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地代家賃とは | 仕訳や自宅の家賃を経費にする方法

最終更新日: 2024年06月28日

地代家賃は「地代」や「家賃」を管理するための勘定科目です。しかし「この経費は地代家賃として仕訳できるのか?」と悩むこともあるのではないでしょうか。

間違った仕訳を行わないためにも、地代家賃の定義や経費計上のタイミングなど、具体的なケースを交えながら解説します。

この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

 

地代家賃とは

マンションのエントランス

地代家賃とは「地代」・「家賃」を計上するための勘定科目です。事業所や店舗、事務所の物件、事業用の月極駐車場の賃料などを管理する勘定科目で、経費に計上することができます。

個人事業主の自宅の家賃は原則「地代家賃」として経費計上できませんが、自宅の一部を事業用の事務所としている場合はその使用している部分を按分して経費にできます。

地代と家賃の違い

「地代」とは一般的には土地を借りている場合に発生する家賃のことです。土地を借りている人のことを「借地人」、土地を貸す人のことを「地主」と言います。

また「家賃」とは、土地の上に建てられた建物を借りている場合には発生している賃料で、事務所、店舗の賃料ということになります。ちなみに駐車場は「地代」と紛らわしいですが、土地の上に作られているものなので「家賃」ということになります。

地代家賃は確定申告で経費計上可能

「地代家賃」は事業に関係する土地や建物を借りている賃借料であれば経費として計上可能で、もちろん個人事業主の確定申告でも申告可能です。

個人事業主は所得税の確定申告を行う必要があり、個人事業で得た所得を「事業所得」といいます。個人事業主の確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類です。白色申告は「収支内訳書」、青色申告は「青色申告決算書」を税務署に提出しなくてはいけません。

収支内訳書と青色申告決算書はどちらも「事業収入と事業経費の内訳から事業所得の計算する書類」です。この書類の事業経費の項目の中に地代家賃があります。

経費計上のタイミング

個人で借りているマンションなどの家賃は、一般的に次の月の家賃を前の月のうちに支払います。これは企業や個人事業主でも同様で、地代家賃は前月中に当月分を支払います。そして実務では2つの計上方法があります。

【前払費用から地代家賃に振り返る場合】

支払った時点ではまだ「地代家賃ではない」という考え方で、支払った金額をいったん「前払費用」で資産計上し、翌月に前払費用から地代家賃に振り替える方法です。

<例:9月25日に10月分の家賃10万円が預金から引き落とされた>

借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
9/25 前払費用 100,000 預金 100,000 10月分家賃

そして翌月になってから、地代家賃に振り替えます。

借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
10/1 地代家賃 100,000 前払費用 100,000 10月分家賃

以上で計上完了です。

【支払い月に地代家賃として計上する場合】

前払費用から地代家賃に振り替えて計上するには少し手間がかかってしまうので、実際の実務上では支払った月に地代家賃として計上することも多いです。

<例:9月25日に10月分の家賃10万円が預金から引き落とされた>

借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
9/25 地代家賃 100,000 預金 100,000 10月分家賃

ただし、この方法は毎月継続していることが条件なので注意しましょう。

地代家賃で経費として計上できるものは?

家のミニチュアが乗った電卓

地代家賃は基本的に「事業に関係する土地や建物を借りている賃借料」であれば経費として計上可能ですが「仲介手数料」などは別の勘定科目を使用します。

また、事務所の家賃や土地の賃借料だけでなく、事業に必要な月極駐車場代や倉庫の賃借料金も地代家賃として経費に計上することが認められています。

経費として計上できるものの具体例

地代家賃として経費に計上できるものには以下のようなものがあります。

  • 土地の賃借料 (地代)
  • 事務所やオフィス、店舗などの家賃・管理費・共益費
  • 賃貸契約した時の返還されない礼金・敷金 (20万円未満の場合)
  • 事務所やオフィス、店舗などの更新料 (20万円未満の場合)
  • 倉庫、月極駐車場などの賃借料

土地の賃借料(地代)

営業中の小売店

土地を借りているときの賃借料です。土地を借りて、その上に建物を建てて事業をするときなどに発生します。

事務所やオフィス、店舗などの家賃・管理費・共益費

オフィスビル街の風景

すでに建っている建物や店舗を借りて事業をする場合に発生します。

家賃:借りた物件の利用料です。通常は土地の利用料も含めて「家賃」としています。

管理料:借りた物件を清掃・点検などをして管理するための費用です。

共益費:ビルなど複数のテナントが入る物件の一部屋を借りた場合に発生します。ビルのエレベーターなど共用部分を整備維持するための費用です。

家賃は事業のために借りた物件の費用、管理費と共益費は物件を維持・管理するための費用といえます。

賃貸契約した時の礼金・返還されない敷金(20万円未満の場合)

賃貸契約をしたときにかかる費用です。礼金と返還されない敷金は20万円未満ならば経費として計上できます。

礼金:貸主に対してお礼の意味を込めて渡すお金というのが由来です。しかし、現在は貸主と直接顔を合わせる機会も少なく、慣習的に支払う費用です。

敷金:契約期間中に家賃を滞納した場合や、物件を損傷させた場合の修繕の担保として先に預けておく費用です。引き払いの時に差し引いて返還されます。

事務所やオフィス、店舗などの更新料(20万円未満の場合)

オフィスの前に立つ男性

更新料は賃貸契約の更新をするときに発生する費用です。契約によって更新料は必要ない場合もあるので必ず発生するものではありません。

礼金や返還されない敷金と同じく、20万円未満であれば地代家賃として計上できます。

倉庫、月極駐車場などの賃借料

倉庫 物流

倉庫や月極駐車場などの賃借料は事務所やオフィス、店舗の賃借料と同じ扱いなので、地代家賃として計上できます。

駐車場代の仕訳は目的によって勘定科目が異なることも

駐車場の車

仕事で自動車に乗り駐車場を利用した場合、発生した費用は経費として計上できます。しかし、月極駐車場など「継続的に借りている場合」と、コインパーキングなど「一時的に借りている場合」では使用する勘定科目が異なります。

月極駐車場など継続に借りている駐車場代は「地代家賃」

仕事で利用する車を預けるために月極駐車場などを継続的に借りている場合は、駐車場代を「地代家賃」として経費に計上できます。考え方としては家賃と同等の扱いで、毎月の「固定費」として計上できるでしょう。

また来客用で継続的に借りている場合も含まれます。「仕事で利用していること」「継続的に借りていること」がポイントです。

コインパーキングなど一時的な駐車場代は「旅費交通費」

仕事で利用している自動車をコインパーキングに預ける際の駐車場代は「地代家賃」ではなく「旅費交通費」に経費計上できます。また研修やセミナー参加のために利用したのなら「研修費」、あまり「旅費交通費」を使用しないなら「雑費」にすることもできます。

しかし、いずれの場合にも記帳の「連続性」が大切です。今まで駐車場代は「全て旅費交通費に統一して経費計上」していたのに、突然「雑費に計上する」ことがないようにしましょう。

「地代家賃」以外の勘定科目を使用する経費

通常の家賃以外にも以下のような支出が発生しますが、これらは「地代家賃」以外の勘定科目を使用します。

支出 使用する勘定科目
賃貸契約した時などに発生する仲介手数料 支払手数料
20万円以上の礼金、返還されない敷金 長期前払費用
住宅ローンの利息 (持ち家の場合) 利子割引料
建物 (持ち家の場合) 減価償却費
車両や機械などのリース料 貸借料

仲介手数料は「支払手数料」、住宅ローン利息のうち事業部分は「利子割引料」という別の勘定科目で処理します。なおこれらは「地代家賃」として経費に計上できないだけであり、別の勘定科目を使用することで経費にすることができます。

経費にならないもの

地代家賃で経費として計上できないものには以下のものが例として挙げられます。

  • 住宅ローンの元利金
  • 引き払い時に返還される敷金

住宅ローンの元金返済分は経費として計上できません。住宅ローンの元金を経費に計上すると、建物に関する減価償却費と経費を二重計上することになるからです。

また、住宅ローンは事業割合(事業割合の計算方法については後述します)が10%以下であれば全額控除を受けることができます。したがって、事業割合によっては住宅ローン控除の全額控除を受けることができなくなるので注意が必要です。

住宅ローン控除は税金を直接減らすことができる税額控除に該当するため、住宅ローン控除を適用した方が節税になりそうですが、事業割合を増やすと経費に計上できる金額も増加し、事業所得の金額を下げることができます。事業所得の金額が下がると所得税だけでなく社会保険料等も下がります。それらを考慮に入れて住宅ローン控除を受けるか、経費として計上するか、どちらがより節税になるか慎重に検討しましょう。

敷金や礼金の処理

敷金、礼金等に関しては以下のように処理します。

  • 金額が20万円未満の場合
    地代家賃として、支払い時に全額経費にできます。
  • 金額が20万円以上の場合
    支払い時に繰延資産として資産計上します。支払い時に全額を経費として計上することはできませんが、5年以内の期間で償却して経費に計上します。

例えば、賃貸借期間が3年の場合は3年間に渡って月割りで経費に計上します。賃貸借期間が6年間の場合は、5年間に渡って月割りで経費計上します。ただし、返還が予定されている敷金等は経費にできないので注意して下さい。

自宅を事務所として使用している方は家賃を按分して経費に計上できます。按分方法については後述します。

地代家賃と賃借料の違い

「地代家賃」と「賃借料」は区分が紛らわしい勘定科目です。両者の違いについて確認していきましょう。

  • 地代家賃とは、土地や建物等を借りて使用するときに支払う経費
  • 賃借料とは、物品を借りて使用するときに支払う経費

つまり、賃借料のうち土地や建物等の不動産に関するものが地代家賃、その他物品に関するものが賃借料になります。

ここで紛らわしい具体例として、レンタルオフィスがあります。Web制作事業を営んでいる方は、自宅に加えレンタルオフィスを利用することもあると思います。

レンタルオフィスを個室で借りる場合は部屋や建物等を借りる契約なので、レンタルオフィス代は地代家賃になります。しかし部屋や建物等だけでなく、バーチャルオフィスやコワーキングスペース、OA機器等の物品を含めて借りている契約の場合は賃借料、または支払手数料になります。

もちろん状況は様々あると思いますので、不安な場合は税理士や税務署に相談してみて下さい。

賃借料の具体例

賃借料の具体例は以下のようなものがあります。

  • 車両・機械等のリース料
  • 事務用品のリース料
  • レンタルオフィス代

これらに関する支出は「賃借料」として経費に計上することができます。

地代家賃の消費税区分

オフィスで働く若いビジネスマン

地代家賃はその支出の内容によって、消費税が課税されるものと、課税されないものに分けられます。

消費税の納付が必要な事業者に該当する場合は、支払う地代家賃に消費税が課されているのであれば売上に対する納付すべき消費税から控除することができるため、消費税を計算する上で理解が必要です。

課税対象となる地代家賃

課税対象となる地代家賃には以下のようなものがあります。

  • 事業用として契約した不動産に関する家賃等
  • 一時的な貸付に伴う地代
  • 施設の利用を伴う土地の貸付

土地の賃貸借については消費税が課税されないのが通常ですが、上記のような場合には消費税が課税されます。

基本的な考え方として、事業用の不動産に対する家賃等であれば課税となり、居住用の不動産に対する家賃等であれば非課税となります。居住用の不動産に対する家賃等が非課税とされている理由は社会政策的な配慮に基づくものです。

したがって、事務所用や店舗用の不動産に関する賃料、共益費等は消費税が課税されます。なお、事業用か居住用かの判断は賃貸借契約書においてその契約が事業用か居住用かによって行いますので、例えばマンションの1室を居住用として賃貸契約したものを事務所として使用したとしても、消費税は非課税になります。

一時的な貸付とは具体的に貸付期間が1ヵ月未満の場合をいいます。

また、施設の利用を伴う土地の貸付とは、駐車場としての地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置などをして駐車場として利用させる場合や、野球場、プール又はテニスコートなどの施設の利用に伴って土地が使用される場合のことです。

課税対象とならない地代家賃

  • 居住用として契約した不動産に関する家賃等
  • 未整備の駐車場に対する駐車場代
  • 一定の条件を満たした駐車場代

上述のとおり、居住用として契約された家賃や共益費等については、基本的に消費税は課税されません。

駐車場について、いわゆる青空駐車場のように整備がされていないものについては、消費税は課税されません。また、整備された駐車場であっても以下のようなケースの場合、消費税は課税されません。

  • 賃貸マンション等の駐車場代が家賃に含まれている
  • 一戸当たり一台分以上の駐車スペースが確保されている
  • 車を保有していない場合も同額の家賃が適用されている

駐車場代の取り扱いは複雑なので注意が必要です。

自宅で仕事する個人事業主が家賃を経費にする方法

自宅で仕事する個人事業主

自宅の一部を事業所として使用している場合、家賃などを地代家賃として経費に計上することができます。しかし、家賃等には居住用に関する部分も含まれているので、全額を経費にすることはできません。したがって、居住用の家賃と事業用の家賃に按分する必要があります。

家賃を按分して経費として計上

上述のとおり、自宅の一部を事業所として賃借している場合、自宅の家賃を経費に計上できますが、支払った家賃には居住用の部分も含まれているので按分する必要があります。地代家賃は必要経費です。必要経費とは所得を得るために必要な経費のことなので、按分する場合にも所得を得るために必要な経費と認められる合理的な方法で按分します。

地代家賃の按分方法と計算方法

地代家賃の按分方法としては以下のようなものがあります。

【面積による按分】

事業用と居住用の床面積の割合で計算します。

たとえば床面積が50㎡、その内事務所スペースが20㎡、家賃が20万円だったとしましょう。この場合、事務所スペースが全体の「40% (20㎡÷50㎡)」にあたるため、家賃の40%の「8万円」を地代家賃として計上できます。

【時間による按分】

1日のうち、仕事を行った作業時間の割合で計算します。

たとえば家賃20万円のマンションを自宅兼事務所とし、自宅での作業時間が1日平均4.8時間の場合で計算してみましょう。この場合「24時間のうち4.8時間」つまり「20%」を事務所として使用していると考えます。したがって、家賃の20%にあたる「4万円」を地代家賃として計上できます。

家賃を按分した場合の仕訳方法と仕訳例

上記の金額を例にして仕訳方法をご紹介していきます。

<例:事業用口座から家賃が引き落とされている場合>

借方 貸方 取引内容
地代家賃 80,000円 普通預金 80,000円 事務所家賃
事業主貸 120,000円 普通預金 120,000円 家事使用分家賃

<例:プライベート用の口座から家賃が引き落とされている場合>

借方 貸方 取引内容
地代家賃 8,000円 事業主借 8,000円 事務所家賃

「地代家賃の内訳」欄の書き方

確定申告を行う際に、青色申告者の場合は青色申告決算書、白色申告者の場合は収支内訳書に地代家賃に関する事項を記載して申告します。

ここでは、青色申告決算書と収支内訳書の「地代家賃の内訳」欄の書き方について説明します。

地代家賃 内訳 書き方
青色申告決算書
地代家賃 内訳 書き方
収支内訳書

支払先の住所・氏名

賃料を支払っている大家さんや不動産会社の住所・氏名等を記載します。自身が使用している家や土地の住所ではないので注意してください。

賃借物件

物件の利用用途を記載します。例えば、店舗、事務所、自宅兼事務所、工場などです。

本年中の賃借料、権利金等(権更)

本年中に支払った権利金や更新料を記載します。権利金は礼金や敷金などが該当します。

本年中の賃借料、権利金等(貸)

本年中に実際に支払った家賃の金額を記載します。実際に支払った金額と地代家賃として経費に計上した金額は必ずしも一致しません。例え翌年分の家賃であっても、本年中に支払った金額をここには記入します。

賃借料のうち必要経費算入額

上記の賃借料、権利金、更新料のうち経費に計上した金額を記載します。

地代家賃の計算が不安な時は税理士への相談がおすすめ

「地代家賃」は土地・建物の賃借料等の経費を計上する際に使用する勘定科目です。同じ支出でも、内容によって経費に計上できるものとできないものがあります。

地代家賃の計算は難しい場合もあります、より複雑な地代家賃の計算が必要な場合や按分方法に不安のある方は、間違った申告をすることのないよう税理士に相談してみてください。

監修税理士からのコメント

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

地代家賃に関しては、内容によっては、他の勘定科目(仲介手数料、管理費、賃借料、繰延資産等)にて処理することが適当な場合があります。また、内容に応じて消費税の課税判定が変わります。実際の申告を行う際には、記事の内容を理解して、修正申告等の手戻りが発生しないように留意いただければと思います。

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この記事の監修税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

風間優作(かざまゆうさく) 1985年千葉県銚子市出身。兵庫県立大学大院卒業。 上場会社経理部にて一般経理実務を経験した後、Big4監査法人及び税理士法人にて、公認会計士・税理士としての実務を経験し独立開業を果たす。現在は会計監査やIPO実務だけではなく、個人・法人税務からM&Aや事業承継に係る税務業務まで幅広く対応している。