法人化を検討している事業主にとって、税金の知識は必要不可欠です。十分な知識がないまま法人化を行うと、税金の処理を全て税理士に丸投げせざるを得なくなります。法人に課せられる税金の種類や支払う時期、それぞれの税率などを確認しましょう。
法人にかかる税金の種類
法人に課せられる税金は、全部で12種類です。黒字・赤字に関係なく、事業を展開していれば必ず負担する税金もあれば、法人の所得額に応じて納税額が変わる税金もあります。法人が支払う税金の種類を確認しましょう。
法人税
法人税とは事業活動の成果として会社が得た利益に対して課される国税です。納税額は会社の所得金額に税率をかけ、その値から税額控除額を引いて求めます。
所得金額にかける税率は、法人の区分によって以下のように異なります。
適用除外事業者以外の資本金1億円以下の普通法人 | 課税所得金額が年800万円以下の部分 | 15% |
---|---|---|
課税所得金額が年800万円超の部分 | 23.20% | |
資本金が1億円を超える普通法人 | 23.20% |
法人住民税
法人住民税は法人の事業所が所在する自治体に納める地方税です。地域社会の維持に必要な費用を、法人にも負担してもらうための税金です。
法人住民税は税率が課税所得額に左右される『法人税割』と、資本金の額や従業員数に応じて決まる『均等割』で構成されています。
法人住民税の税率は自治体によって異なります。例えば東京都の法人税割の税率は、23区内に事業所がある場合は7.0%、市町村に事務所がある場合は1.0%です。
法人事業税
法人事業税とは法人が事業を展開する地域の自治体に納める地方税です。法人事業税には『所得割』『付加価値割』『資本割』『収入割』の4種類がありますが、資本金1億円以下の法人は、基本的に所得割のみの負担となります。
税率は都道府県によって異なります。例えば東京都の場合、軽減税率適用法人の普通法人が負担する所得割の税率は以下の通りです。
事業税の区分 | 税率 |
---|---|
年400万円以下の所得 | 3.5% |
年400万円超かつ年800万円以下の所得 | 5.3% |
年800万円超の所得 | 7.0% |
特別法人事業税
特別法人事業税は自治体間の財政力格差を抑制する目的で創設された国税です。国税でありながら、地方税である法人事業税と併せて申告・納付するのが特徴です。
適用される税率は法人の種類によって異なります。一例は以下の通りです。
法人の種類 | 税率 |
---|---|
外形標準課税法人・特別法人以外の法人 | 37% |
特別法人 | 34.5% |
小売電気事業や発電事業または特定卸供給事業を行う法人 | 40% |
納める税額は基準法人所得割額または基準法人収入割額に、税率をかけて求めます。
地方法人税
地方法人税とは法人が事業で得た利益に対して課せられる税金です。自治体間の税収格差をなくす目的で、2014年の税制改正時に誕生しました。
地方法人税は名前に『地方』と付くものの、税金を納める先は『国』であり、国税に分類される税金です。国に納められた地方法人税は、国から各自治体に分配される地方交付税の財源となります。
地方法人税の税率は10.3%です。法人税を納める際に導き出した法人税額に、税率をかけて納税額を算出します。
消費税
消費税は商品やサービスを購入した消費者に課税される税金です。消費税は間接税であり、実際に消費税を国に納めるのは、消費者から消費税を受け取った事業者です。
消費税は一定の条件を満たすと、納税義務が免除されます。基準期間の前々事業年度において課税売上高が1,000万円以下だった法人や、資本金が1,000万円未満の新規設立法人には納税義務がありません。該当する新規設立法人は1期目と2期目について、納税が免除されます。
消費税の税率は10%です。国税の消費税分7.8%と地方税の地方消費税分2.2%で構成されています。
固定資産税
固定資産税は土地や建物などの固定資産を所有する、個人や法人に課せられる地方税です。1月1日時点で固定資産課税台帳に記録されている個人・法人が納税義務者となるため、年度の途中で資産の所有者が変わっても、納税義務者は据え置きとなります。
法人において固定資産税がかかるのは、土地・建物・償却資産です。償却資産とはパソコンやエアコンなど、法人税を計算する際に減価償却をしている資産を指します。
固定資産税の税率は1.4%です。固定資産の課税標準額に税率をかけて、納税額を算出します。
自動車税(軽自動車税)
法人で社用車を利用している場合は、自動車税もしくは軽自動車税の納付が必要です。
自動車税とはその年の4月1日時点で自動車を所有している、個人や法人に課せられる地方税です。所有しているのが普通自動車なら自動車税、軽自動車なら軽自動車税の負担が求められます。
自動車税の税額は車の排気量に左右されます。営業用の自動車の場合、税額の一例は下記の通りです。
車の排気量 | 税額 |
---|---|
1L以下 | 7,500円 |
1L超1.5L以下 | 8,500円 |
1.5L超2L以下 | 9,500円 |
排気量が大きくなるほど、納税額が高額になる仕組みです。
登録免許税
登録免許税は登記の際にかかる国税です。不動産の名義を変更するための『所有権移転登記』や、法人設立時の『法人登記』などを行う際に納付が求められます。
登録免許税の税率・税額は、行う登記の内容によって異なります。税率と税額の一例は以下の通りです。
登記の内容 | 税額 |
---|---|
不動産の売買 | 2%(税額は不動産の価額に税率をかけて計算) |
株式会社や合同会社の設立 | 0.7%(税額は資本金の額に税率をかけて計算) |
本店や支店の移転 | 1カ所につき3万円 |
株式会社や合同会社の設立については、最低課税額が決められています。株式会社の場合は15万円です。
印紙税
印紙税とは不動産売買契約書や土地賃貸契約書などを交わす際に、納付が求められる国税です。契約書を交わすタイミングで納付します。
印紙税の税額は収入印紙を貼り付ける文書の種類と、契約金額によって異なります。例えば不動産売買契約書の場合は以下の税額です。
10万円を超え50万円以下のもの | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
2024年3月31日までに作成される契約書に対しては、上記の軽減税率が適用されます。
源泉所得税
源泉所得税は法人に勤める個人の給与からあらかじめ徴収し、国に納付する税金です。法人が給与所得者などから所得税額分のお金を集め(源泉徴収)、国に源泉所得税として納めます。
源泉所得税の税額は、従業員の給与額や扶養親族の有無によって異なります。例えばひと月の社会保険料等控除後の給与等の金額が38万円以上38万3,000円未満で、扶養親族が1人の場合、納税額は1万1,800円です。
源泉所得税は弁護士や会計士に支払う報酬や、作家・ライターに原稿料などを支払った際にも負担しなければなりません。これらの報酬に対する源泉所得税の税額は、支払金額100万円以下の場合10.21%です。
特別徴収住民税
特別徴収住民税とは法人に勤める従業員の給料から天引きされた住民税(地方税)について、従業員に代わって納める税金です。
給与所得者は原則的に、給料から納税額分を天引きされる『特別徴収』で住民税を納めます。法人は従業員の給料から住民税として天引きしたお金を、特別徴収住民税として自治体に納める必要があるのです。
住民税は所得に応じて負担額が変わる『所得割』と、一定額の負担を求める『均等割』で構成されています。基準の値として所得割は所得の10%、均等割は5,000円と決められていますが、自治体によって税率・税額が異なるケースがあるので注意しましょう。
各税金の支払いタイミングと支払い方法
法人が負担しなくてはならない税金は、納付を行うタイミングで3種類に分けることが可能です。どの税金をどのタイミングで支払うのか解説します。併せて各税金の納付方法も確認しましょう。
事業年度の終了日翌日から2カ月以内
事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に納める必要がある税金は、法人税・法人住民税・法人事業税・地方法人税・特別法人事業税・消費税の6つの税金です。法人税については、一定の条件に当てはまると中間申告が必要な点に注意しましょう。
法人税は申告書と添付書類を税務署に提出して、納付します。納付方法は現金納付・クレジットカード納付・ダイレクト納付(e-Taxを利用した電子納付)・インターネットバンキング納付から選択が可能です。
法人住民税と法人事業税の納付は、納付書に現金を添えて提出する方法が一般的です。1枚の納付書でまとめて納めます。電子納税の選択も可能です。
地方法人税は税務署に申告書を提出して、納付します。口座振込やオンライン納付など、多彩な納付方法が選択可能です。
特別法人事業税は法人事業税と共通の納付書を使用して納めます。『特別法人事業税』の欄に納付額を記入して納付しましょう。
消費税は窓口納付以外にも、電子納税・クレジットカード納付・スマホアプリ納付などから納付方法を選べます。例えば電子納税はe-Taxから手続きを行います。
毎月または年に2回
毎月または年に2回納付しなくてはならない税金が、源泉所得税と特別徴収住民税です。
給与を支払った、もしくは住民税を天引きした月の翌月10日までに納付します。どちらの税金も給与を支払う、もしくは特別徴収を利用する従業員が常時10人未満の場合、半年分まとめて納めることも可能です。
源泉所得税の納付方法は現金納付・クレジットカード納付・ダイレクト納付・インターネットバンキング納付から選択できます。
特別徴収住民税は納付書による現金納付のほか、eLTAX(地方税ポータルシステム)による電子納税や、銀行からのオンライン納付なども選択可能です。
発生しだい都度
納付の義務が発生するたびに納付の手続きが必要な税金は、印紙税・登録免許税・固定資産税・自動車税です。
印紙税は郵便局や法務局で納税額分の収入印紙を購入し、課税文書に収入印紙を貼り付け、印章や署名で消印を受けて納税します。
登録免許税の納付のタイミングは登記申請時です。納付方法は現金納付・収入印紙による納付・電子納付の3種類で、最も一般的なのは窓口での現金納付とされます。
固定資産税の納付方法は、4~6月頃に自治体から届く納税通知書を利用するのが基本です。そのほかにもeLTAXからの納付をはじめ、口座振替・クレジットカード・インターネットバンキングでも納められます。
自動車税は5月頃に自治体から送られてくる、納税通知書を使った現金納付が一般的です。銀行・信用金庫・郵便局などで納付できます。そのほかに口座振替やクレジットカードでも納付が可能です。
会社の設立にも税金がかかる
『法人を設立する』という行為自体にも、税金がかかります。法人設立時に納めなくてはいけない税金は、印紙税と登録免許税です。
印紙税は会社の設立に不可欠な『定款』の作成時に負担する税金です。基本的に4万円の納付が求められますが、定款を電子定款で作成する場合は課税されません。
登録免許税は法人登記を行う際に負担が必要です。税額は税率0.7%を資本金の額にかけて算出します。ただし最低負担額が決められており、株式会社を設立する場合は最低15万円、合同会社を設立する場合は最低6万円の納付が必要です。
法人設立後の初年度の税金処理方法
法人を設立したときには、税金に関する届出書類を準備して提出しましょう。例えば法人税に関しては『法人設立届出書』や『法人税の青色申告の承認申請書』などを、消費税に関しては『消費税の新設法人に該当する旨の届出書』を提出します。
法人設立後の税金の処理方法について、法人税・法人住民税・法人事業税などは『法人税、住民税及び事業税』の勘定科目で仕訳するのが一般的です。決算時や確定申告時には、『未払法人税等』という科目も使用します。
固定資産税・登録免許税・印紙税などは『租税公課』、源泉所得税や特別徴収住民税は『預り金』という勘定科目で仕訳します。
なお法人設立前に支払った費用でも、法人設立のための経費であれば、法人の経費として計上が可能です。会社設立時に支払った印紙税や登録免許税が、このような経費に該当します。
法人にかかる税金を節税するには?
法人を設立するとかかる税金は、節税が可能です。法人が実践できる節税方法の一例として、以下が挙げられます。
- 赤字を繰り越して『欠損金の繰越控除』を受ける
- 役員報酬を増額して経費に計上する
- 福利厚生を拡充し経費に計上する
- 資本金を1,000万円未満に設定する
- 減価償却の特例の適用を受ける
法人の会計処理は複雑で、実践できる節税対策も多岐にわたります。そのため税金の素人が適切な節税対策を選択し、実行するのは大変です。節税対策を徹底したいなら、税金の専門家である税理士に相談するのが、最も確実といえるでしょう。
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法人を設立するなら税金の知識も重要
個人事業主が法人化を実現すると、課せられる税金の種類が一変します。難しい税金の知識を前にして、「具体的な税金の処理は税理士に任せるから、自分には税金の知識は必要ないだろう」と考える人もいるでしょう。
しかし税金に関する知識をまったく身に付けず、税金の処理を税理士に丸投げするのはおすすめできません。税金に対する感覚が養われず、結果的に大きな損をしてしまうかもしれません。最低限求められる知識を身に付けて、法人化で後悔しない状態を目指しましょう。
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