「地方法人税ってどんな制度だろう」「地方法人税の税率や計算方法を知らない」とお悩みではありませんか。
「地方法人税」は2014年の税制改正によって創設されたもので、会社が事業で得た所得にかかる国税です。地方法人税は法人税額に10.3%をかけることで求められます。
本記事では地方法人税の定義や計算方法、納付する手段について解説します。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
地方法人税とは「国に納める事業所得に関する税金」
「地方法人税」とは企業が事業によって得た所得に対して課される税金です。2014年に新しく創設され、従来は地方自治体に納めていた税金の一部を、国に納付するようになりました。そして納付された地方法人税は地方交付税の財源となります。その結果、自治体間の税収のバラつきの抑制が期待できます。
地方法人税はその名前から地方税と勘違いされがちですが、国税の一種である点に留意しましょう。
また地方法人税は2016年の税制改正によって、税率が「10.3%」に変更されました。計算の際は以前の税率を使用しないよう注意が必要です。
地方法人税のほかに法人が支払う必要のある6つの税金
法人を経営していると、地方法人税以外にも様々な税金を支払う必要があります。
【法人が支払う代表的な税金】
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「法人税」「消費税」は国税です。また「地方消費税」は地方税ではありますが、「消費税」と併せて管轄の税務署に納付をします。一方で「法人住民税」「法人事業税」「特別法人事業税」は地方税であり、地方自治体が納付先です。
以前までは法人が支払う税金の1つに「地方法人特別税」がありましたが、令和元年9月末までに開始する事業年度をもって廃止されました。地方法人特別税の代わりに財政のバランスを整えようと設定されたのが、地方法人税なのです。
なお不動産や自動車の有無によっては、この他に「固定資産税」や「自動車重量税」などを支払う必要があります。
地方法人税の税率と計算方法
地方法人税の税率は10.3%です。
地方法人税は「法人税額」に10.3%をかけあわせることで求められます。ただし、100円未満は切り捨てるので注意しましょう。
【具体例】
「課税所得:800万円」「法人税率:15%」の場合、地方法人税は「123,600円」です。
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法人税額の求め方
法人税の計算は「課税所得×税率」によって行なわれます。
そして課税所得は「益金-損金」で計算可能です。益金とは売上などの収益のことで、損金とは益金を得るために要した費用を指します。
また法人税の税率は企業の実態や規模によって異なり、15%から23.2%となっています。そのため自身の会社の法人税率が何%であるのかを必ず確認しましょう。
【普通法人における法人税率】
資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | ||
年800万円超の部分 | 23.2% | ||
上記以外の普通法人 | 23.2% |
【具体例】
資本金1億円以下の中小企業で「益金:1,500万円」「損金:500万円」の場合、法人税額は「1,664,000円」です。
この1,664,000円に対して地方法人税の10.3%が課されます。 |
法人税の税率や計算方法についてくわしく知りたい方は、次の記事を参照してください。
地方法人税は法人税が課税標準!法人税と課税所得を間違えないように注意しよう
間違えやすいポイントですが、課税所得ではなく、法人税額が課税標準となるので注意しましょう。課税標準とは「税金を計算する際の算定基準」のことです。たとえば所得税の場合、課税標準は「所得」となります。
法人税額算出の際は上述した通り、所得金額800万円を境に税率が変わる点は頭に入れておきましょう。所得金額が800万円以下であれば税率15%、800万円を超えると税率23.2%です。
また法人の実質的な所得税負担額を示した実効税率という指標があります。本来ならば法人の所得税負担率は、所得に対して課せられる法人税・法人住民税・法人事業税の税率を合算した値になるはずです。
しかし日本の法人税制度では、事業税の損金算入や課税標準額の基準の違いを理由に、実際の負担税率は合算した値より小さくなります。実効税率は以下の計算式で算出できるので、気になる方は確認してみてください。
地方法人税の納付方法
地方法人税の納付期限は、原則として決算日の翌日から2ヶ月以内です。
地方法人税だけの納付はできないので、法人税と一緒に納付を行ないます。
地方法人税の納付方法は多岐に渡るため、自身に一番合った納付方法を選択するのが大切です。
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現金で納める場合
地方法人税の納期限前に税務署から送られてくる納付書を用いて、現金で税金を納付する方法です。税目や法人名、整理番号などは最初から記載されているので、税金の金額を記載した上で手続きを行ないます。
手続きの場所は「金融機関」もしくは「税務署の窓口」です。ただし、現金納付が可能な金融機関は「日本歳入代理店」に指定されている支店のみである点に注意しましょう。
現金納付であれば、申告書を書面で税務署に提出する際に、そのまま納付を行なえるので手間が少ないです。また直接窓口に納付できる安心感もあるでしょう。
しかし申告書の提出を郵送や電子申告で行なう場合は、直接税務署や金融機関に足を運ぶ必要があります。窓口の対応時間は予め決まっているので、事前に確認しましょう。
【現金で納めるメリット】
【現金で納めるデメリット】
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オンライン(e-Tax)で納める場合
電子申告(e-Tax)で申告書を提出した後に、口座引き落としによって地方法人税を納付する方法です。即日を含む指定した期日に、納税者名義の口座から引き落としが行なわれます。
直接窓口に足を運ぶ必要がなく、手続きが容易である点が魅力です。
しかしオンラインで納付をするには、金融機関もしくは税務署に対して、予め届出を提出する必要があります。1度手続きを行なえばその後は必要ありませんが、それを手間に感じる方もいるでしょう。
またe-Taxを用いて納付をすると、領収書が発行されません。そのためどうしても領収書が欲しい場合は他の納付方法を選択しましょう。
【オンライン(e-Tax)で納めるメリット】
【オンライン(e-Tax)で納めるデメリット】
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e-Taxでの申告方法についてくわしく知りたい方は、以下の国税庁ホームページを参照してください。
クレジットカードで納める場合
「国税クレジットカードお支払サイト」を用いて、地方法人税をクレジットカード払いする方法です。自宅のパソコンやスマートフォンから24時間納付の手続きが可能となっています。
クレジットカード納付は手続きが簡単なだけでなく、カードにポイントが付与される点も魅力です。実質的な税額を抑えられるため節税に繋がるケースもあります。
しかし、手数料は納税者が負担する必要があります。また税務署や金融機関の窓口では、クレジット納付ができない点に注意しましょう。
【クレジットカードで納めるメリット】
【クレジットカードで納めるデメリット】
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クレジットカードでの納付方法についてくわしく知りたい方は、以下の「国税クレジットカードお支払いサイト」を参照してください。
コンビニで納める場合
コンビニ納付が可能な納付書を用いることで、地方法人税をコンビニで支払える納付方法です。税務署や金融機関に訪れる必要なく、24時間近くのコンビニで納付ができる点がメリットです。
しかしコンビニ納付が可能となるのは税額が30万円以下である場合に限られます。またクレジットカードや電子マネーが使用できない点にも注意しましょう。
【コンビニで納めるメリット】
【コンビニで納めるデメリット】
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コンビニでの納付方法についてくわしい内容を知りたい方は、次の記事を参照してください。
法人地方税の納付書の入手方法
税務署や金融機関の窓口、コンビニなどで地方法人税を納付するには、納付書の準備が必要です。
基本的に納付書は決算日から一ヶ月後程度で郵送されますが、手違いで手元にない場合もあるでしょう。またコンビニ納付をする場合は専用の納付書を入手する必要があるため、納付書の入手方法を正しく把握しておくことが重要です。
通常は決算から1か月後ぐらいに郵送される
地方法人税の納付書は、決算から1か月後ぐらいに税務署から郵送されてきます。納付書には整理番号や法人名が既に入力されているので、法人税や地方法人税の税額のみを記載すれば大丈夫です。
納付書が郵送されてから実際に納付手続きを行なうまで、ある程度の期間が空くかもしれません。そのため、窓口での納付をする場合は無くさないように注意しましょう。
なお前回の税金の納付がe-Taxでの納付などである場合、納付書が郵送されない可能性があります。
国税に関する納付書がない場合の対処方法
地方法人税を含む国税に関する納付書がない場合は、税務署か金融機関でもらうことができます。
税務署からもらう場合、管轄の税務署の窓口に訪れれば地方法人税の納付書が入手できます。希望すれば税額が入った納付書を受け取ることも可能です。窓口まで行く時間がない場合は、電話での連絡でも可能です。その場合は数日以内に、納付書が郵送されてきます。またコンビニ納付を希望する場合も、同様の流れで納付書を入手できます。
一方で金融機関で納付書をもらう場合は、管轄の税務署に認められた金融機関であるかを確認しましょう。認められていない金融機関で入手した納付書を使うと、適切に納付できない恐れがあるため注意が必要です。
地方法人税は中間納付の対象
地方法人税は中間納付の対象となっています。
中間納付の対象となっている場合、確定申告の期間でなくても税金の納付を行なう必要があるので、留意しましょう。
中間納付は地方法人税以外にも様々な税金で採用されている制度です。
【中間納付の対象となる税金】
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中間納付とは事業年度開始から6か月過ぎに法人税を納めること
中間納付とは「事業年度開始から6ヶ月過ぎの時点で法人税及び地方法人税の一部を納める制度」です。対象となるのは、前年度の法人税額が20万円超の法人です。
中間納付の際に納める税額は、原則として「前事業年度の法人税額÷前事業年度の月数×6」で求めます。しかし前年から税額が大きく変わる場合は、仮決算を行ない申告手続きを行なう手段も有効です。
中間納付した税金は、確定申告時の法人税から差し引かれる仕組みになっています。
中間納付についてよりくわしい内容を知りたい方は、次の記事を参照してください。
監修税理士からのコメント
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この記事の監修税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通