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無職でも確定申告するメリットとは?したほうがいい人や申請方法まで徹底解説!

最終更新日: 2023年12月19日

無職で無収入の場合、確定申告をする義務はありませんただし無職でも確定申告をすることで払いすぎた税金を返してもらえるケースや、確定申告しておかないと困るケースがあります。

本記事はいろいろなタイプの無職の方にスポットを当てて、確定申告をしたほうが良い場合、しなくても良い場合を紹介。申請方法まで分かりやすく説明します。

この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

 

無職の方が確定申告するメリット・デメリット

ポイント

そもそも確定申告とは、1年間の所得を「確定」して、所得税を「申告」する手続きです。

所得税と復興特別所得税(※1)については、対象年の1月1日~12月31日までの所得について翌年に確定申告を行います。

確定申告をした結果、追加で税金の納付が必要なら不足額の納税を、源泉徴収などで先に支払っている税金が多い場合には、払い過ぎた部分が還付金として戻ってきます

※1 東日本大震災からの復興に必要な財源を確保するため、2037年まで課税される税金

確定申告するメリットは税金の還付があること

現在無職の方が確定申告する代表的なメリットは、所得税が還付される可能性があることです。

もちろん全ての方が還付金を受け取れるわけではありませんが、その年の途中まで会社勤めで給与を受け取っていた方などは、還付される可能性が高いでしょう。また、所得税の還付を受けられない場合でも、確定申告をすれば国民健康保険料や住民税が安くなることがあるのは、見逃せないポイントです。

確定申告するデメリットは時間と手間がかかること

デメリットは、確定申告にかかる時間と手間でしょう。

ただし最近は、ネット上などで簡単に確定申告をできるように様々な環境が整備されています。案内に沿って正確に行えば、余計な時間をかけずに済むでしょう。

無職でも確定申告したほうがいい人

退職後の確定申告

現在無職でも、前年1月1日~12月31日の間に退職した方は、確定申告を行うことで還付を受けられます。また給与以外で一定額以上の収入を得ている方は、確定申告をしなければなりません。

無職でも確定申告を行うべき人を、パターン別に紹介します。

年末調整前に退職して無職になった方

年末調整前に退職され無職となった方は、確定申告をすることで還付金が返ってくる可能性が高いです。確定申告をすると良いでしょう。

これは毎月の給与から天引きされている源泉所得税の仕組みが要因です。源泉所得税は「毎月の給与が年間支払われた場合に納めるべき所得税額の見込み額」を12等分して毎月の給与から徴収されます。

つまり年の途中で退職した場合には退職後の給与が無くなるため、見込みで計算されていた所得税額が実際よりも多くなっているのです。年の途中で退職した方は、基本的に退職した会社で年末調整をしてもらえません。そのため確定申告をすれば所得税が還付される可能性も高くなるということです。

確定申告は前年1月1日~12月31日が対象期間のため、年度の変わり目に退職されていても対象である点に注意しましょう。

また年内に退職された方は、確定申告時に「社会保険料控除証明書」「国民健康保険料納付済みのお知らせ」「源泉徴収票」などが必要になる場合があります。こうした書類は大切に保管しておきましょう。

年の途中で退職退職して、退職金をもらった方

年の途中で退職して退職金をもらった後に無職となった方は、確定申告をすると良いでしょう。

理由は2つあります。1つは、前述した通り年の途中で退職したので、所得税の還付が見込めること。

もう1つの理由は、退職金についても、既に納めた税金が戻ってくる可能性があるためです。

企業が支払う退職金は給与と同様に、所得税や住民税を控除して支払います。本来、退職金は「分離課税」として他の所得とは分けて課税される仕組みです。そのため会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、その時点で所得税や住民税を控除され、退職金に関する課税関係は全て完了しています。

しかし、年の途中に退職した場合など、給与所得が少なくて控除しきれない所得控除等があるときには、退職所得から控除しきれない所得控除をすることが可能なのです。その場合、既に源泉徴収された退職金に係る所得税から還付を受けることができます。

なお会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、退職控除を受けられず一律で20.42%の源泉徴収が行われてしまっています。この場合も確定申告をして、還付を受けましょう。

関連記事:退職金は確定申告するべき?必要なケースと税金の計算方法【源泉徴収額がポイント】

無職だが、給与所得以外の所得がある方

無職で給与所得が無くても、別に48万円以上の所得(雑所得)を得ている場合は確定申告しなければなりません

全ての方が一律で控除を受けられる「基礎控除」は48万円のため、48万円を越えると確定申告の義務が発生します。

特に以下の所得がある場合、年間48万円を越える可能性が高いため注意しましょう。

  • 不動産所得 ex:) 土地や建物など、不動産の貸し付けによる収入
  • 山林所得 ex:) 山林を伐採、譲渡して得た収入
  • 譲渡所得 ex:) 土地や建物を譲渡してえられる対価

また海外の金融口座で利子所得を受け取る場合や源泉分離課税が適用されない一時所得など、一定の状況下で申告が必要になる所得もあります。

確定申告を忘れると無申告加算税や延滞税が課されるため、忘れずに申告するようにしましょう。もし期限を過ぎてしまっても、期限後2週間以内に自主的に申告をすれば無申告加算税は課されません。

なおフリーランスの場合、請求時に源泉徴収を事前に行っているため、所得が48万円以下であっても確定申告をすることで所得税を還付される可能性があります。

一定金額以上の年金を受け取っている方

公的年金をはじめとした年金は雑所得として扱われます。そのため退職後に年金生活をしている方は、確定申告が必要な場合があります

しかし年金受給者が増えていることなどを理由に、下記の条件を両方満たす方は申告が不要です。

  1. 老齢基礎年金や老齢厚生年金などの公的年金等の収入合計が年間400万円以下で、これらが全て源泉徴収の対象となっている
  2. 上記1.の公的年金等以外の所得の合計額が年間20万円以下

上記に当てはまらない年金受給者は確定申告を行わなければなりません

公的年金以外に個人年金(民間金融機関の保険金など)を受け取っている方は、一定の金額を越えると確定申告が必要となる場合がある点に注意しましょう。

ふるさと納税をした方

前年1月から12月の間にふるさと納税をした場合、無職であっても必ず確定申告をしましょう。

ふるさと納税を行うことで寄付金控除を受けられますが、確定申告を行わないとこの寄付金控除を利用できません寄付金控除とは、寄付額から2,000円差し引いた金額を所得から控除できる制度です。控除によって課税所得を減らし、所得税や住民税を下げられます。

ふるさと納税は寄付金控除に限度額が設けられていることに注意が必要です。この限度額を超えた分の寄付額は自己負担となり、控除されません。ふるさと納税をこれから行う場合には、限度額を確認しておくのがよいでしょう。

なお控除される所得がない場合は、ふるさと納税の恩恵が受けられないので注意してください。

1年間の医療費が10万円以上の方

年末調整後に退職していても、1年間でかかった医療費が10万円を超える場合、確定申告することで還付される可能性があります医療費控除は年末調整時に考慮されておらず、確定申告によって課税所得が再計算されるためです。

医療費控除は通算で年10万円以上の医療費(通院にかかった公共交通機関の交通費も含む)を実際に支払った場合に、その金額(実際に支払った医療費-10万円)が所得から控除される制度です。

また生計が同一の家族にかかった医療費も含めることができますので、一度医療費を確認してみるとよいでしょう。

無職で確定申告する必要がない人

考える男女

基本的に収入がない方、扶養されている方は確定申告をしなくても問題ありません。

ただし状況によっては必要となるケースがあるため、ご自身に当てはまるかどうかを確認しておきましょう。

1年間無職だった【確定申告したほうが良いケースも】

1年間無職で無収入だった場合は、確定申告をする義務はありません

これは、年間所得の合計額が所得控除の範囲内であれば確定申告が不要となるルールに基づきます。全ての方が一律で控除を受けられる「基礎控除」が48万円と定められているので、所得が48万円以下の方は確定申告をする必要がありません。

ただし1年間無職だった方でも、確定申告(または住民税の申告)をした方が良いこともあります

たとえば住民税は、所得に関わらず課税される「均等割」と所得額によって増減する「所得割」で構成されています。均等割は一定所得以下であれば非課税であるため、無収入の場合住民税が安くなるのです。

市町村によっては、確定申告を行っていない場合、非課税の適用を受けられないことがあります。そのため無収入であっても、収入が0円であることを示す確定申告を行うと安心でしょう。

親や配偶者に扶養されている

被扶養者にあたる方は、確定申告の必要がありません。働いている人に扶養されている妻や夫、子供は、扶養者の会社で年末調整されるためです。

ただし年間所得が扶養範囲の金額であるかどうかは注意が必要です。扶養範囲の金額は、給与収入が103万円、給与以外の雑所得の場合は48万円が対象となります。

個々のケースについては税理士に相談されることをおすすめします。ミツモアは無料の見積もりサービスでぴったりの税理士を見つけることができるので、心当たりの税理士がいないかたはお試しください。

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無職で確定申告をしないとどうなるの?

無職でも確定申告は必要なの?

無職でまったく収入を得ていない場合、確定申告をしないことによるペナルティはありませんそもそも確定申告は所得税を納めるための手続きなので、所得がない人は行わなくても良いのです。

ただし年の途中に退職した場合はすでに源泉徴収が行われているため、確定申告をしないと所得税の還付を受けられません。また確定申告で前年の収入を明らかにしないと、住民税や国民保険料を軽減できない恐れもあります。

このため確定申告の義務がなくとも、無職の方は確定申告をした方が良いと言えるでしょう。

また無職であっても、給与所得以外に一定の収入がある人は、確定申告の義務が発生します。確定申告の義務があるのにしなかった場合は無申告加算税や延滞税がかかるため、忘れずに申告しましょう。

確定申告の時期や方法

無職の方でも確定申告が必要となる場合について説明してきましたが、実際に確定申告が必要となるケースが多いことに驚かれたのではないでしょうか。

ここからは実際に確定申告を行う際の申請方法について分かりやすく説明します。

確定申告の時期

所得税の確定申告期間は毎年2月16日から3月15日までです。

その期間に、前年の1月1日から12月31日までの所得について確定申告書を管轄の税務署に提出し、追加の納税が必要な場合はその納付まで済ます必要がありますこの申告と納税の期限である3月15日が土日祝に当たる場合は、その次の平日が申告納税期限です。

還付申告は申告期間を過ぎていても可能

払い過ぎた税金が還付される「還付申告」については、申告対象となる年の翌年1月1日から5年間提出することができます。つまり万が一、還付申告書を出し忘れていた場合でも、5年以内であれば還付申告書を受理してもらえます。

ただし、納付すべき税金がある確定申告で申告期間を過ぎた場合には、過ぎた期間に応じて延滞税が課されるので必ず申告期間内に確定申告を行ってください

確定申告書を作成して、税務署に持参か郵送

「確定申告書の作成」と聞くと難しくて手間がかかるイメージがあるのではないでしょうか。しかし最近ではPCとインターネット環境があれば、国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用して簡単に作成できます。

作成した申告書を印刷して、税務署に持参するか郵送で提出すれば、手間も掛かりません。

なお手書きで作成する場合は、確定申告書を税務署や確定申告会場でもらうか、国税庁HPで印刷して記入しましょう。

自宅で確定申告を済ませるe-Taxも

確定申告には書類で提出する以外にも、「電子申告」という方法があります。

「e-Tax」と呼ばれる、国税庁の電子申告・納税システムを利用して確定申告書を提出する方法です。

マイナンバーカードか住民基本台帳カード(有効期限3年間)、そしてそれを読み取るスマホやICカードリーダライタなどのハードを用意する必要はありますが、一度操作方法を理解すれば、PC上で簡単に確定申告が完了できます。

ID・パスワードによる電子申告も可能(有効期限あり)

「IDパスワード方式」は税務署に行き、職員と対面の本人確認を行ったうえで発行される、IDとパスワードを用いて電子申告ができる制度です。

もともとIDパスワード方式は、マイナンバーカードが普及するまでの暫定措置として設定されました。2022年12月現在利用はできるようですが、いつ使えなくなるかわからない点に注意しましょう

確定申告書の作成手順をわかりやすく解説

パソコンを使う女性

「確定申告書の書き方がよく分からない」という話を聞きますが、意外と簡単に確定申告書を作成することが可能です。

それでは、実際に確定申告書等作成コーナーを利用した申告書の作成手順を、以下2つのケースで確認してみましょう。

  • ケース1.年の途中で退職し、退職金受領後は無職
  • ケース2.退職後は無職で、前年は年金収入のみの場合

ケース1.年の途中で退職し、退職金受領後は無職

最初は、1年の途中で会社を辞めて退職金を受け取り、その後は無職の方について説明します。

年末調整を受けていないので、確定申告をすれば払いすぎた税金が還付される可能性が高いです。手順は以下の通りです。

  1. 確定申告書等作成コーナーの画面で「作成開始」をクリックします。
    確定申告書作成コーナー
  2. 確定申告書を書面で作成するので、「印刷して提出」を選択します。
    確定申告書作成コーナー

  3. PC環境や利用規約を確認の上、画面右下の「利用規約に同意して次へ」をクリックします。
    確定申告書作成コーナー
  4. 所得税の確定申告書を作成するので「所得税」を選択
    確定申告書作成コーナー
  5. 生年月日を入力の上、申告内容に関する質問に沿って回答。今回は給与所得と退職所得があるケースなので「給与以外に申告する収入はありますか?」に「はい」を選択しましょう。青色申告等は関係ないので「いいえ」。予定納税額についても回答し、次に進みます。
    確定申告書作成コーナー
  6. 収入・所得金額の入力画面が出てくるので、「〇」で囲った給与所得と退職所得を順番に入力します。
    確定申告書作成コーナー
  7. まずは給与所得の入力です。源泉徴収票を準備して指示に従い源泉徴収票に記載のある項目を全て入力していきます。データで源泉徴収票を受け取った場合、取り込んで自動計算することも可能です。
    確定申告書作成コーナー
  8. 自分で入力する場合、上記の画面にて「入力する」をクリックし、指示通りに入力します。複数の源泉徴収票がある方は続けて入力できるので、「もう1件入力する」から同じように入力してください。入力が完了したら「次へ進む」をクリックします。
    確定申告書作成コーナー
  9. 一旦 6. の画面に戻るので、次は退職所得について入力します。退職所得の入力画面を開いて、源泉徴収票見本の内容を色分けされた通りに入力していきます。
    確定申告書作成コーナー源泉徴収票見本
  10. 退職所得の入力を終えると再度 6. の画面に戻るので、画面右下の「入力終了(次へ)」をクリックします。

  11. 所得控除の入力です。必要に応じて所得から控除される生命保険料や寄付金額を入力します。退職後に支払った国民健康保険料や任意継続の健康保険の保険料などは記載漏れが多い項目となっていますので特に注意が必要です。また、過去に未納だった国民年金を支払った場合には、支払った年に保険料控除を受けることができるので忘れずに入力してください。
    確定申告書作成コーナー

  12. 所得控除の入力が終わると税額控除の入力画面が出てきますが、退職した会社員の方は基本的に入力する項目はありません。何も入力しなくても「入力終了(次へ)」で先に進むことは可能です。
    確定申告書作成コーナー
  13. 所得税の計算結果が画面に表示されます。その後は指示に従って住所・氏名等を入力していくと申告書の印刷まで簡単にできます。
    確定申告書作成コーナー

ケース2.退職後は無職で、前年は年金収入のみの場合

  1. ケース1の1.~5.と同じ手順で入力していき、「収入金額・所得金額の入力」で「雑所得」の中の「公的年金等」を選択します。
    確定申告書作成コーナー
  2. 公的年金の源泉徴収票を用意し、「入力する」をクリックます。
    確定申告書作成コーナー
  3. 案内に沿って、源泉徴収票に記載されている通りに入力。書き終えたら右下に現れる「入力内容の確認」を押して閉じます。
    確定申告書作成コーナー

  4. 他の公的年金がある場合は「別の公的年金などを入力する」から入力。すべての公的年金の入力を終えたら「次へ進む」をクリックします。
    確定申告書作成コーナー

  5. もとの入力画面の右下ボタン「入力終了(次へ)」をクリックします。
    確定申告書作成コーナー
  6. ケース1 と同様に所得控除と税額控除の画面が出てくるので必要に応じて入力します。
    確定申告書作成コーナー

  7. 計算結果が画面上で確認できるので、印刷や保存を行いましょう。
    確定申告書作成コーナー

以上、2つのケースについて説明しました。

どちらも基本的には画面の指示に従って必要な項目を入力するだけで申告書を作成できます。

また、所得の選択が確定申告書を作成するポイントとなりますので、ご自身の所得に応じて選択するようにしてください。

作成が難しければ税務署や特設の確定申告会場へ

ここまで無職の方向けに確定申告書作成についてご説明してきましたが、「やはり難しい」と感じられる方は、税務署や特設の確定申告会場でレクチャーを受けながら確定申告を済ませると良いでしょう。

その際には、身分証や源泉徴収票が必要ですので、国税庁HPを参照して忘れないように準備してください。

監修税理士からのコメント

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

期中で会社を退職した場合には、年末調整を行われていないため、確定申告をする必要があります。確定申告をしない場合には、上記の記事のとおりご本人が損をしてしまうことが多いため、退職をされた年は、個人の確定申告をするいう認識をもっていただくと良いかと思います。

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ご紹介してきたように、無職でも確定申告をした方がお得になるケースは多くあります。

ご自身の状況を確認して、還付や保険料が安くなるチャンスを逃さないようにしてくださいね。

手続きが難しければ税理士に相談してみてください。無料相談を受け付けている税理士もたくさんいます。ミツモアなら無料で探すことができるので、一度使ってみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

風間優作(かざまゆうさく)1985年千葉県銚子市出身。兵庫県立大学大学院卒業。上場企業における経理を経験後、Big4監査法人や税理士法人にて、公認会計士・税理士としての実務を経て、独立開業を果たす。現在は会計監査やIPO実務だけではなく、所得税や法人税等の税務申告業務をスタートアップや中小企業向けに提供を行っている。