「利子割引料はどのような費用が該当するのか」「支払利息との違いはあるのか」などの疑問をお持ちではないでしょうか。
利子割引料は「支払った利子」と「手形を現金に変えるときに発生する割引料」を合わせた勘定科目です。手形の割引を行なっていない場合は支払利息と同じ意味として扱います。
利子割引料に含まれるものや仕訳例を交えながら、正しい仕訳ができるようになるポイントを解説します。
この記事を監修した税理士
越智聖税理士事務所 - 愛媛県松山市天山
利子割引料とは
利子割引料とは「利子(利息)」と「割引料」の両方を計上する勘定科目です。「利子」は借入金の利息などをいい、「割引料」は手形などを割引したときに支払う割引料です。例えば「事業のために銀行から借りた借入金の利息」などが該当します。
利子割引料は確定申告の際に経費として計上可能です。
利子割引料に含まれるもの
経費になる「利子割引料」は具体的には以下のような費用です。
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借入をすると返済時に支払うのは「元本」部分と「利息」部分の両方なので、ともに経費になると思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし経費になるのは「利息」部分のみですので注意してください。
借入をして現金が入金になった時には収入ではなく「負債」となっており、元本部分の返済は負債が減少しているだけだからです。
「手形の割引料」は手形を期日よりも前に現金化するために支払った手数料です。受取手形の期日は3か月など長期にわたることがあり、早く現金化したいニーズがよく発生します。
そのような時に主に銀行などで手形を現金化してくれます。その際に手数料として引かれるのが割引料と言われるものです。
このように借入金などの利息と、手形の割引料が「利子割引料」の科目で処理されることになります。
利子割引料の消費税区分は非課税
利子割引料に分類される出費に関して、現状の税法では非課税となっています。支払った利息や手数料はそのまま経費として計上可能です。
利子割引料と支払利息の違い
利子割引料とよく似ている勘定科目に「支払利息」というものがあります。名前がよく似ているので混同する方も多いのではないでしょうか。しかし、結論から言ってしまうと「利子割引料」と「支払利息」に大きな違いはありません。
利子割引料と支払利息に大きな違いはない
利子割引料のことを「支払った利子」と「手形の現金化に際して発生した割引料」からなるグループだと説明しましたが、「支払利息」というのは、このうちの「支払った利子」のみが分類される勘定項目のことです。ちなみに「手形の現金化に際して発生した割引料」についても、「手形売却損」という勘定科目が独立して存在しています。
ようするに「利子割引料」=「支払利息」+「手形売却損」なのです。そのため、特に手形の割引を行っていないのであれば、「利子割引料=支払利息」という認識で問題ありません。
確定申告の際は「利子割引料」として記入
確定申告の際は「利子割引料」として記入します。確定申告書にも勘定科目の記載があります。記入の際には「支払利息」と「手形売却損」の合計額を記入してください。
私用でも使うものの利子は実態に合わせた配分が必要
「利子割引料」を経費計上できるのは事業用の部分だけです。そのため、私用でも使うものの利子を経費にする場合は、事業に使った割合分だけを実態に合わせて算出しなければなりません。これを「家事按分」といいます。
たとえば社用車をマイカーとしても使用している場合の「自動車ローンの利息」や、自宅が事務所を兼ねている場合の「住宅ローンの利息」などがあてはまります。
家事按分する場合の計算
事業用と私用部分に分けるための按分基準は決まったものはなく、実態に合わせて自身で計算・決定します。
【按分割合を判断する方法の例】
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いずれにしても合理的かつ根拠のある比率での按分が必要です。
<事業用に使用した面積の比率で按分>
例えば自宅兼事務所の場合など、事務所(事業用)部分の面積が比較的明確であるときにおすすめです。
自宅兼事務所を借入で購入し住宅ローンを支払っているけれども、その利息の事業用部分は事務所の面積の比率で按分するといったことが考えられます。
<事業用に使用した時間の比率で按分>
事業用に使用した時間が明確にできるものにおすすめです。例えば自動車でしたら事業用に使っている時間を集計して、私用で使っている時間との比率を出し、自動車ローンの利息をこの比率で按分することが考えられます。
<事業用に使用した量の比率で按分>
事業用に使用した量が明確にできるものにおすすめです。例えば自動車でしたら事業用に使っている走行距離を集計して、私用分との比率を出してこの比率で按分することが考えられます。
家事按分の計算例
利子割引料としていくら計上できるのか、社用車の購入を例に挙げながら計算してみましょう。
例:社用車を購入する際に、年利2%で100万円の自動車ローンを組んだ |
【事業用でしか使用しない場合】
購入した自動車が100%事業用の場合、支払った利息の全額、つまり20,000円を利子割引料で経費として計上できます。
【年間走行距離6,000kmのうち、3,000kmを事業用で使用した場合】
例えば年間の走行距離から考えて事業で使用された割合が全体の50%だった場合、年間に支払った利息の50%である10,000円を利子割引料に計上できます。
残りの1,0000円については、事業ではなくプライベートでの利用とみなされるので、利子割引料に入れることはできません。
家事按分の際の注意点
個人事業主として独立したての場合、どの程度まで家事按分で経費に計上していいのか基準がわからないかもしれません。
この家事按分の割合は税務調査でも特に詳しくみられるポイントです。税務署に対してしっかりと説明できるよう、あらかじめ使用割合や基準などを設定しておくことをおすすめします。どうしても不安だという方は、税理士に相談してみてください。
この記事を監修した税理士からのコメント
越智聖税理士事務所 - 愛媛県松山市天山
利子割引料の仕訳例
利子割引料の仕訳例について具体例を交えながら解説します。ここでも「社用車を購入する際に年利2%、10万円のローンを組んだ」ケースを例に見ていきましょう。
全額事業目的の借り入れの場合
支払利息や手形割引料の全額を「利子割引料」に分類するときの仕訳例です。事業用途で購入した社用車や、生活に使用しない店舗や事務所を購入した場合が該当します。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
借入金 | 100,000 | 普通預金 | 102,000 | 自動車ローン元本 |
利子割引料 | 2,000 | 自動車ローン利息 |
家事按分する場合の仕訳例
家事按分をして、支払利息の一部を「利子割引料」と「事業主貸」で経費として計上する場合の仕訳例です。条件は先ほどと変わらず借入10万円、年利は2%、事業としての使用割合は50%と仮定します。家事按分を行い、私用となった分に関しては勘定科目「事業主貸」を用いて処理します。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
借入金 | 100,000 | 普通預金 | 102,000 | 自動車ローン元本 |
利子割引料 | 1,000 | 自動車ローン利息 | ||
事業主貸 | 1,000 | 自動車ローン利息(家事按分) |
確定申告時の利子割引料の書き方
確定申告における利子割引料の扱いと「収支内訳書」や「青色申告決算書」の書き方、記入手順を解説していきます。
内訳の記入例
収支内訳書の書き方
白色申告の場合、利子割引料が関係するのは収支内訳書になります。収支内訳書の2枚目にある「利子割引料の内訳(金融機関を除く)」欄に、該当する利子割引料を記入してください。
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青色申告決算書の書き方
青色申告者が確定申告の場合には、青色申告決算書の3ページ目にある「利子割引料の内訳(金融機関を除く)」欄に、該当する利子割引料を記入していくことになります。記入方法は収支内訳書と同じなので割愛します。
金融機関を除く機関からの借入の場合にのみ記入
ただし「その年に支払ったすべての支払利息と手形割引料を記入する」というわけではない点はご注意ください。というのも、収支内訳書にも青色申告決算書にも、「利子割引料の内訳」の隣に「(金融機関を除く)」とあるように、銀行や消費者金融などの金融機関を介した借入やローンで発生した利息や割引料については、記入する必要がないのです。
収支内訳書や青色申告決算書に記載する利子割引料は、知人や親族、出資者といった、金融機関以外の個人や法人に支払った利息や割引料ということになります。
利子割引料を正しく確定申告して節税しよう
今回はいまいち何を指すのかわかりづらい勘定科目「利子割引料」について解説してきました。最後に要点を簡単にまとめておきます。
- 支払った利息や手形の割引料が相当し、経費として計上することができる
- 利子割引料は非課税
- 借入やローンを組んで購入した物件や物品(住居や車など)を個人でも使用している場合は、使用割合に応じて家事按分することで経費に計上することができる
- 収支内訳書や青色申告決算書に記入する利子割引料は、金融機関を介さないローンや借入で発生した利子や手形割引のみ
ただし、家事按分の割合などは複雑な部分もあります。また、取引が多くなってくると記帳に関連する作業も煩雑になってくるので、負担が大きいようでしたら税理士に相談してみるのも一つの手です。
監修税理士からのコメント
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