マイホームを持つことはサラリーマンにとってひとつの夢ですよね。子供が大きくなり、会社でも順調に出世してくるとそんな夢も現実味が帯びてきます。「でも、出来るだけ費用を抑えられるなら抑えたい、、」そんな皆様に「住宅ローン控除」という制度をご紹介します。
複雑な制度内容ですが、うまく活用できれば年間40万円の減税効果を生む「住宅ローン控除」。近年話題のふるさと納税も活用すれば、より減税できる可能性もあります。これを機会にマイホームの夢を叶える一歩を踏み出しましょう!
この記事を監修した税理士
多田紘大税理士事務所 – 兵庫県
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は住宅を購入したい人の負担を減らす目的で始まったものであり、年末の住宅ローン残高の1%が所得税から還付される制度です。適用を受けるには購入する物件や住居の改築内容など一定の要件を満たす必要があるほか、様々な条件も定められています。詳しくみていきましょう。
所得税が還ってくる
住宅ローン控除は本来納めるべき税金から一定額が差し引かれるものであり、「減税」と同じ意味合いと考えてよいでしょう。年末に金融機関から発行される「住宅ローン残高証明書」のローン残高に応じて計算され、その年に納めた所得税から還付されます。
サラリーマンであれば、最初の年は確定申告をして還付金を受け取る必要がありますが、初年度以降は年末調整で計算されて控除限度額内の所得税が還ってきます。個人事業主の場合は毎年、確定申告しなければなりません。また、所得税が控除限度額に満たず控除しきれなかった分は住民税から控除されます。
10年間で最大400万の減税効果
現行の住宅ローン控除は期間10年で各年最大40万円まで控除可能で、10年間の減税効果は最大400万円です。
控除限度額は「住宅ローン年末残高×控除率1%」で計算されます。年末ローン残高が3,000万円であれば、1%の30万円が控除額です。5,000万円の場合の1%は50万円ですが、各年最大40万円が控除限度額であるため、この場合は40万円となります。
ただ、住宅ローン控除はあくまで納めた所得税が還付される制度であるため、納めた税金以上に還付されるわけではありません。例えば、納めた税金が所得税と住民税を合わせて20万円の場合、限度額が40万円だとしても還付されるのは20万円までです。
また、令和元年10月の消費税10%引き上げ対策として、令和元年10月1日から令和2年12月31日までに居住を開始する方は、控除期間が現行の10年から13年に延長されることが決まっています。
しかし、居住を開始するのが令和元年10月1日以降であっても、2019年3月31日(指定日)までに請負契約が完了している場合には消費税率8%が適用され、控除期間が10年のままであることに注意しましょう。
(参考:国土交通省)
適用には様々な条件がある
住宅ローン控除の適用を受けるには様々な条件をクリアしなければなりません。大きくわけて「住宅ローン控除を受ける人の条件」「住宅に関する条件」「ローンに関する条件」の3つに分類されます。
以下でそれぞれ詳しく解説しましょう。
住宅ローン控除を受ける人の条件
住宅ローン控除は住宅をローンで購入した人に適用される税の優遇制度ですが、誰もが無条件に適用を受けられるものではありません。「住宅ローンの返済期間が10年以上」「工事後(引き渡し後)6カ月以内に入居している」「合計所得額が3,000万円以下」などの条件があるのです。
工事後6ヶ月以内に入居していること
住宅ローン控除の適用を受けるには、工事の完了後6カ月以内に入居している必要があるほか、適用を受ける年度の12月31日までに居住していなければなりません。一般的に、居住を開始した日付は住民票の移動日で判断されるため、住宅の引き渡しを受けたら速やかに住民票を移動しておきましょう。
ただ、何らかの事情により転入・転出届けの手続きを行えない場合もあります。その場合は「6カ月以内に入居している」事実を証明できれば問題ありません。例えば、電気料金やガス料金の領収書などが具体的な証明として認められます。
合計所得額が3,000万円以下
合計所得額が3,000万円以下でなければ住宅ローン控除は受けられません。住宅ローン控除は住宅を購入したい人の負担を減らすのが本来の目的であり、合計所得額が3,000万円超の高額所得者に優遇措置は不要とされているわけです。
合計所得額には、本業や副業などで得た給与所得のほか、申告分離課税の適用を選択した上場株式の配当所得・利子所得、先物取引で得た雑所得、山林所得、退職金所得金額が含まれます。ここで注意が必要なのは「年収」ではなく「所得」であること。各種所得控除を差し引いた「課税所得」が対象なので注意してください。
また、一度適用を受けられなかった年度があっても、再び合計所得額が3,000万円以下であれば、その年度については適用されるので覚えておきましょう。
確定申告を行うこと
住宅ローン控除の適用を受けるには、毎年確定申告を行う必要があります。確定申告では1年間に得た所得から各種控除を差し引いた課税所得に基づいて、所得税を納付、また還付を受けます。個人事業者は毎年必ず確定申告する必要がありますが、サラリーマンの場合は年末調整で精算されるため、原則不要です。
ただ、住宅ローン控除の適用を受けるにあたっては、年末調整されているサラリーマンも適用を受ける初年度に限り確定申告しなければならないと定められています。2年目からは金融機関から発行される「年末残高証明書」と、1年目の確定申告後に税務署から送付される「住宅借入金等特別控除申告書 兼 証明書」を勤務先に提出すれば、年末調整で還付金を受け取れます。
住宅の条件
住宅ローン控除の適用は、あらゆる住宅が対象になります。また、増改築やリフォームでも控除を受けることが可能です。ただ、「新築住宅を建てる場合」「中古物件を購入する場合」「増築・リフォームする場合」のそれぞれに個別の条件が定められているので、確認しておきましょう。
登記簿に登録されている床面積が50平米以上
新築住宅や中古住宅、増改築にかかわらず、床面積が50平米以上なければ住宅ローン控除の適用は受けられません。ちなみに50平米とは、畳数でいえば約30畳です。間取りでいえば2LDK、または1JDKが目安。つまり、ワンルームや1Kのマンションでは、住宅ローン控除を受けられない可能性が高いと言えます。
この床面積ですが、「登記簿に登録されている床面積」であることに注意が必要です。
一般的に、売買契約書に記載される床面積と登記簿に記載される床面積は異なります。例えば、マンションの床面積の算出方法では、壁の内側側からの床面積である「内法」と、壁の中心からの床面積「壁芯」がありますが、登記簿では壁芯より面積が少なく算出される内法が採用されます。
また、マンションの場合はバルコニーやベランダは共有部分で床面積には含まれないため、住宅を購入する際には事前に確認しておきましょう。
床面積の1/2以上が自分の居住用
建物の床面積の1/2以上が購入者自身の居住用でなければ、住宅ローン控除の適用は受けられません。新築住宅・中古住宅・増改築のすべてにおいて適用される条件です。一般的な住宅では当てはまりませんが、一部を店舗や事務所として使用したい場合には注意が必要です。
中古物件の場合
中古物件の場合は上記でご説明した条件のほか、以下の条件のいずれかを満たした建物でなければなりません。
- 鉄筋コンクリート造など耐火基準を満たした築年数25年以内の建物
- 木造など耐火基準を満たしていないが築年数20年以内で耐震基準を満たした建物
- 耐震基準適合証明書を取得している建物
- 住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得している建物
- 既存住宅売買瑕疵(かし)保険に加入している建物
また、「生計を一にする親族などから購入した建物ではない」「贈与された建物でない」ことも条件となります。
リフォームの場合
増改築やリフォームでも条件を満たしていれば、住宅ローン控除の適用を受けられます。新築・中古物件の条件に加えて、下記の条件のすべてを満たしていなければなりません。
- 契約者自身が所有している物件で居住する住宅のリフォームであること
- 一定の省エネ改修工事・バリアフリー改修工事であること
- 増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕又は大規模の模様替えの工事であること
- マンションなどの区分所有建物のうち、その人が区分所有する部分の床、階段又は壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
- 家屋のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関又は廊下の一室の床又は壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
- 建築基準法施行令の構造強度等に関する規定又は地震に対する安全性に係る基準に適合させるための一定の修繕・模様替えの工事
- 工事費用が100万円超であること
- 1/2以上が居住用のリフォームであること
また、中古住宅を新たに購入してリフォームする場合には、以下の条件も満たさなければなりません。
- 築20年以内の木造住宅または耐火基準満たした築25年以内の住宅であること
- 耐震基準適合証明書や住宅性能評価証明書を取得している住宅であること
- 既存住宅売買瑕疵保険に加入していること
ローンの条件
住宅を購入する際に利用するローンのすべてが、住宅ローン控除の対象となるわけではありません。控除の適用を受けるためには以下でご説明する要件を満たす必要があります。詳しくみていきましょう。
ローンの返済期間が10年以上
住宅ローン控除の適用条件のひとつが「10年以上の住宅ローンを利用すること」です。返済期間が10年に満たない住宅ローンでは控除を受けられません。
借入先に注意
借入ができる範囲は以下のように定められています。
- 民間の銀行や信用金庫などの金融機関
- 農業・漁業共同組合など
- 独立行政法人住宅金融支援機構
- 地方公共団体
- 公務員共済組合など
- 生命保険会社・損害保険会社など
- 住宅資金の長期貸付を行う法人
- 勤務先からの借入
親族などからの個人的な借入金は範囲に含まれないほか、中古住宅を購入した際に前所有者から引き継いだ債務なども原則は認められないので注意してください。
金利が年0.2%以上
ローン金利が年0.2%以上でなければなりません。特に、給与所得者が勤務先の事業団体等から低金利で借り入れる場合には注意してください。また、役員が会社から借り入れた場合は住宅ローン控除の対象になりません。さらに、利子の補助を受ける場合には、利子補給額を控除した際の利息が年0.2%以上と定められています。
どのくらい控除できる?
住宅ローン控除は年間最大で40万円が控除される制度ですが、実際にどの程度所得税が控除されるのかは、課税所得額や借入額によって異なります。具体的なシミュレーションを交えながらご説明していきましょう。
払った所得税が戻る
住宅ローン控除の適用から10年間、各年の年末時ローン残高の1%、最大40万円が所得から控除されます(2019年10月に消費税が予定通り10%に増税された場合には、拡充措置適用で13年間に延長)。
ここで注意が必要なのが、必ずしも毎年40万円が控除されるわけでないことです。40万円の上限いっぱいの控除を受けられるのは、年末時のローン残高が4,000万円を超えていることに加えて、その年の所得税と住民税の合計額が40万円を超えていなければなりません。
住民税も控除されるかも
住宅ローン控除額は所得税から控除されますが、適用を受ける年の所得税が控除限度額に達していない場合は引ききれないため、残りの分は住民税から控除します。例えば、控除限度額上限である40万の控除を受けられる場合に所得税額が35万円なら、残り5万円は住民税から控除されるわけです。
ただ、住民税には下記のように控除限度額が設けられているので注意してください。また、住民税額は課税所得が確定してから算出されるため、翌年度分からの控除となります。
消費税率 | 控除限度額 |
消費税8%また10%(※1) | 所得税課税総所得金額×7%(最高136,500円) |
上記以外(※2) | 所得税の課税総所得金額×5%(最高97,500円) |
※1 適用期間:居住開始日が平成26年4月1日~令和3年12月31日
※2 適用時期:居住開始日が~平成26年3月31日まで
入居した年に注意
現行の住宅ローン控除で定められている内容については、令和3年12月31日までの居住分に適用されます。しかし、入居した年によっては、控除額や期間、適用条件等が変更される場合もあるため注意が必要です。
これまでも経済状況などや景気の悪化等によって、控除限度額や期間などが変更されてきました。実際に、消費増税が実施される令和1年10月からは、令和3年12月31日までに入居した分については適用期間が10年から13年に延長されることが決定しています。
住宅ローン控除は経済状況、社会情勢によって内容が変更されやすい制度であるため、住宅を購入する際には最新の情報をチェックをするよう心がけましょう。
【具体例】年収800万、2,000万の家を購入
では、具体的に住宅ローン控除を利用した場合のシミュレーションを行ってみましょう。
条件は以下で設定します。
- 年収:800万円
- 課税所得:400万円
- 住宅価格:2,000万円
- 借入:1,500万円を借入年数20年、固定金利2%で借入
初年度の年末ローン残高を1,500万円とした場合の控除限度額は、1,500万円×1%=15万円です。課税所得400万円の場合、年間の所得税は40万円程度になるため、控除額を引ききれないということはありません。
上記の借り入れ条件の場合、1年毎に年末ローン残高が91万円ずつ減っていきますが(端数は省略)、10年間同じ条件で控除を受けた場合は下記のようになります。
年末ローン残高 | 住宅ローン控除額 | |
初年度 | 1,500万円 | 150,000円 |
2年目 | 1,410万円 | 141,000円 |
3年目 | 1,319万円 | 131,900円 |
4年目 | 1,228万円 | 122,800円 |
5年目 | 1,137万円 | 113,700円 |
6年目 | 1,046万円 | 104,600円 |
7年目 | 955万円 | 95,500円 |
8年目 | 864万円 | 86,400円 |
9年目 | 773万円 | 77,300円 |
10年目 | 682万円 | 68,200円 |
このケースの場合、10年間の住宅ローン控除総額は、109万1,400円です。
他の優遇制度との併用
住宅ローン控除以外にも、「3,000万特別控除」や「ふるさと納税」など、所得税と住民税を減税する効果が期待できる優遇制度があります。これらの優遇制度は住宅ローン控除と併用できる制度と、できない制度があるため注意が必要です。また、併用できる場合でも注意点があるので確認しておきましょう。
3,000万特別控除
3,000万特別控除とは、個人が住宅を売却した際の譲渡所得税と住民税を軽減してくれる制度です。住宅ローン控除の利用で注意が必要なのが、3,000万特別控除を利用した後に住宅を購入する、つまり買い替えのケースです。
売却と購入を同時期に行う買い替えでは、3,000万特別控除と住宅ローン控除の併用はできません。どちらか一方を選択する必要があります。
ふるさと納税
ふるさと納税は応援した自治体に寄付をし、謝礼として返礼品を受け取る制度です。住宅ローン控除とふるさと納税は併用可能ですが、注意しなければいけないポイントがあります。
ふるさと納税で各自治体に納めた金額は、寄附金控除として所得税と住民税から控除されます。住宅ローン控除と併用した場合、先にふるさと納税分から所得税の控除が行なわれる決まりになっており、ふるさと納税を行うほど住宅ローン控除で控除できる分が目減りしてしまうのです。
ただ、ふるさと納税には確定申告せずに寄附金控除を受けられる「ワンストップ特例制度」があります。ワンストップ特例制度では控除の対象が住民税のみとなるため、住宅ローン控除で利用できる所得税額は変わりません。
ワンストップ特例制度の利用は年間5自治体までと限られているため、住宅ローン控除とふるさと納税の減税効果をしっかりと吟味した上で活用することが重要です。
ただし、ワンストップ特例制度が使えるのは確定申告不要の場合に限られます。住宅ローン控除1年目の場合は、確定申告する必要があるため、ワンストップ特例制度を使うことができない点には注意が必要です。
所得税・住民税に関わる優遇制度を併用する際は気をつけよう
住宅を売却して損失が発生してしまった場合に、損失を最高3年間繰り越しできる「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」を利用する場合にも注意が必要です。
「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」では住宅の売却損を所得から控除できるため、仮にその年の課税所得額を超えていれば所得税がゼロになり、住民税も均等割分(所得額に関わらず納付が義務付けられているもの)だけを納付するだけで済みます。
つまり、「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の利用で課税所得が目減りする分、住宅ローン控除を利用する余地が少なくなるわけです。この「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と住宅ローン控除は併用可能です。
住宅ローン控除を最大限利用しよう
さて、ここまで住宅ローン控除についてご説明してきました。様々な条件があり、なかなかイメージのわかない方もいらっしゃると思います。以下でご紹介することを理解していれば住宅ローン控除を最大限に活用する手助けとなるので、一緒に確認して行きましょう。
自分の所得税、住民税を知ろう
一般的なサラリーマンは確定申告をする必要がないため、自分の所得税や住民税について無頓着になっている場合もあるかもしれません。しかし、住宅ローン控除を上手く活用して減税の恩恵を受けたいのであれば、自分が納めている税金を確認した上で、上限金額の計算や優遇制度の併用について検討する必要があるでしょう。
源泉徴収票で控除額を確認してみよう
自分の課税所得や控除額などは、年末に勤務先が発行する源泉徴収票で確認できます。
画像にある矢印の「源泉徴収税額」を確認しましょう。この欄に記載されているのが、その年度に納める所得税です。
出典:国税庁
適用前に一度税理士に相談しよう
住宅ローン控除ではさまざまな条件が定められているため、複雑に感じる場合もあるでしょう。しかし、最大限に控除の恩恵を受けるためには個々の条件を理解すると同時に、他の優遇制度を併用すべきなのかなどのポイントも押さえておかなければなりません。
もし、わからないことがあれば、税金のプロである税理士に相談するのがおすすめです。住宅ローン控除の適用を受ける前に、ぜひ一度税理士に相談してみましょう。
監修税理士のコメント
多田紘大税理士事務所 – 兵庫県
住宅ローン控除は税額控除という位置づけのため、通常、控除額全額がそのまま減税効果を有することになるため影響が非常に大きいと考えられます。マイホームの購入(増改築含む)の際は住宅ローン控除が適用可能かどうか、住宅ローン控除制度の恩恵を最大限生かすことができるかをあらかじめ確認しておくことが重要です。
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