受ける可能性も。延滞税は納付期限の翌日から加算され、税率は2ヵ月以内なら年7.3%、それ以降は14.6%と2倍になります。

また、期限後の申告では無申告加算税も支払わなければなりません。税率は納付税額が50万円以内なら15%、50万円を越えると20%です。さらに督促状が国から送付されてから10日以内に税金を完納しなければ財産の差し押さえの可能性もあります。

「納税の猶予制度の特例」を利用する手も

納税の猶予制度の特例は、新型コロナウィルスの影響で、納税が一時的に困難な個人事業主向けに新たにできた制度です。1年間所得税等の納税期限を延長できるので、支払いが難しい方は利用を検討しましょう。

猶予制度の利用は、納税期限から6カ月以内に税務署へ申請書を提出する必要があります。

所得税が0円の個人事業主は確定申告しなくてもよい?

所得税が0円の個人事業主は確定申告はしなくてもよい?
所得税が0円でも確定申告したほうがメリットを受けられる

総収入から経費や所得控除を差し引いた額が0円を下回れば、確定申告する義務はありません。ただ、青色申告では損失を繰り越せるメリットがあるほか還付金を受け取れる場合もあるため、所得税が0円でも確定申告しておくことをおすすめします。

所得を証明できない

給与所得者は源泉徴収票で所得を証明できますが、個人事業主の場合は所得税の納税証明を税務署にて発行してもらう必要があります。そもそも、確定申告書を提出していなければ発行できないため、納税証明書が必要になる際に困るでしょう。所得税の納税証明は下記のような場面で提出を求められます。

  • 住宅ローンなど金融機関から借入するとき
  • 不動産会社と賃貸契約を交わすとき
  • 幼稚園・保育園の申込時
  • 扶養申請や児童手当の申請時

場合によっては確定申告書の控えや課税証明書などで済む場合もありますが、いずれにせよ確定申告を済ませておく必要があります。

赤字を繰り越せなくなる

青色申告では損失が生じて赤字となった場合、以後3年間その損失分を繰り越せます。たとえば、損失を計上した翌年に黒字になった際、前年までの赤字分を相殺できる「繰越控除」を受けられるため節税になるのです。

還付金を受け取ることが出来ない

個人事業主としての事業のほかに、アルバイトなどで収入を得ていることもあるでしょう。その際、源泉徴収されているなら、還付金を受け取れるかもしれません。個人事業の所得税が0円なら、収入金額によっては徴収された所得税が確定申告で戻ってくるのです。

住民税の申告に注意

所得税が0円でも、住民税は申告しなければなりません。住民税には所得に関わらず割り当てられる「均等割額」があり、所得がなくても一定額を納める必要があるのです。確定申告書を提出すれば、自動的に計算されて「住民税決定通知書」が送付されるため、住民税の未納を防げます。

個人事業主が所得税の納税額を減らす(節税する)には

個人事業主が所得税の納税額を減らす(節税する)には
事業を成功させるためにも節税が重要

個人事業主が利益を上げるためには売上も重要ですが、いかに経費や控除を活用して納税額を減らすのかが鍵となります。上手に節税して納税額を減らす方法を確認しておきましょう。

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

まずは計上する経費に漏れがないかどうかを確認しましょう。業務に使っている携帯電話代や自宅兼事務所の家賃・電気代などは家事按分により経費に計上できますので、一度確認してみてください。

青色申告をする

青色申告特別控除や支払った給与を全額経費にできる青色申告専従者給与など、税制上のメリットがある青色申告を利用して節税しましょう。青色申告する際には下記の条件があります。

  1. 確定申告する必要のある人で、事業所得・不動産所得・山林所得のいずかを得ている人
  2. 1の人で前年以前から開業している場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出した人
  3. 1の人で事業を新たに開業する場合は、開業から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出した人

必要経費を漏れなく申告する

個人事業主のメリットのひとつが多くの必要経費を計上できることです。所得税は総収入から必要経費を差し引いて計算されるため、経費を漏れなく計上することが節税につながります。給与所得者では認められない経費を計上できる場合もあるため、おもな経費を確認しておきましょう。

水道光熱費 事業で使用している店舗や事務所などの水道光熱費は全額経費として計上できます。また、自宅を仕事場として使用する場合は、事業として使用している分のみを経費とする「家事按分」によっても計上可能です。
通信費 事業で使用する電話代やインターネット料金、サーバー代など、プライベートで使用していなければ全額経費です。
租税公課 個人事業税や事業で使用する車両の自動車税などの税金、印紙代などです。
消耗品費 事業で使用している事務用品や電球などを経費計上できます。
旅費交通費 電車・バス・タクシー代など移動料金、駐車場料金など、事業で利用した場合は経費として計上可能です。
運賃荷造費 宅配便代や梱包材料の購入代金、送料などを経費計上できます。
利子割引料 運転資金を金融機関から借入した際の金利分は経費計上できます。元本分は計上できません。
減価償却費 パソコンなど一定額を上回る物品の購入代金は、固定資産として計上し、その取得価額を耐用年数にわたって分割して経費計上できます。

小規模企業共済へ加入する

中小機構の「小規模企業共済」の掛金は全額を所得から控除できます。小規模企業共済は小規模企業の役員や個人事業主を対象としており、毎月掛金を積み立てて退職・廃業時に共済金を一括、または分割、一括と分割併用で受け取る制度です。月々の掛金は1,000~70,000円の範囲で自由に設定できるほか、確定申告で全額を所得から控除できるため大きな節税効果を期待できます

たとえば、月々の限度額70,000円を積み立てた場合、1年で84万円を所得から控除可能です。また、1年先の分まで前払いできるため、最高で168万円の控除を受けられます。確定申告の際は「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記入してください。

iDeCo(イデコ)に加入する

iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金の愛称。節税しながら老後資金を自分で準備できる制度であり、原則20歳以上60歳未満で国民年金・厚生年金に加入している人なら誰でも加入可能です。掛金の全額を所得から控除できるため、高い節税効果が期待できます。確定申告の際は「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記入しましょう。

ただ、退職金や年金として受け取れる「老後の資産形成」を目的としており、60歳までは引き出せないため注意が必要です。

経営セーフティ共済に加入する

中小機構の「経営セーフティ共済」は取引業者が倒産した際に、中小企業や個人事業主が経営難に陥るのを防ぐ目的の共済制度です。月々掛金は5,000円から20万円まで自由に設定でき、法人の場合は損金に、個人事業主は経費として計上できます。また、取引業者が倒産した際には、無担保・無保証人で掛金の最高10倍、上限8,000万円まで借り入れられるのもメリットです。

経費として計上する際は「保険料」、または「支払保険料」の勘定科目を使用して仕訳します。他に支払っている保険料があれば、新たに「経営セーフティ共済掛金」という勘定科目を設けて仕訳しても構いません。

借方 貸方
経営セーフティ共済掛金 30,000円 普通預金 30,000円

監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

個人の所得税の確定申告は、会計ソフトや国税庁の確定申告書作成コーナーの指示に従って入力をしていくと、知識があまり無くてもある程度は作成出来ていしまいます。 ただ、全般的な税の知識が無いと、経費を計上し漏れていたり、控除を受け漏れていたりする場合があります。 既にご自身で確定申告をされている方も一度税理士に相談してみても良いかもしれません。

確定申告の相談は税理士へ!

まとめ

個人事業主は所得税を自分で計算して納めなければなりません。適用できる所得控除と必要経費を理解して、所得税を賢く節税しましょう。また、個人事業主が最大限に節税するためには、青色申告は必須です。解説した内容を参考にしていただき、青色申告ならではの税制上のメリットを受けてください。

ただ、事業所得の青色申告は白色申告と比べて書類作成がやや複雑。所得控除や経費を理解せずに作成してしまうと、無駄な税金を納めることになりかねません。確定申告書の作成は税金の専門家である税理士に依頼できます。事業で忙しい場合や書類の用意に不安を感じる方は、税理士のサービスを利用することも検討しましょう

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士CFP🄬)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。