「売り上げはいくらから確定申告しなきゃいけないの?」「赤字でも確定申告の義務はある?」と疑問に思ってはいませんか?
会社員の同人活動は利益が20万円を超えた場合、確定申告をしなければなりません。また専業の場合は、48万円を超える利益が発生した場合に確定申告が必要です。
この記事では、同人活動で確定申告が必要な金額や会社にばれない方法、確定申告の方法について解説します。
この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
同人活動の所得(利益)が「20万円以下」なら確定申告は不要
副業で同人活動を行なっている方は、1年間の利益が20万円を越えた場合に確定申告が必要です。利益は「売上-経費」で求められます。売上高から経費を差し引いた後の利益が20万円以下であれば、確定申告は必要ありません。
確定申告の計算基準は「売上」ではなく「利益」
確定申告では、個人の方が1月1日から12月31日までに獲得した利益をもとに計算します。
また確定申告では「利益=所得」、「売上=収入」、「売上を得るために支払った費用=必要経費」といいます。確定申告が必要かどうかする所得は「所得=収入ー必要経費」で計算可能です。
同人活動の必要経費とは?
売上を得るために使った費用であれば、経費として計上できます。同人活動の場合、以下のような費用が経費となるでしょう。
など |
ただし道具の購入額が10万円以上である場合や、道具や作業場をプライベートと併用している場合は注意が必要です。
10万円以上の道具は「固定資産」として扱われ、何年かにわたって分割して経費計上する必要があります。またプライベートと併用している場合は、作業に使用した時間などの割合に応じて経費を算出しなければなりません。
10万円以下で、同人活動のみに使用しているものであれば、全額を一括計上できます。
副業の場合は「所得が20万円」を超えたら必要
会社員やアルバイト・パートの方が趣味の同人活動で収入を得た場合、その所得(利益)金額が20万円以下であれば、確定申告は必要ありません。
これは国税庁が給与所得者について、給与所得以外の所得金額が20万円以下であれば確定申告不要と定めているためです。
確定申告不要となれば、同人活動に対して所得税はかかりません。ただし所得が20万円以下で確定申告が必要なくとも、住民税の申告は必要な点には注意しましょう。
同人活動以外に収入がない場合は「所得が48万円」を超えたら必要
会社員やアルバイトとしての収入がなく、同人活動からの所得だけが発生する方は、所得金額が48万円を超えると確定申告が必要です。フリーランスや個人事業主などが該当します。
これは所得税の計算を行う際に所得金額から差し引かれる控除のうち、所得が2,400万円以下の人に適用される基礎控除の金額が48万円となっているためです。
売上から必要経費を差し引いた後の所得金額が48万円以下となった場合は、課税対象となる金額がないため確定申告の必要はありません。
こちらも確定申告をしない場合、住民税の申告は必要です。忘れずに住民税の申告と納付を行なうようにしましょう。
住民税の申告は「所得が20万円以下」でも必要
所得金額が20万円以下で確定申告していない場合でも、利益が発生していたら住民税は申告しなければなりません。もし申告していないことがバレた場合、追徴課税が発生することがあるため必ず申告と納税を行ないましょう。
住民税の申告は、住民票のある住所地の市区町村に対して行います。申告期間は確定申告と同じく、2月16日から3月15日です。ただし納税時期は3月15日までではなく、給与に対する住民税と同じく6月以降に納付します。
住民税の申告を行う際には、各市区町村で定める申告書を使います。
このほか、給与所得を証明する源泉徴収票が必要です。また同人活動から生じる所得金額を計算するため、収入や必要経費を明らかにするもの(預金通帳や現金出納帳、領収証など)を準備しましょう。
なお確定申告をしていれば、住民税の申告は不要です。
住民税を自分で納めることで会社にばれにくくなる
同人活動から発生する住民税について、自分で納める「普通徴収」を選択すれば、副業による所得があると会社にばれにくくなります。
会社員の方が住民税を納税する際、通常は会社に納付書が届き給料から天引きして納付する「特別徴収」が行われます。特別徴収で徴収する住民税が不自然に高くなることが、会社に副業がばれる要因です。
確定申告や住民税の申告を行う際に、給与所得以外の住民税について「自分で納付(普通徴収)」を選択することで普通徴収に切り替えられます。
同人活動が赤字でも確定申告が必要?
「赤字でも確定申告は必要なの?」と疑問に思っていませんか。
赤字の場合、確定申告の必要はありません。ただし確定申告をすることで税務署に脱税を疑われることがなくなるほか、翌年の税金の額を減らせる可能性があります。
赤字でも確定申告するのがベター
赤字となっても確定申告していれば申告漏れを疑われる心配がなくなります。どれだけ必要経費が発生しているか明らかにすれば、脱税や所得隠しを疑われにくくなるためです。
とくに初めて確定申告をした場合などは、「必要経費に含められないものまで必要経費にしているのではないか」と疑われるケースがあります。そこで、必要経費を適正に計上していると分かるように、赤字でも申告するのがおすすめです。
また同人活動を本業として青色申告している人の場合は、赤字でも申告するとその赤字を翌年以降に繰り越せます。その結果、翌年に大きな利益が発生した場合でも、税金の額を減らせるのです。
同人活動の売り上げと経費は必ず記録すべし
必要経費に関する正確な知識をもっていて、自分の同人活動だと利益が出ていないことが明らかな場合は、無理に確定申告する必要はありません。
ただしその場合でも、万が一税務調査が入った場合に備えて、売り上げと経費の記録(レシート等)は保管しておくようにしましょう。
〈記録は最大で7年間保管すると安心〉
経費の記録の保管期間ですが、青色申告する個人事業主の場合、最大7年間は保管するよう義務づけられています。副業の同人活動の場合はこのような保管義務はありませんが、税務調査が心配な方は参考にしてください。
【確定申告のやり方1】必要書類を集める
確定申告をスムーズに進めるために、まずは申請や所得の計算に必要な書類を集めます。人によって準備すべき書類に違いがあるため、間違えないようにしましょう。
書類 | 内容 |
本人確認書類 |
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所得を明らかにできるもの |
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各種控除証明書 | 生命保険料控除証明書、医療費の明細書、寄附金受領証明書、地震保険料控除証明書など |
本人確認書類
マイナンバーカードは交付申請書の郵送またはオンラインで申請の上、取得できます。受取には審査から1ケ月程度かかるため注意しましょう。
マイナンバーカードがない場合、通知カードと、運転免許証や住民票などで代用できます。
所得を明らかにできるもの
所得計算に用いる書類として、源泉徴収票や、同人活動の売上と経費がわかる書類を漏れなく用意しておきましょう。Skeb(スケブ)やbooth(ブース)といった販売サイトの場合、売上データをサイトで確認できます。
源泉徴収票は、給与所得者が会社から受け取る書類です。1年間に勤務先から支給された給与総額と、その給与から源泉徴収された所得税の額が記載されています。
見当たらないという方は「確定申告で源泉徴収票がない場合の対処法とは?給与明細でも対応できる?」も参考にしてください。
また支払調書は、事業者が外部の取引先に支払った報酬の額を明らかにする書類で、受け取った人の収入金額を明らかにするものです。
帳簿
事業所得として確定申告を行なうフリーランスや個人事業主の方、また副業で2年前の雑所得輸入が300万円以上の方は、帳簿の作成も必要です。確定申告時に提出するわけではありませんが、税務調査が入った際には提出する必要があります。
帳簿にはいくつか種類があり、すべての人にすべての帳簿が必要になるわけではありません。事業の状況に応じて必要な帳簿を作成しましょう。
帳簿の種類 | 記載内容 |
現金出納帳 | 現金の出入りを明らかにし、現金残高を明らかにする |
預金出納帳 | 預金の出入りを明らかにし、預金残高を明らかにする |
売掛帳 | 代金が回収できていない売上(いわゆるツケ)の発生と代金の回収を記載する |
買掛帳 | 代金を支払っていない仕入や経費の発生と代金の支払いを記載する |
固定資産台帳 | 固定資産の購入・売却と毎年の減価償却の計算を行う |
振替伝票 | すべての取引の仕訳を日付順に記載する |
帳簿を付ける際、経費を勘定科目という項目にそれぞれ分類します。具体的な勘定科目は以下の通りです。
勘定科目 | 内容 |
地代家賃 | 仕事場(自宅)の家賃 |
水道光熱費 | 仕事場(自宅)の電気代、ガス代、水道代 |
交際費 | 同業者との飲食代や手土産代など |
旅費交通費 | 電車・バス、宿泊代など |
消耗品費 | 10万円未満のパソコンや文房具・画材など |
広告宣伝費 | webサイトの作成費用など |
通信費 | 電話代、インターネット利用料、郵送料など |
雑費 | どの項目にも当てはまらない経費 |
同人活動とプライベートの両方に関連する支出については、同人活動で使用した割合を金額にかけて必要経費にします。
ただし白色申告、かつ副業などで雑所得に該当する場合は、事業割合が50%以上にならないと経費にできないので注意が必要です。
各種控除証明書
確定申告では、医療費控除やふるさと納税などの寄付金控除を申請することで、税金の控除を受けられます。各種控除を受ける場合は控除証明書も用意しておきましょう。
【確定申告のやり方2】提出書類を作成する
確定申告の提出書類は、同人活動が副業か本業かで以下のように異なります。
同人活動の扱い | 作成する書類 |
副業(雑所得)の場合 |
|
本業(事業所得)の場合 |
|
なお国税庁の確定申告書作成コーナーを利用すれば、案内に沿って入力していけば書類作成が完了するためおすすめです。
確定申告書第一表を作成する

確定申告書のうち、所得金額や所得税額を計算するために必ず提出するのが第一表です。
同人活動が副業の人は、給与もあるため給与所得と同人活動の雑所得を記入します。収入金額等の「給与」の欄に源泉徴収票の「支払金額」を、「雑(業務)」の欄に同人の収入金額を記入しましょう。また所得金額等の「給与」の欄に源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」、「雑(業務)」の欄に「利益-経費」の所得金額を記入します。
事業として所得を得ている人や個人事業主は、収入金額等の「事業(営業等)」の欄に収入金額を、所得金額等の「事業(営業等)」の欄に所得金額を記入してください。
そのほか「所得から差し引かれる金額」に各種控除や、「税金の計算」の欄に所得税額を記入していきます。
確定申告書第二表を作成する

確定申告書の第二表は、様々な金額の内訳や詳細を記載するために用いられます。
収入とその種類を、「所得の内訳」の欄に記入しましょう。
副業で雑所得の場合、所得の種類は「雑」、種目には同人誌販売など簡単な内容を記載します。また、必要経費を差し引く前の収入金額を記載します。給与所得者は所得の種類を「給与」として収入金額、源泉徴収金額も記入しましょう。
本業で事業所得の場合、所得の種類は「事業」、種目には同人誌販売などの内容と収入金額を記載します。
そのほか、控除に関する内容や、住民税・事業税に関する事項を記入しましょう。
確定申告書の詳しい書き方は以下もご参考ください。
【白色申告する方】収支内訳書を作成する
個人事業主やフリーランスで、事業所得として白色申告する方は収支内訳書を作成します。
白色申告専用の収支内訳書とは、事業の収支の内訳を記入する書類です。収支内訳書にはその年の売上、仕入、人件費、通信費などの経費を記入します。収支内訳書は2枚の構成になっており、収入金額・売上原価・経費などの項目の記載が重要なポイントです。
なお副業の雑所得として確定申告する場合は白色申告になりますが、2年前の収入が300万円を越えていなければ、収支内訳書や帳簿の作成は必要ありませせん。
【青色申告する方】青色申告決算書を作成する
青色申告専用の青色申告決算書とは、事業の収入と経費を記入する書類です。青色申告決算書は4枚ありますが、特に大事なのは貸借対照表と損益計算書です。
貸借対照表は12月31日時点の資産や負債、損益計算書にはその年の収入や経費を記載します。貸借対照表と損益計算書を作るには、日々の領収書をまとめた帳簿が必要です。
【確定申告のやり方3】書類を提出する
申告書の提出方法には「e-Taxで提出する」「郵送で提出する」「税務署に持参する」の3通りです。どの方法で提出をしても大丈夫ですが、提出方法によって還付されるスピードが異なります。その3通りの提出方法について確認しましょう。
e-Taxで提出する
税金が還付される場合e-Taxで提出すると、郵送や税務署に持参して提出する場合に比べて還付されるスピードが早くなります。還付にかかる期間は申告してから2週間程度です。
またe-Taxを利用するとネット環境があれば自宅からでも申告の提出ができるので便利です。しかしICカードリーダライタやマイナンバーカードなどの準備が必要になります。またマイナンバーカードの発行には1ヶ月ほどかかるので、e-Taxで提出する場合は事前に準備をしましょう。
以下の記事では、e-Taxの方法について詳しく説明しています。ネットで提出を行いたい方は確認してみてください。
郵送で提出する
郵送で提出する場合、3月15日の消印のあるものが期限内とみなされます。確定申告書は信書にあたるので、郵送する場合は必ず「郵便物」として送る必要があります。ゆうパックやゆうメール、宅急便などは使えないので注意です。
初めての確定申告では添付書類などに不備などがある可能性があるので、郵送で提出する場合は期限に余裕を持って提出することをオススメします。
確定申告書の控えに受付印を希望する時は、返信用封筒に返信先の氏名・住所を書き、必要金額の切手を貼付した返信用封筒を同封しましょう。
税務署に持参する
確定申告書を税務署に提出する場合は、窓口で提出ができます。税務署の開庁時間は、祝日などを除いた月曜日から金曜日の8:30から17:00までです。窓口で提出する場合は時間を厳守しましょう。
窓口で提出する際には、マイナンバーカードまたは番号確認書類と本人確認書類が必要になるので忘れないようにしましょう。番号確認書類は通知カード、本人確認書類は免許証などです。
万が一、時間外にしか提出できない場合は時間外収受箱への投函により提出することもできます。
【確定申告のやり方4】納税と還付を受ける
確定申告は申告書の提出だけでなく、所得税や住民税の納付も必要です。税金の納付方法は納付書を使った現金納付だけではありません。
税金を納付する
所得税の納付方法は3種類あり、具体的には以下の通りです。
税金の納め方 | 内容 |
納付書を使った現金納付 | 金融機関や税務署、コンビニに納付書を持参して納付 |
ダイレクト納付やインターネットバンキング等を利用する電子納税 | e-Taxで申告書の提出等をし、届出書を提出すると電子納税で納付することができる |
振替納税 | 引き落とし日(振替日)に指定した口座から自動的に引き落としがされる |
納付は納付書を使った現金納付が一般的ですが、納付書を銀行に持参するなどの手間がかかるので振替納税がオススメです。振替納税は個人の所得税や消費税の納付を引き落とし日(振替日)に、自分が指定した銀行口座から引き落としされる制度です。
振替納税を利用すると、支払い期日が1ヶ月ほど先延ばしになるので資金繰り面でも有効だと言えます。しかし残高が不足していると延滞税が発生するので注意しましょう。また振替納税を利用するには振替納税依頼書の提出が必要です。
もし期限内に納付できない場合、「延納」措置を受けることが出来ます。「延納の届出」を提出し、3/15までに所得税の納税額の1/2以上を納入すれば、残りの税額の納税期限が5/31までに延びます。ただし延納期間は利子が付くので注意しておくとよいでしょう。
参考:国税庁 延納の届出 |
還付を受ける
確定申告をして還付される税額が発生すると、申告から1〜2か月後に還付されます。ただし確定申告の期限間際に申告を行うと、処理件数が増えるため還付されるまでに時間がかかる傾向にあります。e-Taxを利用すると還付までの期間を2週間にすることが可能です。早く還付を受けたい場合はe-Taxで申告を行いましょう。
還付金の受取方法は以下の2つです。
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預金口座への振込による場合は、確定申告書に預金口座の金融機関名や番号などを記載します。
窓口で受け取る場合は、ゆうちょ銀行の支店名や郵便局名を記載しましょう。
同人活動の確定申告のポイント
同人活動を行っている人が、確定申告する場合に押さえておきたいポイントを2つ紹介します。
12月31日に棚卸しを行う
同人活動を行っている場合、12月31日に棚卸しを行う必要があります。
棚卸しとは、売れ残った状態の在庫の数量と金額を確定させる作業です。同人誌を作成する際にかかった印刷代は、実際に売れたものについては必要経費となりますが、売れ残った分については必要経費にできません。
数量と単価から棚卸資産の金額を計算し、必要経費の額から差し引く必要があります。
今年だけ売り上げが多い場合は、平均課税制度を利用する
例年に比べ所得が多い場合は、平均課税制度を利用することで節税できます。
同人活動から発生する所得金額は、毎年同じくらいの金額になるとは限りません。所得が大きく発生した翌年がほとんどゼロになる人もいるでしょう。この場合、平均課税制度を利用すれば通常の税率より低い税率で税額計算を行うため、税負担を軽減できます。
平均課税制度を利用するためには、通常の確定申告書のほか「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」を作成し、税務署に提出しなければなりません。あらかじめ平均課税制度を利用するのかを検討し、必要となる書類の作成に取りかかる必要があります。
確定申告をしてないとばれる可能性が高い
確定申告しなくてもばれないのでは、と考える方もいるかもしれません。しかし確定申告しなかった場合、ばれる可能性が高いです。
税務署は、ありとあらゆる方法で申告漏れがないか目を光らせています。購入した人の反面調査や印刷業者への発注者などの情報をもとに、申告すべき金額が正しく申告されているかをチェックしているのです。
所得税の調査は、簡易なものも含めて年間60万件以上行われており、いつ調査の対象となってもおかしくありません。もし申告漏れが指摘されると、加算税や延滞税などのペナルティが課されるだけでなく、最悪の場合、所得税法違反で刑罰を受ける可能性もあります。
監修税理士からのコメント

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この記事の監修税理士

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