「未払金には何が該当するのか」「似た勘定科目との違いがわからない」などの悩みをお持ちではないでしょうか。
未払金とは商品やサービスの購入代金を後払いで支払う際に使う勘定科目のこと。例えば、事務用消耗品などの未払分が該当します。
「未払金を正しく処理したい」あなたのために、未払費用など似た勘定科目との違いや使い分けのポイント、仕訳の具体例をわかりやすく解説します。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
未払金とは商品やサービスを「後払い」で購入した際に適用する勘定科目
未払金とは、商品やサービスを後払いで購入した際に適用する勘定科目です。継続的な営業取引ではなく「単発取引」から発生した債務が対象です。
例えば営業活動と直接的な結びつきのない「消耗品費の未払い分」や「車などの固定資産の未払い額」などを後払いで購入したケースが該当します。
「後払いをするので、いったん未払金として計上しておく」と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
未払金として処理するための3つの要件
支出を未払金として会計処理するためには、次の3つの要件を満たしていなければなりません。
【未払金として処理するための3つの要件】
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支出がこれら3つの要件にいずれもあてはまる際は「未払金」として会計処理をするのが妥当です。
営業サイクル以外で発生している支出は、例えば事務用消耗品や贈答品などの交際費などが考えられます。
未払金の例
未払金は、以下のものが具体例として挙げられます。
- 固定資産や有価証券の購入代金
- 事務用品や消耗品、備品の未払い分
- 自動車の修理代(後払い)
また代金の月末払いや分割払い、クレジットカードによる購入なども未払金の対象に含まれます。
未払金は貸借対照表では流動負債にあたる
未払金は貸借対照表において「流動負債」の部に計上されます。また貸借対照表日の翌日から「1年以内」に支払期日が到達するものが対象です。「1年を超える」ものについては「長期未払金」として「固定負債」の部に計上します。
【未払金と長期未払金の違い】
未払金 | 決算の翌日から起算して「1年以内」に代金を支払う |
長期未払金 | 決算の翌日から起算して「1年を超えて」代金を支払う |
1年以上支払いが滞っていたり、1年以上にわたって割賦で支払ったりする債務に関しては「未払金」ではなく「長期未払金」として固定負債に計上しましょう。例えば割賦払いの消耗品や車両の購入があてはまります。
流動負債と固定負債のいずれに該当するかで財務分析に影響を及ぼすので、正しい処理が欠かせません。
未払金と未払費用の違い【2つのポイント】
未払金とよく似た性質を持つ「未払費用」との違いは大きく分けて2つあります。
- 役務の提供を継続して受けているかどうか
- 決算時に債務が確定しているかどうか
未払費用とは、サービスへの支払いが「継続的」な後払いになる際に使用する勘定科目です。
役務の提供を継続して受けているかどうか
「未払金」と「未収入金」の違いは「役務の提供を継続して受けているかどうか」といった債務の要因にあります。
1回きりの単発で受けるサービスに対しての支払いであれば「未払金」であり、それに対して継続してサービスの提供を受ける場合には「未払費用」を使用します。
決算時に債務が確定しているかどうか
「未払金」と「未収入金」は「決算時に債務が確定しているかどうか」といった点も異なります。「支払期日が来ているかどうか」と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
ここでいう「決算時」とは「決算月」と言い換えることもできます。つまり会社によって債務確定時期は異なり、3月決算の会社であれば3月時点、5月決算の会社であれば5月です。
この決算時点で支払義務・支払金額が確定していれば「未払金」、支払期日が到来していなければ「未払費用」になります。未払費用で処理するものとしては、地代家賃や支払利息の未払いが挙げられます。
未払金と買掛金の違いは発生要因
未払金と買掛金の違いは「営業サイクルの中で発生したものかどうか」といった「発生要因」にあります。
買掛金とは、取引先から買い入れを行なった代金のうち、未払いのものに使用する勘定科目のこと。例えば外注費の支払いや仕入代金の支払いなどに対して用いるのは「未払金」ではなく「買掛金」です。
未払金が備品消耗品などのいわゆる「販売費および一般管理費」にあてはまるのに対して、買掛金は外注費や仕入れなどの売上原価にあてはまるものになります。
未払金と未収入金の違いは「資産」か「負債」か
未払金と未収入金の大きな違いは「資産」か「負債」かにあります。
未収入金はお金を回収する側であり、例えば「営業とは関係ない不用品を売却したのちに、お金を回収する場合」があてはまります。
つまり「営業とは関係ないものを売ったりサービスを提供したりしているが、まだ代金を受け取っていない場合」に、その未払いの代金に対して未収入金を使用します。自社の未収入金が取引先の未払金に該当します。
また参考までに、未収金は本来の営業活動以外で回収しなければならないお金の時に使用し、営業活動で使用するものには「売掛金」があります。
未払金の計上タイミングは取引を行なった時点
未払金を計上するタイミングは取引を行なった時点です。なぜなら、商品を購入した時点で代金を支払うことが確定しているからです。
よって商品・サービスを購入した時点で、未払金として計上します。また同じ取引先からの購入が単発かつ頻繁に行なわれた場合、自社の締め日にまとめて未払金計上することも可能です。
未払金を消す処理をするのは支払時点
未払金を消す処理は実際に代金を支払った時点で行ないます。代金を支払うことで、購入した商品・サービスの返済義務がなくなり、負債である未払金も消失します。
商品・サービスを購入した時点で未払金として計上し、代金を支払ったタイミングで消し込む処理を行ないましょう。
未払金の年度またぎは税務上問題なし
未払金を年度またぎで計上することも、税務上では問題ありません。民法166条で経費精算には5~10年の時効が定められています。
なお会社の規程を破って年度またぎの経費精算があった場合でも、翌年度の費用として処理するのが一般的です。
未払金の仕訳の具体例
物品を購入した際や有価証券を購入した時など、具体例を交えながら未払金の仕訳例を解説します。購入時と支払時の処理をセットでみていきましょう。
物品を購入した時
クレジットカードを用いて物品を購入した場合の仕訳を紹介します。
<①:クレジットカードで事務用品を11,000円分購入した>
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 11,000 | 未払金 | 11,000 |
<②:翌月、普通預金から代金が引き落とされた>
借方 | 貸方 | ||
未払金 | 11,000 | 普通預金 | 11,000 |
クレジットカードで物品を購入した際に「未払金」を貸方に計上します。その後、支払日に借方に計上して「未払金」を相殺します。「未払金」は支払額を一時的に計上するための科目なので、最終的には0になる科目であることを理解しておきましょう。
有価証券を購入した時
有価証券を購入した場合の仕訳例を紹介します。
<①:有価証券を5万円分購入し、代金の請求を受けた>
借方 | 貸方 | ||
有価証券 | 50,000 | 未払金 | 50,000 |
<②:未払金5万円の支払いをした>
借方 | 貸方 | ||
未払金 | 50,000 | 現預金 | 50,000 |
ここでポイントになるのは「有価証券」という営業活動に関係ないものを購入したことです。また、有価証券の購入は継続的な取引ではなく単発取引です。単発取引の場合は、未払費用ではなく未払金を使用します。
さらに「5万円」という債務金額も確定しています。結果、すべての要件を満たしているので「未払金」以外の科目は妥当ではないと判断できます。
未払いの給与がある時
決算時に未払いの給与がある場合、次期以降に支払うことを見越して「当期の費用」に計上する(費用の見越)ことも可能です。
借方 | 貸方 |
給料手当 | 未払費用(未払給料) |
また未払い給与を当期の費用として計上した場合、翌期首に再振替仕訳をする必要があります。
借方 | 貸方 |
未払費用(未払給料) | 給料手当 |
実際には給料を支払っておらず、一旦仕訳を取り消すために再振替仕訳を行ないます。
ちなみに給与の未払い部分は、実際に支払われるまで源泉徴収を行ないません。ただし役員に対する賞与は、支払いの確定から1年を経過した日までに支払いがない場合、支払われたとして源泉徴収を行なう必要があります。
また年末調整を行なう際に未払い給与が残っている場合、未払い分の給与も支払金額の総額に含めて源泉徴収を行なう必要があります。「給与所得の源泉徴収票」の各欄における書き方については、国税庁のHPを参考にしてください。
未払金がマイナスになったときの処理方法
過払いや計上漏れによって、未払金がマイナスになることがあります。しかし、同一決算期内であれば当月分の費用として計上可能です。もしも期がまたがってしまった場合は、原則として税務署へ提出する申告書の修正申告が必要になります。
マイナスの原因が過払いだったとき
貸借対照表の未払金がマイナスになった際の原因が過払いだったときは、取引先に連絡を入れて返金処理をしてもらいましょう。
またほかにも、次回未払いが発生した際に充当してもらったり、自社に対する未収入金で相殺したりする方法が考えられます。
マイナスの原因が計上漏れだったとき
未払金残高のマイナス要因が過払いではなく計上漏れだった場合、当月の費用として計上するのが実務上では一般的です。
収益と費用は会計上で対応している必要があるため、同一決算期内であればお金を支払ったときに直接費用として計上し、未払金という科目は使用しません。
万一、決算期をまたがってしまった場合は「修正申告をする」「前期修正損益を使用して計上する」という方法があります。利益が大きい企業にとっては法人税の計算の特性上、所得の金額により法人税率が異なるため、手間はかかりますが修正申告をして正しい数字で申告することがベストです。
しかし、繰越欠損金が多額にある企業の場合、納付しなければいけない税金が法人住民税の均等割だけということもあり、当月の費用として計上してしまうこともあります。
この方法は税務調査で「期ずれ」を指摘されますが、税額には影響がないため実務上では最も一般的な方法として適用しています。ただし欠損金があるとはいっても利益額に影響がでますから、長期的な経営計画に影響を及ぼす可能性があります。
【まとめ】未払金の適切な計上で資金繰りの正しい把握を
未払金は直接営業には関係ない取引で発生した費用に対して使用する債務科目です。買掛金や未払費用と正しく区別して仕訳を切ることで、会社の資金繰りを正しく把握できます。
経理担当者でもどの科目が適正か判別することが難しい場合もありますが、会社の発展のため使い分けることが重要です。未払金という勘定科目を正しく使用することで、買掛金の回転率も正確に把握ができるようになるでしょう。
監修税理士からのコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
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この記事の監修税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通