個人事業主やフリーランスであれば、確定申告時の経費にはできるだけいろいろなものを計上しておきたいものです。
物を購入したり、交通費として使用したりした分は領収書があり、経費にしやすいのですが、自宅をオフィスとして使用している場合「業務に使っているのだから、家賃を経費にできないか」と考えたことはありませんか?
実は「家事按分」という方法で、経費計上できる方法があります。今回は確定申告時に知っておきたい「家事按分」について、解説します!
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
確定申告で家賃を経費にするには?
個人で仕事をしている場合、自宅をオフィスとして使っている人も少なくありません。そんな人は確定申告の際、家賃や光熱費などの一部を、経費として計上することができます。これが「家事按分」です。
家事按分とは?
通常、事務所を構えている法人では事務所の家賃や光熱費などを、事業を行なう上での必要経費として、確定申告時に経費計上します。
個人事業主についても、自宅と異なる場所に事務所があれば全額経費になりますが、自宅で仕事をしている場合でも、家賃の一部は業務を行なうために必要な経費として計上できるのです。これを「家事按分」といいます。
自宅兼オフィスの場合は?
自宅兼オフィスの場合、家賃には事業費と生活費が混在しています。確定申告時に経費計上できるのは、事業にかかった費用のみです。そこで全体の費用のうち、どのくらいの割合が事業に必要だったのか、合理的な基準のもとに「按分」し、計上する経費を計算します。
確定申告時に家賃を家事按分で経費計上する場合、白色申告は事業に関わる部分が50%を超えていなければ、経費にできません。青色申告であれば、割合にかかわらず経費計上できます。
家賃は家事按分で経費に!
家事按分の分け方に決まりはありません。それぞれの実情によって、自分で基準を決めることができます。
自分で決められるとはいえ、その基準には誰が見ても納得できる明確な根拠が必要です。
例えば家賃を家事按分する場合、一般的に使われる方法は「面積」と「時間」です。いずれかで基準を作り、毎月の家賃に対する割合を算出します。
・面積
自宅の面積のうち、どのくらいを事業で使っているかで算出します。例えば50平方メートルの自宅で、10平方メートルの部屋を仕事で使っている場合は、家賃の5分の1が経費計上できる金額です。
・時間
ひと月あたり、どのくらいの時間を事業で使っているかで割合を出します。リビングの一角を仕事で使っているような場合です。仕事で使っている面積を計算した後、1日のうち、どのくらいの時間を仕事で使ったかを割り出して計算します。
また取引先に出向して仕事をしている場合も、1日のうち自宅兼事務所をどのくらいの時間使っているかを計算するとよいでしょう。
家事按分で算出された金額は「地代家賃」の経費項目で計上します。
敷金や礼金、共益費は経費にできる?
賃貸マンションでは、家賃のほかに敷金や礼金、共益費なども必要です。これらは経費にできるのでしょうか。
・敷金
敷金は「いずれ戻ってくるお金」なので「預けているお金」と捉えられます。そのため経費にはできません。なお敷金が返金されたとき、一部修繕費用が差し引かれた場合は、家賃按分の割合で修繕費として計上できます。
・礼金
礼金は20万円未満であれば「地代家賃」として支払った日が属する年の経費に計上できます。20万円以上だった場合は、「繰延資産」として扱います。必要経費を複数年に渡って計上する方法で「償却処理」を行ないます。
・共益費
共益費は家賃の按分割合と同じ割合で算出し「地代家賃」として計上します。
賃貸物件ではなく、持ち家の場合の住宅ローンは、必要経費になりません。家の減価償却費、住宅ローンの金利、火災保険料、固定資産税については、同じように家事按分すれば、経費計上できます。
家賃を経費にするには領収書が必要?
確定申告時に経費計上する場合は、領収書の保管が必要です。しかし家賃の場合、銀行口座からの自動引き落としを設定している人がほとんどで、領収書は手元にないことが多いでしょう。
その場合は、毎月引き落とされている金額がわかる通帳が領収書の代わりになります。ネット銀行など通帳がない場合は、インターネットで確認できる取引履歴を印刷して保管しておくとよいでしょう。
家賃以外の水道光熱費も家事按分で経費に!
家事按分で経費計上できるものは、家賃だけではありません。パソコンを使用する際に必要な電気代や、インターネット代、電話代など、仕事に必要なことが証明できれば、経費計上できます。
家事按分の例
必要経費として計上する場合のポイントは「仕事に直接関連していることを明確に説明できるか」です。例えば料理研究家であれば、水道代やガス代は仕事に必要です。しかしプログラマーやライターであれば、ガスが直接売上に影響しているとは説明しにくく、経費と認められません。
自分の仕事内容に応じて、どの項目を経費計上するか考えてみるとよいでしょう。
・経費按分基準と計上項目の例
経費を按分する場合は、どんな基準であれば明確に割合が計算できるか、誰でも納得できるような方法を考える必要があります。事例を参考に、自分の仕事のやり方や環境にあわせて基準を決めましょう。
項目 | 按分基準の例 | 算出例 | 計上項目 |
---|---|---|---|
電気代 | ・作業時間 ・作業日数 ・コンセントの数 ・消費電力量 など |
●1日8時間(1日の3分の1)仕事をしている場合 →月の電気代10,000円÷3=約3,333円●10個のコンセントのうち、2個を仕事で使っている場合 →月の電気代10,000円÷5=2,000円 |
水道光熱費 |
水道代、ガス代 | ・使用時間 ・使用比率 など |
●1日4時間(1日の6分の1)、仕事として料理をしている場合 →月の水道代3,000円÷6=500円 →月のガス代8,000円÷6=約1,333円 |
水道光熱費 |
インターネット代 | ・使用時間 ・使用日数 など |
●仕事で1日8時間、プライベートで1日3時間使用している場合(仕事使用比率約72%) →月のインターネット代5,000円×0.72=3,600円 |
通信費 |
電話代 | ・使用割合 ・使用時間 など |
●仕事とプライベートで半々くらいで使っている場合 →月の電話代 10,000円(携帯含む)÷2=5,000円 |
通信費 |
駐車場代 | ・使用頻度 ・使用日数 ・使用時間 など |
●毎日、仕事とプライベートで使用しており、頻度は半分くらいの場合 →月の駐車場代20,000円÷2=10,000円 |
地代家賃 |
ガソリン代 | ・走行距離 ・使用日数 など |
●その月に100キロ走行し、そのうち40キロを仕事で走行した場合 →月のガソリン代20,000円×0.4=8,000円 |
車両費、旅費交通費、消耗品費のいずれか |
必要があれば、按分の比率を月ごとに変更することもできます。毎月の計算が大変な場合は、年間で時間や割合などを計算し、確定申告時に算出してもかまいません。
まとめ)家事按分には明確な基準を!
確定申告時の節税対策としても有効な家事按分。重要なのは比率を算出する際の基準の決め方です。税務署から尋ねられた際、はっきりと基準の考え方を提示でき、それが合理的であるかを検討しておきましょう。
仕事場として使っているスペースが共用スペースであれば、仕切りを作るなど、環境を整えるのも一つの方法です。仕事用のコンセントを決めたり、仕事専用の携帯電話を持ったりするのも有効です。もし時間や日数、走行距離など根拠となりそうなものがあれば、メモをしておくのもいいでしょう。
自分で作った基準で問題がないか、また経費計上が認められるかなど、不安なことがあれば、税金のプロ、税理士に相談してみるのもおすすめです。確定申告に強い税理士であれば、これまでの経験や事例に基づいて、基準の作り方や帳簿への記載方法などもアドバイスしてくれます。
監修税理士からのコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
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