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【税理士監修】個人事業税は租税公課で経費になる!仕訳や時期も解説

最終更新日: 2023年03月13日

個人として事業を営んでいて一定以上の利益がある場合は、都道府県へ個人事業税を納付する義務があります。個人事業税は「租税公課」として経費になります。「税金だから経費にならないのでは?」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、印紙税のように経費計上できるのです。

この記事では、個人事業税の勘定科目や仕分け方法、経費算入時期や計算方法などについて見ていきます。

この記事を監修した税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

 

個人事業税は経費になる

個人事業税は経費になります
個人事業税は経費になります(画像提供:PIXTA)

個人事業税とは個人が営む事業のうち、地方税法などで定められた事業に対してかかる税金のことです。

2019年現在法定業種には70種類があり、ほとんどの事業が該当します。

個人事業税は経費になる

個人事業税は事業に関わる税金として、必要経費になります。

「印紙税を除く税金は経費にならない」と誤解されてる方も多いのですが、個人事業税は租税公課として経費計上することができるのです。

租税公課として経費に落とせる税金一覧

個人事業税は「租税公課」という科目で経費処理します。

そもそも租税公課とは、名前のとおり「租税」と「公課」の2つを処理するための科目を指し、次のように区別されます。

  • 租税:国や地方公共団体が法律などにより徴収する税金のこと。
  • 公課:国や地方公共団体などから課される会費や組合費、罰則金などのこと。

注意点としては、租税公課に該当するからと言って経費になるわけではないということです。租税公課の中にも、必要経費にできる租税公課と、必要経費にならない租税公課があります。必要経費になる租税公課の例は、印紙税や登録免許税、固定資産税、事業所税などの税金や、商工会議所の会費や組合費です。

<必要経費になる主な租税公課>

税金名 税金の概要
印紙税 契約書や領収書など印紙税法で定められた一定の課税文書に課せられる国税。
登録免許税 各種の登記や登録などを受ける時に課される税金。たとえばマイホームを買った時に、所有権の移転や保存登記をするために登記所で申請書を提出する時に納税する。
固定資産税 土地や家屋、会社で使っている機械や什器などで、減価償却費が税法上経費となる償却資産などに対する地方税。
事業所税 人口30万人以上の都市などで、都市環境の整備や改善に関する事業を費用に充てるための税金。
不動産取得税 土地や家屋を購入したり、家屋だけを新築・増築・改築したりした場合など、不動産を新たに取得した時にかかる地方税。
自動車税 自動車の所有者に対して都道府県が課す税金。自動車は乗用車・トラック・バスで区分され、営業用・自家用でも区分される。さらに総排気量によっても区分され、これら区分によって1年間の自動車税が決定する。
会費・組合費など 商工会議所や商工会、同業者組合商店街など、事業に関係する賦課金も租税公課として経費で落とせる。

上記は必要経費として計上できる租税公課ですが、必要経費にならない租税公課には、以下のようなものがあります。

<必要経費にならない租税公課例>

  • 所得税、相続税、住民税、国税の延滞税・加算税
  • 地方税の延滞金・加算金
  • 罰金、科料、過料など
参考:租税公課 | 国税庁

個人事業税の仕訳例と勘定科目

個人事業税の勘定科目は「租税公課」です
個人事業税の勘定科目は「租税公課」です(画像提供:PIXTA)

個人事業税が経費として落とせることが分かったところで、仕訳方法を確認しましょう。

個人事業税の勘定科目は「租税公課」

これまでにもお話ししてきたように、個人事業税の勘定科目は「租税公課」です。支払った税金を経費計上できるので、節税につながります。ただし、租税公課として支払った経費の消費税区分は「不課税」となります。

個人事業税の仕訳

個人事業税を支払った場合の仕訳例を見ていきましょう。

下記は、銀行口座(普通預金)から個人事業税を納付したケースです。

借方 貸方 摘要
租税公課 50,000円 普通預金 50,000円  個人事業税の支払い

個人事業税の納付と経費算入の時期

納税額が1万円以内の場合8月に一括で納めます
納税額が1万円以内の場合、8月に一括で納めます(画像提供:PIXTA)

この段落では個人事業税の納付時期や、経費算入時期を確認しましょう。また、事業を廃業した場合の計上方法についても見ていきます。

個人事業税を納付する時期

個人事業税の申告は、所得税の確定申告と同じ時期に行われます。具体的には、会計年度翌年の8月と11月に分けて過年度分を納付する形です。ただし納税額が1万円以内の場合は8月に一括で、1万円を超えた場合は8月11月の2回に分けて納めるのが一般的です。

個人事業税の納付方法については、納付書の裏などに記載されており、都道府県の税務事務所窓口や指定の銀行、コンビニでの支払いに応じてくれる場合もあります。銀行の口座引き落としを設定しておけば次の年からは自動的に引き落としてもらえるので、 手数料や手間がかからず便利です。

また、個人事業税のクレジットカード払いに対応してくれる都道府県もあります。ポイントが付くなどの理由から利用者が多い納税方法ですが、対応状況や利用条件は異なるため、事前に確認して検討するようにしましょう。

参考:個人事業税は「いつ」「誰が」「いくら」納める? | ミツモア

個人事業税の経費算入時期は「納付した年」

個人事業税の経費算入時期は「個人事業税を納付した年」ですので、過年度分の個人事業税を経費算入することになります。

たとえば令和元年分の所得についての確定申告を、令和2年の3月にしたとします。そうすると確定申告をした令和2年の8月頃に個人事業税の納付書が送付されてくるので、8月に納付します。個人事業税の経費算入時期は納付した年なので、この場合の経費算入時期は令和2年ということです。

廃業した場合は未払い計上で廃業した年の経費に

先ほど「個人事業税の経費算入時期は納付した年」と説明しましたが、例外として、個人事業を廃業した場合は「廃業した年」の経費に算入することができます

前年度の分+未払い計上で、大きな額を経費に算入することができるのです。手続きとしては、廃業後1か月以内に申告と納税が必要となります。ただし、廃業後1か月以内にこの手続きを忘れた場合は、確定申告時でも可です。

個人事業税の計算方法

個人事業税の計算方法や各種控除について確認しましょう
個人事業税の計算方法や各種控除について確認しましょう(画像提供:PIXTA)

個人事業税の仕訳例や経費算入時期が分かったところで、実際の個人事業税額はどのように計算するのでしょうか。

この段落では、個人事業税の計算方法や各種控除について見ていきます。

個人事業税の計算方法

個人事業税=(合計所得ー事業主控除ー繰越控除ー事業専従者給与)×税率

個人事業税は、上記の式で求めることができます。個人事業税は所得税のように、青色申告特別控除は適用されません。「事業主控除」や「繰越控除」など各種控除、「事業専従者給与」については、次の段落から見ていきましょう。

事業主控除

個人事業税には年間290万円の「事業主控除」があります

なお、事業を始めて1年未満の場合は、以下のような月割額で計算します。

事業を行った月数 事業主控除の金額
1 242,000
2 484,000
3 725,000
4 967,000
5 1,209,000
6 1,450,000
7 1,692,000
8 1,934,000
9  2,175,000
10 2,417,000
11 2,659,000
12 2,900,000
参考:個人事業税 | 東京都主税局

繰越控除

個人事業税の繰越控除には、以下の3種類があります。

①損失の繰越控除 青色申告者で損失が出た場合、翌年以降3年間繰越控除できます。
②被災事業用資産の損失の繰越控除 震災や風水害、火災などによって事業用資産の損失金額がある場合、翌年以降3年間繰越控除できます。この繰越控除は白色申告者が対象です。
③譲渡損失の控除と繰越控除  機械や装置、車両など直接事業の用に供する資産を譲渡したために生じた損失額について控除することができます。青色申告をした場合、翌年以降は3年間の繰越控除が使えます。

いずれの控除を適用する場合も、繰越控除が発生している旨を、事前に確定申告する必要があります。

事業専従者給与

個人事業税額を計算する際は、生計を共にする親族の給与を必要経費に算入できます。「事業専従者給与」は、青色申告と白色申告の場合で以下のように手続きが異なります。

青色申告の場合 白色申告の場合
控除の概要 給与全額を個人事業税の計算から控除できる 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
届け出 必要 不要
届け出の期限 青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで  –
参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除 | 国税庁

個人事業税の税率

基本的に税率は3~5%です
個人事業税税率は基本的に3~5%です(画像提供:PIXTA)

個人事業税の税率は、法律が定めた業種(法定業種)によって、3〜5%の範囲で異なります。

基本的に税率は3~5%

個人事業税のかかる法定業種は70種類あり、第1種事業から第3種事業まであります。

  • 第1種事業:税率5%。物品販売、飲食、金融、運送などが該当
  • 第2種事業:税率4%。畜産、水産、薪炭などが該当
  • 第3種事業:税率5%。コンサルや公認会計士などの専門職などが該当。ただしマッサージ・きゅう・その他の医業・装蹄師などは3%。

法定業種と税率をまとめたものが、以下の表です。

参考:個人事業税 | 東京都主税局

個人事業税のかからない業種もある

個人事業税がかかるかどうかは、営んでいる事業が法定事業に該当するかどうかで決まります。つまり、法定業種に含まれない業種には、原則、個人業事業税はかかりません

たとえばライターやプログラマー、画家、スポーツ選手、芸能人などは、法定事業のいずれにも該当しませんので、個人事業税は非課税です。しかし、仕事内容によっては請負業と判断され、個人事業税が課せられる場合もあります。

業種の判断は各都道府県税理事務所に委ねられているため、自分の仕事が個人事業税の課税対象となるかどうか不明な場合は、管轄の税務署に問い合わせてみるのが確実です。

監修税理士のコメント

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

個人事業税は事業そのものにかかる税金であるため「租税公課」として経費に入れることができます。消費税や固定資産税、不動産取得税、自動車税、印紙税なども経費にできます。所得税、相続税、都道府県民税、市町村税、住民税、延滞金や加算金などは事業ではなく、事業主の個人にかかる税金になります。これらの税金は事業には関係ないので、経費としての処理はできません。「事業主貸」として処理することになります。

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この記事を監修した税理士

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