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未払金とは?混同しがちな勘定項目との違いや記帳のやり方をわかりやすく解説

最終更新日: 2024年10月31日

「未払金には何が該当するのか」「似た勘定科目との違いがわからない」とお悩みではないでしょうか。

この記事では、未払金の意味や似た科目との違い、計上の仕方について詳しく解説します。

未払金=後払いの支出に適用する勘定科目

未払金=後払いの支出に適用する勘定科目
未払金=後払いの支出に適用する勘定科目

未払金とは、事業に関わる商品・サービスを後払いで購入した際に適用する勘定科目です。継続的な営業取引ではなく「単発取引」から発生した債務が対象になります。

たとえば「消耗品費の未払い分」や「車などの固定資産の未払い額」を後払いで購入したケースが該当します。これらは持続的な営業の中で発生したものでなく、あくまで単発の取引だからです。

「後払いをするのでいったん未払金として計上しておく」と考えるとわかりやすいでしょう。支払いが完了したあとに未払金を相殺して記帳は完了です。

未払金を適用するための3つの要件

支出を未払金として会計処理するためには、次の3つの要件を満たしていなければなりません。

【未払金として処理するための3つの要件】

  • すでに「物」の納品や「サービスの提供」を受けておりその金額が確定している
  • 継続的な発生ではなく「単発取引」で発生している
  • 持続的な営業サイクル以外で発生している

支出がこれら3つの要件にいずれもあてはまる際は、「未払金」として会計処理をするのが妥当です。

営業サイクル以外で発生している支出は、事務用消耗品や贈答品のような交際費などが考えられます。

未払金が適用される具体例

未払金が適用されるケースとしては、以下が挙げられます。

  • パソコンやマウスなどの備品を後払いで購入した場合
  • クレジットカードで事業に関する消耗品を購入した場合
  • セミナーや勉強会の受講費用を分割払いで支払った場合

特にクレジットカードで決済をすると、多くのケースで未払金に該当することになります。

貸借対照表では未払金は「流動負債」にあたる

未払金は貸借対照表において「流動負債」の部に計上されます。

また貸借対照表日の翌日から「1年以内」に支払期日が到達するものが対象です。「1年を超える」ものについては「長期未払金」として「固定負債」の部に計上します。

未払金と似ている勘定科目との違い

未払金をややこしくしているのが、似たような科目の多さです。

ここでは、未払金と似ている6つの勘定科目について解説します。

未払金と買掛金の違い=「購入した商品の種類」

科目 特徴
未払金 後払いで購入したサービスや消耗品などに対して適用
買掛金 後払いで購入した原材料に対して適用

未払金と買掛金の違いは、購入した商品・サービスの種類です。

買掛金は外注費や仕入れなどの売上原価に適用します。たとえば雑貨屋なら後払いで購入した雑貨代、飲食店なら後払いで購入した食材代が買掛金に該当します。

未払金と未払費用の違い=「支出の継続性」

科目 特徴
未払金 単発のサービスの後払い料金に適用
未払費用 継続的なサービスの後払い料金に適用

「未払金」と「未収入金」の違いは「サービスの提供を継続して受けているかどうか」といった債務の要因にあります。

1回きりの単発で受けるサービスに対しての支払いであれば「未払金」であり、それに対して継続してサービスの提供を受ける場合には「未払費用」を使用します。たとえば車のリース代やオフィスの賃料などは、後払いであっても未払金でなく未払費用です。

未払金と未収入金の違い=「取引先の立場」

科目 特徴
未払金 後払いで購入したサービスや消耗品などに対して適用
未収金 売却したが相手の支払いが後日になる際に適用

未収入金はお金を回収する側であり、例えば「営業とは関係ない不用品を売却したのちに、お金を回収する場合」があてはまります。

つまり「営業とは関係ないものを売ったりサービスを提供したりしているが、まだ代金を受け取っていない場合」に、その未払い代金に対して未収入金を使用します。自社の未収入金が取引先の未払金に該当します。

未払金と長期未払金の違い=「支払期日」

科目 特徴
未払金 決算の翌日から起算して「1年以内」に代金を支払う
長期未払金 決算の翌日から起算して「1年を超えて」代金を支払う

1年以上支払いが滞っていたり、1年以上にわたって割賦で支払ったりする債務は「未払金」ではなく「長期未払金」として固定負債に計上しましょう。たとえば割賦払いの消耗品や車両の購入が該当します。

未払金と前払金の違い=「支払いのタイミング」

科目 特徴
未払金 後払いの費用
前払金 サービスを受ける前に払った費用

サービスを受ける前に支払った費用は前払金を適用します。商品を受け取る前に手付金として費用の一部を支払った場合も前払金が該当します。

未払金と立替金の違い=「立て替えの有無」

科目 特徴
未払金 後払いで購入したサービス費用に適用
立替金 従業員や取引先の支払いを立て替えたときに適用

業務に関わる支出を立て替えた際は立替金を適用します。立て替えた相手は従業員や取引先など、個人・法人を問いません。

立て替えた代金を回収した際に再び記帳を行って調整します。

未払金の計上タイミングは取引を行なった時点

未払金の計上タイミングは取引を行なった時点
未払金の計上タイミングは取引を行なった時点

未払金を計上するタイミングは取引を行なった時点です。商品を購入した時点で代金を支払うことが確定しているからです。

また同じ取引先からの購入が単発かつ頻繁に行なわれた場合、自社の締め日にまとめて未払金計上することもできます。

未払金を消す処理をするのは支払時点

未払金を消す処理は、実際に代金を支払った時点で行います。代金を支払うことで、購入した商品・サービスの返済義務がなくなり、負債である未払金も消失します。

商品・サービスを購入した時点で未払金として計上し、代金を支払ったタイミングで消し込む処理を行ないましょう。

未払金の年度またぎは税務上問題なし

未払金を年度またぎで計上することも、税務上では問題ありません。民法166条で経費精算には5~10年の時効が定められています。

参考:民法第百六十六条|e-Gov法令検索

なお会社の規程を破って年度またぎの経費精算があった場合でも、翌年度の費用として処理するのが一般的です。

未払金の具体的な記入例

物品を購入した際や有価証券を購入した時など、未払金の仕訳例を解説します。購入時と支払時の処理をセットでみていきましょう。

クレジットカードで消耗品を購入した時

クレジットカードを用いて消耗品を購入した場合の仕訳を紹介します。

<①:クレジットカードで事務用品を11,000円分購入した>

借方 貸方
消耗品費 11,000 未払金 11,000

<②:翌月、普通預金から代金が引き落とされた>

借方 貸方
未払金 11,000 普通預金 11,000

クレジットカードで消耗品を購入した際に「未払金」を貸方に計上します。その後、支払日に借方に計上して「未払金」を相殺します。「未払金」は支払額を一時的に計上するための科目なので、最終的には0になる科目であることを理解しておきましょう。

有価証券を購入した時

有価証券を購入した場合の仕訳例を紹介します。

<①:有価証券を5万円分購入し、代金の請求を受けた>

借方 貸方
有価証券 50,000 未払金 50,000

<②:未払金5万円の支払いをした>

借方 貸方
未払金 50,000 現預金 50,000

ここでポイントになるのは「有価証券」という営業活動に関係ないものを購入したことです。また、有価証券の購入は継続的な取引ではなく単発取引です。単発取引の場合は、未払費用ではなく未払金を使用します。

さらに「5万円」という債務金額も確定しています。結果、すべての要件を満たしているので「未払金」以外の科目は妥当ではないと判断できます。

未払いの給与がある時

決算時に未払いの給与がある場合、次期以降に支払うことを見越して「当期の費用」に計上する(費用の見越)ことも可能です。

借方 貸方
給料手当 未払費用(未払給料)

また未払い給与を当期の費用として計上した場合、翌期首に再振替仕訳をする必要があります。

借方 貸方
未払費用(未払給料) 給料手当

実際には給料を支払っておらず、一旦仕訳を取り消すために再振替仕訳を行います。

ちなみに給与の未払い部分は、実際に支払われるまで源泉徴収を行いません。ただし役員に対する賞与は、支払いの確定から1年を経過した日までに支払いがない場合、支払われたとして源泉徴収を行う必要があります。

参考:No.2526 給与が一部未払の場合の源泉徴収|国税庁

また年末調整を行う際に未払い給与が残っている場合、未払い分の給与も支払金額の総額に含めて源泉徴収をする必要があります。「給与所得の源泉徴収票」の各欄における書き方については、国税庁のHPを参考にしてください。

参考:未払の給与がある場合の記載方法|国税庁

未払金がマイナスになった時の処理方法

過払いや計上漏れによって、未払金がマイナスになることがあります。

しかし同一決算期内であれば、当月分の費用として計上可能です。もし期がまたがってしまった場合は、原則として税務署へ提出する申告書の修正申告が必要になります。

マイナスの原因が過払いだった時→ 返金処理で対応

貸借対照表の未払金がマイナスになった際の原因が過払いだったときは、取引先に連絡を入れて返金処理をしてもらいましょう。

またほかにも、次回未払いが発生した際に充当してもらったり、自社に対する未収入金で相殺したりする方法が考えられます。

マイナスの原因が計上漏れだった時 → 当月の費用として計上

未払金残高のマイナス要因が過払いではなく計上漏れだった場合、当月の費用として計上するのが実務上では一般的です。

収益と費用は会計上で対応している必要があるため、同一決算期内であればお金を支払ったときに直接費用として計上し、未払金という科目は使用しません。

万一、決算期をまたがってしまった場合は「修正申告をする」「前期修正損益を使用して計上する」という方法があります。利益が大きい企業にとっては法人税の計算の特性上、所得の金額により法人税率が異なるため、手間はかかりますが修正申告をして正しい数字で申告することがベストです。

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