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【税理士監修】賞与にかかる所得税の基礎から計算方法まで!

最終更新日: 2024年08月19日

”ボーナス” ”夏期手当” ”年末手当”……なんだか嬉しい響きですね。しかし、よくよく賞与の源泉徴収表を見てみると、通常もらえるはずの金額から、多額の所得税が引かれている!なぜ、こんなにも所得税を支払わなければならないのか?この金額は妥当なのか?そんな、疑問を抱いたことはありませんか?

そんな疑問を解決すべく、賞与とはなにか?賞与の所得税の計算方法はどうなっているのか?など、賞与や所得税について詳しく解説していきます。

この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

風間優作(かざまゆうさく) 1985年千葉県銚子市出身。兵庫県立大学大学院卒業。 上場会社経理部にて経理実務を経験した後、Big4監査法人及び税理士法人にて、公認会計士・税理士としての実務を経験し独立開業。現在は会計監査やIPO支援だけではなく、個人・法人の税務から売上アップ・資金繰りコンサルなど幅広く対応している。

賞与について

通常の給与を受け取る前にも、賞与を受け取る前にも引かれている所得税。そもそも賞与とは何なのか?なぜ給与と賞与、別々に所得税が引かれるのか?そんな皆様の疑問を解決していきます。

賞与とは

まず、賞与とは具体的に何を指すのでしょうか?

一般的には「ボーナス」や「特別手当」などと呼ばれる特別な給与のことです。以下に一般的によく使われる表現を挙げます。

〈賞与例〉

  • 賞与
  • ボーナス
  • 夏期手当
  • 年末手当
  • 期末手当
  • あらかじめ支給額または支給基準の定めのないもの 等

※年3回以下の臨時の支給金(4回以上は「給与」と同じ扱いになる)

〈賞与例〉からも分かるように、「賞与」とは、定期の給与とは別に支払われる、臨時の支給金・給与等のことを意味しています。ただし、年に4回以上の臨時支給金は「給与」とみなされます。

一般的な所得税とは違う

給与と賞与では、別々の給与明細と源泉徴収表が存在しています。同じ支給金なのに、なぜ所得税まで別々に差し引かれているのでしょうか?それは、給与の所得税と賞与の所得税の計算方法が違うからです。

【給与の所得税】:その月の給与によって決まる。以下のステップで所得税を求めます。

  1. 収入 – 経費(給与所得控除等)=所得
  2.  所得 – 所得控除=課税所得
  3. 課税所得×税率=所得税額
  4. 所得税額 – 税額控除=納税額

※給与所得者は必要経費の代わりに給与所得控除が認められています。

つまり、4の「納税額」が給与所得者の納める「所得税」になります。

【賞与の所得税】:前月の給与を基準にして税率が決まる。

基準となる給与の月が変わってくるのが、大きな違いです。さらに、賞与の所得税には様々なシチュエーションによっても、計算方法が変わってくるので詳しく見ていきましょう。

賞与にかかる所得税の計算方法

賞与の所得税は、以下の3つのステップから求めることができます。

  1. 前月の給与から社会保険料を引く
  2. 賞与から社会保険料を差し引く
  3. 扶養家族の和から税率を求める

では給与明細と賞与明細の見方と共に、それぞれの計算を詳しく解説していきます。

金額はあくまで例ですので、今回は各明細のどこを見れば良いかに注目してください。

1.前月の給与から社会保険料を引く

まず、所得税の課税対象額を求めることから始めます。所得税の課税対象額は、以下の方法で計算します。

(前月の給与) – (社会保険料等)=所得税の課税対象額
給与明細の見方を説明するための表
給与明細(例) (画像作成:ミツモア)

(1)給与とは、基本給に住宅手当や交通費なども含めて、全てもらえる金額。つまり、総支給額のこと

(2)社会保険料は、健康保険や厚生年金、雇用保険、介護保険等の合計のこと

給与明細(例)から

(1) – (2)=課税対象額

21万円 – 3万円=18万円

前月の給与から社会保険料を引いた金額は、18万円となります。

2.賞与から社会保険料を差し引く

次に、賞与の課税対象額を求める必要があります。賞与の課税対象額は、以下の方法で計算します。

(前月の給与) – (社会保険料等)=所得税の課税対象額
賞与明細の見方を説明するための図
賞与明細(例) (画像作成:ミツモア)

(3)賞与とは賞与査定分も含めて、全てもらえる金額。つまり、総支給額のこと

(4)社会保険料は、介護保険や厚生年金、健康保険、雇用保険等の合計のこと

賞与明細(例)から

(3)ー(4)=賞与の課税対象額

32万円ー5万3,000円=26万7,000円

賞与から社会保険料を差し引いた金額は、26万7,000円になります。

3.扶養家族の人数から税率を求める

賞与から社会保険料を差し引き、賞与の課税対象額を出したあとは、扶養家族の人数から、賞与の税率を求めます。

計算には、「扶養家族の人数」と「1.前月の給与から社会保険料を引く」で求めた、「所得税の課税対象額」が必要になってきます。扶養家族にかかる税率は、国税庁が公開している「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表(平成30年分)」に当てはめて考えることで、求めることができます。

では、以下のシチュエーションの場合の、表の見方について考えていきましょう。

  • 扶養家族:1人
  • 前月の給与:21万円
  • 社会保険料等:2万円

賞与に対する源泉徴収額の税率の見方を説明するための図

表(国税庁より)賞与に対する源泉徴収額の算出率の表(平成30年分) (画像編集:ミツモア)

  1. 扶養家族は1人なので、扶養家族欄の「1人」の縦列を見ます
  2. 前月の給与(21万円) – 社会保険料等(2万円)=所得税の課税対象額(19万円)なので、9万4,000円以上24万3,000円未満に当てはまります
  3. ②で当てはまる行を見ていくと、賞与にかかる税率が2.042%ということがわかります。

扶養家族が1人、所得税の課税対象額が18万円の場合の税率は2.042%と、求められました。

実は、まだ終わりではありません。1〜3の計算が終わったところで、ようやく賞与の所得税を求めることができます。

計算式は、以下の通りです。

◆(賞与 – 社会保険料)×税率=賞与の所得税

これまで計算してきた例を元に計算していきます。

(賞与 – 社会保険料)=26万7,000円(2.賞与から社会保険料を差し引く より)

税率=2.042%(3.扶養家族の人数から税率を求める より)

これを計算式にあてはまると

26万7,000円×2.042%=5,452円14・・・

となります。

小数点以下は切り捨てて考えますので、賞与の所得税は5,452円と求められます。

状況別の賞与計算シミュレーション

いくつかのシミュレーションを元に、一緒に計算していきましょう!

ここまで給与明細と賞与明細から計算に必要な金額の見方と、計算方法について解説してきました。それでもまだよく理解できないという方、ご安心ください。一緒に計算しながら理解できるように、ここからは、様々なシチュエーションに合わせて実際に計算をしていきます。

ぜひ、計算機を準備して、一緒に計算してみてください。そうすれば、より理解が深まり、自分のことに置き換えながら考えることが、できるようになるはずです。

その1:一般的な場合

ごく一般的な、以下のシチュエーションを想定して、これまで紹介してきた計算方法に当てはめながら計算していきます。

     〈前月に収入があり、扶養家族が1人の場合〉
前月の給与 30万円
給与にかかる社会保険料等 4万円
賞与 50万円
賞与にかかる社会保険料等 8万円

(1)前月の給与ー社会保険料:30万円ー4万円=26万円

(2)賞与ー社会保険料:50万円ー8万円=42万円

(3)扶養家族1人、前月の給与26万円:24万3,000円以上28万2,000円以下の税率=4.084%(※1)

扶養家族1人、24万3,000円以上28万2,000円以下の税率=4.084%の説明をするための図
※1 参照 表(国税庁より)賞与に対する源泉徴収額の算出率の表(平成30年分) (画像編集:ミツモア)

(1)〜(3)で必要な金額を計算しました。最後に、いよいよ賞与の所得税を求めることができます。

計算式:(賞与 – 社会保険料)×税率

◆42万円×4.084%=17,152円80

小数点以下は切り捨てなので、この場合、17,152円の賞与所得税となります。

その2:前月に収入がない場合

この場合は、前月に収入があった場合と変わってくるため、先に計算方法から見ていきましょう。

(1)(賞与 – 社会保険料)÷6

(2) (1)の金額を「月額表」に当てはめる

(3) (2)×6

 

では、これを踏まえて、以下のシチュエーションで計算していきましょう。

      〈前月に収入がなく、扶養家族がいない場合〉
前月の給与 0円
賞与 100万円
社会保険料等 16万円
扶養家族 0人

(1)(100万円 – 16万円)÷6=14万円

(2)  扶養家族0人、(1)の金額14万円:13万9,000円以上14万1,000円以下なので、税額は2,680円

扶養家族0人、13万9,000円以上14万1,000円以下なので、税額は2,680円ということを説明するための図
(2)の参照 (画像作成:ミツモア)

(3) 2,680×6=1万6,080円

この場合は1万6,080円の賞与所得税となります。

その3:前月給与の10倍以上賞与をもらう場合

この場合も、今までの求め方とは変わってくるので、先に計算方法から見ていきましょう。

(1)(賞与 – 社会保険料等)÷6

(2)  (1)+(前月の給与ー社会保険料)

(3)  (2)の金額を「月額表」に当てはめる

(4)  (3)ー前月の給与に対する源泉徴収税額(月額表を確認)

(5)  (4)×6

では、先程と同様、この計算方法を踏まえて以下のシチュエーションで計算していきましょう。

 〈前月給与の10倍以上の賞与をもらい、扶養家族が2人いる場合〉
前月の給与 30万円
社会保険料等 2万円
賞与 300万円
扶養家族 2人

(1)(300万円 – 30万円)÷6=45万円

(2)  45万円+(30万円 – 2万円)=73万円

(3)  扶養家族2人、②の金額73万円:72万8,000円以上73万1,000円以下の税額=5万7,870円

扶養家族2人、72万8,000円以上73万1,000円以下の税額=5万7,870円を説明するための図
③参照 (画像作成:ミツモア)

(4)  5万7,870円 – (前月の給与に対する源泉徴収額:4,370円)=5万3,500円

扶養家族2人、27万8,000円以上28万1,000円以下=4,370円を説明するための図
(4)()内参照:前月の給与から。27万8,000円以上28万1,000円以下、扶養家族2人 (画像作成:ミツモア)

(5)  5万2,740円×6=31万6,440円

この場合は、31万6,440円の賞与所得税となります。

賞与にかかる所得税:まとめ

賞与にかかる所得税は、このように様々な計算方法によって求められています。大体が正しい所得税を徴収しているので心配する必要はほとんどありません。しかし、給与明細や賞与明細を見て少しでも疑問に感じるようであれば、今回解説した計算方法を用いて、賞与にかかる所得税を自分で計算してみてください。

もし「やっぱり、自分で確かめるのは不安だけど、あっているかどうしても確かめたい」という方は、プロに相談してみることをオススメします。

監修税理士からのコメント

 賞与は従業員として支給されている状況では、どのような計算式の元に支給額が計算されているかを厳密に理解していないことが多いかと思いますが、いざ自分で計算をして支給額を算出するとなると、実際には、社会保険料控除があることや、前月の給与の支給実績や金額に応じて源泉徴収すべき所得税の金額が変化することを理解できたのではないでしょうか。賞与を支給される際には本記事を参考にして、間違いのないように支給額を計算し、源泉徴収をおこなっていただければと存じます。

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