この記事では法人税について中学生にも分かりやすく解説します。法人税と個人の税金の違い、計算方法を理解し、法人税の仕組みを理解できるようになりましょう。
この記事を監修した税理士
菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区
法人税とはそもそも何か?
法人税とは法人の所得に対して課せられる税金です。個人の所得にかかる所得税とは異なります。
まずは法人税の概要や私たち個人が納める税金との違いについて詳しくみていきましょう。
法人税は法人の所得にかかる税金
法人税とは法人の所得に対して発生する税金です。法人が商品やサービスを販売して得た利益には税金が発生し、この税金を法人税と言います。法人が儲かったら、儲けに対して発生する税金が法人税なのです。
所得税との違いは?
所得税は個人の所得に対して発生する税金です。給料をもらっているサラリーマンや、自営業やフリーランスのように個人で商売をする個人事業主には所得が発生します。
その個人の所得に対してかかる税金が所得税です。
なお、個人が支払う所得税は、所得の金額が多ければ多いほど税率が上がっていく累進課税というものが適用されています。
一方、法人税は所得の金額に関わらず一定です。
そのため、個人事業主の利益が大きくなったら、会社を作って所得税ではなく法人税を支払う方が安く済むことがあります。
間接税ではなく直接税
税金には直接税と間接税があります。法人税は直接税です。
法人税の場合は税務署に直接税金を納めなければなりません。このように、自分たちで直接国や県に支払う税金を直接税と言います。
一方で間接税とは、商品やサービスの代金を支払う時に、税金の分まで店舗に支払う税金のことです。
間接税の代表的なものが消費税です。消費税はお買い物をする時にお店に支払い、お店の人が客から預かった消費税を国へ支払っています。お店の人を通して「間接的に支払っている」ので、消費税は間接税に。
法人税はどうやって計算するの?中学生にもわかりやすく解説!
法人税はどのように計算して求めるのでしょうか?法人税と個人の税金で最も異なる点は支払う税金の計算方法です。
副業をしている人でも法人になることがあるのは、法人税の計算方法が個人と比較してメリットがあるためです。
法人税の計算方法を理解して、なぜ個人事業主ではなく法人にして商売をするのかを理解できるようになりましょう。
法人所得に法人税率をかけ算する
法人税の基本的な計算方法は、法人所得に法人税率という割合をかけ算して求めます。
2019年4月の最新の法人税率は23.2%です。つまり「儲かったお金(所得)の23.2%を国へ税金として支払ってください」ということです。
例えば1年間で1,000万円儲かった会社の法人税は、1,000万円×23.2%=232万円。
この会社は法人税として232万円を払わなければなりません。
法人所得を決める「益金」と「損金」とは?
法人税は「所得×法人税率」で計算し、「所得=益金ー損金」で求めます。簡単に言えば「事業年度(1年間)の益金から損金を控除した(ひいた)金額が所得」です。
益金とは1年間で会社に発生した売上などの「入ってきたお金」。一方で、損金とは1年間で会社に発生した人件費などの「出ていくお金」のことです。
法人税率は資本金と所得金額で決まる
法人税率は基本的には23.2%(2019年度)と覚えておけば問題ありません。
しかし、実は資本金と所得の金額に応じて以下のように細かく分けられています。
区分 | 事業開始年度H30.4.1以後 | |
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資本金1億円以下の法人など | 所得800万円以下の部分 | 15% |
所得800万円超の部分 | 23.2% | |
上記以外の普通法人 | 23.2% |
このように、資本金(会社の自己資金)1億円以下の会社は所得800万円と800万円を超える部分によって税率が異なります。
例えば所得が1,000万円であれば、800万円の部分に関しては税率は15%、801万円から1,000万円までの部分に関しては税率23.2%です。
800万円×15%=120万円
200万円×23.2%=46.4万円
となるので、この会社は合計で166.4万円の法人税の支払いが必要です。
課税される法人とされない法人がある!中学生にもわかりやすく解説!
法人税は法人の利益に対して課税される税金ですが、全ての法人に法人税が課税されるわけではありません。
法人には以下のような法人があります。
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これらの法人は法人税が課税される法人と、されない法人が混在しています。
日本で認められている法人と、法人税との関係について詳しく見ていきましょう。
普通法人 | 課税対象になる法人
普通法人とは、税法上、公共法人、公益法人、協同組合以外の法人です。
要するに一般の会社が普通法人に該当します。課税対象になるのは以下のような法人です。
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これらの普通法人は所得が800万円以下になると、法人税が15%になる軽減税率の適用対象です。私たちが会社を作ろうと考えた時には一般的には普通法人に該当します。
協同組合 | 課税対象になる法人
協同組合とは、共通する目的のために個人または法人が集まって、組合員となって設立する事業体です。原則として、協同組合は非営利で相互扶助を行う必要があります。
最も身近な協同組合である農協は、農業者組合員の相互扶助を図る目的の組織です。そのため組合員にならないと、農協で口座を持つことも共済に加入することもできません。
預金や融資や保険は、組合員相互でお金を出し合い、資金的な手当をするという名目のもとに運営されています。
協同組合の法人税率は19%ですが、普通法人と同じように所得800万円以下の部分に関しては15%の軽減税率が適用されます。
公共法人 | 課税対象にならない法人
公共法人とは、法人税法上、法人税の課税対象にならない法人です。
公共法人には以下のような法人が該当します。
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公共法人はその名の通り税が投入される公共性のある事業を行う法人で、原則的に収益事業を営むことはできません。
昨今、NHKの問題が取り沙汰されているのは、NHKが受信料や人件費などについて公共法人として本当に正しいのかというあり方が問われているためです。
公益法人 | 課税対象にならない法人
公益法人とは、社会公益の拡大を図ることを目的とした、法人税法上、法人税が免除される法人です。公共法人と目的や法人税の扱いなどは類似しています。
公共法人も公益を目的として営利を追及しないので、収益事業を営むことはできません。公共法人に含まれる法人としては以下のようなものがあります。
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公益法人は非課税ですので、普通法人よりは優遇されています。
そのため、どんな法人でも公益法人になることが出来るわけでなく、厳しい国の基準をクリアして公益性が認められなければなりません。
人格のない社団 | 課税対象にならない法人
人格のない社団とは、個人や法人が共通の目的のために集まっているにも関わらず法人としての登記をしていない団体です。
例えば、町内会やPTAなどが該当します。これらの団体は人が集まり、組織的に運営され、会計報告なども行っており、実質的には社団の形を形成していますが、法人としての登記は行われていません。
人格のない社団も原則的に収益事業を行うことはできず、社団の構成員相互の扶助を目的として活動が行われます。
町内会の清掃活動や新年会などは収益目的ではなく、町内の美化や町内の人の懇親が目的です。ただし、これらの非課税法人も収益事業を行なった場合には、その事業収益に対しては税金が課せられます。
法人税の確定申告について【経理担当者向け】
法人税を支払うためには確定申告をしなければなりません。
国に対して「所得はいくら」で「法人税はいくらか」ということを申告して税金を払うのが確定申告です。
ここからは経理担当者など、実際に法人税を納付する人たちに向けた具体的なトピックスを中心に解説します。
確定申告の流れ
法人税の確定申告の流れは決算手続と税務申告の2段階です。確定申告の流れを決算手続と税務申告に分けて解説していきます。
決算手続
決算手続は以下の流れで行います。
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まず、帳簿上の在庫と実際の在庫が合っているか確認を棚卸によって在庫を確認します。次に当期分の帳簿を締め切り、仮試算表を作成します。
仮試算表を作成したら、決算整理のための仕訳を行ってください。決算整理仕訳とは決算の際に行う仕訳で、例えば貸倒引当金や減価償却費の計上などが挙げられます。試算表に決算整理仕訳を行うと決算書が完成します。
税務申告
決算書が完成したら完成した決算書をもとに以下の順番で税務申告を行います。
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消費税の確定申告は課税期間終了の日の翌日から2ヶ月以内に税務署へ提出する必要があります。完成した決算書から課税区分別の消費税額計算票をもとに消費税の確定申告書を作成しましょう。
次に決算書から税務上の調整項目を加減して、法人税の確定申告書を作成します。なお、法人住民税は都内であれば法人都民税です。
また法人税には均等割と所得割があります。均等割は利益が発生していない法人でも資本金の額によって均等に負担しなければなりませんが、所得割は法人の課税所得に応じて負担する税金です。
開業してから間もなくで、所得がない場合には均等割だけの負担となります。法人税割は地方自治体によって異なるので、詳しくは本社や支店が所在する自治体に問い合わせをしてみましょう。
法人税も提出期限はやはり課税期間終了の翌日から2ヶ月以内です。
最後に法人税の確定申告書で計算した法人税額をもとに法人都道府県税と法人市民税の申告書を作成します。課税期間が終了の翌日から2ヶ月以内に、都道府県税事務所と市区町村窓口へそれぞれ提出します。
確定申告の必要書類
法人税の確定申告に必要な書類な以下の通りです。
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このうち、法人税申告書別表等は、企業の規模などに応じてさまざまな書類が必要です。会計や税務や法律について深い知識が不可欠ですので、税理士などの専門家の力を借りた方が無難でしょう。
確定申告の期限と延長制度
確定申告の期限は課税期間終了日の翌日から2週間以内です。法人の課税期間とは事業年度を指します。毎年3月31日決算の会社であれば4月1日から3月31日までが課税期間です。この場合は4月1日から2ヶ月以内に確定申告をする必要があります。
また確定申告は期限を延長することができる制度があります。期限が到来するまでに延長申請をすれば1ヶ月期限を延長することが可能です。
延長するためには定款に「定時株主総会は、毎事業年度の終了後3ヶ月以内に召集する」という記載があることが必要です。
決算は株主総会の承認を得て確定するということが建前になるので、定款にこの記載があることによって、事業年度終了から2ヶ月以内に確定申告をすることができないという十分な理由になるのです。
ただし、確定申告書の提出を延長することができたとしても、法人税の納付期限を延長することはできません。したがって、1ヶ月納付期限を延長した場合には1ヶ月分の利子税という税金が発生します。
利子税を支払いたくない場合には確定申告前に見込みの税金を支払う「見込納付」という手続きが必要です。この点も詳しくは税理士に確認しておくことをおすすめします。
法人税の納付方法【経理担当者向け】
法人税の納付方法としては以下のようなものがあります。
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数ある納付方法の中から、自分が期日内に納付することができる方法を選択することがベストです。それぞれの納付方法と具体的な手続きについて具体的に解説していきます。
税務署や銀行窓口での納付
税務署や銀行窓口へ納付する場合には、税務署か銀行窓口で納付してください。税務署の場合は現金のみあれば納付できますが、銀行の場合は納付書も必要です。
ダイレクト納付
ダイレクト納付は、事前に税務署へ登録しておき、電子申告を行うか納付情報をe-Taxに登録することによって、登録してある銀行口座から自動的に税金が引き落とされる仕組みです。
わざわざ自分で銀行などに行く必要がないので、簡単に税金を支払うことができる方法ですが、口座に税額分以上の現金を入金しておく必要があります。
インターネットバンキングによる電子納付
インターネットバンキング等からの納付手続とは、インターネットバンキングやATM等により国税を電子納付する手続で、利用するためには事前に税務署へ利用開始登録をしておくことが必要です。
インターネットバンキング等による電子納付はPay-easyが使える金融機関であれば全て対応しています。
事前に金融機関のインターネットバンキングに登録し、税務署へ利用者登録することによってインターネットバンキングから法人税を支払うことが可能です。
クレジットカード納付
法人税はクレジットカードでも支払うことが可能です。
この支払方法は事前に税務署などに登録を行う必要はありません。
納付手順は以下の通りです。
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法人税の納付書を用意したら「国税クレジットカードお支払いサイト」にアクセスしましょう。このサイトは国税をクレジットカードで支払うことができるサイトで、法人税もこのサイトから納税することができます。
サイト内で利用者情報として以下の項目を入力しましょう。
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なお、氏名な法人名、整理番号は納付書の右上に記載されている8桁の数字を入力します。次に税目は「法人税」「課税期間」「合計金額」を入力してください。最後に支払いを行うクレジットカードの情報を登録しましょう。
クレジットカードで税金を納付するとクレジットカードのポイントを受け取ることができます。法人税は数百万円にもなることがあるので、これだけで数万円分のポイントを貯めることができるので、現金で納付するよりもかなりお得です。
コンビニ納付
バーコード付き納付書はコンビニでも納付することができます。手順は納付書をコンビニレジに持参して現金で支払うだけです。
なお、コンビニ納付できるのは納付金額30万円以下のものだけとなっています。コンビニ納付に対応しているコンビニは以下のコンビニです。
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このようにメジャーなコンビニだけでなく、比較的規模が小さいコンビニにも対応していますので、お近くのほとんど全てのコンビニで支払うことができるのではないでしょうか?
法人税額が30万円以下の場合には、コンビニでの支払いも検討してみましょう。
法人税の納税地は一体どこ?【経理担当者向け】
法人税には納税地というものがあります。どこの税務署に納税してもよいというわけではありません。
会社の本社所在地から適正な納税地はどこなのかということを事前に把握しておく必要があります。納税地について詳しく見ていきましょう。
登記上の本店所在地が納税地
法人税の納税地は登記上の本店所在地です。
地方に本社を登記している大企業などは、実質的な本社機能があるにもかかわわず、登記上の本社は地方に登記したままになっていることがあります。これは住民税の支払いの関係から、「地元に恩返しをしたい」という経営者の思いで本社住所を変えていないためです。
法人税の場合には本社がどこであれ国へ支払います。法人税の支払い先は登記上の本社所在地を管轄する税務署です。
事前に自社の納税地を把握しておこう
法人税は本社所在地を管轄する税務署へ申告と支払いをしなければなりません。
しかし税務署は各自治体に必ず1つずつあるわけでなく、複数の自治体を管轄しています。そのため、自社の本社所在地がどの税務署なのか分かりにくく、地理的には最も近い自治体が自社の本社所在地を管轄していないということも珍しいことではありません。
管轄エリアは分かりにくいので、事前に自社の納税地はどこなのかということを調べておくようにしてください。管轄エリアは税務署へ電話で確認することもできますが、国税庁のサイトから郵便番号を入力するだけで管轄エリアを調べることもできます。
法人税は節税もできる!【経理担当者向け】
法人税は節税することもできます。法人は個人と比較して経費として算入することができるものが多いので、経費を大きくして利益を少なくすることができるためです。
例えば、事務所兼自宅の家賃や家族の給料などは経費に算入することができる法人の特権です。
法人税の支払いは決して少ない金額ではありませんが、上手に経費を活用することによって節税できます。
法人税の節税対策を3点ご紹介していきます。
大きく分けて3つの対策がある
法人税の節税対策は大きく分けて「役員報酬の見直し」「必要経費の見直し」「控除の利用」の3つがあります。節税対策について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
監修税理士のコメント
菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区
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この記事を監修した税理士
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